DAILY KOREAN PRO BASEBALL 2

1982年に発足し、2024年時点で10球団が加盟する韓国野球委員会(KBO)による韓国のプロ野球リーグ(通称KBOリーグ)に関するブログ。レギュラーシーズン、ポストシーズン(韓国シリーズなど)の試合速報や球団別の情報、現役プロ選手が含まれる野球韓国代表が出場する国際大会の情報などもお伝えします。 twitter : @kbodigest

2020年シーズン回顧 第3回 KTウィズ

6年目のポストシーズン初進出

2020年シーズン成績 

レギュラーシーズン:81勝62敗1分(勝率.566)2位

ポストシーズンプレーオフ敗退

 

 2015年にプロ野球10番目の球団として一軍へ本格参入し、2019年に初めてポストシーズン進出をかけてNCと争うも敗れ6位に終わったKTウィズ。カン・ベッコなど新人ドラフトで指名した生え抜きの選手たちが主力として成長、他球団から移籍してきたベテラン選手たちと融合し選手層が厚くなり、上位進出が狙えるようになってきた。初のポストシーズン進出が期待された2020年シーズンの開幕前、最大の注目は高卒新人ソ・ヒョンジュンだった。国際大会において高校生・大学生主体の韓国代表で活躍し、即戦力として期待されていた。

 3月の示範競技が中止となり、例年より1ヵ月以上遅かった5月5日のレギュラーシーズン開幕戦は球団史上初めて本拠地・水原で開催されたロッテ戦だった。しかし7日までの同一カード3連敗を喫し出だしで躓いた。5月8日のトゥサン戦で期待の新人ソ・ヒョンジュンが5回2失点でプロ初勝利を記録するも、10日のトゥサン戦から14日のNC戦まで4連敗と足踏みが続いた。だが5月15日のサムソン戦から20日のハンファ戦まで5連勝と持ち直した。ソ・ヒョンジュンは5月だけで3勝を記録するも打線の援護に恵まれた試合が多かった。

 6月4日のトゥサン戦から10日のキア戦まで5連敗とまたもや沈み、11勝21敗と大きく負け越していた。シーズン当初抑えを任せていたイ・デウン(元千葉ロッテ)が不振で一軍から外れ、代役としてキム・ジェユンを指名したところ安定感が生まれ、少しずつ勝率が5割に近づいた。7月11日のサムソン戦に勝利し開幕から58試合目でようやく勝率5割に達した。この時はまだ7位と上位は遠かったが、韓国4年目の外国人選手ロハスが好調を維持し、また韓国1年目の外国人選手デスパイネも韓国に慣れるなど、投打ともに戦力がそろってきた。

 8月4日のキウム戦まで6連勝でキアと同率5位に浮上、シーズン後半の混戦の上位争いに加わった。8月13日には出場機会の減っていた内野手オ・テゴンをトレードに出し、SKから控え捕手イ・ホングを獲得した。7月まで独走していた首位NCに陰りが見え、KTは下位に終わっていた2019年までとは違い、し烈な上位争いの渦中に巻き込まれた。9月1日のロッテ戦から6日のキウム戦まで6連勝し、4位に浮上した。

 9月18日のトゥサン戦はペ・ジョンデの本塁打でサヨナラ勝ちしLGと同率3位に並び、20日のSK戦で5連勝となり単独3位に浮上した。ペ・ジョンデは9月27日のLG戦でもサヨナラタイムリーを打ち、1ヶ月で3度のサヨナラ打点のプロ野球新記録でチームの勢いの象徴となった。打率、本塁打、打点の三冠王の可能性も見えていたロハス、21歳の若き4番打者カン・ベッコを軸とした打線と、プロに慣れてきた新人ソ・ヒョンジュン、デスパイネ、クエバスの両外国人選手を中心とした先発陣、そして層の厚くなったリリーフ陣がかみ合って混戦の上位争いに踏みとどまった。

 9月30日のサムソン戦で3連勝、ついに2位にまで浮上した。首位NCの独走で優勝は厳しくなるもキウム、LG、トゥサンなどと空前の混戦となった2位争いを繰り広げた。そして10月22日のトゥサン戦で17-5と大勝し、レギュラーシーズン5位以上が確定、2015年の一軍参入から6年目にしてようやくポストシーズン初進出を決めた。NCがレギュラーシーズン優勝と韓国シリーズ出場を決めた一方、KTは10月27日のキア戦まで4連勝、29日のハンファ戦で勝利しLGを抜いて2位に浮上した。レギュラーシーズン最終戦となった10月30日のハンファ戦は敗れるもLGも敗れたため勝率.566の2位が確定、ポストシーズンプレーオフからの出場で初の韓国シリーズ進出を目指すことになった。KTとしてはチーム新記録となるシーズン81勝の最高の結果を残したが、同率3位で勝率.564のトゥサン、LGとは0.5ゲーム差と実力差はないに等しかった。

 そうなると、ポストシーズンの大舞台で勝敗を分けるのは経験値ということになる。寒冷な気候のため本拠地の水原ではなく中立地の高尺スカイドームで開催となった11月9日からのプレーオフは、2019年まで5年連続韓国シリーズ進出、うち3度の優勝と経験豊富なトゥサンが相手だった。第1戦は8回を終えて2-2の同点と緊迫した展開だったが、9回表に25歳でポストシーズン初出場の中継ぎ左腕チョ・ヒョヌが勝ち越し点を与え2-3で敗れた。翌11月10日の第2戦は打線が沈黙し1-4で敗れるともう後がなくなった。

 1日置いた11月12日の第3戦は7回を終えて0-0とまたも緊迫した展開となり、8回表に39歳のベテランのユ・ハンジュンの先制タイムリーなどで5点をあげ、5-2でポストシーズンでのチーム史上初勝利となった。ところが勝てば第5戦に持ち込める翌13日の第4戦、1回表に先制のチャンスを逃すと打線が沈黙し0-2で敗れてしまい、初のポストシーズンとなったプレーオフは1勝3敗で敗退した。レギュラーシーズン終盤の勢いを維持できず、まだ歴史の浅いチームにとって今後の糧となったことを信じるしかない結果となった。

 

【投手の成績】

防御率4.54(4位) 奪三振848(10位) 被本塁打118(9位) 与四球523(6位)

[主な先発投手]

デスパイネ     34試合 15勝8敗 防御率4.33

エバス      27試合 10勝8敗 防御率4.10

ペ・ジェソン    26試合 10勝7敗 防御率3.95

ソ・ヒョンジュン  27試合  13勝6敗  防御率3.86

キム・ミンス      33試合  3勝8敗 防御率6.10

 先発の防御率4.48は10チーム中7位と抜きん出ていたわけではない。リーグ最多の投球回数(207回と3分の2)を記録したデスパイネがチーム最多勝で、韓国2年目の外国人選手クエバス、まだ24歳と比較的若い右腕ペ・ジェソンが2年連続10勝以上と安定した成績を残した。開幕前から注目されていた高卒新人ソ・ヒョンジュンは13勝をあげ文句なしの新人王を受賞した。特にシーズン後半の8月以降で9勝を記録したのはチームのポストシーズン初進出に大きく貢献した。チーム史上初となる10勝以上の投手を4人出すも、先発5番手以降に人材を欠いた。

 

[主なリリーフ投手]

チュ・グォン     77試合 6勝2敗2セーブ31ホールド 防御率2.70

ユ・ウォンサン    62試合 2勝1敗2セーブ9ホールド  防御率3.80

キム・ジェユン    56試合 5勝3敗21セーブ   防御率3.26

チョ・ヒョヌ     54試合 5勝1敗1セーブ9ホールド 防御率3.09

イ・ボグン      49試合 3勝1敗6セーブ9ホールド 防御率2.27

チョン・ユス     47試合 5勝4敗2セーブ3ホールド 防御率5.12

ハ・ジュンホ     42試合 0勝3敗5ホールド 防御率6.05

 リリーフの防御率は4.69で10チーム中3位だった。2019年シーズンオフに補強したベテラン選手たちが機能したことで層が厚くなり、抑えのキム・ジェユンはチーム史上初めてシーズン20セーブ以上を記録した。リーグ最多登板(77試合)を記録したチュ・グォンは自身初の個人タイトルである最多ホールドを受賞し、リリーフ陣の柱に成長した。ユ・ウォンサン、イ・ボグンと移籍してきた経験豊富な30代のベテランが機能したのも大きかった。不足していた左腕のリリーフにはチョ・ヒョヌと、外野手から投手に転向したハ・ジュンホが定着した。

 

【野手の成績】

打率.284(3位) 本塁打163(2位) 得点813(3位) 盗塁106(3位) 失策102(2位)

捕手:チャン・ソンウ   130試合 打率.278 13本塁打 79打点 0盗塁

一塁:カン・ベッコ    129試合   打率.330 23本塁打 89打点 7盗塁

二塁:パク・キョンス   119試合 打率.281 13本塁打 59打点 0盗塁

三塁:ファン・ジェギュン 134試合 打率.312 21本塁打 97打点 11盗塁

遊撃:シム・ウジュン      144試合 打率.235 3本塁打    51打点   35盗塁

左翼:チョ・ヨンホ    132試合 打率.296 0本塁打  32打点 12盗塁

中堅:ペ・ジョンデ    144試合 打率.289 13本塁打  65打点 22盗塁

右翼:ロハス       142試合 打率.349 47本塁打  135打点 0盗塁

指名:ユ・ハンジュン   119試合 打率.280 11本塁打 59打点 3盗塁

控え:ホ・ドファン、ムン・サンチョル、パク・スンウク、カン・ミングク、キム・ミンヒョクなど

 リーグ屈指の攻撃力となった打線の中心は本塁打王打点王のみならずシーズンMVPを受賞したロハスだった。プロ3年目で外野手から一塁手へ転向し4番打者となったカン・ベッコはさらに安定感を増した。ファン・ジェギュン、パク・キョンス、ユ・ハンジュンなどのベテラン勢も健在で、カン・ベッコと同じく生え抜きの25歳のシム・ウジュンが自身初の個人タイトルである盗塁王を受賞した。また4度のサヨナラ打点を記録した25歳のペ・ジョンデは外野のレギュラーに定着し、チームの躍進の象徴となっていた。

 

【オフシーズンの動向】

 なんといっても韓国4年目で最高の成績を残したロハスの去就に注目が集まったが、結局KTと再契約せず日本プロ野球阪神へ移籍した。そこでやむを得ず代役の新外国人選手としてソイロ・アルモンテ外野手(元中日)と契約した。デスパイネ、クエバスの2名とは再契約した。

 FA(フリーエージェント)となった選手がいなかったため、ロハスの移籍以外はあまり注目を集めなかったが、若手のチェ・ゴン投手と2021年に予定されている2022年新人ドラフトの指名権1名を交換条件に、ロッテからリリーフで実績のあるパク・シヨン投手と三塁やショートを守れるシン・ボンギ内野手の2名を獲得し弱点を補強した。またハンファから自由契約となった36歳のベテラン、アン・ヨンミョン投手と契約した。

 

 ロハスの流出という大きな痛手があったが、2013年の球団創設による特例、2015年から2017年まで3年連続で最下位だったことで新人ドラフトの指名順位が早く、有望な選手を集めやすく徐々に生え抜きの選手たちが開花したKTウィズは、レギュラーシーズン2位という結果を土台に2021年シーズンは堂々と初優勝を目指すと思われる。KTを率いて3年目となるイ・ガンチョル監督は2020年プレーオフの苦い経験をどう生かすか、さらに熾烈となる他チームとの競争にいかにして勝利するか、その手腕が大いに注目される。

 

(文責:ふるりん