DAILY KOREAN PRO BASEBALL 2

1982年に発足し、2024年時点で10球団が加盟する韓国野球委員会(KBO)による韓国のプロ野球リーグ(通称KBOリーグ)に関するブログ。レギュラーシーズン、ポストシーズン(韓国シリーズなど)の試合速報や球団別の情報、現役プロ選手が含まれる野球韓国代表が出場する国際大会の情報などもお伝えします。 twitter : @kbodigest

  第5回 ロッテジャイアンツ

「あっという間に下り坂」 

2013年成績 : 66勝58敗4分 (公式戦5位)
チーム総合採点…50点



 2013年シーズン、キム・シジン新監督を迎えたロッテは前年オフのキム・ジュチャン、ホン・ソンフンの主力打者のFA移籍の穴を埋められず、6年ぶりにポストシーズン進出を逃し観客動員数も激減した。過去の上昇ムードから一転した2013年シーズンのロッテを振り返りたい。
 
 開幕前の春季キャンプで新外国人投手リッチモンドが故障で開幕に間に合わなくなったため、3月にかつてLGに2年間在籍していたオーストラリア人投手オクスプリング(元阪神)と契約した。3月30-31日の本拠地・社稷野球場でのハンファとの開幕2連戦は、2試合ともサヨナラ勝ちと順調なスタートだった。4月1日、近隣の馬山(マサン)を本拠地とする新球団・NCダイノスの初の公式戦の相手をつとめ、4-0と完封勝ちを収めた。そしてこのNC3連戦は3連勝で終え、開幕からの連勝を5に伸ばした。
 しかしこのあと引き分け1つをはさんで4月18日まで7連敗となってしまい、社稷野球場には閑古鳥が鳴き始めた。投打ともに噛み合わずエラーも多かった。4月末で9勝11敗1分けの6位と、上位争いから取り残されてしまった。特に大砲不足は深刻で、4月末のチーム本塁打数はたったの4本だった。
 その後徐々に調子を取り戻し、5月12日のLG戦に勝利し勝率5割に復帰した。オクスプリング、ユーマンの外国人投手コンビ、打線の軸として正捕手カン・ミンホが復調してきた。4月にセーブ失敗を重ねたキム・サユルに代わり、中継ぎとして活躍していたベテランのキム・ソンベが新しい抑え役となった。5月末から6月1日まで初の5連勝で3位まで浮上した。
 先発投手陣だけでなくリリーフも安定し、打線もファン・ジェギュン、チョン・ジュヌの好調で活性化し、サムソン、LG、ネクセン、キアともに混戦の上位争いに割って入った。6月26日には、最後に韓国シリーズへ進出した1999年のメンバーによるイベントが開催され、その日のNC戦に勝利し27日には4位となった。しかし梅雨の時季になると徐々に主力打者の調子が落ち、7月17日までの5連敗で順位は6位まで下がり、キアとともに上位4チームの争いから脱落し始めた。
 オールスター戦明けの7月23日から25日までのハンファ戦に3連勝し、5位に浮上して息を吹き返したかに思われたが、その後上位との差は開いていくばかりだった。8月6日から8日まで3連勝し4位トゥサンに迫ったが、その後15日まで6連敗となりまたもや上位4チームと離れてしまった。しかしその後21日まで引き分け1つをはさんで4連勝と、好不調の波が激しかった。この頃になると、優勝はおろかポストシーズン進出の4位以上も厳しいと思われるようになり、社稷野球場の試合は平日だと空席ばかりが目立つ状況となり、早くも秋風が吹き始めていた。
 9月になり、好調SKに抜かれ6位に後退し勝率5割を維持するのがやっとになってきた。そしてホン・ソンミンの先発起用など若手の育成モードとなり、9月18日5位の座を奪還すると、9月28日には3連勝と少し調子を上げてきたがあいにく公式戦5位以下が確定し、2007年以来6年ぶりにポストシーズン進出に失敗した。10月4日、シーズン最終戦となった社稷でのSK戦を勝利で飾ったが、観客は1万人あまりと週末は2万数千人の観客が当たり前だった過去数年と比べあまりにも寂しい光景だった。 


 チーム成績を検証する。
 チーム防御率は3.93で9球団中2位と、投手力は高いほうだった。チーム最多勝のユーマン、オクスプリング(ともに13勝)、ソン・スンジュン(12勝)の三本柱は上位球団に引けをとっていなかった。しかし先発四番手以降を確立できず、コ・ウォンジュン、イ・ジェゴンなどの若手が期待に応えられなかった。リリーフ陣は31セーブで守護神となったキム・ソンベを中心に、イ・ミョンウ、カン・ヨンシクの両左腕が中継ぎで活躍した。リリーフ右腕はアンダースローのチョン・デヒョン以外信頼できる選手が少なく、期待されたキム・スンフェも打たれる場面が目立った。
 上位進出がならなかった最大の要因は弱体化した打線だった。チーム総得点556は7位、チーム打率.261は6位、チーム本塁打数61は7位と、イ・デホ(2014年より福岡ソフトバンク)やホン・ソンフンなどの強力打線が売りだった2010-11年頃の面影は全く感じられなかった。その中で打率.345、2年連続最多安打(172)のソン・アソプは孤軍奮闘の働きだった。公式戦128試合に出場したサードのファン・ジェギュン、外野のチョン・ジュヌも安定した成績を残した。そのほかにはチョ・ソンファンの衰えをカバーしセカンドのレギュラーとなったチョン・フンの台頭が目立った。


 チームのポストシーズン進出失敗より深刻だったのが、観客動員数の激減である。2013年は総観客動員数が770731人(1試合あたり平均12042人)と、前年(総観客動員数1368995人、1試合あたり平均20742人)と、前年比40%の減少となってしまった。特に優勝争いから遠ざかったシーズン終盤の観客は少なく、1塁側の内野応援席以外はほとんど空席という試合も珍しくなかった。原因としてはチーム成績以外にもイ・デホ、ホン・ソンフン、キム・ジュチャンなどの主力選手の相次ぐ移籍でチームに魅力がなくなったことだけでなく、近隣の馬山の新球団NCが比較的健闘し、かつてロッテを応援していたファンがそちらに流れてしまったのではないかと推察される。ここ5年ほどのプロ野球人気の隆盛はロッテが支えてきたとされてきたが、韓国随一と言われた熱狂的なファンの足が遠のいたことでその地位が大きく揺らぎあっという間に下り坂へと転げ落ちていった一年でもあった。


 このような状況で、ロッテはFAとなった正捕手カン・ミンホと大型契約を結びこれ以上の主力選手流出を阻止した。また2006年シーズン途中までロッテに在籍し、長打力のあるチェ・ジュンソクがトゥサンからFAで移籍し、7年半ぶりの復帰となった。他にも新外国人野手としてルイス・ヒメネス(元北海道日本ハム)と契約し、最大の課題である打線の強化に努めた。2014年シーズンは、プロ野球人気を引っ張ってきたロッテジャイアンツというチームの威信回復をかけた一年となるであろう。

(文責:ふるりん