DAILY KOREAN PRO BASEBALL 2

1982年に発足し、2024年時点で10球団が加盟する韓国野球委員会(KBO)による韓国のプロ野球リーグ(通称KBOリーグ)に関するブログ。レギュラーシーズン、ポストシーズン(韓国シリーズなど)の試合速報や球団別の情報、現役プロ選手が含まれる野球韓国代表が出場する国際大会の情報などもお伝えします。 twitter : @kbodigest

2019年シーズン回顧 第10回 ロッテジャイアンツ

15年ぶりの屈辱

2019年シーズン成績 

レギュラーシーズン:48勝93敗(勝率.340)10位(最下位)

 

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社稷野球場近くの居酒屋にて。左はイ・デホ、右はソン・スンナクのサイン入りユニフォーム。

  2018年は7位でポストシーズン進出を逃し、2019年からロッテの監督として13年ぶりに復帰したヤン・サンムン監督は、LGでの監督経験を買われ2年ぶりのポストシーズン進出、1992年以来となる韓国シリーズ優勝を託された。しかしチームは空中分解してしまった。

 3月23日のレギュラーシーズン開幕戦の翌日、24日のキウム戦がヤン・サンムン監督復帰後ロッテでの初勝利となった。4月6日の時点で7勝7敗だったが、翌7日から4月14日まで6連敗となると、シーズン終了まで勝率5割に戻すことはなかった。4月16日から18日まで同じく不調だったキア3連戦で3連勝するなど復調したかに思えたが、4月21日から28日までまたもや5連敗、5月1日から8日まで7連敗となり最下位に転落した。

 5月15日まで3連勝しサムソンと同率7位に並ぶなど希望が見えたかに思えたが、翌16日から5月23日までまたもや7連敗で最下位に転落した。2016年のロッテ移籍以降不動の抑えとして活躍してきたソン・スンナクの不振が痛かった。期待した若手も経験不足で戦力として機能しなかった。6月1日、期待の高卒新人ソ・ジュヌォンが18歳にしてプロ初勝利をあげ3連勝するが、6月5日から9日までまたも5連敗となった。

 6月10日、故障で早い時期の復帰が難しくなった外国人選手トンプソンをウェーバー公示し、SKから同じくウェーバー公示された右腕ダイクソーンを代役として契約した。さらに翌11日には二塁のレギュラーとして期待した外国人選手アスアヘも不振でウェーバー公示し、代役として同じ内野手のウィルソンと契約した。これがカンフル剤となったか、6月19日のハンファ戦ではイ・デホ(元福岡ソフトバンク)の2本塁打、チョン・ジュヌの本塁打で勝利し4連勝となり、連敗を重ねるようになった9位ハンファが近づいてきた。

  だが7月2日から7日まで6連敗と最下位から抜け出せなかった。泥沼にはまったチームを立て直すため、オールスター戦による1週間の中断期間に入った7月19日、ヤン・サンムン監督の辞任が発表され、コン・ピルソン監督代行が就任した。レギュラーシーズンの3分の2近くを終ええ勝率は.370と、最下位争いから抜け出すのは厳しくなっていた。再開後の7月26日から30日まで4連敗と監督辞任はカンフル剤にならなかったが、ハンファもロッテに付き合い連敗街道で8位以上とは大差がついていた。

 7月31日、コン・ピルソン監督代行に初勝利がもたらされると8月4日まで4連勝し9位に浮上した。故障から復活した期待の23歳、パク・セウンが復活し勝率も4割に近づきつつあったが、8月16日から22日までの6連敗でまたもや最下位に転落した。8月25日のNC戦で10日ぶりの勝利をあげると21日ぶりに9位へ浮上したが、8月29日に再び最下位に転落すると再浮上することはなかった。

 チームの危機に主砲イ・デホ、ベテラン打者のチェ・テインが負傷などもないのに一軍登録から外れ、代役として機能する選手もいない状態では勝てるわけもなく、9月7日まで8連敗となった。9月15日のハンファ戦で勝利し残り8試合で最下位脱出に希望を残したが、雨天による順延もあったとはいえ、10月1日のキウム戦まで8連敗と1勝もできずに2019年を終了し、夢も希望もない秋の日々はひたすら負けるだけで9位ハンファとも最終的に8.5ゲーム差もつけられた。10位、すなわち最下位は10球団制になってからは初であり、8球団制で4年連続最下位だった2004年以来15年ぶりの屈辱だった。

 2019年の観客動員数(72試合)は67万9208名で、2018年の90万1634名より約25.4%減少した。特に最下位争いから抜けられなくなった7月以降、社稷野球場は内野1塁側の応援席を除くとほぼ空席という試合も珍しくなかった。ファンは勝てずに活気も魅力もないチームを早々と見放していたのである。

 

【投手の成績】

防御率4.83(10位) 奪三振1033(2位) 被本塁打120(2位) 与四球546(1位)

[主な先発投手]

ラリー       30試合 5勝14敗 防御率3.88

チャン・シファン  27試合 6勝13敗 防御率4.95

ダイクソーン    29試合 6勝10敗   防御率4.34

キム・ウォンジュン 28試合 5勝10敗1ホールド 防御率5.63

ソ・ジュヌォン     33試合  4勝11敗  防御率5.68

パク・セウン    12試合 3勝6敗  防御率4.20

 先発投手のチーム防御率は5.03で10チーム中最下位だった。ご覧の通り先発投手陣の防御率は高く、層は薄く質は低かった。韓国5年目の外国人選手ラリーは投打のかみ合わない状態で好投しても報われないことも目立ち、最多敗戦となってしまった。6月に加入したもう一人の外国人選手ダイクソーンもロッテでは3勝しかしておらず、先発としては頼りなかった。韓国人投手ではチャン・シファンが最多の6勝だった。

 高卒新人ソ・ジュヌォンは期待されたが、苦しいチーム事情を反映し先発だけでなくリリーフでも起用された。2018年は不調に終わったパク・セウンがシーズン後半に復帰し先発として比較的安定した投球を続け、今後の復活を期待させた。

 

[主なリリーフ投手]

コ・ヒョジュン    75試合 2勝7敗15ホールド 防御率4.76

チン・ミョンホ    60試合 3勝2敗9ホールド  防御率3.92

ソン・スンナク    53試合 4勝3敗9セーブ2ホールド  防御率3.93

パク・シヨン     43試合 1勝1敗4ホールド 防御率4.23

ク・スンミン     41試合 1勝4敗2セーブ6ホールド 防御率6.25

パク・チンヒョン   41試合 2勝1敗5セーブ5ホールド 防御率4.02

キム・ゴングク    37試合 3勝3敗3ホールド 防御率4.46

 リリーフのチーム防御率は4.67で10チーム中9位だった。パク・チンヒョンやク・スンミンなどが抑えをつとめた時期もあったが、これまで抑えを任されてきたソン・スンナクが不振もありチーム最多の9セーブで、10チーム中唯一10セーブ以上の投手がいなかった。質は高くなかったが頭数はそろっていたリリーフ陣の中で、36歳のベテラン左腕コ・ヒョジュンはリーグ最多の75試合に登板し、中継ぎの柱となった。

 

【野手の成績】

打率.250(10位) 本塁打90(7位) 得点578(10位) 盗塁65(10位) 失策114(1位)

捕手:ナ・ジョンドク   104試合 打率.124 3本塁打 13打点 0盗塁

一塁:イ・デホ      135試合   打率.285    16本塁打 88打点 0盗塁

二塁:カン・ロハン    104試合 打率.240 4本塁打 25打点 7盗塁

三塁:ウィルソン     68試合 打率.251 9本塁打 37打点 1盗塁

遊撃:シン・ボンギ      121試合 打率.256 1本塁打    26打点   3盗塁

左翼:チョン・ジュヌ   141試合 打率.301 22本塁打  83打点 13盗塁

中堅:ミン・ビョンホン   101試合 打率.304 9本塁打  43打点 13盗塁

右翼:ソン・アソプ      134試合  打率.285 10本塁打  63打点 13盗塁

指名:チェ・テイン       59試合 打率.251 5本塁打 29打点 0盗塁

控え:アン・ジュンヨル、チョン・フン、コ・スンミン、オ・ユンソク、ホ・イルなど

 投手だけでなく野手の成績も最下位チームらしく打てない、走れない、守れないの三拍子がそろっていた。また数字に残らないミスも多くロッテのギャグ野球としてファンの嘲笑の対象となっていた。チームの要となる捕手で不動のレギュラーと呼べる選手がおらず、2017年シーズンオフにサムソンへ移籍したカン・ミンホの穴が埋まっていないどころかますます広がっていた。

 韓国代表歴のある外野のレギュラー3人は一定の成績を残したが、内野が弱かった。不動の4番打者イ・デホも37歳となり打撃に衰えが見えてきたようだが、それを補う若手の台頭もなかった。その中では27歳のカン・ロハンが自身最多の104試合に出場しようやく一軍に定着した。また外国人選手にも悩まされ、6月から加入したウィルソンは長打力でアスアヘを上回るも及第点とはならなかった。

 

【オフシーズンの動向】

 さすがに15年ぶりの最下位という屈辱はこたえたのか、改革は最下位が濃厚になってきた2019年シーズンが終盤を迎えた9月3日、37歳とまだ若いソン・ミンギュ団長(現場の最高責任者)の就任から始まった。2007年にキアで1年だけプロ選手としての経験はあるが、その後はアメリカ合衆国に渡ってMLB(メジャーリーグベースボール)・シカゴカブスの環太平洋スカウトを務めていた異色の経歴の持ち主である。そして2019年シーズン終了後、かつてLG、ロッテで野手として活躍しキウムの首席コーチを務めていたホ・ムンフェ新監督の就任が発表された。

 打線の強化のため、キアの主力として10年以上活躍しFA(フリーエージェント)となっていた二塁手アン・チホンとの契約は注目を集めた。FAとなっていた主力外野手のチョン・ジュヌとは再契約したが、2020年3月に38歳となるソン・スンナクは現役引退を表明した。また同じくFAとなっているリリーフ左腕のコ・ヒョジュンとは2月7日時点で未契約である。最大の弱点だった捕手に関しては、ハンファとのトレードで先発投手チャン・シファンと若手捕手キム・ヒョヌを出し、控え捕手だったチ・ソンジュンと内野手キム・ジュヒョンを獲得した。

 2019年の外国人選手だったラリー、ダイクソーン、ウィルソンの3名全員と再契約せず、エイドリアン・サンプソン投手、ダン・ストレイリー投手、ディクソン・マチャド内野手と3名の新外国人選手と契約した。

 

 ロッテジャイアンツは本拠地・釜山周辺の野球ファンの支持を受けてきた人気チームではあるが、2001年から2004年の4年連続最下位など低迷していた時期が長くその歴史は勝利の栄光に彩られてきたとは言えない。プロ野球が10球団制となった2015年からはKT、NCの新興球団が最下位となってきたが、1982年のプロ野球創設からその名前を一度も変えていないロッテジャイアンツが10位に転落したことは、プロ野球界のターニングポイントとなった。そういった新旧の勢力図が変わりつつある中で変革を試みているロッテは再建に成功するのだろうか。サムソン、ハンファなど他の低迷を続ける球団とともに注目される。

 

(文責:ふるりん