DAILY KOREAN PRO BASEBALL 2

1982年に発足し、2024年時点で10球団が加盟する韓国野球委員会(KBO)による韓国のプロ野球リーグ(通称KBOリーグ)に関するブログ。レギュラーシーズン、ポストシーズン(韓国シリーズなど)の試合速報や球団別の情報、現役プロ選手が含まれる野球韓国代表が出場する国際大会の情報などもお伝えします。 twitter : @kbodigest

  第4回 ネクセンヒーローズ

「次なる舞台へ」 
2015年成績 : 78勝65敗1分け(準プレーオフ敗退)
チーム総合採点…70点


1. 【新興球団から強豪へ】

 2014年、球団創設7年目にして初の韓国シリーズ進出を果たしたが、サムソンの前に屈してしまった。2015年シーズンを前に主力打者のカン・ジョンホがポスティングによりメジャーリーグベースボール(MLB)のピッツバーグパイレーツへ移籍し、戦力の低下が心配された。
 3月28日、チーム史上初の本拠地・木洞での開幕戦、3点差を追いついて9回裏ソ・ゴンチャンのサヨナラ本塁打で劇的なスタートを切った。しかしそのソ・ゴンチャンが4月9日のトゥサン戦の走塁中に相手の選手と交錯して足を負傷してしまった。2014年首位打者プロ野球史上初のシーズン200安打を達成した安打製造機の長期離脱でチームに動揺が走った。4月11日、新球団KTに一軍公式戦初勝利を献上し、翌12日も連敗を喫するなど調子が上がらなかった。また4月8日、先発陣の補強のためハンファから右腕ヤン・フンをトレードで獲得した。
 4月後半になると勝率5割を超え、5月は上位争いに定着した。カン・ジョンホがいなくなってもネクセンの特徴は強力打線だった。主砲パク・ピョンホを軸に、新外国人打者スナイダー、20歳ながらショートの定位置を確保し打撃でも存在感を見せたキム・ハソン、ベテランの生え抜きユ・ハンジュン、勝負強い打撃で存在感を増したユン・ソンミンなどが活躍した。5月28日、木洞でのサムソン戦ではスナイダー、パク・ホンド、パク・ピョンホの3者連続本塁打で同点に追いつき、乱打戦の末勝利するなど派手な試合も目立った。投手陣は2014年20勝を記録した外国人左腕バンヘッケン、新外国人左腕フィアベンド以外ローテーションで安定した投球を見せられる投手が少なくやりくりに苦労し、大きく勝ち越せない原因となっていた。
 6月6日のトゥサン戦では8点差を追いつき、キム・ハソンの自身初となるサヨナラ本塁打で勝利し3位に浮上するも、再び4位に後退した。6月13日のKT戦よりソ・ゴンチャンが戦列に復帰し、浮上を図ったが一進一退が続いた。2014年までリリーフとして活躍してきたハン・ヒョンヒィの本格的先発転向もあまり効果的ではなかった。7月末の5連勝でトゥサン、NCを抜いて一気に2位へ浮上した。しかし8月になっても足踏みは続いた。
 パク・ピョンホは真夏になり本塁打量産体制に入ったが、チームの勝ち星に結びつくことは少なかった。し烈な首位争いを繰り広げていたサムソン、NCとの差は広がるばかりだった。だが秋の声を聴くころになった8月末から連勝街道に入り、9月5日のSK戦ではキム・ヨンミンがプロ10年目にしての初の完封勝利でシーズン最多の8連勝に達した。そして9月8日、トゥサンに勝利し3位に浮上した。夏場になり抑え失敗を繰り返し戦線を離脱したソン・スンナクに代わり、若き21歳のチョ・サンウが抑えに回り勝ちパターンが形成された。
 9月後半、首位サムソン、2位NCとの差は縮まらず、トゥサンとの3位争いが続いた。9月21日のNC戦でパク・ピョンホがプロ野球史上初の2年連続50本塁打を記録した。だがチームは勢いに乗れず、9月末にはトゥサンと同率3位に並ばれてしまった。10月1日、木洞でのハンファ戦は2014年まで活躍したソン・ジマン二軍コーチの引退セレモニーとなり、バンヘッケン、抑えに復帰したソン・スンナクと主力投手の踏ん張りで勝利した。翌10月2日のロッテ戦でパク・ピョンホ、スナイダー、ユ・ハンジュンなどの一発攻勢で勝利し単独3位となり、公式戦最終戦に望みをつないだ。
 しかし10月3日、木洞での公式戦最終戦となったサムソン戦で敗れ、トゥサンと同率3位に並ばれた。そして翌4日、トゥサンがキア戦で勝利したことでネクセンの公式戦4位が確定し、2013年以降3年連続進出となったポストシーズンは、2015年シーズン、プロ野球の本格的な10球団制への拡大で新設された公式戦5位・SKとのワイルドカード決定戦からの出場となった。
 このワイルドカード決定戦は公式戦4位チームの本拠地で開催され、4位チームは1勝だけすれば公式戦3位との準プレーオフに進出となった(5位チームは2連勝のみ進出可能)。ワイルドカード決定戦を前にした10月5日、かねてから懸案となっていた本拠地移転問題に当面の間の結論が出た。2016年シーズンより2年間、新しく完成した韓国初のドーム型野球場・高尺スカイドームを本拠地とすることが発表された。2008年の球団創設以来本拠地としてきた木洞野球場に、2015年ポストシーズンでいったん別れを告げることになったのである。
 10月7日、SKとのワイルドカード決定戦は延長までもつれこむ接戦となった。3-3で迎えた11回表、ネクセンは捕手の後逸で1点を勝ち越された。しかし11回裏スナイダーのタイムリーで4-4の同点に追いつき、2アウト満塁のチャンスを迎えた。ここでユン・ソンミンが内野フライを打ち上げてしまったが、SKの守備陣がなんとこれを取れず走者が生還し5-4でサヨナラ勝ちとなり、プロ野球史上初のワイルドカード決定戦は劇的な幕切れを閉じた。
 2014年までの準プレーオフは公式戦3位と4位の対戦であっても、順位によるハンディキャップというものがあまりなかった。だが2015年シーズンよりワイルドカードが新設されたことで、そこで消耗してしまう4位チームが明らかに不利となった。ネクセンはワイルドカードで公式戦15勝の先発の柱バンヘッケンを使ってしまったため、10月10日の敵地・蚕室での準プレーオフ第1戦では公式戦終盤先発として好投したヤン・フンを起用した。ヤン・フンは期待に応える好投でパク・トンウォン、パク・ピョンホの本塁打で2点をリードしたが、結局大量点を奪えず試合は延長に突入し、10回裏高卒新人キム・テッキョンが打たれ3-4でサヨナラ負けを許した。
 10月11日の第2戦も接戦となったが打線が爆発せず、2-3とまたもや1点差で敗れた。舞台を木洞に移した10月13日の第3戦でようやくバンヘッケンが先発でき、期待通りの好投で5-2と勝利した。第4戦になりようやく打線が爆発し、主砲パク・ピョンホの本塁打も出て6回までに9-2とリードを広げた。しかしソン・スンナク、ハン・ヒョンヒィ、チョ・サンウのリリーフ陣が総崩れとなり、結局9-11と逆転負けを喫し準プレーオフ敗退が決定、2015年シーズンのネクセンの戦いの幕が閉じた。やはり先発投手陣の層が厚くない中、初戦からバンヘッケンを起用できなかったのが尾を引いてしまった。そして7年あまりの時を過ごした木洞野球場からも去っていった。



2. 【チーム分析】

 近年のネクセンのチームカラーとして、狭い木洞野球場を生かした本塁打攻勢があげられる。チーム打率.298はサムソンに次いで10チーム中2位、チーム本塁打数203、チーム総得点855はともに1位だった。
 その中心は2012年以降4年連続本塁打打点王プロ野球史上に残る長距離砲パク・ピョンホであった。プロ野球史上初の2年連続50本塁打以上のみならず、シーズン146打点もプロ野球新記録であった。そしてプロ12年目で自己最多の23本塁打・116打点を記録し、打率.362で首位打者争いにも加わったユ・ハンジュンも打線のけん引役であった。安定感を欠いたが印象深い打席が多いスナイダー(26本)、ショートのレギュラーに定着したキム・ハソン(19本)、サードのレギュラーとして活躍したキム・ミンソン(16本)、内野のユーティリティープレイヤーとして重きを増したユン・ソンミン、正捕手パク・トンウォン(ともに14本)、外野のレギュラーに定着したコ・ジョンウク、ベテラン外野手イ・テックン(10本)と、2ケタ本塁打を記録した選手が9人いて、どこからも点が取れる打線であった。
 機動力に関してはコ・ジョンウク、キム・ハソンの22盗塁がチーム最多で、意外と俊足のパク・ピョンホも10盗塁を記録している。豪快な打撃のイメージ通り、チーム盗塁数100個は10チーム中8位であかり機動力を生かすスタイルではないことは明白であった。

 投手陣はチーム防御率4.91が10チーム中6位、チーム総失点790は4位とそこまで悪い数字ではないが、やや層が薄い印象が否めなかった。これは韓国4年目のバンヘッケン(15勝)、韓国1年目で何とか先発ローテーションを守り切ったフィアベンド(13勝)と、両外国人左腕以外規定投球回数(144回)に達した選手がいなかったせいである。先発転向のハン・ヒョンヒィが韓国人投手最多の11勝をあげたが、打線の援護に恵まれた試合も多く、7月以降リリーフに再転向したこともあり評価はしにくい。
 ほかには38歳のベテラン、ソン・シニョンが先発として起用され7勝を記録したが、シーズン終盤はローテーションから外れた。2014年9勝と成長を遂げたムン・ソンヒョンが2015年シーズン未勝利で終わったのが痛かったが、シーズン終盤先発で好投したキム・ヨンミン、ヤン・フンらの活躍が光った。
 リリーフ陣は守護神ソン・スンナクが23セーブを記録したが、6度のセーブ失敗を記録した。チーム最多の70試合に登板した21歳のチョ・サンウが抑えを任されることもあった。他にはキム・デウ(47試合登板)、マ・ジョンギル(35試合登板)などがリリーフで起用されたが、トゥサン、サムソン、NCの上位3チームと比べれば質量ともに見劣りした。



3. 【オフシーズンの動向】

 シーズンオフの11月、WBSCプレミア12に韓国代表として出場していたパク・ピョンホがポスティングによりMLBミネソタ・ツインズへの移籍が決まった。さらにFA(フリーエージェント)となったユ・ハンジュンがKT、ソン・スンナクがロッテへと移籍した。そしてバンヘッケンまでもが日本プロ野球埼玉西武へと移籍金30万ドルで引き抜かれてしまった。また控え野手のパク・ホンド、ベテランのソン・シニョンは余剰戦力を対象とした2次ドラフトでそれぞれロッテ、ハンファへと移籍した。そして打撃面で貢献度が高かったが安定感がないとしてスナイダーも再契約を見送った。
 このように戦力流出が相次ぐ中、大きな補強はなかった。FA移籍による補償も金銭のみだった。外国人選手はフィアベンドと再契約し、新外国人投手ロバート・コエロ、スナイダーの代役として新外国人野手ダニー・ドーンと契約した。ネクセンは他のプロ野球チームのように財閥系企業グループの支援がないため、大型投資は難しい。そのため選手の育成や他チームでくすぶっていた選手たちの才能開花でチーム作りをしてきた。2016年シーズン、新たな高尺スカイドームという舞台で、次代のチームの軸となる選手たちが台頭するのを期待したい。

 
(文責:ふるりん