DAILY KOREAN PRO BASEBALL 2

1982年に発足し、2024年時点で10球団が加盟する韓国野球委員会(KBO)による韓国のプロ野球リーグ(通称KBOリーグ)に関するブログ。レギュラーシーズン、ポストシーズン(韓国シリーズなど)の試合速報や球団別の情報、現役プロ選手が含まれる野球韓国代表が出場する国際大会の情報などもお伝えします。 twitter : @kbodigest

2021年シーズン回顧 第9回 キアタイガーズ

史上最低の9位という現実

2021年シーズン成績 

レギュラーシーズン:58勝76敗10分け(勝率.433)9位

ポストシーズン:出場せず

 2020年は6位に終わるもこれといった補強がなく、先発投手陣の柱として活躍していたヤン・ヒョンジョンがMLBテキサスレンジャースへ移籍した2021年シーズンは苦戦が予想された。そういった中でヤン・ヒョンジョンの後継者として高卒新人の左腕イ・ウィリが注目された。2年目の指揮を執る外国人監督マット・ウィリアムスも韓国に慣れて本領を発揮するかに思えたが、現実は予想以上に厳しかった。

 4月4日の開幕戦のトゥサン戦には敗れたが、4月6日のキウム戦で延長11回表に勝ち越しシーズン初勝利をあげ、この時のチャン・ヒョンシクとチョン・ヘヨンの継投が必勝リレーとして定着していくことになる。4月20日のLG戦で37歳のチェ・ヒョンウが個人通算2000安打を達成した。4月28日のハンファ戦で先発イ・ウィリが6回を無失点に抑えプロ初勝利を記録するなど、序盤は比較的順調だった。

 しかし5月になるとチェ・ヒョンウ、外国人選手タッカーなど主力の故障や不振で勝てなくなり、5月下旬にはハンファ、ロッテとの最下位争いとなっていた。6月になっても勝率は4割台前半と低いままで、投打ともに戦力不足は明らかで上位との差は開く一方だった。そして6月20日、4連敗でロッテに抜かれ最下位に転落した。6月23日にはハンファを抜いて9位に浮上するも、この後7月1日までまたもや5連敗と最下位争いから抜け出せなかった。

 7月3日、最下位ハンファとのトレードで内野手カン・ギョンハクを獲得し補強に務めた。その頃から状態が上向き、7月11日まで6連勝となり勝率を4割台に戻し、1年延期された2020年東京オリンピック野球などによる中断期間に入った。オリンピック野球に韓国代表として出場したイ・ウィリは2試合に先発し、勝利には貢献できなかったが10回で18奪三振を記録し才能の片鱗を見せつけた。

 8月9日、2020年より契約していた外国人選手ブルックス大麻成分を含んだ物品の密輸入が発覚、任意脱退選手となり離脱した。翌8月10日よりレギュラーシーズンが再開され、8月13日まで引き分け1つを挟み8連勝でロッテとゲーム差なしの8位に並び、ロッテとの8位争いが続いたが浮上できなかった。8月26日、新外国人選手としてまだ24歳と若かったタカハシと契約したが、5位以上のポストシーズン進出が厳しくなったため2022年以降の戦力としてのテストの意味合いが強かった。

 雨天などによる試合中止が多かったため、9月以降はダブルヘッダーもある厳しい日程となり、選手層の薄いキアには酷で勝率が再び下がっていった。8位ロッテは勝率4割台後半を維持し5位以内も射程圏内に入ったが、9位キアは勝率3割台と最下位ハンファがすぐそこにまで近づいてきた。その後ハンファとの差が再び広がっていったが、5位以内の可能性は限りなく小さくなり育成モードへと転換した。

 10月20日のKT戦でチョン・ヘヨンが20歳の選手としてプロ野球シーズン初となる30セーブを記録した。10月22日のNC戦でチャン・ヒョンシクが34ホールド目を記録、残り試合の関係で最多セーブの個人タイトルが確定するなどリリーフ陣が結果を残した。結局10月30日のレギュラーシーズン最終戦のキウム戦で敗れ、チーム史上最低順位となる9位(8球団制だった2005年、2007年に8位の最下位あり)で2021年シーズンを終えた。その2日後の11月1日、ウィリアムス監督は契約期間を1年残して契約解除となり退任した。

 

【投手の成績】

防御率4.91(9位) 奪三振951(9位) 被本塁打134(2位) 与四球622(4位)

[主な先発投手]

イム・ギヨン    28試合 8勝8敗 防御率4.88

メンデン      21試合 8勝3敗 防御率3.60

イ・ウィリ        19試合 4勝5敗  防御率3.61

ユン・ジュンヒョン 30試合 5勝6敗2ホールド 防御率3.92

イ・ミヌ      16試合 1勝6敗 防御率8.05

タカハシ      7試合 1勝3敗 防御率4.91

 先発投手のチーム防御率(5.04)は10チーム中8位だった。シーズンを通してローテーションを守ったのは右サイドハンドのイム・ギヨンのみだった。韓国1年目だったメンデンは一時離脱したのが惜しまれる。2020年は11勝を記録したブルックスが2021年は3勝のみで不祥事により任意脱退選手となったのが響いた。代役となったタカハシは9月後半からの登板と機会は限られたが先発で1勝のみと結果を残せなかった。

 開幕前から話題となっていた高卒新人イ・ウィリは4勝止まりだったが、2020年東京オリンピック野球韓国代表での好投による話題性で新人王を受賞した。しかし9月後半以降は登板しなかったため、2022年以降はシーズンを通しての登板と活躍が求められる。

 

[主なリリーフ投手]

チャン・ヒョンシク  69試合 1勝5敗1セーブ34ホールド 防御率3.29

チョン・ヘヨン    64試合 5勝4敗34セーブ 防御率2.20

パク・チンテ     59試合 3勝3敗9セーブ 防御率5.95

イ・ジュニョン    50試合 3勝2敗1セーブ9ホールド 防御率5.55

ホン・サンサム    49試合 4勝1敗12ホールド 防御率4.75

パク・チュンピョ   32試合 2勝4敗4ホールド  防御率5.91

 リリーフのチーム防御率(4.76)は10チーム中6位だった。20歳にしてプロ野球史上最多の34セーブを記録したチョン・ヘヨン、34ホールドで最多ホールドの個人タイトルを受賞したチャン・ヒョンシクがリリーフの中心となった。最下位を免れたのはリーグ有数の必勝リレーだった2人の活躍によるところが大きい。だがその他のリリーフはさほど質が高くなく、イ・ジュニョン以外の左腕が少なかった。

 

【野手の成績】

打率.248(9位) 本塁打66(10位) 得点568(10位) 盗塁73(9位) 失策110(5位)

捕手:キム・ミンシク   100試合 打率.220 3本塁打 26打点 0盗塁

一塁:ファン・デイン   126試合   打率.238 13本塁打 45打点 0盗塁

二塁:キム・ソンビン   130試合 打率.307 5本塁打 67打点 0盗塁

三塁:キム・テジン    99試合 打率.276 1本塁打 36打点 8盗塁

遊撃:パク・チャンホ      131試合 打率.246 1本塁打    59打点   9盗塁

左翼:タッカー      127試合 打率.237 9本塁打  59打点 0盗塁

中堅:イ・チャンジン   105試合 打率.209 3本塁打  33打点 5盗塁

右翼:チェ・ウォンジュン 143試合 打率.295 4本塁打  44打点 40盗塁

指名:チェ・ヒョンウ   104試合 打率.233 12本塁打  55打点 0盗塁

控え:ハン・スンテク、イ・ジョンフン、ユ・ミンサン、リュ・ジヒョク、キム・ホリョン、ナ・ジワンなど

 攻撃に関しては投手陣以上に悲惨な数値が並んだ。2020年は打率.354で首位打者だったチェ・ヒョンウは故障もあったが38歳という年齢による衰えが顕著で大幅に成績が低下した。また2020年は32本塁打、113打点を記録した外国人選手タッカーも不振が続き、この2名の代わりとなる若手選手も台頭しなかった。25歳のファン・デインがチーム最多、自身最多の13本塁打を記録したが他チームの主力選手と比べて見劣りした。

 特に目覚ましい活躍を遂げたのは24歳のチェ・ウォンジュンで、俊足好打の1番打者としてリーグ有数の成績を残した。そのほかにはリュ・ジヒョクが内野のユーティリティープレイヤーとしてチームの危機を救ったことも少なからずあった。

 

【オフシーズンの動向】

  ウィリアムス監督に代わる新監督としては、前身のヘテタイガーズ時代から二塁手として活躍し、現役引退後はコーチとしてキアを支えてきたキム・ジョングク監督が就任した。過去に11回の韓国シリーズ優勝と輝かしい歴史を誇るチームとしてはあまりにも悲惨な成績だったため、本拠地・光州出身でNCの主力打者として活躍し2022年のFA選手となった32歳のナ・ソンボムと契約期間6年、最大総額150億ウォンで契約した。ナ・ソンボムの補償選手としてリリーフ左腕のハ・ジュニョンがNCへ移籍した。背景としてはチェ・ウォンジュンが兵役のため軍へ入隊し、外野が手薄になったことがあげられる。

 2021年の外国人選手3名のタッカー、メンデン、タカハシ(日本プロ野球埼玉西武と契約)とは全員再契約せず、新外国人選手としてソクラテスブリトー外野手、ロニー・ウィリアムス投手、ショーン・ノリン投手(元埼玉西武)と契約し刷新を図った。

 そしてファンを最も喜ばせたのは、2020年まで左の先発の柱として活躍し個人通算147勝を記録した33歳のヤン・ヒョンジョンの復帰だった。MLBでは未勝利に終わったが、過去の実績で低迷するチームの救世主として期待を寄せられている。

 

 チームの再建のため初の外国人監督としてMLBでの監督経験があるウィリアムス監督を招聘したが、相次ぐ主力の不振や離脱もあったとはいえ全く結果を出せず2年で韓国を去ることとなり、何もチームには残さなかったと言っていい。複数の主力選手が衰えを見せるなど明らかな過渡期にあったとしても、無駄な歳月を費やしたことになった。こうした中、チームを熟知するキム・ジョングク新監督は就任1年目から様々な難題に立ち向かうことになる。危機感を抱いたフロントがリーグ有数の外野手ナ・ソンボムを補強したり、ファンから大投手として称賛されるヤン・ヒョンジョンを復帰させたりしたが、チームの未来を担う選手の育成が2017年以来となる12度目の韓国シリーズ優勝には欠かせないはずだ。

 

(文責:ふるりん