DAILY KOREAN PRO BASEBALL 2

1982年に発足し、2024年時点で10球団が加盟する韓国野球委員会(KBO)による韓国のプロ野球リーグ(通称KBOリーグ)に関するブログ。レギュラーシーズン、ポストシーズン(韓国シリーズなど)の試合速報や球団別の情報、現役プロ選手が含まれる野球韓国代表が出場する国際大会の情報などもお伝えします。 twitter : @kbodigest

2020年シーズン回顧 第10回 ハンファイーグルス

必然の最下位

2020年シーズン成績 

レギュラーシーズン:46勝95敗3分(勝率.326)最下位

ポストシーズン:出場せず

 

  2010年から2019年までの10年間でポストシーズン進出は2018年の1度だけ、2019年は9位に終わり、主力に30代のベテランが多い2020年シーズンの苦戦は開幕前から予想されていた。

 3月の示範競技が中止となり、例年より1か月以上遅い5月5日のレギュラーシーズン開幕戦は敵地・仁川にて韓国2年目の外国人選手サーポルドの完封により3-0で勝利した。5月7日のハンファ戦でチャン・シファンがロッテからの移籍後初勝利を記録したが、翌8日のキウム戦から13日のキア戦までの5連敗となった。その後一時調子を取り戻すも、5月23日のNC戦から最大の地獄が待っていた。

 5月28日のLG戦まで5連敗を喫すると、翌29日からの3連戦は開幕後に10連敗を喫して最下位に低迷していたSKだった。しかし3試合とも敗れてしまい5月31日には8連敗で最下位に転落した。6月になってもキウム、NCに負け続け、6日のNC戦では2013年以来となるチーム史上タイ記録の13連敗となった。翌7日のNC戦ではついにチーム新記録の14連敗となってしまい、翌8日、ハン・ヨンドク監督は辞任しチェ・ウォンホ二軍監督が監督代行として指揮を執ることになった。

 6月9日から11日のロッテ戦でも負け続け、ついに17連敗となった。そしてついに6月12日のトゥサン戦で敗れ、1985年の三美(サムミ)以来35年ぶりとなるプロ野球タイ記録の18連敗にまで並んだ。翌13日のトゥサン戦は19連敗のプロ野球新記録なるかが注目されるも、雨で中断し翌14日にサスペンデッドゲームとして延期された。再開された試合は接戦となり、6-6の同点で迎えた9回裏、ノ・テヒョンのプロ初打点となるタイムリーで7-6とサヨナラ勝ちしついに18連敗から脱出した。

 6月18日、中継ぎ右腕のイ・テヤン投手を交換要員として、打線強化のためSKとのトレードでノ・スグァン外野手を2015年以来5年ぶりに復帰させた。6月22日、打撃不振の外国人選手ホイングをウェーバー公示し、代役の新外国人選手としてバーンズと契約した。6月30日、シーズンの3分の1となる48試合を終えて勝率はわずか.250しかなかった。

 最下位脱出の望みをかけて7月10日、13日のSK戦では勝利するも、7月16日のKT戦から26日のSK戦まで8連敗となり、9位SKとは7.5ゲーム差も離された。8月前半の相次ぐも雨天中止も選手層の薄いハンファにとっては恵みの雨とならず、勝率2割台の低迷が続き、プロ野球史上初のシーズン100敗もあり得ると騒がれ続けた。8月19日のSK戦ではチーム新記録となる1試合26失点の大敗を喫したが、8月下旬から少しずつ調子が上向いてきた。

 9月9日までSKが11連敗を喫したことにより、ハンファとのゲーム差が1.5にまで縮まり9月10,11日の直接対決で連勝すれば最下位脱出が見えてきたが、2試合ともに敗れてしまった。9月半ばになっても勝率2割台だったが、9月20日のキア戦から25日のロッテ戦までシーズン初の5連勝で勝率3割を突破した。選手層が薄かったため実績のない若手にも出場機会が与えられ、少しずつチームに活気が出てきた。10月6日には成績不振の外国人選手チャド・ベル投手をウェーバー公示し、出場登録選手の枠を広げさらに若手へ機会を与えることにした。

 10月7日のキア戦から9日のキウム戦まで3連勝し勝率を.331にまで上げ、9位SKと0.5ゲーム差に迫りまたもや最下位脱出のチャンスが訪れた。しかしSKとの直接対決は9月で終了しており、10月13日のトゥサン戦から22日のキア戦まで引き分け1つを挟み7連敗となり、自滅の形で2014年以来6年ぶりの最下位、初の10位が確定した。10月21日、38歳という年齢に勝てなくなり出場機会が少なくなっていたかつての4番打者キム・テギュン(元千葉ロッテ)が現役引退を表明した。10月30日、本拠地・大田でのシーズン最終戦となったKT戦では4-3と勝利し有終の美を飾り、数少ないファンの前で2021年シーズンの巻き返しを誓った。終わってみれば必然の最下位だった。

【投手の成績】

防御率5.28(9位) 奪三振1019(4位) 被本塁打158(2位) 与四球609(2位)

[主な先発投手]

サーポルド     28試合 10勝13敗 防御率4.91

チャン・シファン  26試合 4勝14敗 防御率5.02

キム・ミヌ     25試合 5勝10敗  防御率4.34

チャド・ベル       16試合 2勝8敗  防御率5.96

キム・イファン   15試合 2勝7敗  防御率6.82

キム・ボムス    24試合 3勝6敗 防御率5.24

キム・ジヌク    22試合 3勝4敗1セーブ 防御率5.64

 先発投手のチーム防御率は5.61で10チーム中10位だった。規定投球回数(144回)に達したのは2年連続で10勝を記録するも2019年より内容が悪化したサーポルドだけで、もう1名の外国人選手チャド・ベルは開幕7連敗と不振が続いた。韓国人選手の先発投手の層が薄く、それは大きく負け越しているチャン・シファンとキム・ミヌを先発させ続けたことでもはっきりわかる。プロ2年目の20歳の右腕キム・イファンの成長が期待されたが、2019年の4勝を下回る2勝止まりだったのが残念であった。チャン・ミンジェ、キム・ボムス、キム・ジヌクと先発、リリーフともに起用された選手も少なくなかった。

 

[主なリリーフ投手]

パク・サンウォン   62試合 1勝0敗1セーブ10ホールド  防御率4.66

キム・ジニョン    58試合 3勝3敗8ホールド  防御率3.97

ユン・デギョン    55試合 5勝0敗7ホールド  防御率1.59

キム・ジョンス    54試合 1勝1敗1セーブ7ホールド  防御率5.94

チョン・ウラム    50試合 3勝5敗16セーブ 防御率4.80

カン・ジェミン    50試合 1勝2敗1セーブ14ホールド 防御率2.57

アン・ヨンミョン   39試合 1勝1敗1ホールド  防御率5.91

チャン・ミンジェ   24試合 2勝7敗 防御率6.75

 

 リリーフのチーム防御率は4.90で10チーム中6位と、先発と比べれば機能していた。35歳のベテラン左腕チョン・ウラムはかつてほどの球威はないが経験で抑えを任された。ユン・デギョンは26歳にして一軍初登板を果たすと中継ぎで安定した投球を続け、リリーフ陣で最大の発見となった。ユン・デギョンと同じく国外でのプレー経験のあるキム・ジニョンも28歳で一軍に定着、中継ぎ陣に欠かせない存在となった。大卒新人カン・ジェミンがサイドハンドの利点を生かし中継ぎとして一軍に定着したのも大きかった。

 

【野手の成績】

打率.245(10位) 本塁打79(10位) 得点551(10位) 盗塁51(9位) 失策100(4位)

捕手:チェ・ジェフン   126試合 打率.301 3本塁打 36打点 0盗塁

一塁:バーンズ      74試合   打率.265   9本塁打 42打点 2盗塁

二塁:チョン・ウヌォン  79試合 打率.248 3本塁打 29打点 1盗塁

三塁:ノ・シファン    107試合 打率.220 12本塁打 43打点 0盗塁

遊撃:ハ・ジュソク       94試合 打率.286 2本塁打    32打点 4盗塁

左翼:チョン・ジンホ   113試合 打率.277 2本塁打  19打点 9盗塁

中堅:イ・ヨンギュ    120試合 打率.286 1本塁打  32打点 17盗塁

右翼:イム・ジョンチャン 52試合  打率.231 1本塁打  12打点 0盗塁

指名:イ・ソンヨル    79試合 打率.203 8本塁打 34打点 1盗塁

控え:イ・へチャン、キム・テギュン、オ・ソンジン、カン・ギョンハク、ソン・グァンミン、チェ・インホ、ノ・スグァン、チェ・ジンヘンなど

 投手陣以上に野手陣が弱かった。特に長打力不足は深刻で、チーム本塁打数が100本未満だったのはハンファだけだった。2018年から攻守ともに活躍していた外国人選手ホイングの不振と退団ですべての構想が狂った。チーム最多本塁打がプロ2年目の20歳の若手、ノ・シファンの12本、しかも10本塁打以上の選手が他にいない打線では他チームと勝負にならなかった。チームでは数少ない明るい未来を感じさせた選手だったノ・シファンは37歳のソン・グァンミンと並びチーム最多の43打点を記録したが、20代後半の働き盛りの野手が故障もありチームの柱とならなかった。

 チームで規定打席(447打席)に達したのは35歳のイ・ヨンギュのみで、イ・ヨンギュ以外10盗塁以上を決めた選手がいない機動力不足も大きな問題となった。選手層が薄い分20歳のチェ・インホ、19歳のイム・ジョンチャンなど若手の起用も見られた。プロ3年目ながら20歳のチョン・ウヌォンが負傷で8月以降は欠場したのも打線の迫力不足に拍車をかけた。

 

【オフシーズンの動向】

 

 最大の話題は10年以上続く低迷を脱するため、初の外国人監督としてベネズエラ出身のカルロス・スベロ新監督を招聘したことだった。コーチ陣も大きく入れ替え、3名もの外国人コーチと契約した。スベロ監督はMLBメジャーリーグベースボール)での監督経験こそないがコーチ歴はあり、マイナーリーグの監督として有望な若手の育成に努めてきたため、チームを一から作り直さなくてはならない現在のハンファには適していると言えよう。

 またユン・ギュジン、ソン・グァンミン、チェ・ジンヘンなど10年以上活躍してきたベテラン選手を自由契約とし、世代交代を推し進めた。このうちイ・ヨンギュはキウム、アン・ヨンミョンはKTへと移籍した。サーポルド、バーンズの外国人選手は2名ともに再契約せず、2020年はSKで未勝利に終わったニック・キンガム投手、台湾プロ野球楽天で活躍したライアン・カーペンター投手、MLBで実績のあるリオン・ヒーリー外野手の新外国人選手3名と契約した。

 

 選手だけでなく指導者も育てられなかったハンファイーグルスの未来はどこへ行こうとしているのか。2021年シーズンは外国人監督やコーチのもと生まれ変わり、1999年以来遠ざかっている韓国シリーズ優勝に近づく第一歩となるか注目される。

 

(文責:ふるりん