DAILY KOREAN PRO BASEBALL 2

1982年に発足し、2024年時点で10球団が加盟する韓国野球委員会(KBO)による韓国のプロ野球リーグ(通称KBOリーグ)に関するブログ。レギュラーシーズン、ポストシーズン(韓国シリーズなど)の試合速報や球団別の情報、現役プロ選手が含まれる野球韓国代表が出場する国際大会の情報などもお伝えします。 twitter : @kbodigest

イム・チャンヨン(元東京ヤクルト) 現役引退

 3月11日、イム・チャンヨンは自身が所属するスポーツマネージメント会社を通して現役引退を発表した。

 

 

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2017 WBC韓国代表でのイム・チャンヨン

 イム・チャンヨンは高校卒業後の1995年、出身地の光州(クァンジュ)を本拠地とするヘテタイガーズに入団、プロ1年目から一軍で14試合に登板した。1996年、49試合に登板し一軍初勝利を含む7勝を記録すると、1997年には14勝26セーブと主力投手に成長し、ヘテの韓国シリーズ2連覇(通算9度目の優勝)に貢献した。1998年、34セーブを記録し最優秀救援投手の個人タイトルを受賞するも、当時の不景気によりヘテは経営が苦しくなり、3対1の交換トレード(20億ウォンの金銭も譲渡)によりサムソンライオンズへ移籍した(ヘテは2001年にキアへ身売り)。なお、同年のバンコクアジア競技大会野球の韓国代表に選ばれ、チームの優勝により兵役免除の恩典を受けている。

 1999年には最優秀救援(38セーブ)、最優秀防御率(2.14)の個人タイトル二冠を受賞し、23歳で韓国を代表する投手に成長した。2000年にはシドニーオリンピック野球の韓国代表に選ばれ、3位で銅メダルを授与されるなど国際舞台でも活躍を続けた。2001年以降は先発で活躍し、2002年には自己最多の17勝を記録、サムソンの韓国シリーズ優勝に貢献した。

 2004年には抑えに配置転換され36セーブで最多セーブ(この年より最優秀救援より改称)の個人タイトルを受賞し、オフシーズンに初めてFA(フリーエージェント)となり海外進出を図るも失敗し、サムソンと再契約した。2005年から2007年にかけては低調な成績に終わり、球団の了承を得て2008年より日本プロ野球東京ヤクルトへ移籍した。東京ヤクルトでは抑えとして活躍し、2009 WBC(ワールドベースボールクラシック)の韓国代表にも選ばれ準優勝に貢献した。

 2012年シーズン終了後に東京ヤクルトを退団、2013年にはMLB(メジャーリーグベースボール)・シカゴカブスと契約するも、メジャーリーグでは6試合のみの登板に終わった。2014年シーズン開幕前の3月、古巣のサムソンへ復帰し抑えとして活躍、韓国シリーズ4連覇に貢献した(仁川アジア競技大会野球にも韓国代表として出場)。2015年には33セーブで自身4度目となる最多セーブの個人タイトルを受賞した。

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2015年当時のイム・チャンヨンの投球フォーム

 しかし、2015年レギュラーシーズンで5連覇を達成したが、チームの同僚との海外での不法賭博行為が発覚し、史上初の5連覇をかけた韓国シリーズには出場しなかった。結局この年限りでサムソンを退団し、罰金刑が下された。さらにKBO(韓国野球委員会)によりイム・チャンヨンはレギュラーシーズンの半分の出場停止処分を受けた。

 翌2016年、イム・チャンヨンは17年ぶりに故郷の光州を本拠地とするキアと育成選手として契約した。そして正式契約を結んだあと、レギュラーシーズンの半分に相当する72試合の出場停止処分が解けた7月1日に移籍後一軍で初登板を果たし、この年15セーブを記録し健在を示した。40歳を超えても戦力として機能し、2017年にはシーズン開幕前のWBC(ワールドベースボールクラシック)にも出場しただけでなく、キアでは8勝を記録してヘテ時代から通算して11度目の韓国シリーズ優勝にも貢献した。

 苦しいチームの投手事情もあり、2018年は11年ぶりに先発登板するなど奮闘し、37試合に登板、5勝5敗4セーブ4ホールド、防御率5.42の成績も、42歳という年齢がネックとなったか、シーズン終了後に自由契約となった。2019年シーズンも現役続行を希望するも、本人の納得する契約条件の提示はなかったようで、1995年のヘテ入団以来24年間の現役生活に終止符を打つこととなった。

 韓国でのプロ18年間の通算成績は760試合に登板、130勝86敗258セーブ19ホールド、防御率3.45(セーブ数はプロ野球史上個人通算3位)。現役最後の登板は、2018年10月16日、ポストシーズンワイルドカード決定戦のネクセン戦だった。

 

 今後については、これまでの経験を生かして野球に携わる方向を考えているとのことである。サイドハンドからのうなるような圧倒的な球威で打者をねじ伏せ、「チャンヨン不敗」とも呼ばれた名投手に対しては最大級の賛辞を送り、第二の人生に幸あらんことを願うばかりである。

 

(文責:ふるりん