DAILY KOREAN PRO BASEBALL 2

1982年に発足し、2024年時点で10球団が加盟する韓国野球委員会(KBO)による韓国のプロ野球リーグ(通称KBOリーグ)に関するブログ。レギュラーシーズン、ポストシーズン(韓国シリーズなど)の試合速報や球団別の情報、現役プロ選手が含まれる野球韓国代表が出場する国際大会の情報などもお伝えします。 twitter : @kbodigest

  第1回 トゥサンベアーズ

「新しき王者の威厳」 
2016年成績 : 93勝50敗1分け(韓国シリーズ優勝)
チーム総合採点…95点


1. 【チーム史上初の韓国シリーズ2連覇】
 2016年シーズン、チーム史上初の韓国シリーズ2連覇を果たしたトゥサンベアーズ。その道のりを振り返ってみたい。
 
 2015年は公式戦3位ながらポストシーズンを勝ち上がり、サムソンの5連覇を阻止する形で14年ぶりの韓国シリーズ優勝を果たした。しかし2015年シーズンオフには、FA(フリーエージェント)で主力打者のキム・ヒョンスがメジャーリーグベースボール(MLB)・ボルティモアオリオールズへ移籍したこともあり、2016年シーズン開幕前の評価はそこまで高くはなかった。

 しかしふたを開けてみると、4月から快調に首位の座を走る快進撃を見せた。新外国人打者エバンス(元東北楽天)、新外国人投手ボウデン(元埼玉西武)だけでなく、プロ9年目の左打者キム・ジェファン、30歳の左打者オ・ジェイルの大爆発など、予想できなかった選手たちの活躍が目立った。5月になっても投打がかみ合いその勢いは衰えることなく、開幕前の評価が高く2位につけていたNCに付け入る隙を与えなかった。
 キム・ヒョンスの穴を埋める形で外野の定位置を奪ったパク・コヌは6月16日のキア戦でサイクルヒット、さらに6月30日にはボウデンがノーヒットノーランを達成し、シーズン半ばになっても勢いは止まらなかった。また正捕手のヤン・ウィジが負傷で離脱しても、その穴を控え捕手のパク・セヒョクが埋めるなど選手層の厚さを感じさせた。2015年まで公式戦5連覇を達成したが、相次ぐ戦力の流出で低迷を続けたサムソンとはあまりにも対照的な姿だった。
 プロ野球界を代表する外国人エースであるニッパートが勝ち星を重ねていったが、8月上旬にこれまで必勝リレーの一角を担っていたベテランのチョン・ジェフンが負傷で離脱し、抑えのイ・ヒョンスンも不調となった。そのため一時期勢いに陰りが見え、NCに首位の座を譲ったが、8月後半には復調し再び独走態勢に入った。9月上旬に軍から除隊され復帰したイ・ヨンチャン、ホン・サンサムの2人がリリーフとして好投を見せ、トゥサンの行く手を阻むものはなくなった。そして9月22日、本拠地・蚕室野球場でのKT戦で勝利し、21年ぶりとなる公式戦優勝で2年連続の韓国シリーズ出場を決めた。
 10月8日のLG戦で公式戦を終え、久しぶりに待たされる立場で韓国シリーズを迎えた。LGとのプレーオフを制したNCとの韓国シリーズが10月29日から始まったが、相手は不祥事による主力投手の不在が影を落としたのか明らかに元気がなかった。蚕室での第1戦は得点のないまま延長戦に入り、11回裏にオ・ジェイルの犠牲フライで1-0とサヨナラ勝ちした。第2戦は8回裏のキム・ジェファンの本塁打などで勝ち越したトゥサンが、チャン・ウォンジュンの好投もあり5-1で勝利した。舞台を敵地の馬山に移した第3戦も、ボウデンの好投で6-0と勝利した。第4戦はこの韓国シリーズMVPを受賞したヤン・ウィジの本塁打、ユ・ヒィグァンの好投で8-1と勝利し、無傷の4連勝でチーム史上初の韓国シリーズ2連覇を達成した。


2. 【チーム分析】
 プロ野球史上最多の1シーズン93勝(144試合制)を記録したトゥサンは、数字を見ても圧倒的な強さがはっきりしている。
 チーム防御率4.45は10チーム中1位で、特に先発投手陣が他チームを圧倒していた。クォリティースタート(先発投手が6回自責点3以内の成績)は最多の72試合で、シーズンMVP(最優秀選手)・最多勝(22勝)・最優秀防御率(2.95)と最高の成績を残したニッパート、最多奪三振(160)・18勝を記録したボウデン、ともに15勝を記録したチャン・ウォンジュンとユ・ヒィグァンの韓国人左腕の先発4本柱だけで合計70勝を記録した。5人目の先発が定まらなかったのは他チームからするとぜいたくな悩みであった。
 リリーフ陣の柱はチーム最多セーブ(25)のイ・ヒョンスン、チーム最多ホールド(23)のチョン・ジェフンと2人のベテランだった。チン・ヤゴプ、ユン・ミョンジュンなども中継ぎ陣としてともに50試合以上に登板したが、他チームと比べリリーフの層はそこまで厚くはなかった。そのため、7月にトレードでロッテからベテランのキム・ソンベを復帰させ、シーズン終盤の9月はイ・ヨンチャンやホン・サンサムをリリーフとして起用し、優勝への起爆剤とした。
 
 打線は特に層が厚かった。チーム打率.298、本塁打数(183)、総得点(877)といずれも1位だった。特に広い蚕室野球場を本拠地としているにもかかわらず、チーム二冠王(37本塁打・124打点)のキム・ジェファン、自己最高の27本塁打を記録したオ・ジェイル、エバンス(24本塁打)、ヤン・ウィジ(22本塁打)、パク・コヌ(20本塁打)と5人もの選手が20本塁打以上を記録した。またミン・ビョンホン(87打点)、ホ・ギョンミン(81打点)、キム・ジェホ(78打点)と本塁打は少なくても勝負強い打者が並び、状況に応じた打撃ができるオ・ジェウォンなども含めると上位から下位までまったく隙のない打線だった。またチョン・スビン、チェ・ジュファン、パク・セヒョクなど代打や控え選手の層も厚かった。圧倒的な破壊力の打線となったためか、盗塁で仕掛ける必要性が低くなり、チーム盗塁数85は9位にとどまった。


3. 【オフシーズンの動向】
 基本的にオフシーズンは大きな動きがなかった。2016年9月に軍から除隊されたものの、他の選手の好成績や若手の台頭で出番がなくなっていたイ・ウォンソクがFAを行使しサムソンへ移籍したが、その穴を感じさせないくらい選手層が厚い。FAを行使したイ・ヒョンスンとキム・ジェホや、ニッパート、ボウデン、エバンスと2016年の優勝に貢献した外国人選手たちとも再契約した。また1999年から2008年、2013年から2016年まで活躍し個人通算2000安打を達成したホン・ソンフンも現役を引退し、世代交代を印象付けた。

 2016年シーズン、前年の優勝の勢いがそのまま続き、さらなる選手の台頭と外国人選手の補強の成功で圧倒的な強さで新しい王者となったトゥサンベアーズ。2017年シーズンは完全に追われる立場として他チームの挑戦を受けることになる。これまで得意としてきた多少時間はかかっても自前で主力選手を育てる方針にブレがなく韓国シリーズ3連覇を達成すれば、3年目のシーズンを迎えるキム・テヒョン監督は真の名将と呼ばれるようになるであろう。


(文責:ふるりん