DAILY KOREAN PRO BASEBALL 2

1982年に発足し、2024年時点で10球団が加盟する韓国野球委員会(KBO)による韓国のプロ野球リーグ(通称KBOリーグ)に関するブログ。レギュラーシーズン、ポストシーズン(韓国シリーズなど)の試合速報や球団別の情報、現役プロ選手が含まれる野球韓国代表が出場する国際大会の情報などもお伝えします。 twitter : @kbodigest

  2009年WBC 1次ラウンド展望

 第2回2009年WBC(ワールドベースボールクラシック)が5日、日本・東京ドームで開幕し、1次ラウンドA組の日本‐中国戦が行われた。日本、中国、台湾と2次ラウンド(3月14日‐、米国・カリフォルニア州サンディエゴ)進出の2枚のキップをかけて争う韓国代表は5日、緒戦の台湾戦を前にして東京・神宮球場で公式練習を行った。
 また、東京入り後にひじの痛みを訴え、所属先の米国メジャーリーグクリーブランドインディアンスから出場を認めないとまで言われたチュ・シンスは、WBC選手負傷検討委員会から出場の許可が下り、指名打者として起用されることになった。イ・スンヨプ(読売)、キム・ドンジュ(トゥサン)などこれまで代表の主軸として活躍してきた強打者たちが参加しない今大会において、代表唯一のメジャーリーガーであるチュ・シンスが出場できるようになったのは戦力的に大きい。


【2009年 WBC 韓国代表メンバー】

※ 3月5日現在

[投手]
1. ソン・ミンハン(ロッテ) 
11. イ・ジェウ(トゥサン)
12. イム・チャンヨン東京ヤクルト
13. チャン・ウォンサム(ヒーローズ) △
17. オ・スンファン(サムソン) 
19. チョン・ヒョヌク(サムソン)
20. イ・スンホ(SK) △
21. チョン・デヒョン(SK)
28. ユン・ソンミン(キア)
31. キム・グァンヒョン(SK) △
49. イム・テフン(トゥサン)
51. ポン・ジュングン(LG) △
99. リュ・ヒョンジン(ハンファ) △
 
[捕手]
26. パク・キョンワン(SK)
47. カン・ミンホ(ロッテ)

[内野手]
2. チェ・ジョン(SK) ×
6. イ・ボムホ(ハンファ)
8. チョン・グヌ(SK)
10. イ・デホ(ロッテ)
14. コ・ヨンミン(トゥサン)
16. パク・キヒョク(ロッテ)
52. キム・テギュン(ハンファ)

[外野手]
5. チュ・シンスクリーブランドインディアンス) △
15. イ・ヨンギュ(キア) △
29. イ・テックン(ヒーローズ) 
35. イ・ジニョン(LG) △
39. イ・ジョンウク(トゥサン)  △
50. キム・ヒョンス(トゥサン) △

(数字は背番号。△は投手なら左投げ、捕手や野手は左打ち。×は両打ち。)

 
 キム・インシク代表監督(ハンファ)率いる今大会の韓国代表は、「若さあふれる発展途上のチーム」である。ベスト4に進出した2006年の前大会の韓国代表は、キム・インシク監督が率いていたものの、投手ではパク・チャンホク・デソン、野手ではイ・スンヨプ、イ・ジョンボムなど、1990年代から2000年代の韓国球界を支えたスーパースターたちがあつまった、完成された「大人のチーム」であった。その後2006年から韓国球界は世代交代が進み、2008年北京五輪はキム・グァンヒョン、リュ・ヒョンジン、イ・デホ、キム・ヒョンスなど20代の若き才能あふれる選手たちの活躍が中心となって、初の金メダル獲得に成功した。そのため、今大会の代表で、前大会の代表として出場したのはわずか7名しかいない。
 北京五輪の金メダル獲得で多くの選手が兵役免除の特典を受け、今大会はそれもないため(代わりに準決勝まで進出した場合、2月の代表キャンプ開始から大会終了までの40日あまりの日数をFA取得の日数に計算することになっている)、選手のモチベーションは低く、あまり期待できないのではないかという声も聴かれる。しかし、韓国人は日本人が想像する以上に海外志向が強く、特に若い選手は国際舞台で活躍することにより自己の評価を高め、今後につなげたいという思考回路を有している。そのため、若い主力選手たちが一旦波に乗ると手がつけられない力を発揮することになるであろう。その反面、パク・チャンホのようなベテランの精神的支柱となりうる選手が少なく、もろさもはらんでいる。

 そんな韓国代表の戦い方であるが、打線はイ・ジョンウクなど盗塁も仕掛ける快足の選手を上位に置き、チュ・シンスキム・テギュンなどのパワーある打者を中軸に置くという形になるであろう。


【6日 台湾戦 予想スタメン】

1. イ・ジョンウク(中)
2. コ・ヨンミン(二)
3. チュ・シンス(指)
4. キム・テギュン(一)
5. チェ・ジョン(三)
6. キム・ヒョンス(左)
7. イ・ジニョン(右)
8. カン・ミンホ(捕)
9. パク・キヒョク(遊)
先発. リュ・ヒョンジン

 鍵を握るのは、2日、3日の練習試合でも活躍したキム・ヒョンスである。2008年トゥサンでレギュラーに定着すると、卓越した打撃技術で首位打者に輝き、北京五輪でも日本戦で岩瀬仁紀(中日)から決勝タイムリーを打つなど活躍した。2008年の本塁打王だが、北京五輪代表に選ばれず、国際舞台の経験の乏しいキム・テギュンの補助的な役割もある。
 ハワイキャンプから調子が上がらず、東京ドームでの練習試合でもいい当たりがなかった長距離砲イ・デホはスタメン落ちとした。代わりに練習試合で好調だったまだ22歳のチェ・ジョンが、今大会が初の代表選出ながらスタメンに抜擢されるであろう。なお台湾の先発は、北京五輪キューバ相手に好投し、米国メジャーリーグ・インディアンスと契約した李振昌となっている。

 なお、投手陣であるが、すでに6日の台湾戦は左腕リュ・ヒョンジンが予告先発となっている。先発は70球までという制限があるWBCでは、継投が勝負の鍵を握る。キム・インシク監督は前大会のWBCのみならず、かつて率いたトゥサンや、現在の所属先ハンファで大胆な継投策を取り、ポストシーズンで結果を残している短期決戦に強いことが特徴である。 
 左腕に弱いとされる台湾相手には、リュ・ヒョンジンは格好の相手であるが、北京五輪アジア地区予選で台湾打線と対決していることもあり、油断は禁物である。台湾を代表する好打者・彭政閔(兄弟)、若さあふれる林益全(興農)、日本プロ野球で活躍する林威助(阪神)などの主力打者に注意したい。もし打線が李振昌を攻略し、中盤までにリードを奪えたら、右腕ならソン・ミンハンやイ・ジェウ、左腕ならチャン・ウォンサムが出てロングリリーフをつとめ、終盤はオ・スンファン、チョン・デヒョン、イム・チャンヨンなど抑えのスペシャリストが出てくることであろう。
 
 台湾は今大会国内の4球団中2球団が選手の派遣を拒否し、メジャーリーグで活躍する王建民(ニューヨークヤンキース)などの選手たちが全員出場できないため、アマチュアの選手も混じるなど近年の国際大会では例年にない厳しい戦力となっている。しかし、同じアジアのライバルである韓国に負けたくないという思いは、決して侮ることができない。韓国代表としては強力なライバルに勝つことによって、2次ラウンド進出をかけた7日の日本との決戦に臨みたい。もし日本と対戦することになった場合は、北京五輪で日本相手に好投したキム・グァンヒョンの先発が大会前から話題になっているが、ハワイキャンプから調子が上がらず2日の練習試合・埼玉西武戦で内容がよくなかったため、ポン・ジュングンなど他の経験豊富な選手が先発する可能性も低くない。
 なお、6日台湾に敗れた場合は、7日は第1試合で日本に敗れた中国と対戦し、ここで勝てば8日2次ラウンド進出にかけた生き残りの戦い(7日第2試合の敗者と対戦)に出場する。もし中国に敗れた場合は1次ラウンド敗退が決定する。