DAILY KOREAN PRO BASEBALL 2

1982年に発足し、2024年時点で10球団が加盟する韓国野球委員会(KBO)による韓国のプロ野球リーグ(通称KBOリーグ)に関するブログ。レギュラーシーズン、ポストシーズン(韓国シリーズなど)の試合速報や球団別の情報、現役プロ選手が含まれる野球韓国代表が出場する国際大会の情報などもお伝えします。 twitter : @kbodigest

  第2回 SKワイバーンズ

「高かった3連覇の壁」 

2009年成績 : 80勝47敗6分(韓国シリーズ準優勝)

チーム総合採点…80点


 2009年シーズンは、球団史上初となる韓国シリーズ3連覇を目指したSKワイバーンズ。その戦いを振り返ってみたい。

 名将キム・ソングン監督の下、2007,08年と韓国シリーズ2連覇を達成し、黄金時代を築きつつあったSKは、2009年シーズンも他球団よりも数段厚い選手層で優勝候補の大本命とされた。開幕前のWBC(ワールドベースボールクラシック)で不調だった若きエースのキム・グァンヒョンが心配され、予定されていた4月4日の開幕戦での先発を回避した。それもあってかハンファとの開幕戦は敗れたが、SKは翌5日のハンファ戦でシーズン初勝利をあげると、7日敵地・光州でのキア戦でキム・グァンヒョンが先発初登板して勝利した。

 キム・グァンヒョンの復調とともにSKは調子を上げ、4月は後半の8連勝もあり14勝6敗3分けの首位で終えた。なお、新外国人投手ジョンソン(元大阪近鉄)は、開幕後も状態が上がらないため退団となり、4月中ごろ代わりの新外国人として日本人投手・門倉健(元読売)が入団し、先発として起用されていった。4月23日のロッテ戦で、チェ・ビョンニョンがチョ・ソンファンに死球を当て、パク・チェホンがその後ロッテの投手に詰め寄ったことなどで、ベンチ総出の大騒ぎとなり、敵地・釜山での5月5日からのロッテ3連戦は異様なムードに包まれた。ロッテファンで埋め尽くされた社稷野球場で、5日は先発のキム・グァンヒョンが好投し快勝すると、翌6日は試合中グラウンドに乱入したロッテファンがおもちゃのナイフでパク・チェホンを脅すなどの騒動もあった。

 5月も半ばまでは5連勝、4連勝するなど順調に首位を快走していたが、5月22日からトゥサンとの首位3連戦で3連敗し、首位の座を譲ってしまった。しばらく一進一退の状態が続き、5月は16勝10敗1分けと勝ち越したが、2位のまま終えた。6月25日のキア戦では、引き分けに終わった前日24日同様、延長12回裏まで試合がもつれ、遠征中だったSKは登板できる投手がいなくなり、サードのチェ・ジョンをマウンドに送り暴投でサヨナラ負けしてしまい、勝負を捨てたのではないかと物議をかもしたこともあった。翌26日、結果を残せなかった左腕ニコースキー(元福岡ソフトバンク)に代わる新外国人投手グローバー(元読売)が、LG戦で韓国初先発を任され勝利に導くと、その後4連勝で6月は14勝10敗1分けと勝ち越し、28日トゥサンを抜いてに首位に立った。

 シーズンも半ばを過ぎ、韓国シリーズ3連覇へ順調に進んできているかのように思えたが、7月は苦難続きだった。3日まで7連勝、2位トゥサンと5ゲーム差をつけ、過去2年間のように首位独走態勢に入るかと思いきや、翌4日から雨天中止の試合をはさんで15日まで7連敗し、暗雲が垂れ込めてきた。その後トゥサン、キアとの3つどもえの首位争いとなり、7月31日のトゥサン戦に敗れ首位の座を譲り、7月は6勝11敗と負け越し3位で終えた。
 
 8月2日のトゥサン戦で、キム・グァンヒョンが打球で手を骨折して戦線離脱してしまった。8月中ごろにはキアの勢いが止まらず首位独走態勢を築き、不動のエースを欠いたまま戦わなくてはならない王者SKもここまでかと思われた。しかし25日のトゥサン戦でサヨナラ勝ちし勢いに乗り始め、28日トゥサンを抜いて2位に浮上すると、8月を5連勝で終え、14勝9敗で勝ち越し、キア追撃体制に入った。

 キム・グァンヒョンの代わりにグローバーが先発で安定した投球を続け、夏場に崩れたリリーフ陣が先発もリリーフもいとわないチョン・ビョンドゥ、コ・ヒョジュンと2人の左腕の好調などで持ち直し、9月のSKは快進撃を続けた。9月8日と9日、敵地・光州で調子を落としていたキアとの最後の直接対決2連戦でともに勝利し、8月からの連勝が11に伸び1ゲーム差に迫った。しかしこの後キアが再び連勝街道に入り、SKは16日のLG戦で延長12回裏グローバーの暴投で同点に追いつかれ引き分けてしまったのが痛く、26日の公式戦最終戦まで勝ち続けたが、キアに逃げ切られてしまった。SKは惜しくも1勝差で公式戦2位に終わったが、8月25日から9月26日まで引き分け1つをはさんでの韓国プロ野球新記録となる19連勝を達成し、3位以下のチームとの地力の差を示した。勝率.602は、公式戦2位のチームとしては史上最高であった。

 ポストシーズンでは、ロッテとの準プレーオフを勝ち抜いたトゥサンと10月7日からプレーオフで対戦した。2年連続で韓国シリーズで対戦し勝利してきた相手であるが、キム・グァンヒョン、ソン・ウンボム、チョン・ビョンドゥのと3人の主力投手を故障で欠くことで、苦しい戦いが予想された。
 それもあってか本拠地・仁川での第1戦、2戦と連敗してしまい、がけっぷちに立たされた。しかし敵地・蚕室での第3戦、延長10回表ここまで不振だったパク・チェサンの幸運なタイムリーもあって勝利すると、第4戦も終盤に突き放して連勝し、2勝2敗のタイに持ち込んだ。仁川に戻った10月13日の第5戦は、1点を先制されたが雨天ノーゲームとなる幸運にも恵まれ、翌14日の再試合では1回裏早々と先制点を奪い、その後トゥサン投手陣が崩れ大勝し、3連勝で3年連続の韓国シリーズ進出を決めた。終盤の19連勝とあわせて、選手層が厚いSKの底力を見せた戦いだった。またチーム本塁打王のパク・チョングォンがチャンスに本塁打、タイムリーを打ち続けたのも大きかった。

 10月16日からのキアとの韓国シリーズは、予想以上の激戦となり、決着は第7戦までもつれ込んだ。第7戦は6回表まで5−1とリードしていたが、プレーオフから2週間以上の激闘が続いていたSK投手陣には疲労が蓄積していて、12年ぶりの韓国シリーズ優勝を目指すキアの勝利への執念を抑えきれず、自慢のリリーフ陣が打ち込まれ5−5の同点にされると、9回裏ナ・ジワンのサヨナラ本塁打で3連覇の夢はついえてしまった。公式戦終盤フル回転していたが、プレーオフに続いて出場できなかった左腕チョン・ビョンドゥの不在が痛かった。何の因縁か、前身のヘテ時代、史上唯一の韓国シリーズ3連覇以上(1986−89年まで4連覇)を成し遂げていたキアに、2チーム目となる3連覇を阻まれてしまった。
 
 チームの成績を見ると、投手陣はチーム防御率3.68(同1位)と、先発、リリーフの質、量ともに随一であった。先発陣はキム・グァンヒョン(12勝)、右のエースに成長したソン・ウンボム(12勝)のみならず、シーズン途中入団の門倉(8勝)、グローバー(9勝)の両外国人投手、先発のみならずロングリリーフでもフル回転した左腕コ・ヒョジュン(11勝)も欠かせない存在となった。また、2008年まで守護神だったチョン・デヒョンは途中から中継ぎに回り。不動の守護神はいなかったが、右のユン・ギルヒョン、左のイ・スンホ(背番号20)、チョン・ウラム、チョン・ビョンドゥなど、得意の細切れ継投は2009年も健在であった。また、足の負傷で戦線離脱したベテランのパク・キョンワンに代わって、これまで第2捕手だったチョン・サンホが夏場から正捕手の座に収まり、投手陣の信頼を受け大きく成長した。

 打線は個人個人があまり目立たず、上位から下位まで切れ目がなく、公式戦でのチーム打率.285、チーム本塁打数166本、得点732は8球団中1位、盗塁数は181個の同2位と、他球団を圧倒する攻撃力を誇っていた。チーム最多本塁打は左の大砲パク・チョングォンの25本で、ポストシーズンでは4番として活躍した。そのほかチェ・ジョンの19本など2ケタ本塁打を記録した打者が10人もいた。
 盗塁も自身初となるシーズン50盗塁以上を記録した快足のチョン・グヌ(53盗塁)をはじめ、33盗塁のパク・チェサンなど2ケタ盗塁を記録した打者も6人いて、一発も足もある非常に厄介な打線だった。なお、打線のキーマンは主に2番を打つパク・チェサンで、チーム最多の81打点を記録し、33盗塁の足だけでなく15本塁打と一発もあり、打線に火をつける存在だった。

 2010年シーズンは、王座奪回の1年となるが、キム・ソングン体制となって4年目になるチームのサイクルを考えると、今後のことも考え2009年にあまり見られなかったフレッシュな若手の台頭が欠かせない。投打ともに隙のないSKらしい野球が健在ならば、3度目の韓国シリーズ優勝は確実に近づくであろう。

 
[チームMVP]

パク・チョングォン

(2009年シーズン成績)
131試合 打率..275 25本塁打 75打点 5盗塁

 2008年まで内野の控えや代打として主に起用されていた左の長距離砲が、28歳にしてついに開花した。これまでプロ通算5年間で7本塁打にとどまっていたが、2009年シーズンはチーム最多の25本塁打を記録し、特にポストシーズンでは12試合で打率.425、5本塁打、17打点の大爆発で、日替わり打線が特徴的なSKにおいて、頼れる4番へと成長した。メガネをかけたどこか親しみやすい風貌も印象的である。2年連続での活躍が、SKの王座奪回の鍵を握る。

 
[ワーストプレイヤー]

該当者なし
 
(文責 : ふるりん