DAILY KOREAN PRO BASEBALL 2

1982年に発足し、2024年時点で10球団が加盟する韓国野球委員会(KBO)による韓国のプロ野球リーグ(通称KBOリーグ)に関するブログ。レギュラーシーズン、ポストシーズン(韓国シリーズなど)の試合速報や球団別の情報、現役プロ選手が含まれる野球韓国代表が出場する国際大会の情報などもお伝えします。 twitter : @kbodigest

2018年シーズン回顧 第6回 サムソンライオンズ

低迷からの脱出の兆しが

2018年シーズン成績

レギュラーシーズン:68勝72敗4分(勝率.486)6位

ポストシーズン:出場せず

 

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本拠地の大邱サムソンライオンズパーク。2016年に完成しまだ新しさが残る。

 

1.2年連続9位から6位へ浮上

 2011年から2014年までプロ野球史上初のレギュラーシーズン・韓国シリーズの4年連続同時優勝の偉業を成し遂げたサムソンライオンズも、2015年の韓国シリーズでトゥサンベアースに敗れその栄華に終止符が打たれると、2016年と2017年は主力選手の流出や世代交代の遅れもあって2年連続で9位に低迷した。2017年から指揮を執るキム・ハンス監督は2002年、2006年、2007年と3度の韓国シリーズ優勝に貢献したサムソンの主力打者だったが、チームの過渡期の再建という難題に立ち向かっていた。

 2018年シーズン開幕前の大きな話題としては、10年以上ロッテの正捕手として活躍し2度目のFA(フリーエージェント)となっていたカン・ミンホとの4年契約で、まさかの低迷からの脱出を図ろうとしているチームの積極的な姿勢が見えた。レギュラーシーズンが3月24日に開幕しまだ間もない3月28日のキア戦で、開幕前の海外キャンプから期待されていたまだ18歳の高卒新人ヤン・チャンソプが一軍初登板初先発で6回を無失点に抑えプロ初勝利を記録するなど、新たな息吹がチームに芽生えていた。

 しかしそのヤン・チャンソプもその後勝てず二軍へ降格し、開幕から1ヶ月余りが過ぎた4月25日には最下位に転落し、過去2年と同じく上位をうかがうことなくシーズンを過ごすことになるのかと先行きが暗く見えてしまった。韓国シリーズ4連覇など過去の栄光を支えた大打者イ・スンヨプ(元オリックス)が2017年で引退し、その穴を埋める精神的支柱が不在となっていたかのようだった。

 5月になると新戦力のカン・ミンホが好調となりチームも徐々に調子を上げ、5月20日には不振に陥ったNCを抜いて9位に浮上、混戦の中位争いに加わった。6月3日までにシーズン最多の5連勝で勝率を.475にまで上げ6位にまで浮上した。しかし6月半ばを過ぎると投手陣の不調で8位に後退した。6月22日のトゥサン戦ではキム・ホンゴンの6打点などの活躍で16得点を記録したが、投手陣の不調で14失点で薄氷の勝利となった試合がチーム状況をよく表していた。

 7月7日までの7連敗で勝率は.417まで大きく落ち込み、依然8位ながらKT、NCとの最下位争いに加わりそうになっていた。だが7月12日まで4連勝し7位に浮上し、一軍に復帰したヤン・チャンソプが先発として安定した投球を見せ始めるなど7月後半は勢いに乗っていた。そして7月29日は勝率を.480にまで上げて5位に浮上し、2015年以来3年ぶりのポストシーズン進出も見えてきた。

 8月になりネクセンに抜かれ6位に後退したが、チームには過去2年になかった希望と熱気が満ち溢れていった。8月17日から9月3日までジャカルタパレンバンアジア競技大会のためレギュラーシーズンは中断されたが、サムソンから韓国代表に選ばれ、リリーフとして活躍した21歳の右腕チェ・チュンヨンと、3年連続最多盗塁(2015~2017年)の外野手パク・ヘミンが3連覇に貢献し、兵役免除の恩典を受けることができた。

 9月4日に再開されたレギュラーシーズンの終盤戦ではキア、LGなどとの熾烈な5位争いが続いた。9月16日、キアに抜かれ7位に後退したが、9月28日のKT戦でイ・ウォンソクの本塁打で同点に追いつき延長12回の引き分けに持ち込むと、不調のLGに代わって6位に浮上した。

 試合消化ペースが速かったため10月は残り4試合だけと余裕のある日程で、10月3日のキア戦でシーズン最多の20得点でキアに大勝し5位進出に望みを残した。レギュラーシーズン最終戦となった10月13日のネクセン戦は、4番打者ラフの3本塁打などで12-5と勝利し、2018年は6位と惜しくもポストシーズン進出を逃したが、過去2年の9位という低迷からは脱出することができたといっていい。なお、5位でポストシーズンに進出したキアとはゲーム差なしで勝率はわずかに.0004下回っていただけだったきわどい争いだった。

 

 

2.チーム分析

 チーム防御率5.22はリーグ5位で、先発の防御率5.61はリーグ8位と弱かった。

 チーム内に10勝以上を記録した選手はなく、チーム最多勝は外国人選手のエーデルマンの8勝だった。規定投球回数(144回)に達したのはエーデルマンとボニーヤ(7勝)の外国人選手2人のみで、シーズンを通して勝ち星が計算できる韓国人の信頼できる先発投手が足りなかった。韓国人では31歳にして自身最多の125回と3分の1に登板した左腕ペク・チョンヒョン、高卒新人ながら先発として結果を残したヤン・チャンソプの7勝が最多だった。韓国シリーズ4連覇を支えた37歳のユン・ソンファンは5勝、35歳のチャン・ウォンサムは3勝と不調に終わった。

 心もとない先発陣と比べ、リリーフのチーム防御率4.66はリーグ2位と機能していた。絶対的な信頼を受ける守護神と呼べる抑えはいなかったが、チーム最多のセーブ数のシム・チャンミン(17セーブ5ホールド)が軸となった。またチーム最多の70試合に登板したチェ・チュンヨン(8セーブ16ホールド)、チャン・ピルジュン(6セーブ13ホールド)が中継ぎに抑えに活躍した。

 また先発として期待されながらも故障で開幕に間に合わなかったアンダースロー右腕のウ・ギュミン、38歳のベテランのサイドハンド右腕クォン・オジュンも中継ぎとして貴重な働きを見せた。左のワンポイントとしては主にイム・ヒョンジュンが起用されるなど、リリーフの層は比較的厚かった。年下のヤン・チャンソプに刺激を受けたか、23歳の大卒新人の左腕チェ・チェフンが主にリリーフで4勝を記録し今後に期待を抱かせた。

 

 チーム総得点776はリーグ7位、チーム打率.288はリーグ6位、チーム本塁打数146はリーグ9位とあまり強力な打線ではなかった。

 打線の軸となったのは2018年も前年と同じく4番を任された外国人選手ラフで、33本塁打・125打点はともにチーム最多だった。FAで移籍し期待されたカン・ミンホは22本塁打と打線の強化には貢献した。そのほかク・ジャウク、イ・ウォンソクがともに20本塁打と結果を残した。

 1番打者としてチームを引っ張ったのはレギュラーシーズン全144試合に出場し4年連続盗塁王(36盗塁)となったパク・ヘミンで、チーム盗塁数116はリーグ2位で長打力不足を補っていた。30歳を目前にして自身最多の11本塁打・22盗塁の成績を残したキム・ホンゴンは走攻守ともに不可欠な存在となった。そのほか過去2年は不調だったショートのレギュラーのキム・サンスが122試合に出場と復調し、39歳のベテラン外野手パク・ハニはシーズン後半に出番を増やし10本塁打を記録して健在をアピールした。若手ではチームに不足していた左打ちの内野手で25歳のキム・ソンフンが110試合に出場し成長を見せた。

 

3.オフシーズンの動向

 FAとなったキム・サンス、ユン・ソンファンともに再契約したが、出場機会の減った外野手ペ・ヨンソプがSK、左腕チャン・ウォンサムがLGへ移籍した。長打力不足を補うためカン・ミンホの加入で出場機会が減った捕手イ・ジヨンをネクセンへ、そして外野手コ・ジョンウクがネクセンからSKへ、そして2018年にSKで27本塁打を記録した右打ちの外野手キム・ドンヨプがサムソンへと移籍する異例の三角トレードを実施し注目を集めた。

 外国人選手ではラフと再契約したが、先発として一定の結果を残したものの、2ケタ勝利を記録した上位チームの外国人投手たちと比べて物足りないと判断されたか、エーデルマン、ボニーヤの2名とは再契約しなかった。代わりにデック・マクガイヤ投手、ジャスティン・ヘイリー投手の2名の新外国人選手と契約した。

 

 2019年シーズン、就任から3年目を迎えるキム・ハンス監督は一定の手ごたえを感じたはずである。さらにチームの強化を進めて4年ぶりのポストシーズン進出を目指すと思われるが、過去に7度の韓国シリーズ優勝を記録し最強の名をほしいままにしたサムソンライオンズの復活なるか注目したい。

 

(文責:ふるりん