DAILY KOREAN PRO BASEBALL 2

1982年に発足し、2024年時点で10球団が加盟する韓国野球委員会(KBO)による韓国のプロ野球リーグ(通称KBOリーグ)に関するブログ。レギュラーシーズン、ポストシーズン(韓国シリーズなど)の試合速報や球団別の情報、現役プロ選手が含まれる野球韓国代表が出場する国際大会の情報などもお伝えします。 twitter : @kbodigest

2022年シーズン回顧 第8回 ロッテジャイアンツ

大打者のラストシーズンではあったが…

2022年シーズン成績 

レギュラーシーズン:64勝76敗4分(勝率.457)8位

ポストシーズン:出場せず

 

 2017年を最後にポストシーズンへ進出せず、下位に低迷し続けるロッテジャイアンツ。2021年シーズン途中で就任した外国人のサットン監督のもと8位からの巻き返しを図ったが、10年以上主力野手として活躍していたソン・アソプがNCへ移籍し不安が大きかった。しかし2年契約が切れ2022年シーズン限りでの現役引退を表明していたロッテ史上最高の大打者イ・デホ(元福岡ソフトバンク)のラストシーズンという特別な1年となることには変わりがなかった。

 4月2日のレギュラーシーズン開幕戦のキウムヒーローズ戦では新外国人選手バーンズの好投で勝利した。韓国人の先発の柱として期待されたパク・セウン、イ・デホ引退後に中心打者としての活躍が期待されるハン・ドンヒィが好調で、40歳が近いイ・デホは衰えを知らない打撃で勝利に貢献し続けた。開幕前に故障した抑えのキム・ウォンジュンの不在は21歳の若手チェ・ジュニョンが埋め、序盤は快調で5月1日のLGツインス戦まで4連勝となり、首位SSGに次ぎ2位につけていた。

 しかし5月3日以降は負けが込み始め、5月24日のSSGランダース戦から5月29日のキウムヒーローズ戦まで6連敗で、勝率5割を下回り7位にまで後退した。6月になりさらに8位へと下がり、イ・デホは健在ながらも選手層の薄さは隠しきれず浮上のきっかけはつかめなかった。しばらくはサムソン、トゥサンとの6~8位争いが続き、7月14日のハンファイーグルス戦まで4連勝し6位に浮上した。

 7月15日のオールスター戦前夜祭のホームラン競争ではイ・デホが優勝し、翌7月16日のオールスター戦の途中でイ・デホの引退セレモニーが行われた。しかしイ・デホの現役生活はこれで終わりではなく、オールスター戦後は2017年のイ・スンヨプと同じく韓国野球委員会KBO)公認の引退ツアーとして遠征先での最後の試合では必ずセレモニーが開催された。オールスター戦による中断期間の間には12本塁打と長打力はあったが確実性に欠けた外国人選手ピータースがウェーバー公示され、代役としてレックスと契約した。

 しかしレギュラーシーズン再開後の7月22日のキアタイガーズ戦から7月29日のサムソンライオンズ戦まで7連敗となってしまい7位に後退、優勝争いからは遠ざかった。特に7月23日のキア戦ではプロ野球史上最多の点差となる0-23で大敗してしまった。この試合で先発した外国人選手スパークマン(元オリックス)は結果を残せなかったため7月31日にウェーバー公示され、代役として8月2日に2021年まで活躍していた外国人選手ストレイリーと契約した。ストレイリーの韓国復帰後初登板となった8月10日のキウム戦から調子を上げ始め、8月18日のKTウィズ戦でストレイリーが韓国復帰後初勝利をあげ、ロッテも6位に浮上した。

 8月24日のNC戦ではバーンズの11勝目、イ・デホ本塁打などで勝利し3連勝で5位キアとの差がだいぶ縮まってきた。しかし9月9日のサムソン戦に敗れNCに抜かれ7位に後退すると、翌9月10日と11日のNCとの直接対決で敗れ苦しくなった。7位ロッテは8位サムソンと比べ消化試合が多かった。キアが連敗で勝率を下げる中9月22日のLG戦まで3連勝とし、5位以上が進出できる5年ぶりのポストシーズン出場の可能性が少し高まった。だが9月29日にはサムソンに並ばれ同率7位となった。

 結局10月3日のトゥサン戦でイ・デホが現役最後の本塁打など3打点と活躍したにも関わらず敗れたことで単独8位に後退、5位以上の可能性が消滅し5年連続ポストシーズン進出失敗が確定した。試合のなかった10月7日に8位が確定し、10月8日の最終戦イ・デホ引退試合として盛大に送り出すことになった。

 10月8日、釜山・社稷野球場のLG戦は超満員の観客で埋め尽くされ、イ・デホは4番一塁で先発出場、他のロッテの選手たちは全員イ・デホの背番号10のユニフォームを着て出場した。イ・デホは1回裏の第1打席でいきなり二塁打と球場内を沸かせ、これが現役最後の安打かつ打点となった。7回裏にコ・スンミンのタイムリーで1点を勝ち越すと、8回表にイ・デホがプロ初登板を果たしマウンドに上がり、LGからは代打として投手のコ・ウソクが出場、1アウトを取って投手交代となり再び一塁の守備に就き9回表まで出場した。このままロッテが3-2で勝利しイ・デホの最後の試合を祝った。試合終了後にはプロ野球史上唯一の2度の打撃三冠王首位打者本塁打・打点)となったイ・デホの引退セレモニー、背番号10の永久欠番指定セレモニーが盛大に行われ、2001年から国内外での22年間の選手生活に幕を閉じ、ロッテジャイアンツの2022年シーズンも終了した。

 イ・デホのラストシーズンにもかかわらず、2020年、2021年の2年間で無観客試合が多く終盤まで優勝争いに加わらなかったせいか、2022年、ロッテの主催試合の観客動員数は63万1656名(1試合平均8773名)と10球団中5位にとどまり、過去の熱狂とは程遠い寂しい雰囲気だった。

 

【投手の成績】

防御率4.47(9位) 奪三振1199(1位) 被本塁打84(10位) 与四球492(5位)

[主な先発投手]

バーンズ      31試合 12勝12敗 防御率3,62

パク・セウン    28試合 10勝11敗 防御率3.78

イ・インボク      23試合  9勝9敗  防御率4.19

ナ・ギュナン    13試合 3勝8敗2ホールド 防御率3.98

ストレイリー    11試合 4勝2敗 防御率2.31

 先発投手の防御率は4.20で10チーム中7位だった。左腕の外国人選手バーンズはチーム最多の12勝で先発の軸となった。他の外国人選手スパークマンは7月まで2勝、防御率5.31と結果を残せず自由契約選手となり、代役のストレイリーは2020年に最多奪三振の個人タイトルを受賞し15勝を記録した際の球威が戻ったかのような内容だった。韓国人選手では右腕パク・セウンが2年連続10勝以上を記録、2021年途中から先発に転向した右腕イ・インボクも自身最多の9勝を記録した。捕手から転向したナ・ギュナンも先発5番手を務めた。

 

[主なリリーフ投手]

ク・スンミン     73試合 2勝4敗25ホールド 防御率2.90

チェ・ジュニョン   68試合 3勝4敗14セーブ6ホールド 防御率2.85

キム・ユヨン     68試合 5勝2敗13ホールド  防御率5.65

キム・ドギュ     55試合 4勝4敗3ホールド 防御率3.71

キム・ウォンジュン  43試合 2勝3敗16セーブ2ホールド 防御率3.98

ムン・ギョンチャン  38試合 1勝2敗1ホールド 防御率5.80

ソ・ジュヌォン    33試合 3勝3敗2ホールド 防御率4.80

 リリーフの防御率は4.86で10チーム中最下位だった。リリーフの柱は中継ぎの右腕ク・スンミンだった。抑えは6月中旬まで21歳のチェ・ジュニョンが、復帰後はキム・ウォンジュンが務めた。手薄だった左のリリーフはキム・ユヨンが一手に引き受けた。

 

【野手の成績】

打率.267(4位) 本塁打106(5位) 得点605(8位) 盗塁61(10位) 失策116(6位)

捕手:チ・シワン     75試合 打率.213 3本塁打 17打点 0盗塁

一塁:チョン・フン    91試合   打率.245  3本塁打 32打点 4盗塁

二塁:アン・チホン    132試合 打率.284 14本塁打 58打点 7盗塁

三塁:ハン・ドンヒィ   129試合 打率.307 14本塁打 65打点 0盗塁

遊撃:パク・スンウク      100試合 打率.227 1本塁打    16打点   8盗塁

左翼:チョン・ジュヌ    120試合 打率.304 11本塁打  68打点 6盗塁

中堅:レックス       56試合 打率.330 8本塁打  34打点 3盗塁

右翼:コ・スンミン     92試合  打率.316 5本塁打  30打点 1盗塁

指名:イ・デホ          143試合 打率.331 23本塁打 101打点 0盗塁

控え:アン・ジュンヨル、チョン・ボグン、キム・ミンス、イ・ハクチュ、イ・ホヨン、ファン・ソンビン、シン・ヨンスなど

 ラストシーズンだったが衰えを知らなかった40歳のイ・デホが依然として打線の中核を担った。ほかにもチョン・ジュヌ、アン・チホンなど30代のベテラン選手が活躍した。主力打者として活躍した23歳のハン・ドンヒィにはさらなる成長が期待される。ほかの次代の主力選手として外野手の22歳のコ・スンミン、25歳のファン・ソンビンが台頭した。

 自由契約となった外国人選手ピータースの代役だったレックスは確実性の高い打撃でチームに貢献した。イ・デホという絶対的な軸はありながらも捕手、遊撃手のレギュラーが定められず、野手の層は薄く攻撃力不足に苦しんだ。

 

【オフシーズンの動向】

 2年連続8位という順位とイ・デホが去った危機感からか補強には積極的だった。LGからユ・ガンナム捕手、キウムからハン・ヒョンヒィ投手、NCからノ・ジンヒョク内野手と3名のFA(フリーエージェント)選手と契約し弱点を見事に補強した。補償選手としてLGからはリリーフ左腕のキム・ユヨン投手、キウムからは若手右腕のイ・ガンジュン投手、NCからは控えのアン・ジュンヨル捕手が指名された。ストレイリー、バーンズ、レイリーの3名の外国人選手とも再契約した。

 一方、ロッテからFAとなったリリーフ左腕のカン・リホ(カン・ユングから改名)投手は2月8日時点でどの球団とも未契約である。またLGから自由契約となったチャ・ウチャン、ハンファから自由契約となったシン・ジョンナクなどの投手、トゥサンから自由契約となったアン・グォンス外野手などと契約した。

 2023 WBCワールドベースボールクラシック)韓国代表にはパク・セウン、キム・ウォンジュンの投手2名が選ばれた。

 

 イ・デホが去りロッテジャイアンツにとって一つの時代が終わった。2023年はサットン監督にとって契約最終年であり、6年ぶりのポストシーズン進出という結果は最低限であると思われる。幸いFA選手3名の戦力補強には成功したが、さらなる世代交代の推進がチームの強化に必要である。1992年の最後の韓国シリーズ優勝から30年以上が過ぎ、最後に韓国シリーズへ進出したのも1999年と遠い過去の話となった。永久欠番となったイ・デホが出場できなかった韓国シリーズ進出を後輩たちが成し遂げられるか注目したい。

 

(文責:ふるりん