DAILY KOREAN PRO BASEBALL 2

1982年に発足し、2024年時点で10球団が加盟する韓国野球委員会(KBO)による韓国のプロ野球リーグ(通称KBOリーグ)に関するブログ。レギュラーシーズン、ポストシーズン(韓国シリーズなど)の試合速報や球団別の情報、現役プロ選手が含まれる野球韓国代表が出場する国際大会の情報などもお伝えします。 twitter : @kbodigest

  第7回 LGツインズ

「果てしなき迷走」 
2009年成績 : 54勝75敗4分け(公式戦7位)
チーム総合採点…35点


 2009年シーズン、名将キム・ジェバク監督の契約最終年を迎え、7年ぶりとなるポストシーズン進出を目指したLGツインズ。その戦いを振り返ってみたい。

 2008年は2年ぶり2度目となる屈辱の最下位に終わり、LGはオフにFAで内野のチョン・ソンフン、外野のイ・ジニョンと2人の大物野手と契約し、上位進出を図った。しかし弱体投手陣のてこ入れはなく、しかも2008年10勝をあげた外国人投手オクスプリング(元阪神)がひじの故障で復帰にめどが立たないなど、不安を抱えての開幕となった。さらに、外野が非常に広いことで知られる本拠地・蚕室野球場はLG主催試合のみ、可動式フェンスによるラッキーゾーンの設置で、以前より打者有利になることが予想された。

 4月4日、敵地・大邱での開幕戦をエースのポン・ジュングンで落とすと、開幕2連戦は2連敗スタートとなった。7日蚕室での本拠地開幕戦となったロッテ戦で初勝利をあげた。10日のトゥサン戦で、主砲ペタジーニ(元読売)が、逆転サヨナラ満塁弾を含む自身初となる1試合3本塁打を放ち、ファンたちを驚かせた。ちなみにそのうち最初の2本は、ラッキーゾーンに落ちたものであった。4月は大きな連勝も連敗もなく、10勝12敗1分けと負け越し6位で終えた。

 5月になると、自慢の打線が火を噴き連勝街道に入った。特に5日、毎年恒例のこどもの日のトゥサン戦で12−0と快勝し、ここ最近同じ蚕室のライバルであるトゥサンに負け続けていたファンたちは溜飲を下げた。そしてトゥサン戦の3連勝を含む5年ぶりの8連勝で、9日には2位に浮上した。12日のSK戦は9回表9−1でリードされていたが、9回裏なんと打線の爆発で9−9の同点に追いついた。しかし12回表6点を勝ち越され、結局16−10で敗れた。この試合、投手を使いきってしまったLGは、12回表ベテラン野手のチェ・ドンスがマウンドに上がる非常に珍しい姿も見られ、試合終了は翌日の0時を過ぎていた。
 
 この試合からもわかるように、LGは打線が強化されていても投手陣が失点を重ねてしまい、安定感ある試合運びができなかった。5月15日のヒーローズ戦は、ホームラン工場と呼ばれた敵地・木洞野球場でのアーチ合戦となり、LGは4回裏終了時点で5−13とリードされていたが、その後17点を奪って22−17で逆転勝ちし、11本塁打が飛び交った史上最大の乱打戦を制した。さらに21日のキア戦では、延長12回でも決着がつかず13−13の引き分けとなり、史上最長の試合時間5時間58分を記録し、試合終了時に時計の針は翌日の0時半を刺そうとしていた。結局5月は12勝13敗2分けと8連勝しても勝ち越せず、首位トゥサンとは7.5ゲーム差の5位で終わった。

 結局オクスプリングは5月に退団となり、代役として外国人投手バウアーが入団した。だがチームの救世主とはならず、5月29日から6月4日まで6連敗となり、混戦の下位争いに加わるようになった。9日には7位にまで後退し、ハンファと最下位争いをするようになった。しかし13日以降の10試合で8勝2敗と好調だったこともあり、24日には5位に浮上した。しかし月末に4連敗し、6月もまた11勝14敗と負け越し、勝率も4割半ばとなる7位で終わった。

 7月は梅雨の季節で雨天中止が相次ぎ、チームは一進一退となった。6月から最下位を独走するようになったハンファに詰め寄られることもなかったが、6位以上のチームに大きく近づくこともなく、8勝10敗と負け越して終わった。試合前の練習で負傷しシーズン絶望となったバウアーの代わりに、2人目の新外国人投手ジョンソンとも契約した。

 7月31日から8月2日までの6位ヒーローズ3連戦で3連敗し、4位争いからもほぼ脱落となると、4日から絶好調の首位キアとの3連戦でも3連敗と、連敗がシーズン最多の7に伸び、チームは完全に目標を見失ってしまった。さらに6日のキア戦で、先発したが大量失点したシム・スチャンと捕手チョ・インソンが、観客が見ているにもかかわらずマウンド付近で口論を始めてしまう前代未聞の醜態をさらしてしまい、この2人は罰金を科せられ2軍へ降格となり、ともにシーズン終了まで1軍に上がってくることはなかった。こうして8月はこれまで最悪となる9勝15敗の成績で終えた。

 9月になり、目標を失ったチームは今後を考え若手の積極的起用などで新陳代謝を図ったが、年間7位が確定すると9月12日から引き分けひとつをはさんで、主に首位キア、2位SK相手に6連敗してしまった。9月25日のロッテ戦では、試合前に打率1位だったパク・ヨンテクが試合に出場せず、打率2位のホン・ソンフンが5打席で4四球と明らかに勝負を避けられたことで、LGには大変な批難が浴びせられた。

 26日の公式戦最終戦終了から1日たった27日、契約期間の切れたキム・ジェバク監督に代わる新監督として、トゥサンの2軍監督だったパク・チョンフン新監督の就任が発表された。結局現代を4度の韓国シリーズ優勝に導き、現役時代活躍した古巣に三顧の礼をもって迎えられた名将キム・ジェバク監督は、任期の3年間でチームを一度もポストシーズン進出に導けず、LGを去った。


 投打の成績を振り返る。

 チーム打率.278は8球団中3位だったが、チーム本塁打数129は同6位で、ラッキーゾーンの設置にもかかわらず意外と本塁打数が少ないことともあって、チーム得点は670で同6位と、やや得点効率は悪かった。もうひとつの理由として、チーム盗塁数141は3位だったが、3年連続盗塁王のイ・デヒョン(64個)、パク・ヨンテク(22個)など、特定の選手に盗塁が集中し、意外と機動力を使えていなかったことにある。

 打線の中軸は、故障で時々欠場したがシーズンを通して4番を任されたペタジーニで、26本塁打、100打点とチームの2冠王となり、打率も.332と高くて四球を選ぶことも多く、相手投手にとっては非常に厄介な存在だった。2008年は不振だったが、見事復活し自身初の首位打者(打率.372)となったパク・ヨンテクは、18本塁打、22盗塁と、ペタジーニと変わらないくらいチームへの貢献度は高かった。またチョン・ソンフン、イ・ジニョンとFAで移籍した2人の野手も、レギュラーとして期待通りの成績を残した。38歳のベテラン、チェ・ドンスもファーストのレギュラーを守り、13本塁打、65打点の成績を残し、打線に欠かせない存在だった。
 
 比較的選手のそろっていた打撃陣に対して、投手陣は一部の選手を除いて壊滅状態で、チーム防御率5.42は8球団中6位、失点763は7位だった。またラッキーゾーン設置により、被本塁打数165は2008年の82から倍増と、プロ野球の打高投低化に拍車をかけた。

 特に先発陣が弱く、規定投球回数(133回)に達したのはエースのポン・ジュングンだけで、年間を通してローテーションを守り、チーム最多の11勝をあげ孤軍奮闘した。右の先発の軸として期待されたシム・スチャンは6勝どまりで、特にチョ・インソンとの口論事件以降1軍登板はなかった。シーズン後半先発として起用されるようになったキム・グァンスは、4勝どまりだったがプロ10年目にして最高のシーズンを送り、今後が期待される。またシーズン途中入団したバウアー、ジョンソンの外国人投手2人でわずか3勝に終わったのも誤算だった。

 リリーフ陣はそれなりに頭数が整っていたが、守護神として期待していたウ・ギュミンが不振に終わり、勝利の継投パターンをなかなか作れなかった。その代役として、イ・ジェヨンが抑えの役割を務め、チーム最多の11セーブを記録した。中継ぎでは、左だとベテランのリュ・テッキョンとオ・サンミン、右だと若手のチョン・チャンホンが軸となったが、他球団と比べて決して質が高いとは言えなかった。
 
 正捕手の座は、長年つとめていたチョ・インソンが安泰かと思われたが、シム・スチャンとのグラウンド上の口論事件で発覚したように実際は投手陣の信頼が得られておらず、打撃も低打率に終わるなど、かつてのような成績を残すことはできなくなっていた。代役としてシーズン終盤は若手のキム・テグンが起用され、ベンチからの信頼を高めた。


 対戦カードごとの勝敗を見ると、優勝したキアに2勝16敗1分けとほとんど勝てず最高のお得意様とされ、特に7月後半以降の快進撃に大きく貢献してしまった。同じ蚕室のライバルである3位トゥサンには12勝7敗と、長年の苦手意識をなくし9年ぶりに勝ち越しを決めたものの、最下位ハンファに6勝12敗1分けと負け越しているようでは、上位進出は望めない。


 2010年シーズンは、7年連続ポストシーズン進出失敗の低迷から脱出すべく、新人監督としては5年と異例の長期契約を結んだパク・チョンフン新監督のもと、本格的な再建に乗り出すこととなる。オフの補強としては、日本プロ野球・中日に在籍していたかつてのチームの主力打者だったイ・ビョンギュが、4年ぶりに復帰することが話題を呼び、ヒーローズから金銭25億ウォンと無名選手2名との交換トレードで走攻守そろった大型外野手イ・テックンを獲得した。またひざの故障や年齢面で不安のある主砲ペタジーニと契約せず、日本人・岡本慎也、ゴンザレスと外国人選手は2人とも投手となった。

 かつては8球団一番の観客動員数を誇ったLGも、近年の成績低迷により人気も低迷し、同じ蚕室野球場を本拠地とするトゥサンにも、順位のみならず観客動員数の面でも差をつけられている。2002年キム・ソングン監督のもと韓国シリーズに進出したものの、首脳陣との対立によりキム・ソングン監督が解任されてからずっと続く果てしなき迷走に、2010年こそ終止符を打つことができるであろうか。
 
 
[チームMVP]
パク・ヨンテク

(2009年シーズン成績)
111試合 打率.372 18本塁打 74打点 22盗塁

 生え抜きの主力打者だが、2008年はプロ入り後最低の成績に終わり、イ・ジニョンの加入もあってレギュラーの座すら危ぶまれていた。しかし5月以降本来の打撃を取り戻し、自身初となる首位打者となった。守備に難があるが、俊足巧打の外野手であるパク・ヨンテクは、順調なら2010年シーズンオフにFAを取得するため、その動向が注目される。
   
[ワーストプレイヤー]
パク・ミョンファン
(2009年シーズン成績)
4試合 0勝1敗 防御率6.19

 かつてはトゥサンのエースとして活躍し、2006年オフFAで大きく期待されて移籍したが、2008年以降はひじの故障もあって未勝利が続いている。2009年シーズンこそ、肩の故障で未勝利に終わった前年からの復活を目指したが、5月から6月にかけて先発で4試合起用されたが、本来の姿とは程遠く足の故障もありまたもや未勝利に終わった。2ケタ勝利が期待される投手がまったく活躍していないことで、チームの低迷が続いているのは確かだが、故障の多い選手に大金を払って活躍を期待したLGのフロントの計算違いだったとも言える。
  
(文責 : ふるりん