DAILY KOREAN PRO BASEBALL 2

1982年に発足し、2024年時点で10球団が加盟する韓国野球委員会(KBO)による韓国のプロ野球リーグ(通称KBOリーグ)に関するブログ。レギュラーシーズン、ポストシーズン(韓国シリーズなど)の試合速報や球団別の情報、現役プロ選手が含まれる野球韓国代表が出場する国際大会の情報などもお伝えします。 twitter : @kbodigest

  韓国シリーズ : SK−トゥサン

 2007年に続き、2年連続となった両チームの対戦は、2位のトゥサンに13ゲームと圧倒的な大差をつけ独走優勝したSKに、トゥサンが去年の雪辱を晴らそうと挑みかかるという形になった。なお前回の対戦は、ハンファとのプレーオフを3連勝で終わらせたトゥサンが、公式戦で22勝したエースのリオスの好投もあって、第1戦2戦を連勝し、優勝は確実かと思われた。しかし第3戦で乱闘騒ぎがあってトゥサンが冷静さを失ったこともありこの試合に敗れると、第4戦では公式戦ではあまり活躍できなかった期待の19歳キム・グァンヒョンが一世一代の好投を見せ、リオスに投げ勝った。これで流れは地力に勝るSKに傾き、第5戦6戦も勝利したSKが4連勝で韓国シリーズ初優勝を決めた。

 あれから1年たち、両チームの差は確実に広がった。前年の初優勝で大きく自信を得たSKは、キム・グァンヒョンが不動のエースとして成長し、最多勝(16勝)、最多奪三振の2冠に輝いただけでなく、厚い選手層で投打ともに他球団を圧倒し、4月半ばに首位に立つと1度もその座を譲ることはなかった。9月中に早々と韓国シリーズ出場を決めてしまい、10月5日に公式戦全日程を終了した後、20日以上実戦から遠ざかっていたこともあり、韓国シリーズに備えて紅白戦などを含めた、キム・ソングン監督お得意の「地獄の訓練」と呼ばれたハードな合宿を行い調整に努めた。

 SKの投手陣を分析すると、北京五輪でも2度の日本戦で活躍した大舞台にも強いキム・グァンヒョンが絶対的な存在である。一方でチーム防御率は8球団中トップの3.28と、第1戦に先発するキム・グァンヒョン以外の投手も粒ぞろいである。第2戦以降の先発はチェ・ビョンニョン(10勝)、レイボーン(5勝、元広島)など実績のある選手が中心となり、トゥサンに止めを刺すかもしれない第4の先発が候補は多数いるものの誰になるかはっきりしていないのが唯一の悩みどころだ。キム・ソングン監督の選手起用に注目したい。
 先発が打ち込まれても、SKには質量そろったリリーフ陣が控えている。注目は右のベテランの中継ぎキム・ウォンヒョン(12勝)、左の中継ぎの柱に成長したチョン・ウラム(9勝)だ。その他にも右のアンダースローのチョ・ウンチョン、タフな右の速球派イ・ヨンウク、左のワンポイントのカ・ドゥギョムなど、豊富な顔ぶれがそろっている。
 抑えには北京五輪で活躍したがアンダースローの変化球投手、チョン・デヒョンが去年に続いて任されると思われる。ただ北京五輪の疲労が抜けずに9月途中から戦線離脱し、実戦から遠ざかったのが不安点だ。また、7月に途中入団した外国人投手ジャン(元阪神)は、チョン・デヒョンの離脱後抑えを任されたが、不安定な面が目立ちベンチの信頼を勝ち得ず、韓国シリーズの出場メンバーに登録されなかった。経験豊富な正捕手パク・キョンワンが、巧みに多士済々の投手陣をリードしていくと思われる。

 SK打線は、チーム打率は2位のロッテと僅差だったが8球団中トップの.282、得点は632(2位)とかなり強力だ。チーム本塁打は89本で8球団中4位と少ないものの、1位のトゥサンに次ぐチーム盗塁数170個と機動力があり、頭抜けた成績を残した打者は少ないが、上位から下位まで打線に切れ目がない。またキム・ソングン監督は日替わりオーダーで打線を組み、対戦相手に手の内を読ませないことを得意としている。
 打線の構成は、上位を打つことが多い40盗塁と快足のチョン・グヌが勢いをつけ、チーム最多本塁打(19本)のベテランのパク・チェホン、若きスイッチヒッターで打率.328をマークしたチェ・ジョン、勝負強さが光り2007年韓国シリーズMVPのベテランの左打者キム・ジェヒョンなどの中軸が得点源となる。また故障が多く95試合の出場にとどまったが、韓国屈指の外野手イ・ジニョンも韓国シリーズに間に合うように調整し、怖い存在となりそうだ。
 守備の要はショートのレギュラーに成長したナ・ジュファンで、チョン・グヌと二遊間を組む。内野を中心にエラーは多く8球団中トップ(90個)だが、外野はパク・チェサン、チョ・ドンファ、キム・ガンミンなど守備範囲の広い選手が多く、失点にはあまりつながっていない。

 磐石の布陣を敷く王者SKに対して、トゥサンは特に先発投手陣で大きく見劣りする。日本プロ野球東京ヤクルトへ移籍したリオス(薬物問題で東京ヤクルトを退団)の穴を埋めきれず、公式戦では兵役から復帰したイ・ジェウなど中継ぎ陣を厚くして、何とかしのいだ。それもあってプレーオフでも先発に勝利がついたのは第5戦のランデルだけで、先発が6回まで投げぬいた試合はなかった。韓国シリーズでも先発を任せると思われた元メジャーリーガーのキム・ソヌが、プレーオフでは先発した2試合とも期待はずれで、やりくりのうまいキム・ギョンムン監督がどのような選手を代役に立てるかが注目される。
 幸いトゥサンのリリーフ陣は比較的安定していて、プレーオフで3勝をあげたチョン・ジェフン、イム・テフン、イ・ジェウなどの右腕に期待がかかる。ただプレーオフは第6戦まで総力戦が続き、中2日で韓国シリーズを迎えることとなり、激闘の疲労からどこまで回復できるかがポイントになりそうだ。

 トゥサン打線は、1番打者イ・ジョンウクを中心としたチーム盗塁数8球団トップ(177個)の快足を生かした機動力が持ち味で、両チームともに比較的似たような野球を展開する。若き首位打者キム・ヒョンス、主砲キム・ドンジュ、今季好調のホン・ソンフンなどの中軸は、決してSKに見劣りしない。また、プレーオフでは2番に抜擢され4割以上の打率を残した若手オ・ジェウォンにも注目したい。シーズン中の得点だけだったら8球団中トップ(647点)と、攻撃力だけだったら数字上はSKに負けていないのである。

 ただSKとトゥサンの決定的な違いは、ここ一番の集中力と接戦をものにする強さだ。投手力を中心に選手層など総合力で上回るSKに対して、トゥサンがどのように戦うか、策士キム・ギョンムン監督が7年ぶり4度目の韓国シリーズ優勝に向け、どのような手を打ってくるかにも注目したい。

(文責:ふるりん