DAILY KOREAN PRO BASEBALL 2

1982年に発足し、2024年時点で10球団が加盟する韓国野球委員会(KBO)による韓国のプロ野球リーグ(通称KBOリーグ)に関するブログ。レギュラーシーズン、ポストシーズン(韓国シリーズなど)の試合速報や球団別の情報、現役プロ選手が含まれる野球韓国代表が出場する国際大会の情報などもお伝えします。 twitter : @kbodigest

  第2回 NCダイノス

「新興勢力の光と影」 
2016年成績 : 83勝58敗3分け(韓国シリーズ準優勝)
チーム総合採点…80点


1. 【チーム史上初の韓国シリーズ進出、しかし…】
 2016年シーズン、チーム史上初の韓国シリーズ進出を果たしたNCダイノス。その道のりを振り返ってみたい。
 
 2015年は公式戦2位ながら、オフシーズンにFA(フリーエージェント)でサムソンの主力内野手として活躍していたパク・ソンミンを引き抜き移籍させ、プロ野球史上初のシーズン40本塁打・40盗塁の同時達成の偉業を達成した外国人打者エリック・テームズを軸に、投打ともに戦力が充実しているため優勝候補に挙げる声も高かった。また2015年まで公式戦5連覇と圧倒的な強さを誇っていたサムソンの相次ぐ戦力流出も、その声をさらに高める要因であった。2013年の一軍参入から3年、キム・ギョンムン監督の指揮で着実に成長を遂げていた新興勢力に対する期待は大きかった。

 しかし開幕から1か月ほど、4月末まで勝率5割前後とスタートダッシュには失敗し、新戦力の台頭や外国人選手の補強に成功した2015年の韓国シリーズ優勝チーム・トゥサンの後塵を拝することになった。新戦力のパク・ソンミンも期待されたほどの爆発力はなく、2015年に先発で10勝を記録した若手イ・テヤンが不振で勝ち星を伸ばせなかった。だが5月8日までの8連勝で2位に浮上し、首位トゥサンの追撃態勢に入った。5月18日までの4連敗で一時2位の座をSKに譲ったものの、すぐに復調しトゥサンとのマッチレースが続いた。
 5月後半、先発投手陣の柱であった外国人投手ハッカーが故障で一軍から離脱したが、テームズを軸とする打線の爆発により、6月にNCの勢いは頂点に達した。そして6月19日のKT戦でチーム新記録となる15連勝を達成したが、勝率7割を超える圧倒的な強さを見せていた首位トゥサンを捕らえることはできなかった。そして6月28日までの5連敗とトゥサンの影が遠くなってしまった。
 7月、チームに激震が走った。主力投手として期待されていたイ・テヤンが勝負操作に加担していたことが発覚し、失格処分となりチームから離脱した。8月には同じ主力投手のイ・ジェハクにも勝負操作加担疑惑が浮上し、検察の召集を受けたため一軍から離脱した。一時期勢いの落ちてきたトゥサンを捕らえ、8月6日には首位に立ったが1日でその座を譲った。また8月10日にも首位となったがこれまた1日で陥落した。
 ハッカー、スチュアートの外国人投手2人は健在だったが、その他の先発投手陣の層が薄くなったため、これまでリリーフで活躍していたチェ・グムガン、若手のチャン・ヒョンシクなどを先発として起用した。新鋭のキム・ソンウクの起用でベテランが多い打線に活気を与えた。3位ネクセンの追撃も弱く、2位の座を維持することはできたが8月後半から優勝へのラストスパートに入ったトゥサンを捕らえることはできず、10月1日のロッテ戦で勝利し、2年連続公式戦2位を確定させポストシーズンプレーオフからの出場となった。
 10月9日に公式戦を終え、10月21日よりネクセンとの準プレーオフを勝ち抜いたLGとのプレーオフが開幕した。しかし、勝負操作疑惑で先発要員のイ・ジェハクは出場しなかった。また、9月に飲酒運転が発覚した主砲テームズが第1戦は出場停止となっていた。それが響いたか打線にまったく元気がなく、第1戦は9回表まで0-2とリードされていた。しかし9回裏にベテランのイ・ホジュンの2点タイムリーで同点に追いつき、控え捕手のヨン・ドカン(2016年限りで現役を引退)のタイムリーで3-2と逆転サヨナラ勝ちした。第2戦はパク・ソンミンの決勝2ランで2-0と接戦を制した。敵地・蚕室での第3戦は延長11回の激闘で2-3と敗れたが、第4戦でテームズ、パク・ソンミンの本塁打などようやく打線がつながって8-3で勝利し、プレーオフを3勝1敗で勝ち抜いて一軍参入4年目にして初の韓国シリーズ進出に成功した。
 10月29日からの韓国シリーズで、公式戦を圧倒的な強さで制したトゥサンと対決したが、引き続きイ・ジェハクを欠いたチームからは活気を感じられなかった。敵地・蚕室での第1戦でスチュアートが好投するも打線が援護できず、延長11回裏で抑えのイム・チャンミンが捕まって0-1と敗れた。第2戦も打線が先発ハッカーを援護できず2-5で敗れた。本拠地・馬山での第3戦以降も流れは変わらず0-6の完封負け、第4戦も1-8と一方的な展開となり、初の韓国シリーズは1勝もできず苦い結末に終わった。


2. 【チーム分析】
 2014年から3年連続でポストシーズン進出と安定した実力を発揮しているNCは、まず投手陣で他チームより優位に立っていた。
 チーム防御率4.48は10チーム中2位で、1位のトゥサン(4.45)と大差はなかった。だが先発投手陣に関してはトゥサンほどの圧倒的な優位性はなかった。クォリティースタート(先発投手が6回自責点3以内の成績)は42試合で、トゥサン(75)の6割にとどまった。NCで4年目のシーズンを迎えたハッカー(13勝)、スチュアート(12勝)の外国人投手2名、4年連続2ケタ勝利と安定した成績を残したイ・ジェハク(12勝)が軸で、4番手以降が弱かったが8月より先発に転向したチェ・グムガンが11勝と結果を残すなど、状況に応じた起用で安定した投手陣を構築した。またシーズン前半は先発、後半はリリーフとして起用されたイ・ミンホも9勝を記録した。若手では右のチャン・ヒョンシク、左のク・チャンモなどが先発として起用され、今後の成長が期待される。
 リリーフ陣では、重病のため2015年は試合に出場できなかったウォン・ジョンヒョンが5月に一軍復帰後初登板を果たすと、54試合に登板し17ホールドを記録したことが話題を呼んだ。チーム最多セーブ(26)のイム・チャンミン、チーム最多登板(69試合)のキム・ジンソン、左のイム・ジョンホなども活躍した。
 
 ナ・ソンボム、テームズ、イ・ホジュン、パク・ソンミンの4人の強打者がそろう打線は頭文字をとって「ナテイバク」と呼ばれ、他チームの脅威であり続けたが、チーム打率.291は10チーム中5位で、本塁打数(169)は3位、総得点(808)は2位と、優勝したトゥサンとは攻撃力で明白な差がついていた。自身初の本塁打王(40本塁打)を記録したテームズは121打点、ナ・ソンボムは22本塁打・113打点、大型FA契約の期待に応えたパク・ソンミンは32本塁打・104打点、40歳となったイ・ホジュンは21本塁打と、NCには100打点以上が3人、20本塁打以上の打者が4人そろっていたが、主に三塁手として141試合に出場したチ・ソックンが打率.219、134試合に出場した正捕手キム・テグンが打率.234と、下位打線が弱いうえに控え選手の層が薄くトゥサンと差がついた原因となっていた。
 ショートのソン・シホン、外野のイ・ジョンウクのベテラン勢が攻守に存在感を示した。また若手では15本塁打を記録した23歳のキム・ソンウク、控えの外野手として122試合に出場したキム・ジュヌァンの台頭が目立ち、次代の主力選手としての存在感を示した。


3. 【オフシーズンの動向】
 NCが韓国シリーズ優勝を達成できなかった要因の一つになってしまった勝負操作疑惑であるが、イ・テヤンには2017年1月にKBO(韓国野球委員会)より永久除名の処分が下された。イ・ジェハクは2016年韓国シリーズ終了後に勝負操作ではない別の不法賭博行為にかかわっていたことが明らかとなったが、今後の処分は未定である。またNCの球団職員がかつて所属していた選手の勝負捜査への関与を隠蔽していたことも報じられた。
 2014年よりチームの顔として活躍してきたエリック・テームズは、ミルウォーキーブルワーズと3年契約を結び、かねてから噂されていたメジャーリーグベースボール(MLB)への復帰を果たした。また2015年シーズン途中から契約していた外国人投手ザック・スチュアートも再契約しなかった。戦力補強としてはゼイビア・スクラッグス内野手、ジェフ・マンシップ投手と2人の新外国人選手と契約したにとどまった。

 2016年シーズン、NCダイノスは一軍参入から5年足らずで韓国シリーズ進出という一定の成果を出したが、影の部分が足を引っ張ってしまい頂点をつかむには至らなかった。2017年より3年間の再契約を結んだキム・ギョンムン監督は、さらなる選手の育成と発掘に成功し、2010年代の韓国プロ野球に登場した新興勢力で自身にとっても初となる韓国シリーズ優勝の栄誉を味わうことができるのであろうか。


(文責:ふるりん