DAILY KOREAN PRO BASEBALL 2

1982年に発足し、2024年時点で10球団が加盟する韓国野球委員会(KBO)による韓国のプロ野球リーグ(通称KBOリーグ)に関するブログ。レギュラーシーズン、ポストシーズン(韓国シリーズなど)の試合速報や球団別の情報、現役プロ選手が含まれる野球韓国代表が出場する国際大会の情報などもお伝えします。 twitter : @kbodigest

  第5回 SKワイバーンズ

「新旧交代のはざまで」 
2015年成績 : 69勝73敗2分け(ワイルドカード決定戦敗退)
チーム総合採点…60点


1. 【3年ぶりのポストシーズン進出】
 2015年シーズンよりキム・ヨンヒィ新監督を迎え、低迷からの脱出を図ったSKワイバーンズ。2014年オフシーズン、FA(フリーエージェント)となった主力選手たちを何とか引き留め、万全の戦力で臨んだ。3月29日のサムソン戦、新外国人野手ブラウンの韓国初安打となる満塁本塁打でシーズン初勝利をあげた。
 4月5日のネクセン戦ではチェ・ジョンがプロ野球タイ記録の1試合8打点で勝利に貢献した。4月は好調を維持たが、4月16日のネクセン戦で外国人投手バンワートが打球を受けて負傷し戦線離脱となった。新外国人投手ケリーは4月21日のKT戦で韓国初勝利をあげ、徐々に韓国になじんでいった。4月24-26日のハンファとの3連戦は、2011年までSKを率い3度の韓国シリーズ優勝と黄金時代をもたらしたキム・ソングン監督との対決ということで注目を集めたが、なんと3連敗を喫してしまった。
 エースのキム・グァンヒョンは好調を維持し、5月8日のサムソン戦で5勝目をあげチームも4連勝で上位定着なるかと思われた。5月14日のトゥサン戦では7点差を追いつき、ブラウンの逆転2ランでサヨナラ勝ちした。5月20日のハンファ戦もイ・ジェウォンのタイムリーでサヨナラ勝ちし、ついに首位に躍り出た。しかし1日しか首位を保てずこの後連敗で順位は後退し、5月末には打撃不振に陥ったチェ・ジョンが二軍へ降格した。
 6月2日のKT戦で20得点の大勝、6月7日のLG戦でキム・グァンヒョンが2010年以来の完封勝利など勢いに乗るかと思われたが、勝率は5割前後をうろうろしていた。アンダースローの先発要員パク・チョンフンが頭角を現し、チェ・ジョンも戦列に復帰した。7月1日のKT戦で先発バンワートが相手の打球を受けて手を骨折し、シーズン中の復帰が困難と判断され、7月9日、代役の外国人投手としてセッドン(元読売・セドン)の復帰が決まった。2013年SKで14勝をあげ最多勝のタイトルを獲得した外国人左腕に浮上を託したが、思うように勝てなかった。シーズン前半打点を稼いでいたブラウンも不調で、勝率5割前後を行き来し上位との差は開くばかりだった。
 7月24日、LGとの間に3対3トレードが成立した。控え外野手のイム・フン、左の中継ぎチン・ヘス、伸び悩んでいた右腕ヨ・ゴヌクの代わりにチョン・ウィユン、シン・ジェウン、シン・ドンフンを獲得し、チームの起爆剤として期待した。エースのキム・グァンヒョンは8月2日に10勝目をあげたが、投手陣の層が厚くなく大きな連勝ができなかった。8月20日のネクセン戦で5連敗となり、7位にまで後退し上位進出は絶望的となってきた。8月25日のキア戦で完封負けし3連敗、ついに8位にまで交代した。
 8月26日のキア戦、チョン・サンホの逆転3ランで連敗を脱出し7位に復帰した。シーズンも残り少なくなり、本格的な10球団制になった2015年シーズンよりポストシーズンは公式戦5位まで出場できるようになり、5位確保が現実的な目標となった。9月上旬また8位に後退したが、5位争いは勝率5割未満の争いとなっていたため絶望する必要はなかった。韓国に復帰して2か月ほど経ち、セッドンが2年前のような投球を見せ始めた。そしてLGでは才能を開花させられなかったチョン・ウィユンが本塁打を量産し始めた。
 9月24日のネクセン戦で勝利し、ロッテを抜いてついに5位へと浮上した。9月28日のネクセン戦で15-2、翌29日のKT戦で10-0と大勝し、5位の座が大きく近づいた。この後もたついたが10月3日、公式戦最終戦のNC戦でケリー、キム・グァンヒョン、ユン・ギルヒョンの継投で4-3と接戦を制し、翌4日キアがトゥサンに敗れたため5位が確定し、2012年以来3年ぶりとなるポストシーズン進出を決めた。
 2015年シーズンより新設された公式戦4位−5位のワイルドカード決定戦の相手はネクセンだった。10月7日、敵地・木洞で戦いの幕を開けた。この試合に敗れたらポストシーズン敗退となるSKは、先発キム・グァンヒョンを立てて必勝を期した。1回裏1点を先制されたが、ブラウンの本塁打、ナ・ジュファンのタイムリーなどで3-1と逆転した。6回裏から2番手ケリーを登板させたがこれが裏目に出て同点に追いつかれ、試合は3-3のまま延長に入った。11回表相手のミスで1点を勝ち越したが、守護神チョン・ウラムが同点打を許し、なおも2アウト満塁と絶体絶命のピンチだった。ここでパク・チョンベは内野フライに打ち取ったかと思われたが、これをショートのキム・ソンヒョンがとれず4-5でまさかのサヨナラ負けを喫し、2015年シーズンのSKの激闘は幕を閉じた。
 

2. 【チーム分析】
 2015年シーズン、SKのチーム防御率4.71は10チーム中4位、チーム総失点は724で7位と投手陣は可もなく不可もなくと言ったところだった。エースのキム・グァンヒョンは14勝と期待に見合う成績は残した。韓国1年目のケリーも粘り強く投げ11勝と合格点だった。負傷したバンワート(5勝)の代役となったセッドンは、シーズン7勝のうち9月だけで5勝と、チームのポストシーズン進出に大きく貢献した。その他の先発要員としてはパク・チョンフンが自己最多の6勝と成長を見せたが、チェ・ビョンニョン(4勝)、ユン・ヒィサン(5勝)など実績のある選手たちは期待を裏切った。
 リリーフでは左のチョン・ウラム(16セーブ11ホールド)、右のユン・ギルヒョン(13セーブ17ホールド)の2人が軸で、その時の調子などによって起用が変わるダブルストッパー的な役割だった。他に50試合以上登板した中継ぎ陣としては右のチョン・ユス(66試合)、ムン・グァンウン(53試合)がいた。7月にLGから移籍してきた左の中継ぎシン・ジェウンもポストシーズン進出に貢献した。
 

 打線について見てみるとチーム打率.272、チーム総得点656はともに10チーム中7位、チーム本塁打数145は5位と、決して強力とは言えなかった。その中で中心に成長したと言えるのは本来は捕手だが打撃を生かすため指名打者での起用が多かったイ・ジェウォンで、自身初の100打点以上、チーム最多の100打点を記録した。チーム最多の28本塁打を記録した外国人野手ブラウンは打点が78と多くはなく、得点圏打率も.232と低かった。またベテランの左打者パク・チョングォンも21本塁打・70打点と存在感を示した。7月にLGから移籍し、新天地で4番打者に定着し9月だけで9本塁打を記録したチョン・ウィユンは打線の救世主となり、ポストシーズン進出に貢献した。
 イ・ミョンギはチーム最多の22盗塁で核弾頭に成長し、キム・ソンヒョンもショートのレギュラーに定着、長年プロ野球界を代表する名遊撃手だったパク・チンマンは現役引退を決意した。その他走塁と外野守備に秀でたチョ・ドンファ、正捕手チョン・サンホなど脇を固める選手も健在だった。その反面チェ・ジョン(17本塁打・58打点)、キム・ガンミン、ナ・ジュファンなど2014年シーズンFAを行使し残留した選手たちの中には、期待を裏切ってしまった者もいて上位チームとの決定的な差にもなった。
 チーム盗塁数は94と10チーム中9位で、明らかな機動力不足だった。


3. 【オフシーズンの動向】
 2015年オフシーズンも、2014年に続いて複数の主力選手がFAを行使した。何とか全員残留させた前年とは違い、リリーフの柱だったチョン・ウラムがハンファ、ユン・ギルヒョンがロッテへ、さらには正捕手チョン・サンホまでLGへ移籍してしまい大きな衝撃が走った。パク・チョングォン、パク・チェサン、チェ・ビョンニョンは残留したものの、新天地を求め去った3人の穴を埋めるのは容易ではない。
 外国人選手についてはケリー、セッドンと再契約し、チャンスに弱かったブラウンは退団となった。新外国人野手として長距離砲とは言えない内野のユーティリティープレイヤー、ヘクター・ゴメスと契約し手薄な内野陣の補強とした。
 2016年シーズン、2年目を迎えるキム・ヨンヒィ監督は、チームの新旧交代のはざまでバランスを取って戦っていくことが求められる。現実的には公式戦5位以内を何とか確保し2年連続のポストシーズン進出が目標となろうが、そのためには2015年シーズンあまり見られなかった新戦力の台頭が望まれる。


 
(文責:ふるりん