DAILY KOREAN PRO BASEBALL 2

1982年に発足し、2024年時点で10球団が加盟する韓国野球委員会(KBO)による韓国のプロ野球リーグ(通称KBOリーグ)に関するブログ。レギュラーシーズン、ポストシーズン(韓国シリーズなど)の試合速報や球団別の情報、現役プロ選手が含まれる野球韓国代表が出場する国際大会の情報などもお伝えします。 twitter : @kbodigest

  第1回 SKワイバーンズ

韓国シリーズ2連覇達成で黄金時代到来へ 
2008年成績 : 83勝43敗 韓国シリーズ優勝

 2007年に球団創設8年目にして韓国シリーズ初優勝となったSKの2008年シーズンは、どの球団よりも早く、1月5日からの日本・高知市での海外キャンプから始まった。猛練習で有名な名将キム・ソングン監督は、奢ることなく猛練習でチームをさらに高い次元に引き上げようとした。目標は2007年に決勝で日本代表・中日に敗れ逃してしまったアジアシリーズでの優勝であり、韓国シリーズ2連覇はそのための単なる通過点に過ぎなかった。
 前年と違って、ディフェンディングチャンピオンとなったSKは優勝候補大本命だった。投打ともに他球団を圧倒する選手層の中で、最も活躍が期待されたのは、7月にようやっと20歳になる若き天才左腕キム・グァンヒョンだった。韓国シリーズ相手でトゥサンに、アジアシリーズ2007で中日相手に好投しその名を国内外にとどろかせたキム・グァンヒョンは、プロ2年目の08年は1シーズンを通しての活躍を期待された。

 3月28日のLGとの開幕戦は、1982年以来26年ぶり2度目となるチョン・サンホの開幕戦サヨナラ本塁打で5−4と辛勝した。4月1日、2日のロッテ戦に連敗したが、11日のヒーローズ戦まで7連勝とし、好調ロッテとの首位争いが続いた。その後また5連勝し単独首位に立ち、19日一旦ロッテに同率首位に並ばれたが、20日キム・グァンヒョンがトゥサン戦で4勝目をあげ単独首位に立つと、その座をシーズン終了まで一度も譲ることはなかった。SKは29日のハンファ戦までまた7連勝し、キム・グァンヒョンが4月だけで5勝、チェ・ビョンニョンも4勝と好調で、4月を終えて20勝6敗、2位ロッテとのゲーム差は5と、早くも独走態勢に入り始めた。
 5月になってもSKは大きく崩れることはなかったが、2位に浮上した好調トゥサンとの3連戦(13−15日)で今季初の3連敗を喫するなど、他球団もSKに離されまいと必死だった。だが大きく崩れることはなく、21日のヒーローズ戦で勝利し30勝1番乗りを達成した。その後のロッテとの敵地釜山での3連戦(23−25日)で3連敗するなど、勢いにかげりが見え始めた。5月はキム・グァンヒョンも2勝に終わり、先発陣がなかなか勝てず、13勝12敗と1つの勝ち越しにとどまった。
 ただここ一番という勝負どころでは強く、6月6−8日の2位ロッテとの3連戦で3連勝し、ゲーム差を7.5まで広げ突き放した。これで勢いに乗りSKは12日のLG戦で19得点するなど打線が爆発し、13日のキア戦まで9連勝となった。なお、15日のキア戦でユン・ギルヒョンが年上のチェ・ギョンファンにビーンボールを投げ悪態をつき、それに端を発して両軍のにらみ合いとなった件に対し、キアファンを中心に抗議が相次いだため、キム・ソングン監督が非礼を詫び18日のトゥサン戦を欠場し、ユン・ギルヒョンもしばらく2軍に降格することもあった。6月はキム・グァンヒョンが4勝と好調だったこともあり、17勝3敗と圧倒的な強さで、2位トゥサンとのゲーム差が10まで広がった。

 7月になり、じめじめした空模様もあってか、2日から5日までSKはシーズン初の4連敗を喫した。その後も打線が湿りがちで波に乗れず、2位トゥサンが9連勝と猛追し17日にはゲーム差が3.5まで縮まった。だがその後トゥサンが8連敗し、SKは大崩れしなかったため7月末にはゲーム差がまた8.5まで広がり、8月の北京五輪による中断期間を迎えた。雨天中止の相次いだ7月は、7勝11敗と初の負け越しに終わり、キム・グァンヒョンも1勝もできなかっったが、独走態勢に揺るぎはなかった。

 8月の北京五輪には、SKからエースのキム・グァンヒョン、俊足の内野手チョン・グヌ、2006年WBCで活躍した外野手イ・ジニョン、守護神チョン・デヒョンが選ばれた。キム・グァンヒョンは予選リーグ、準決勝と2度の日本戦で先発し、日本の打者を切りきり舞いさせた。チョン・グヌはカナダ戦で貴重な決勝ソロホームランを打った。イ・ジニョンは準決勝の日本戦で、藤川球児(阪神)から同点タイムリーを打った。チョン・デヒョンは予選リーグの日本戦、キューバとの決勝戦ともに9回裏のピンチで登板し、優勝を決める最後のマウンドにも立つなど、SKの4選手は史上初の野球金メダル獲得に大きく貢献した。
 8月26日に公式戦が再開され、28日のトゥサン戦でキム・グァンヒョンが約2ヶ月ぶりの勝利をあげると、SKは2年連続の公式戦優勝に向かって加速し始めた。9月6日まで6連勝すると、9日には優勝へのマジック12が点灯した。トゥサン、ロッテが激しい2位争いを繰り広げ連勝を続ける中、SKも勝利を積み重ね、9月21日のキア戦でキム・グァンヒョンの好投もあり、6連勝で見事2年連続の公式戦優勝を達成し、韓国シリーズ出場を決めた。北京五輪後は18勝5敗と圧倒的なハイペースで他球団を寄せ付けなかった。キム・グァンヒョンは北京五輪後は5連勝でシーズンを終え、最多勝(16勝)、最多奪三振(150個)のタイトルを獲得し、レギュラーシーズンMVPにも選ばれた。
 
 10月26日開幕の韓国シリーズの相手は、サムソンとのプレーオフを勝ち抜いた公式戦2位のトゥサンだった。SKは10月5日の公式戦終了後から3週間のブランクがあり、実戦から遠ざかっていた第1戦は先発キム・グァンヒョンが攻略され、2−5で敗れた。だが第2戦以降は公式戦で13ゲーム差をつけて公式戦で優勝した地力の差を見せ付けた。第2戦をリリーフ陣の好投で5−2と勝利し、舞台をトゥサンの本拠地蚕室野球場に移した第3戦は、キム・ヒョンス、イ・ジョンウクなどトゥサンの主力打者を徹底的に封じ、SKが3−2で接戦を制した。
 第4戦もSKがリリーフ陣が踏ん張り4−1で勝利し、韓国シリーズ2連覇に王手をかけた。第5戦はキム・グァンヒョンが先発し、トゥサンの先発キム・ソヌと投手戦を繰り広げた。SKは7回、8回に1点ずつを入れリードすると、9回裏腰を痛めて登板できなかったチョン・デヒョンの代わりにマウンドへ上がったチェ・ビョンニョンが、一打逆転の満塁の場面をしのぎ、見事SKが4勝1敗で韓国シリーズ2連覇を達成した。

 そして今季最大の目標としてきたアジアシリーズ(11月13−16日)で、北京五輪で韓国が日本を撃破し金メダルを獲得したこともあり、SKは優勝候補に挙げられていた。緒戦の日本代表・埼玉西武戦で、エースのキム・グァンヒョンが先発したが、5回途中3失点で降板とあまり出来はよくなかった。しかしパク・チェホン、イ・ジェウォンの本塁打やリリーフ陣の好投で、SKが4−3で勝利し、2007年の中日戦に続き、2年連続で日本代表相手に勝利を収め、順調なスタートを切った。次の中国代表・天津戦も15−0と7回コールド勝ちし、前大会で13−1とコールド勝ちした台湾代表・統一相手の勝利は確実で、決勝進出は間違いないと思われた。
 だが統一は前年の屈辱を晴らそうと、どのチームよりも打倒SKに燃えていた。SKはイ・ジニョンの本塁打で先制したものの、4回先発チェ・ビョンニョンが2本塁打を浴び1−5と逆転されてしまった。その後相手のエラーもあり4−6と2点差まで追いすがったが、普段は鉄壁のはずの継投が後手後手に回り、8回裏決定的な4点を追加されてしまい、4−10で敗れた。埼玉西武、統一と同じ2勝1敗で並んだが、失点率の関係で決勝進出を逃した。こうしてSKの1年越しの悲願は、統一という思わぬ宿敵の登場によって達成されず、アジアシリーズ制覇の夢は2009年に持ち越しとなった。

 
 投打の成績を振り返る。
 投手陣は、チーム防御率が8球団1位(3.22)と質、量ともに他球団を圧倒していた。エースのキム・グァンヒョンが君臨し、右の先発の柱チェ・ビョンニョンも2年連続2ケタ勝利の10勝をあげた。1年間を通して先発ローテーションを守った外国人投手レイボーン(元広島)は5勝どまりだったが、安定した投球内容だった。前述の先発3本柱と8勝したソン・ウンボム以外、先発のコマはそんなに豊富ではなかったが、リリーフ陣が非常に充実していた。アンダースローの守護神チョン・デヒョンは20セーブを記録しただけでなく、右のユン・ギルヒョン、チョ・ウンチョン、イ・ヨンウク、左のチョン・ウラム(チーム最多の85試合に登板)、カ・ドゥギョムなど中継ぎ陣が豊富だった。またベテラン右腕のキム・ウォンヒョンはたびたびロングリリーフで好投し、12勝を記録し投手陣の影の功労者となった。
 打線は個人タイトルを獲得した打者こそいなかったが、レギュラークラス全員の成績がすばらしく、チーム得点(591)こそ2位だったが、チーム打率は8球団1の.282だった。特にまだ22歳のチェ・ジョンはチーム最高の打率.328を記録し、サードのレギュラーに定着しただけでなく、勝負強い打撃で韓国シリーズMVPにも輝き、飛躍の一年となった。またベテラン外野手のパク・チェホンは打率.319だけでなく、19本塁打、72打点とチームの2冠王となり、日替わり打線のSKにあって4番を任されることが多く、打線の柱となった。またトップバッターのチョン・グヌは40盗塁と、積極的な盗塁でチームを勢いづけた。チーム本塁打は89本(4位)と決して多いほうではなかったが、上位から下位まで打線に穴がなく、相手の隙をつく走塁やチャンスを確実にものにするしたたかさで、きっちりと得点を奪い続けた。
 守備面では、8球団最多の失策102個と意外な面が見られたが、内野ではレギュラーに定着したショートのナ・ジュファンが大きく成長したのが収穫だった。またパク・チェサン、チョ・ドンファ、キム・ガンミンなどからなる外野守備陣は鉄壁で、韓国シリーズでも再三チームの危機を救った。ベテランの正捕手パク・キョンワンも経験豊富なリードで投手陣を支えた。
 外国人選手は、レイボーンのほかにダーウィン・クビアン(元阪神)が開幕時は在籍し、先発として起用されたがまったく結果を残せず4月中に退団となった。その後契約したレイも1勝もできず退団し、7月に契約したジャン(元阪神)がリリーフとして起用され、故障で戦線離脱した守護神チョン・デヒョンの穴埋めとして、9月以降で6セーブをあげたが、やや安定感に欠け韓国シリーズ、アジアシリーズのメンバーからは外れた。

 
 名将キム・ソングン監督の指揮の下、韓国シリーズ2連覇を達成し、球団創設から10年を経たずして黄金時代を迎えつつあるSKワイバーンズだが、2009年はヘテ(現キア)以来の韓国シリーズ3連覇の期待がかかる。ベテラン、中堅、若手と選手構成のバランスがいいSKなら十分可能なことではあるが、アジアシリーズで統一相手に大敗してしまったところを見ると、2連覇を達成したことで若干の気の緩みがあったともいえる。また、長年チームを支えてきたが、故障によるここ2年間の出場機会減少もあり、チーム内での立場が微妙になっていた韓国屈指の外野手イ・ジニョンがFAでLGに移籍するなど、まったく不安材料がないわけではない。他球団を圧倒する練習量で知られるキム・ソングン監督が、2009年はどのようにチーム目標を設定し、選手たちをまとめあげていくのかに注目したい。

(文責 : ふるりん