DAILY KOREAN PRO BASEBALL 2

1982年に発足し、2024年時点で10球団が加盟する韓国野球委員会(KBO)による韓国のプロ野球リーグ(通称KBOリーグ)に関するブログ。レギュラーシーズン、ポストシーズン(韓国シリーズなど)の試合速報や球団別の情報、現役プロ選手が含まれる野球韓国代表が出場する国際大会の情報などもお伝えします。 twitter : @kbodigest

  北京五輪野球 予選リーグ展望


その1 投手陣

 3月の世界最終予選時と比較し、質量ともに向上したが、全体としてはキム・グァンヒョン、リュ・ヒョンジン、ポン・ジュングンなどの先発陣が左、チョン・デヒョン、ハン・ギジュ、オ・スンファンなどのリリーフ陣が右と偏りがある。先発はまだ20歳のキム・グァンヒョン、21歳のリュ・ヒョンジンと若き左腕2人が軸となり、元メジャーリーガーのポン・ジュングンがそれに続く。右の先発はソン・スンジュンが予定されているが、不調のイム・テフン(トゥサン)に代わり5日急きょ召集されたユン・ソンミンの可能性もある。現在12勝と最多勝争いトップであり、7月は4連勝と安定した投球内容で、状態さえよければ初の国際舞台でも十分に活躍できるであろう。
 短期決戦でハードな日程が続く国際大会では、先の試合を考えて先発を早めに降板させることが多い。そのため、ロングリリーフにどの選手を回すかも重要となってくる。中継ぎのスペシャリストは左のクォン・ヒョクだけなので、普段は先発で活躍するチャン・ウォンサム、ユン・ソンミンかソン・スンジュンのどちらかが起用されると思われる。強豪相手に終盤リードを奪えば、上記のリリーフ陣が7回以降小刻みな継投で登板するであろう。ただ肝心な9回に誰を持っていくかはやや難しく、現在セーブトップで韓国ナンバー1ストッパーとして名高いオ・スンファンが、5日のキューバ戦で2本塁打を浴びるなど不安材料がある。


その2 攻撃・守備

 今季のプロ野球での成績よりも、アジア地区予選・世界最終予選とここ最近の代表チームでの実績を重視した選手構成となっている。そのため本塁打、打点の二冠王キム・テギュン(ハンファ)や、今季大きく成長した長距離砲キム・テワン(ハンファ)などが外れている。

<予想スタメン>

1.イ・ジョンウク(中)
2.コ・ヨンミン(二)
3.イ・ジニョン(右)
4.イ・スンヨプ(一)
5.キム・ドンジュ(三)
6.イ・デホ(指)
7.キム・ヒョンス(左)
8.チン・ガビョン(捕)
9.パク・チンマン(遊)

 打線の軸は、シドニー五輪WBCなどこれまでの国際大会で活躍してきたイ・スンヨプである。今季所属先の読売では、打撃不振で3ヶ月ほど2軍へ降格していたが、7月末に1軍昇格し五輪へ向けて徐々に調子を上げている。その前後を打つ選手は、現在盗塁王のイ・ジョンウクなど快足の選手が起用されるであろう。イ・スンヨプの前の3番打者は流動的で、国際経験豊富で柔軟な打撃で長打も期待できるイ・ジニョンや、闘志あふれるプレーが印象的な快足のチョン・グヌなどが起用されるであろう。
 イ・スンヨプの後を打つのはキム・ドンジュ、イ・デホの右の強打者である。この2人はアジア予選で打てなかった汚名を返上したい。イ・デホは7月後半に長かったスランプから脱し、オールスター戦ではMVPに輝くなど上り調子であるが、国際経験豊富なキム・ドンジュは負傷がちで状態が不安である。今季ブレークし首位打者となっているまだ20歳のキム・ヒョンスをどの打順で起用するかも注目である。一発は期待できないが器用なバッティングを考えると上位に置きたいところだが、国際経験が少ないので下位で気楽に打たせても面白い。
 
 守備面では、内野の要である二遊間で二塁にコ・ヨンミン、ショートにパク・チンマンが主に起用されると思われる。鉄壁の守備力を誇るパク・チンマンは今季打撃成績はよくないが、これまでの国際大会での実績により選ばれた。外野寄りに深く守り「二翼手」の異名をとるコ・ヨンミンは守備範囲も広く、今回も内野守備のキーマンとなる。なおベテランの名手キム・ミンジェが守備固めとして起用されるであろう。
 外野守備は俊足のイ・ジョンウクの肩が弱く、それをカバーするためスタメン出場も考えられるが俊足・強肩のイ・ヨンギュが守備固めで出場することもある。捕手の人選はやや難しいが、大学時代アトランタ五輪に出場した主将チン・ガビョンは投手陣の信頼が厚い。だが打撃面ではまだ22歳のカン・ミンホが上回る。状況に応じて捕手を使い分けることになりそうだ。


その3  対戦国

 13日の緒戦が強豪アメリカ戦であるのがやや厳しいところだ。大学生1人を除いて全員マイナーリーグの選手であるが、トレバー・ケーヒル(投手)、マット・ラポルタ(外野手)、デクスター・ファウラー(外野手)など若手の有望株もいて、決して侮ることができない。またジョン・ゴール(元ロッテ)のような韓国経験者もいる。現在メジャーリーグを目指している若手選手たちが力を発揮すると、韓国はかなりの苦戦を強いられるであろう。先発はマイナーリーグで長くプレーし米国の選手をよく知る右腕ソン・スンジュンが予想されるが、元メジャーリーガーということでポン・ジュングンの起用も考えられる。
 翌14日の中国戦は、韓国のほうが地力でずっと勝っているが、開催国のため圧倒的な地元の声援を受け思わぬ苦戦を強いられることもありそうだ。だが確実に白星を計算しておきたい。15日のカナダ戦は、世界最終予選で敗れ1位通過を阻止された相手だが、こちらもマイナーリーグの選手主体で、その時よりもやや質の落ちるメンバーのため、リベンジの意味も兼ねて勝っておきたい。
 もし3連勝でスタートできれば、16日の宿敵・日本戦に最高の状態で臨むことができる。すでに韓国では日本側の先発がエース格のダルビッシュ(北海道日本ハム)か、苦手な左腕の和田毅(福岡ソフトバンク)か、大きな論争となっていて、偽装オーダー問題などで揺れたアジア予選のときと同じく、注目の一戦となっている。逆に韓国側の先発は、韓国シリーズ、アジアシリーズなどの大舞台で結果を残したキム・グァンヒョンが予想されるが、こちらも直前までの情報戦から目が離せない。シドニー五輪WBCなど過去のプロ同士の対決同様、歴史に残る熱戦が期待できる。

 17日は試合がなく、18日には日本と同様のアジアの宿敵・台湾戦が待っている。台湾の韓国への対抗意識は相当なもので、アジア予選、世界最終予選で敗れたため、本番でのリベンジの機会を虎視眈々と狙っている。韓国はアジア予選でリュ・ヒョンジン、世界最終予選でキム・グァンヒョンと2度とも若き左腕が登板したが、今回はリュ・ヒョンジンが先発すると予想する。台湾の先発は日本プロ野球で活躍する左腕・陳偉殷(中日)、右の好投手・潘威倫(統一)のどちらかが予想され、日本戦と同様の熱戦が期待される。両者の実力を考えると、ここが準決勝進出をかけた大一番になる可能性が高い。
 6試合目となる19日は予選リーグ最大の山場・キューバ戦となる。すでに練習試合で2度対戦した両国は、お互い手の内をある程度は見せ合っていて、本番でどれだけのことをできるかが勝負の鍵となる。ここに来て、キューバは左のエースとして期待されたユリエスキー・ゴンザレスが離脱してしまったが、今大会も優勝候補本命であり、国際経験も豊富だが、投手陣が踏ん張り、豪快なベル、デスパーニャなどのパワーヒッターをそろえた打線を最少得点に抑えれば、韓国にも勝機は見えてくる。先発はカーブなどの変化球で三振を取れるポン・ジュングンと予想する。
 最後の20日のオランダ戦は、それまでの勝敗数によっては韓国の準決勝進出をかけた一戦となることが考えられる。4日の練習試合で大勝し、オランダ国内リーグの選手が主体の格下ではあるが、油断することなく1勝を奪ってほしい。4位以内に入るためには、過去の五輪野球から判断すると、4勝3敗は最低でも必要になってくる。
 
 シドニー五輪以来2大会ぶりに五輪に出場した韓国代表チームは、3位決定戦で日本に勝利し銅メダルを獲得した前回同様、現時点では実施が最後となる五輪野球で見事2度目のメダル獲得はなるであろうか。今回は2年前のWBCより投打ともに若手の選手が増え、彼らが主力として世界の強豪相手に互角に戦えば、プロ野球関係者、ファンの夢が実現する可能性は決して低くはない。太極旗を背負った24名の選手たちの健闘を期待したい。
 
(文責 : ふるりん