DAILY KOREAN PRO BASEBALL 2

1982年に発足し、2024年時点で10球団が加盟する韓国野球委員会(KBO)による韓国のプロ野球リーグ(通称KBOリーグ)に関するブログ。レギュラーシーズン、ポストシーズン(韓国シリーズなど)の試合速報や球団別の情報、現役プロ選手が含まれる野球韓国代表が出場する国際大会の情報などもお伝えします。 twitter : @kbodigest

2022年シーズン回顧 第10回 キウムヒーローズ

まさかの12年ぶりの最下位

2023年シーズン成績 

レギュラーシーズン:58勝83敗1分(勝率.406)最下位

ポストシーズン:出場せず

 2022年はレギュラーシーズン3位ながらプレーオフでLGツインスに勝利するも、韓国シリーズでSSGランダースに敗れ準優勝と健闘した。オフシーズンにはフューチャースリーグFA(2023年廃止)となっていたイ・ヒョンジョン、FAとなっていたウォン・ジョンヒョンと契約するなど積極的に補強に務め、初のレギュラーシーズンと韓国シリーズ優勝を目指した。

 4月1日、本拠地高尺でのハンファとのレギュラーシーズン開幕戦で延長10回裏にサヨナラ勝ちするも、4月6日のLG戦から11日のトゥサンベアース戦まで5連敗とつまづいた。4月13日のトゥサン戦から16日のキア戦まで4連勝と盛り返したが上位争いには食い込めなかった。4月27日、リリーフ右腕のキム・テワンを交換要員に打線の強化のため36歳のベテラン内野手イ・ウォンソクを獲得した。

 2022年に首位打者打点王、シーズンMVP(最優秀選手)に輝いた中心打者のイ・ジョンフは不調が続き、チームも勝ち星を増やせなかった。5月4日のサムソン戦から9日のLG戦まで5連敗となり8位に後退した。5月18日のトゥサン戦で勝利し7位に浮上したが、翌19日のキア戦で敗れ8位に後退、23日のKTウィズ戦で勝利し7位にまた浮上、翌24日のKT戦から27日のロッテジャイアンツ戦まで4連敗で8位に後退した。

 6月8日、LGに勝つも勝率でKTを下回り9位に後退するも、14日のキア戦まで4連勝し7位にまで浮上した。6月16日、2019年から契約していた外国人投手ヨキシュが故障のためウェーバー公示となり、新外国人選手として同じ左腕のマッキニーと契約した。6月17日のハンファ戦から22日のサムソン戦まで5連勝、5位にまで浮上し勝率5割まで大きく近づいた。しばらくトゥサンとの5位争いが続き、トゥサンの大型連勝の影響で6位に後退するも、7月5日のNC戦で21歳のチャン・ジェヨンがプロ初勝利を記録、勝率5割まであと1勝に迫った。

 しかし7月6日のNC戦から勝てなくなり、7月14日から20日のオールスター戦による中断期間を挟んで8連敗、9位にまで後退した。この間の7月13日、故障で試合に出場できなくなった内野手ラッセルをウェーバー公示し、新外国人選手の外野手のドーソンと契約した。7月22日のロッテ戦、ドーソンの韓国初打点となるタイムリーなどで連敗から脱出し8位に浮上したが、イ・ジョンフが故障で7月23日以降試合に出場できなくなると転落が始まり9位に後退した。

 7月29日、先発投手陣のチェ・ウォンテを交換要員に、22歳の若手内野手イ・ジュヒョン、19歳の新人投手キム・ドンギュ、2024年の新人ドラフト1巡目指名権の首位LGとの1対3トレードが成立した。主力選手を放出して若手2名と新人ドラフト指名権を得たことで、キウムヒーローズは再建モードに入ったことが誰の目にも明らかになった。7月29日のサムソン戦から8月8日のロッテ戦まで引き分け1つを挟みチーム記録タイの9連敗で、最下位サムソンとゲーム差なしで並んでいた。8月10日のロッテ戦から13日のLG戦で4連敗、最下位に転落してしまった。

 7月前半は勝率5割に近づいていたが1ヶ月後は勝率4割前後をさまよい、8月31日のSSG戦から9月3日のKT戦まで4連勝、一時9位に浮上した。しかし9月5日のNC戦から15日のロッテ戦まで8連敗、最下位に転落し勝率4割を切ってしまった。韓国人でチーム最多の9章を記録していた先発投手アン・ウジンが肘の手術を受けるため出場選手登録を抹消されただけであく、ドーム球場の高尺を本拠地とするため雨天などによる中止が少なく、他チームと比べて早い試合消化もあだとなった。

 9月19日のロッテ戦から28日のSSG戦まで4連勝、勝率4割台に戻したが依然最下位だった。10月、中国・杭州でのアジア競技大会野球にはキム・ヘェソン、キム・ドンホンが韓国代表として出場、10月7日の台湾代表との決勝戦で勝利し優勝、2名ともに兵役免除の恩典を得た。残り試合が少ない中、ハンファが連敗を重ねたため10月10日、高尺での最後の試合となったサムソン戦で勝利し3連勝、9位に浮上した。またこの日は一軍に復帰したイ・ジョンフが代打で出場、オフシーズンでのポスティングによるMLBへの移籍を公言していたためキウムでの最後の試合出場となると思われ、大きな歓声が贈られた。

 しかし10月11日のキア戦に敗れ最下位に転落、10月13日、シーズン最後の試合となったSSG戦でも敗れてしまい全日程を終了した。10月14日、ハンファがロッテに勝利し9位を確定させたため、キウムの2011年以来12年ぶり(当時は8球団制)のシーズン最下位も確定した。また2017年以来6年ぶりのポストシーズン進出失敗と、一つの転機を迎えたシーズンとなった。

 

【投手の成績】

防御率4.42(9位) 奪三振962(9位) 被本塁打84(7位) 与四球532(3位)

[主な先発投手]

フラード      30試合 11勝8敗 防御率2.65

アン・ウジン    24試合 9勝7敗 防御率2.39

チャン・ジェヨン  23試合 1勝5敗 防御率5.53

チョン・チャンホン 14試合 2勝8敗 防御率4.75

マッキニー     12試合 1勝9敗  防御率6.52

 先発の防御率(4.06)は10チーム中6位だった。チーム最多勝(11勝)、最多投球回数(183回と3分の2)は韓国1年目の外国人選手フラードで、2022年に15勝を記録した右腕アン・ウジンも安定した投球を見せた。しかしチェ・ウォンテをトレードで放出したことで先発投手陣の層は薄くなり、最下位争いから抜け出せなった。また6月まで5勝した外国人選手ヨキシュの代わりに契約したマッキニーは1勝止まりだった。

 

[主なリリーフ投手]

キム・ジェウン   67試合 2勝3敗6セーブ18ホールド 防御率4.32

ハ・ヨンミン    57試合 3勝1敗5ホールド 防御率4.64

キム・ソンジン   55試合 3勝3敗7ホールド 防御率3.64

ヤン・ヒョン    54試合 0勝4敗8ホールド 防御率5.05

イム・チャンミン  51試合 2勝2敗26セーブ 防御率2.51

イ・ミョンジョン  45試合 5勝5敗1ホールド 防御率5.21

キム・ドンヒョク  35試合 1勝7敗6ホールド 防御率7.55

ムン・ソンヒョン  32試合 2勝2敗2ホールド 防御率4.13

 リリーフの防御率(4.94)は10チーム中9位だった。チーム最多登板は2年連続で左腕のキム・ジェウンだった。抑えは5月以降、38歳のベテラン右腕イム・チャンミンが定着した。リリーフは頭数が揃っていたが安定感を欠き、FA選手として補強した36歳のベテラン右腕ウォン・ジョンヒョンは20試合のみの登板と期待に応えられなかった。

 

【野手の成績】

打率.261(7位) 本塁打61(10位) 得点607(9位) 盗塁54(10位) 失策115(4位)

捕手:キム・ドンホン   102試合 打率.242 2本塁打 17打点 0盗塁

一塁:イム・ジヨル    77試合    打率.259 5本塁打 35打点 1盗塁

二塁:キム・ヘェソン   137試合 打率.335 7本塁打 57打点 25盗塁

三塁:ソン・ソンムン   104試合 打率.263 5本塁打 60打点 1盗塁

遊撃:キム・ヒィジプ   110試合 打率.249 8本塁打    51打点   0盗塁

左翼:ドーソン      57試合 打率.336 3本塁打 29打点 9盗塁

中堅:イ・ジョンフ    86試合 打率.318 6本塁打 45打点 6盗塁

右翼:イム・ビョンウク    80試合 打率.260 6本塁打 36打点 4盗塁

指名:イ・ジュヒョン     51試合 打率.330 6本塁打 34打点 3盗塁

控え:イ・ジヨン、キム・テジン、イ・ウォンソク、キム・スファン、イ・ヒョンジョン、キム・ジュヌァン、イ・ヨンギュなど

 チームの打撃成績で下位の数字が並ぶように、攻撃力は低かった。特に7月下旬以降のイ・ジョンフの離脱が響いた。10チーム中で唯一10本塁打以上の選手が不在と明らかな長打力不足で、チーム最多本塁打(8本)は21歳のキム・ヒィジプだった。負傷のため7月でウェーバー公示されたラッセル、その代役として契約したドーソンの外国人選手2名でも合計7本塁打だった。チームで唯一突出した成績を残したのは、プロ野球を代表する二塁手に成長した24歳のキム・ヘェソンで、首位打者最多安打などの個人タイトルを争い、守備走塁でも中心的な存在だった。

 投打ともに選手層は薄く、投手ではヨキシュ、野手ではイ・ジョンフと大黒柱が機能しなかったことでチームバランスが崩れ、最下位に終わってしまった。しかしチェ・ウォンテとのトレードで獲得したイ・ジュヒョンが高い打撃技術でレギュラーに定着し、負傷で離脱したイ・ジョンフの穴を埋めるなど希望を感じさせる選手もいた。

 

【オフシーズンの動向】

 何と言っても2017年の入団以降、チームの中心的選手でプロ野球界を代表する打者となっていたイ・ジョンフのポスティングによるMLB移籍が注目され、サンフランシスコジャイアンツと6年1億1300万ドルと超大型契約を結んだ。またエース格のアン・ウジンは兵役のため軍へ入隊し、投打の柱を失うことになった。

 FA選手では抑えのイム・チャンミンはサムソンと契約、37歳のベテラン捕手イ・ジヨンはサインアンドトレードでSSGへ移籍した。余剰戦力を対象とした2次ドラフトでは、2023年に20本塁打を記録した35歳のベテラン内野手チェ・ジュファンをSSGから指名し、またリリーフ右腕のヤン・ヒョンはサムソンから指名され移籍した。外国人選手はフラード、ドーソンと再契約したがマッキニーとは再契約せず、新外国人選手としてエンマヌエル・デヘスス投手と契約した。

 

 2023年はまさにチームが瞬く間に崩壊して最下位に転落した。投打の柱を失い苦しい状況で、就任4年目のホン・ウォンギ監督には再建が託された。しかしキウムヒーローズは資金に乏しい分、イ・ジョンフのようなMLBで活躍が期待される選手を育てて上位に進出してきた。高尺スカイドームに新たなスターが誕生しキウムヒーローズが復活すること、それは案外奇跡ではないのかもしれない。

 

(文責:ふるりん