DAILY KOREAN PRO BASEBALL 2

1982年に発足し、2024年時点で10球団が加盟する韓国野球委員会(KBO)による韓国のプロ野球リーグ(通称KBOリーグ)に関するブログ。レギュラーシーズン、ポストシーズン(韓国シリーズなど)の試合速報や球団別の情報、現役プロ選手が含まれる野球韓国代表が出場する国際大会の情報などもお伝えします。 twitter : @kbodigest

  第6回 キアタイガース

 元メジャーリーガーのソ・ジェウンの入団などで、上位進出も可能だと評判だった2008年シーズンだが、終わってみれば序盤の出遅れなども響き、公式戦を6位で終え2年連続ポストシーズン進出に失敗した。ソ・ジェウンなどの大物選手たちが期待にこたえられず、エースのユン・ソンミン以来信頼できる先発が少なかったことや、長打力不足の打線など、全体的な選手層の薄さが目立った。SKで監督経験があり、就任2年目となったチョ・ボムヒョン監督は、2009年シーズンこそ自分のカラーに選手たちを染めて戦いたいところだ。


【投手陣】

(先発) 
◎ユン・ソンミン、ソ・ジェウンガトームソン、ロペス、イ・ボムソク、イ・デジン
(中継ぎ)
ユ・ドンフン、ソン・ヨンミン、イム・ジュンヒョク、コ・ウソク、△ヤン・ヒョンジョン、クァク・チョンチョル、△チン・ミンホ
(抑え)
ハン・ギジュ

注 : ◎は2009年WBC韓国代表、△は左腕

 
 比較的若くて有望な投手がそろっている。特にユン・ソンミンはまだ22歳ながら、チームのエースとして安定感ある投球を続け、2008年シーズンの最優秀防御率投手に輝き、北京五輪、2009年WBCでも活躍し、韓国を代表する右腕に成長した。ただこれに続く先発投手が弱く、元メジャーリーガーとして期待されながら、故障もあり満足な成績を残せなかったソ・ジェウンの奮起を期待したい。若手に混じってベテランのイ・デジンが投手陣の精神的支柱となる。また日本プロ野球で活躍した新外国人ガトームソン(元福岡ソフトバンク)、ロペスの2人も先発ローテーションの一員として起用されるが、2008年はホセ・リマなど3人の外国人投手が戦力として機能しなかったため、その二の舞は避けたい。
 さらに、全体として左腕不足は明らかで、ヤン・ヒョンジョンなどの若手左腕が先発に定着しないと、台所事情は苦しくなる。またリリーフ陣も若き守護神ハン・ギジュが調整遅れで示範競技に登板できなかったなど、不安要素が大きい。それでも打線が強力とはいえないだけに、投手陣の踏ん張りが上位進出への最大の鍵となるであろう。


【打撃陣】

(ベストオーダー)

1.イ・ヨンギュ(右) ◎△
2.イ・ジョンボム(中) 
3.ナ・ジワン(左) 
4.チェ・ヒィソプ(指) △
5.イ・ジェジュ(一)  
6.イ・ヒョンゴン(三) 
7.キム・ソンビン(遊) 
8.キム・サンフン(捕) 
9.キム・ジョングク(二)  

(控え)
チャ・イルモク、△チャン・ソンホ、アン・チホン、ホン・セワン、△キム・ウォンソプ、イ・ジョンボム、△チェ・ギョンファン

注 : ◎はWBC韓国代表、△は左打者、×は両打ち。

 2008年シーズンは主砲として期待された元メジャーリーガーのチェ・ヒィソプが体調不良でまったく活躍できず、打線に軸ができなかった。さらに長年主力打者として活躍してきたチャン・ソンホも、故障でまともに働けず、2009年シーズンはこの2人の左打者にとって復活の1年となる。
35歳を超えたベテランの中距離打者イ・ジェジュを越える選手が出ないと、2009年も苦しい戦いとなるであろう。北京五輪、2009年WBCでも活躍した1番打者イ・ヨンギュがいくら出塁し盗塁を決めても、それを返す打者がいないと得点にはならない。また8月に39歳となるベテランで精神的支柱のイ・ジョンボム(元中日)は、引退勧告を拒否して現役を続行し、外野のレギュラー復帰にかける。まだまだファンからの声援は圧倒的に大きく、存在感は失われていない。
 比較的有望な若手が少ない中、プロ2年目を迎えるナ・ジワンがクリーンアップを打ち、好手ともに成長できるかが注目される。また守備面でも長年セカンドを守ってきたセカンドの名手キム・ジョングクの後釜がほしいところで、2008年は高卒ルーキーながら100試合以上に出場したキム・ソンビンの更なる成長に期待したい。
 
 キアの前身のヘテは、ソン・ドンヨル(元中日、現サムソン監督)などを擁し、史上最多の韓国シリーズ9度優勝、さらに史上最長の4連覇達成(1986−89年)と黄金時代を築いた。だが2001年シーズン途中にキアへ生まれ変わってからは、韓国シリーズ出場すら1度もない。数多くの名選手を輩出してきた光州の誇り高きチームは、いつになったらその栄冠を取り戻すことができるのであろうか。2009年は何とかして3年ぶりのポストシーズン進出を達成し、新たな黄金時代の礎を築くことをファンは期待している。


本拠地
 光州・無等運動場野球場

 韓国南西部最大の都市・光州(クァンジュ)は、ソウルや釜山などの大都市から遠く、発展も遅れている。その理由として韓国特有の地域対立があり、釜山、大邱を中心とした南東部出身者の政治家が多かった1960年代から90年代後半までの韓国政府からも差別的待遇を受けてきた。そのため光州を中心とした地域の人間は反骨心が強く、非常に熱しやすい性格の者が多いと言われている。
 かつて黄金時代を築いたタイガースは光州の誇りであったが、ここ5年間で2度の最下位を味わい、ファンたちは落胆の日々を送っている。だが数は決して多くないが、どの球団のファンにも負けない情熱的なファンたちは、ご当地ソングである「南行きの列車(ナメンヨルチャ)」を歌いチームに声援を送り続けている。またソウル・蚕室野球場でのキア戦も、光州や周囲の全羅道出身者が集まるため、3塁側ビジター応援席もかなりにぎやかになる。
 球場はかなり老朽化が進んでいるが、光州市は財政悪化を理由に新球場建設を見送っている。しかし1塁側にはいつも熱心のファンが通い、地方球場らしい雰囲気にあふれている。ただ球場の周囲は工場などの多い下町であり、商店や食堂などは少ない。またKTXの光州駅や、韓国有数の規模の光州のバスターミナルからのアクセスはあまりいいとは言えず、言葉に自信のない外国人はタクシーで行くことをお勧めする。試合後食事などをする場合は、比較的近いデパートや食堂が集中するバスターミナル周辺の繁華街へ足を運ぶといい。
 球場の隣にはキアのトラのマスコットが書かれた5階建ての建物が見られるが、「メンホグァン(猛虎館)」というキアの選手の寄宿舎である。
 


(応援団長からのインタビューを受けているのはエースのユン・ソンミン。)


[交通アクセス]
Korail(韓国鉄道公社)光州駅からはバスで約10分。
ただし、ソウル、大田方面からの湖南線の木浦(モクポ)行き超特急KTXは、光州駅に行かず光州市内の西部にある松汀里(ソンジョンニ)にしか停車しないので、要注意。
光州総合バスターミナルからはバスで5,6分程度。

(文責 : ふるりん