DAILY KOREAN PRO BASEBALL 2

1982年に発足し、2024年時点で10球団が加盟する韓国野球委員会(KBO)による韓国のプロ野球リーグ(通称KBOリーグ)に関するブログ。レギュラーシーズン、ポストシーズン(韓国シリーズなど)の試合速報や球団別の情報、現役プロ選手が含まれる野球韓国代表が出場する国際大会の情報などもお伝えします。 twitter : @kbodigest

  第9回 ハンファイーグルス


「漆黒の闇」 


2013年成績 : 42勝85敗1分 勝率.331 (公式戦最下位)
チーム総合採点…15点



 2009-2010年、2012年と近年3度も最下位となり浮上の兆しが全く見られないハンファイーグルスは、2013年シーズンを前に老将キム・ウンニョン監督を迎え再建を図った。しかし韓国ナンバーワン左腕のリュ・ヒョンジンが米国メジャーリーグへ移籍し、埋めがたい大きな空白を抱えたままシーズン開幕を迎えた。


 3月30日、開幕戦は2011年6月以来勝てていない敵地・社稷野球場でロッテと対戦し、9回裏抑えのアン・スンミンが1点差を守れず逆転サヨナラ負けとなった。翌31日のロッテ戦もサヨナラ負けと、今年も社稷では勝てないのかというムードになった。4月2日からのキアとの3試合、4月5,7日のネクセン戦ともに敗れ開幕7連敗となった。新球団NCも開幕から連敗を続けていたが4月11日にNCは初勝利をあげ、ハンファは開幕10連敗となってしまった。そしてついに13日のLG戦で12連敗となり、2003年のロッテと並ぶ開幕からの連敗記録のワーストタイに並んだ。翌14日のLG戦でも0-8と完封負けを喫し、ついにプロ野球ワースト記録の開幕13連敗となってしまった。
 4月16日、新球団NC相手に14試合目での初勝利を記録した。そして翌17日、18日とNC3連戦で3連勝し、21日のトゥサン戦では先発ボーティスタの好投もあって1-0と初の完封勝ちを収め、最下位から脱出と上向きに見えた。しかしその後勝てずNCとの最下位争いが続いた。4番キム・テギュン(元千葉ロッテ)を中心に打線はさほど悪くなかったが、先発投手陣が完全に崩壊していた。
 5月2日のロッテ戦に敗れ再び単独最下位となったが、7日、8日のNC戦に連勝し最下位から脱出した。だが9日、6試合目にして初めてNCに敗れてから優位は失われた(最終的にNCとの対戦成績は8勝8敗の五分までもちこまれた)。15日のネクセン戦で19失点の大敗で単独最下位に後退し、逆に18日のトゥサン戦で14得点の大勝で8位に浮上した。だが5月23日のキア戦で敗れ最下位に転落すると、名将キム・ギョンムン監督率いる新球団NCが勝ち方を知るようになったこともあり、そこから這い上がることはもうなかった。大きな連敗はなかったが連勝はなく、5月末で勝率.311と絶望的な成績だった。
 6月になっても低迷は続いた。唯一の明るい話題は、6月15日社稷で約2年ぶりにロッテ戦で勝利したことくらいであった。しかしその後23日まで6連敗し勝率が2割台に落ち込んでしまった。26日のサムソン戦でようやく連敗を脱出したが、期待された外国人左腕イブランドがようやく2勝目と、チームの起爆剤となる選手が全く見当たらなかった。
 7月になっても思うように勝てず、勝率は3割を切ったままだった。シーズン当初と比べてソン・チャンシクが抑えに定着し何人かの若手が起用されるようになるなど投手陣はよくなってきたが、打線に人材を欠いた。8月11日、シーズン序盤は不振だったユ・チャンシクの好投でネクセン戦に勝利すると勝率3割を突破したが、苦しい戦いは相変わらずだった。
 9月1日のネクセン戦では102試合目にして70敗目と勝率は3割少々しかなく、最下位はほぼ確実となってきた。9月12日のNC戦で久しぶりの3連勝と8月までと比べて調子は上がり、今後の成長を期待して若手の起用が目立った。またベテラン外野手コ・ドンジンの存在感も光った。だが結局9月25日のSK戦で敗れ、2年連続の最下位、そして9球団制となったプロ野球史上初の9位が確定した。シーズン序盤最下位を争っていた新球団NCは勝率4割を超え、10ゲーム差ほど付いてしまっていた(NCは7位でシーズンを終了)。
 10月2日、激しい2位争いをしていたLGに勝利し、2013年シーズン最終戦となった5日のネクセン戦では2-1と勝利して2位から3位へと引きずり落とし、本拠地・大田のファンにささやかな希望と意地を見せ漆黒の闇に覆われ続けた約半年間の戦いに幕を下ろした。結局勝率は.331まで上がったが、8位キアとは10ゲームと圧倒的最下位であることには変わりなかった。


 チーム成績を検証する。
 チーム防御率は5.31で9球団中最下位だった。クォリティースタート(先発投手が6イニング以上投げ自責点3以下)が9球団中最少の34試合と、明らかに先発投手陣の質が低かった。また暴投が9球団中最多の89と制球難の投手が多かったこともわかる。両外国人投手ボーティスタ(7勝)、イブランド(6勝)、韓国人投手で唯一ローテーションを守ったキム・ヒョンミン(5勝)が先発三本柱で、飛躍を期待された若手左腕ユ・チャンシクは後半持ち直したが5勝止まりだった。2勝8敗と結果は残せなかったが防御率は3.70と決して悪くなく、大卒新人の左腕ソン・チャンヒョンが積極的に起用され、数少ない希望の星となった。
 リリーフ陣では抑えを予定していたアン・スンミンが期待を裏切ったが、ソン・チャンシクが自己最多の20セーブと守護神の働きを見せた。キム・グァンス、ユン・グニョン、イム・ギヨンなどが起用されたが、安定感がなく先発が崩れても継投策で勝つことが難しかった。また捕手も人材難で、チョン・ボムモが最多の88試合に出場したが決め手を欠いた。
 チーム打率.259は9球団中8位だったが、本塁打数47、盗塁数70はいずれもさいかいと長打力も走力もなく、総得点480は最下位と攻撃力も低かった。併殺打も9球団最多の140と効率の悪い攻撃だったことがよくわかる。4番キム・テギュンは打率こそ3割を超えたが10本塁打、52打点と寂しい数字だった。主軸を任されたチェ・ジンヘンも8本塁打、53打点にとどまった。軍から除隊された選手ではキム・テワンこそ期待を裏切ったが、ソン・グァンミンがサードのレギュラーに定着し今後に期待を抱かせた。
 主軸も弱かったが、チャンスメーカーとなる1,2番コンビも定まらなかった。ショートのレギュラーとして活躍したイ・デスは6番などを打つことが多く、終盤にベテラン外野手のコ・ドンジン、チュ・スンウが活躍したが、他球団と比べ大きく見劣りするほど選手層が薄かった。そういった中、軍から除隊されたチョン・ヒョンソクが外野のレギュラーに定着して自己最多の121試合に出場し初めて規定打席に達するなど、思わぬ選手の台頭もあった。


 投打ともに悲惨な状態にあったため、オフには大型補強に乗り出した。課題の1,2番コンビを何とかするため、SKからチョン・グヌ、キアからイ・ヨンギュと、近年韓国代表の常連となっているチャンスメーカータイプの大物FA選手2人を獲得した。ハンファは近年多額の契約金が必要なFA選手を獲得してこなかったが、5年間で4度の最下位となるとなりふり構っていられなくなったようである。また2012年オフ、リュ・ヒョンジンをポスティングにより2000万ドル以上でロサンゼルスドジャースへ売却したため、資金は豊富にありそれを有効活用することにしたと思われる。
 ボーティスタ、イブランドと既存の外国人選手との再契約を見送り、有望株の若手右腕ケイレブ・クレイ、2013WBC(ワールドベースボールクラシック)カナダ代表にも選ばれた左腕アンドリュー・アルバースピッツバーグパイレーツなど米国メジャーリーグで活躍した外野手フェリックス・ピーエイと3人の新外国人選手と契約した。果たしてハンファは脱出口の見えない暗黒どころか漆黒の闇から抜け出し、上位へ進出できるのであろうか。老練なキム・ウンニョン監督の手腕にも期待したい。
 
(文責:ふるりん