DAILY KOREAN PRO BASEBALL 2

1982年に発足し、2024年時点で10球団が加盟する韓国野球委員会(KBO)による韓国のプロ野球リーグ(通称KBOリーグ)に関するブログ。レギュラーシーズン、ポストシーズン(韓国シリーズなど)の試合速報や球団別の情報、現役プロ選手が含まれる野球韓国代表が出場する国際大会の情報などもお伝えします。 twitter : @kbodigest

  第6回 ウリヒーローズ

 あまたの紆余曲折を経て誕生し今季からプロ野球に参入するウリヒーローズは、SKワイバーンズ以来8年ぶりの新球団である。事実上2007年限りでプロ野球から撤退した現代ユニコーンズの後身ということになり、元現代の選手によりチームが構成されている。初代監督は元LG監督のイ・グァンファンとなり、キム・シジン監督など現代の指導者たちの中には新球団へ行かなかった者も多かった。
 また1月から海外キャンプを始めた他球団と違い、選手たちは事前に個人練習はしていたものの、2月中旬からようやっと済州島で本格的なキャンプを始めたため、チームの連係プレーなどを熟成させる十分な練習時間がとれず、また年俸契約が難航し調整不足の選手も多く、示範競技も2勝8敗1分と最下位で終わった。
 1996年の球団創設以来、12年間の間に4度の韓国シリーズ優勝を成し遂げた強豪だった現代も、近年は戦力の低下が目立ち2007年は56勝69敗1分の6位と、上位から大きく引き離されてしまった。その戦力をほぼ受け継いだものの、体制が一新された新球団がポストシーズンに出場できる公式戦4位以上に進出するのは極めて厳しい。また年俸を他球団より低く抑えているため、選手のモチベーションが低いのではないかという声も聞かれる。3月末の開幕に何とか間に合わせるために突貫工事で作った感の否めない新球団の今季の最大の目標は、無事に公式戦126試合を終えることとなりそうである。
 

投手】 
[先発]  キム・スギョン、チャン・ウォンサム△、スコービー※、ファン・ドゥソン、マ・イリョン
[中継ぎ]  ソン・シニョン、パク・チュンス、キム・ソンヒョン※、チョ・スングォン、チョン・スンユン、イ・ヒョンスン△
[抑え] チョ・ヨンフン
(※は新加入、△は左腕)

 3月の北京五輪予選にファン・ドゥソン、チャン・ウォンサム、チョ・ヨンフンの3名が選ばれていて、決して質は低くないが選手層が薄い。ここ10年現代の投手陣の柱だったキム・スギョンが新球団でもエース格となり、3年目のチャン・ウォンサムが左のエースとなる。2007年はキアで8勝した新外国人スコービーも期待されている。ファン・ドゥソンは先発でもロングリリーフでも投げられるタフさが評価される。かつて先発ローテーションの一員として活躍し、2007年シーズン途中で兵役から復帰したマ・イリョンも先発要員にあげられる。
 2007年は先発に対してリリーフ陣が弱く、下位に低迷する原因となった。特に抑えが定まらなかった。ソン・シニョン、パク・チュンスなど実績のある選手が少なく、高卒新人キム・ソンヒョン、チョ・スングォンなど若手の成長に期待したい。また全体的に左腕不足なのも気がかりだ。抑えは2007年リリーフで活躍した20歳のサイドハンド、チョ・ヨンフンに任せたい。
 

攻撃

[ベストオーダー]
1.イ・テックン(中)
2.チョン・ジュンホ(左) △
3.ソン・ジマン(右)
4.ブランボー(指)
5.チョン・ソンフン(三)
6.イ・スンヨン(一)
7.ファン・ジェギュン(遊)
8.カン・グィテ(捕)
9.キム・イルギョン(二)
(△は左打者、◎は両打ち)

 打線は上位チームにも負けない迫力があり、得点力はある。2007年は3年ぶりに現代に復帰し、打率3割、29本塁打を記録し主砲として活躍したブランボー(元オリックス)が、新球団とも契約し4番を任される。韓国代表にも定着した巧打の外野手イ・テックン、チャンスに強くパンチ力ある打撃が魅力のチョン・ソンフン、ベテランの長距離砲ソン・ジマンなどが軸となる。史上初の通算2000試合出場まで44試合となったベテランのチョン・ジュンホも、衰えぬ脚力を生かし新球団ではまだまだ出番がありそうだ。快足の選手が少ないため、2005年には29盗塁を記録したチョン・スソンの復活にも期待したい。
 若手では2007年後半にショートのレギュラーに定着した20歳のファン・ジェギュンに期待がかかる。現代では出番がなかったその他の若手選手たちの奮起に期待したい。39歳のベテランのキム・ドンスに代わる正捕手の育成も急務である。
  


本拠地
 ソウル・木洞野球場
 2008年から首都ソウルにはプロ野球8球団中3球団が集中する。東部の蚕室(チャムシル)野球場を本拠地とするトゥサン、LGと、西部の木洞(モクトン)野球場を本拠地とする新球団ウリヒーローズである。1980年代以降プロ野球のメッカとしてにぎわってきた蚕室野球場に対し、1989年に建設された木洞野球場は施設が貧弱で、社会人野球の大会が中心で、プロ野球の開催は一度もなかった。 
 2000年現代ユニコーンズが本拠地をソウルへ移転しようとした際、木洞野球場が候補に挙がったことがあるが、プロ野球を開催する水準にないということで見送られ、ソウルに適切な球場ができるまで暫定本拠地として首都圏南部の大都市・水原(スウォン)を仮の住まいとすることにした。だが、地元に根付く気がない球団を水原市民が応援しようとすることはなく、韓国代表のパク・チソンの出身地であり市民球団Kリーグ・水原サムソンブルーウィングスがあるためサッカー人気が高い土地柄もあり、球場は常に閑古鳥が鳴いていた。結局現代グループの分裂もあって経営難に陥り、ソウルへ移転するための資金も使い果たし、同球団は2007年限りでプロ野球から撤退し解散となった。
 その代わり現代の選手たちが移籍しプロ野球に新規参入することになった新球団ウリヒーローズが、この木洞野球場を本拠地として利用することになった。現代ユニコーンズウリヒーローズは直接の関係はないが、形を変えて10年来の悲願だったソウル進出がかなったわけである。2007年12月にソウル都心部にあったアマチュア野球のメッカ・東大門(トンデムン)野球場が再開発により解体され、その座席を利用して木洞野球場の改装工事が行われた。示範競技が行われた3月になっても工事は終わらず、そのため同球場初のプロ野球の試合となるはずだった11日、12日のトゥサン戦は中止となった。
 生まれ変わった木洞野球場は、外野席こそないが内野席は2万席前後と大きく、プロ野球を開催するのにふさわしいものとなった。また東大門野球場の代わりに高校野球大学野球の全国大会も行われることとなり、アマチュアプロ野球両方の日程調整が難しいところである。注目の新球団ウリヒーローズの地元開幕戦は、4月1日にハンファを迎えて行われる。
 なお、現在同球場から南へ4kmほどの首都圏電鉄・九一(クイル)駅近くに2万人収容の新球場が2010年完成予定で建設が計画されていて、完成後ウリヒーローズはそちらに本拠地を移すことになっている。

(改装された木洞野球場。)


[交通アクセス]
 ソウル地下鉄5号線・梧木橋(オモッキョ)駅から徒歩10分。木洞総合運動場内にある。
 梧木橋駅へはソウル駅や鍾路など都心部から25−30分程度。仁川空港からは空港鉄道(A'REX)で金浦空港まで行き、ソウル地下鉄5号線に乗り換え50分程度で到着。(金浦空港からは20分弱。)
(文責:ふるりん)