夏場の失速で韓国シリーズ2連覇ならず
2023年シーズン成績
レギュラーシーズン：76勝65敗3分（勝率.539）3位
2022年はＳＳＧランダースとなってからは初めて、前身のＳＫワイバーンスから通算して5度目の韓国シリーズ優勝を飾った。オフシーズンも新外国人選手3名以外は積極的な補強をせず、現有戦力で2連覇を狙ったと思われる。
4月1日、本拠地・仁川でのレギュラーシーズン開幕戦のキアタイガーズ戦で韓国人エース格のキム・グァンヒョン先発で勝利し、4月4日のロッテジャイアンツ戦から12日のサムソンライオンズ戦まで6連勝と好調なスタートを切った。好調のロッテ、優勝候補のＬＧとともに首位争いを続けた。5月4日、開幕前の海外キャンプで負傷し、示範競技も含めて韓国では1試合も登板しなかった新外国人選手のロメロ（元千葉ロッテ）をウェーバー公示し、新外国人選手として同じ左腕のエリアスと契約した。5月7日のキウムヒーローズ戦まで5連勝、首位を快走していた。
ＬＧとの激しい首位争いの中、5月25日、トゥサンベアースから右打者のカン・ジンソンをトレードで補強した。2022年と同じく6月になっても勝率6割を維持し、抑えに定着したソ・ジニョンはセーブ数を積み重ねた。高打率を維持する外国人選手エレディア、本塁打王争いに加わるチェ・ジョン、41歳の元メジャーリーガーのチュ・シンス、ベテラン打者のチェ・ジュファンなどの強力打線と、エースのキム・グァンヒョン、エリアス、マッカーティの両外国人左腕に22歳の若手左腕オ・ウォンソクが加わった先発投手陣がともに機能していた。
シーズン後半の7月になると雨天中止が相次ぎ勝ち星を増やせず、首位ＬＧとの差を縮めることができなかった。8月になると失速が始まり、8月15日のロッテ戦から19日のＬＧ戦まで5連敗、ＫＴウィズに抜かれ3位に後退した。ベテラン選手の多いチーム構成でしかも若手の台頭があまりなく、新陳代謝が進まなかった。9月7日にはＮＣに抜かれ4位に、9月9日にはキアに抜かれ5位に後退した。
9月17日、ＬＧとのダブルヘッダー連戦で5連敗となり、4位トゥサン、5位キアを下回る6位に後退した。ＳＳＧは勝率5割前後の5位争いに巻き込まれ、目標を5位以内のポストシーズン進出に下方修正せざるを得なかった。残り試合が少なくなる中、9月30日のキア戦から10月6日のハンファイーグルス戦まで6連勝、4位に浮上した。
中国・杭州でのアジア競技大会野球にはＳＳＧからパク・ソンハン、チェ・ジフンの2名が韓国代表として出場、10月7日、台湾代表との決勝で勝利し優勝、チェ・ジフンは兵役免除の恩典を得た。レギュラーシーズンの最終盤、ＮＣ、トゥサンとの僅差の3位争いとなり、決着は10月17日、レギュラーシーズン最終戦のトゥサン戦までもつれた。この試合はキム・グァンヒョンなどの好投で5-0と勝利、3位が確定しポストシーズンは準プレーオフからの出場となった。最後の5試合を4勝1敗と勝ち越し、ポストシーズンに弾みをつけた形となった。ＳＫ時代から主力として活躍する34歳のベテラン打者、ハン・ユソムは9月以降4割以上の高打率でチームの2年連続ポストシーズン進出に貢献した。
10月22日からの準プレーオフでは、トゥサンとのワイルドカード決定戦で勝利したＮＣと対戦した。仁川での第1戦は先発エリアスが好投するが援護できず8回表に2点を先制され、8回裏に1点を返すも9回表に2点を追加されると、9回裏にハ・ジェフン（元東京ヤクルト）の本塁打で2点を返すも3-4で敗れた。翌10月23日、仁川での第2戦は先発キム・グァンヒョンが2回表までに4点を奪われ、ハン・ユソムの2打席連続本塁打で3点を返すも8回表に3点を奪われ3-7で敗れた。
10月25日、遠征先の昌原での第3戦は先発オ・ウォンソクが1回裏に3点を先制されるも、2回表にチェ・ジョンの満塁本塁打などで5-3と逆転した。しかし2回裏にノ・ギョンウンが4点を奪われ逆転されると、それから1点を返すも同点に追いつけず6-7で敗れ、準プレーオフは0勝3敗で敗退となり、韓国シリーズ2連覇はならなかった。
【投手の成績】
防御率4.37(7位） 奪三振974（7位） 被本塁打104（2位） 与四球612（1位）
［主な先発投手］
キム・グァンヒョン 30試合 9勝8敗 防御率3.53
オ・ウォンソク 28試合 8勝10敗 防御率5.23
マッカーティ 24試合 9勝5敗 防御率3.39
エリアス 22試合 7勝6敗 防御率3.77
パク・チョンフン 18試合 2勝6敗 防御率6.19
ムン・スンウォン 50試合 5勝8敗1S 防御率5.23
先発のチーム防御率（4.54）は10チーム中10位で、2022年よりも大幅に悪化した。ＳＫ時代からエースとして活躍してきたキム・グァンヒョンは35歳となり、年齢による衰えがないとは言えなくなってきた。次世代のエースとして期待された22歳のオ・ウォンソクも規定投球回数（144回）に達したが安定感を欠いた。外国人投手2名はともに左腕でそれなりの活躍を見せたが、韓国人の先発投手の層が薄く、ムン・スンウォンがリリーフから転向せざるを得なかった。結局2022年シーズンオフにFAとなりハンファへ移籍したイ・テヤンの穴を埋められなかった。
［主なリリーフ投手］
ノ・ギョンウン 76試合 8勝5敗2セーブ29ホールド 防御率3.58
コ・ヒョジュン 73試合 4勝1敗13ホールド 防御率4.50
ソ・ジニョン 69試合 5勝4敗40セーブ 防御率2.48
チェ・ミンジュン 53試合 5勝3敗1セーブ7ホールド 防御率3.95
イ・ロウン 50試合 6勝1敗5ホールド 防御率5.61
イム・ジュンソプ 41試合 0勝2敗3ホールド 防御率5.79
リリーフの防御率（4.16）は10チーム中5位だった。右腕ソ・ジニョンはシーズンのセーブ数の球団記録を更新、40セーブで初の最多セーブの個人タイトルを受賞し、31歳でようやくリリーフの大黒柱に成長した。中継ぎでは39歳の右腕ノ・ギョンウン、40歳の左腕コ・ヒョジュンがともに70試合以上登板とフル回転した。若手では19歳の高卒新人イ・ロウンが50試合に登板と盛んに起用された。
【野手の成績】
打率.260（8位） 本塁打125（1位） 得点658（5位） 盗塁96（7位） 失策119（3位）
捕手：キム・ミンシク 122試合 打率.218 5本塁打 34打点 0盗塁
一塁：オ・テゴン 123試合 打率.239 7本塁打 28打点 20盗塁
二塁：チェ・ジュファン 134試合 打率.235 20本塁打 63打点 0盗塁
三塁：チェ・ジョン 128試合 打率.297 29本塁打 87打点 7盗塁
遊撃：パク・ソンハン 128試合 打率.266 9本塁打 47打点 4盗塁
左翼：エレディア 122試合 打率.323 12本塁打 76打点 3盗塁
中堅：チェ・ジフン 117試合 打率.268 2本塁打 30打点 21盗塁
右翼：ハン・ユソム 109試合 打率.273 7本塁打 55打点 1盗塁
指名：チュ・シンス 112試合 打率.251 12本塁打 40打点 6盗塁
控え：チョ・ヒョンウ、キム・ソンヒョン、カン・ジンソン、チョン・ウィサン、キム・ガンミン、ハ・ジェフン
チーム本塁打数は10チーム中1位と狭い仁川ランダースフィールドの特性を生かした攻撃は健在だった。打線の中軸は個人通算458本塁打の35歳のチェ・ジョン、韓国1年目で高打率を記録した外国人選手のエレディアとなった。41歳となった元メジャーリーガーのチュ・シンスは年齢も考え指名打者での出場が主となったが、出塁率の高さを買われ1番打者での起用もあった。
全体として30歳以上の選手が相変わらずレギュラーの座を譲らず、20代前半の若手選手が総じて活躍しなかった。その中で26歳のチェ・ジフンが2022年よりも成績を落としたが、25歳の遊撃手のパク・ソンハンとともに杭州アジア競技大会野球韓国代表として優勝に貢献、チームの新しい顔となりつつある。
【オフシーズンの動向】
韓国シリーズ連覇に失敗したことで激動のオフシーズンとなった。まずキム・ウォンヒョン監督が任期を2年残して契約解除となり、ＳＫが創設される前に仁川を本拠地としていた現代ユニコーンス（2007年限りで解散）の主力選手だったイ・スンヨン新監督が就任した。また余剰戦力を対象とした2次ドラフトでは生え抜きの41歳の外野手キム・ガンミンがハンファから、2021年より4年契約でトゥサンから移籍してきた35歳のチェ・ジュファンがキウムから指名され移籍した。
FA選手ではキム・ミンシクと再契約し、キウムからFA選手となっていた37歳のイ・ジヨンとサインアンドトレードの形式で契約、捕手の層を厚くした。なおかつて正捕手として活躍していたイ・ジェウォンは自由契約となり、ハンファと契約した。外国人選手はエレディア、エリアスと再契約するも、レギュラーシーズン終盤の10月に故障で離脱したマッカーティとは再契約せず、新外国人選手としてロバート・ダガー投手と契約した。
韓国シリーズ連覇に失敗したことで、一気に改革に乗り出したＳＳＧランダース。2021年、ＳＫから球団を継承し3年が過ぎ、独自の色を打ち出していきたいようにも見える。これはチームの本格的な再建なのか、それとも優勝を再び狙うのか見えてこないが、コーチ経験はあるが初めて監督として指揮をとるイ・スンヨン新監督の手腕が試される。
（文責：ふるりん）
