DAILY KOREAN PRO BASEBALL 2

1982年に発足し、2024年時点で10球団が加盟する韓国野球委員会(KBO)による韓国のプロ野球リーグ(通称KBOリーグ)に関するブログ。レギュラーシーズン、ポストシーズン(韓国シリーズなど)の試合速報や球団別の情報、現役プロ選手が含まれる野球韓国代表が出場する国際大会の情報などもお伝えします。 twitter : @kbodigest

2023年シーズン回顧 第6回 キアタイガーズ

2年ぶりにポストシーズン進出失敗

2023年シーズン成績 

レギュラーシーズン:73勝69敗2分け(勝率.514)6位

 2022年はレギュラーシーズン5位で4年ぶりにポストシーズンへ進出するも、KTウィズとのワイルドカード決定戦で敗退した。オフシーズンに大きな補強はなく、2023年はイ・ウィリ、キム・ドヨンなどの有望な若手をさらに起用し、2年連続のポストシーズン進出、6年ぶりの韓国シリーズ優勝を目標としていた。しかし打線の中軸を任されたナ・ソンボムが負傷でシーズン開幕から当分出場できなくなってしまった。

 4月1日、遠征先の仁川でのSSGランダースとのレギュラーシーズン開幕戦で敗れ、翌4月2日、SSG戦でイ・ウィリ、キム・ドヨンの活躍で初勝利をあげたものの、この試合でキム・ドヨンは負傷し長期の離脱となった。4月4日から6日までのKTウィズとの3連戦がすべて雨天中止になり水を差された。4月13日のハンファイーグルス戦から18日のロッテジャイアンツ戦まで5連敗となるも、4月26日のNCダイノス戦から30日のLGツインス戦まで5連勝となった。

 しかし5月4日から7日までこの時期としては異例の4日連続で試合が雨天中止となり、5月10日のSSG戦から14日のトゥサンベアース戦まで5連敗となり7位にまで後退した。その後6位に順位を戻し、5月27日のLG戦で35歳の先発ヤン・ヒョンジョンがプロ野球史上単独2位となる個人通算162勝目を記録した。5月31日のKT戦では高卒新人ユン・ヨンチョルの好投で勝利し勝率5割に戻したが、5割の壁をなかなか突破できなかった。

 6月21日のハンファ戦に敗れ7位、22日のハンファ戦にも敗れ8位に後退してしまい、6月23日のKT戦でキム・ドヨンが復帰し、ナ・ソンボムがようやくレギュラーシーズン初出場で初本塁打を記録するも、チームは敗れてしまった。6月30日、ナ・ソンボムに本塁打が出るも首位LGに敗れ、9位にまで後退してしまった。

 こうした低迷から抜け出すために、韓国で1年目のシーズンだった外国人選手2名を後退させた。まず開幕から2勝どまりで防御率6点台のメディーナをウェーバー公示とし、新外国人選手のサンチェスと契約した。また4勝で防御率3点台のアンダーソンも、2022年シーズン途中の6月から終了まで契約していた左腕パノーニと契約し復帰させたため、ウェーバー公示とした。またオフシーズンにFAでLGへ移籍したパク・トンウォンの穴を埋める捕手がいなかったため、一軍で活躍していた左打ちの内野手リュ・ジヒョクを交換要員に、サムソンライオンズからトレードで実績のある捕手キム・テグンを獲得した。これで刺激を受けたか、7月5日のSSG戦から12日のサムソン戦まで6連勝となり、6位にまで順位を上げた。

 オールスター戦による1週間の中断期間を挟んで7月21日には7位に後退したが、7月30日、ロッテ戦でのパノーニの韓国復帰後初勝利で6位に浮上した。8月17日のキウム戦で勝利し勝率5割に復帰、5位に浮上した。8月24日のKT戦から9月6日のトゥサン戦まで、3試合の雨天中止も挟んでシーズン最多の9連勝、勝率も.533まで上昇し3位SSG、4位NCに接近した。9月10日のLG戦で3連勝、4位に上昇したが、9月12日のサムソン戦から21日のハンファ戦まで3試合の雨天中止を挟んで7連敗となり、6位に後退した。

 いよいよ終盤に差し掛かり、2022年と同様に5位以内でのポストシーズン進出が現実的な目標となった。9月22日のKT戦で勝利し5位に浮上したが、翌23日のKT戦で敗れ6位に後退した。10月、中国・杭州でのアジア競技大会野球ではチェ・ジミンとチェ・ウォンジュンが韓国代表として選ばれ、10月7日、決勝で台湾代表に勝利し優勝、チェ・ジミンは兵役免除の恩典を得た。最初は代表候補だったイ・ウィリは大会直前の9月の乱調が響き除外され、兵役免除の機会を得られなかった。

 SSG、NC、トゥサンが3位から5位まで日替わりの順位争いを続ける中、6位のキアは大きな連勝ができずそれに加わることがなかった。10月12日のロッテ戦に勝利し、残り3試合で5位トゥサンに1.5ゲーム差と可能性を残したが、翌13日のトゥサンとの直接対決に敗れ、試合のなかった14日にトゥサンが勝ったことでレギュラーシーズン6位が確定し、2年ぶりにポストシーズン進出に失敗した。10月16日、17日と光州での最後の2連戦、NC戦でともに勝利し有終の美を飾った。

 

【投手の成績】

防御率4.13(5位) 奪三振980(5位) 被本塁打89(6位) 与四球564(2位)

[主な先発投手]

ヤン・ヒョンジョン 29試合 9勝11敗 防御率3.53

イ・ウィリ        28試合 11勝7敗  防御率3.96

ユン・ヨンチョル  25試合 8勝7敗 防御率4.04

パノーニ           16試合 6勝3敗 防御率4.26

サンチェス     12試合 4勝4敗 防御率5.94

 先発投手のチーム防御率(3.87)は10チーム中4位だった。35歳のヤン・ヒョンジョンはチーム最多の投球回数(171)を記録したが、勝ち星を伸ばせず9勝どまりだった。21歳の若手イ・ウィリはチーム最多の11勝を記録したが、投球回数131.2と少なくリリーフに負担をかけた。19歳の新人左腕ユン・ヨンチョルも8勝を記録した。以上韓国人の3名の投手がすべて左腕で、外国人選手は当初のアンダーソン、メディーナの2名は右腕だったがともにシーズン途中で左腕のパノーニ、右腕のサンチェスに交代したが、4名ともに浮上の切り札にはならなかった。

 

[主なリリーフ投手]

イム・ギヨン     64試合 4勝4敗3セーブ16ホールド 防御率2.96

チョン・サンヒョン  64試合 8勝3敗1セーブ13ホールド 防御率2.15

イ・ジュニョン    64試合 1勝0敗10ホールド 防御率3.21

チェ・ジミン     58試合 6勝3敗3セーブ12ホールド 防御率2.12

チャン・ヒョンシク  56試合 2勝2敗3セーブ5ホールド 防御率4.06

チョン・ヘヨン    52試合 3勝4敗23セーブ1ホールド 防御率2.52

キム・デユ      41試合 0勝2敗4ホールド 防御率5.11

 リリーフのチーム防御率(3.81)は10チーム中2位だった。チーム最多登板タイのサイドハンド右腕イム・ギヨンは先発降板後のロングリリーフもこなした。他のチョン・サンヒョン、チャン・ヒョンシクなどのリリーフ右腕も安定していた。リリーフ左腕はイ・ジュニョンと、成長著しい20歳のチェ・ジミンが中心となった。主に抑えを任されたチョン・ヘヨンは好不調の波が大きく、日替わりで抑えが起用されることがあった。

 

【野手の成績】

打率.275(2位) 本塁打101(2位) 得点726(2位) 盗塁122(3位) 失策103(7位)

捕手:キム・テグン    65試合 打率.258 0本塁打 24打点 2盗塁

一塁:ピョン・ウヒョク  129試合   打率.225 7本塁打 47打点 4盗塁

二塁:キム・ソンビン   119試合 打率.321 0本塁打 48打点 3盗塁

三塁:キム・ドヨン    84試合 打率.303 7本塁打 47打点 25盗塁

遊撃:パク・チャンホ      130試合 打率.301 3本塁打    52打点   30盗塁

左翼:イ・ウソン     126試合 打率.301 8本塁打  58打点 5盗塁

中堅:ソクラテス     142試合 打率.285 20本塁打 96打点 14盗塁

右翼:ナ・ソンボム    58試合 打率.365 18本塁打  57打点 0盗塁

指名:チェ・ヒョンウ   121試合 打率.302 17本塁打  81打点 1盗塁

控え:ハン・ジュンス、キム・ギュソン、チェ・ウォンジュン、ファン・デイン、コ・ジョンウク、イ・チャンジン、キム・ホリョンなど

 攻撃力、得点力は比較的高かった。韓国2年目の外国人選手ソクラテスが打線の軸として安定した成績を残した。また40歳となったチェ・ヒョンウはプロ野球史上初の個人通算1500打点、史上最多の個人通算二塁打(490)など衰え知らずの打撃で記録を更新し続けた。またチャンスメイカーとなる俊足のパク・チャンホ安打製造機のキム・ソンビンも安定した成績を残した。それを考えると、ナ・ソンボム、キム・ドヨンが負傷せずシーズンを通して活躍できていれば順位は違っていたかもしれない、と残念に思ってしまう。しかしその不在をイ・ウソン、イ・チャンジン、コ・ジョンウクなどの野手がカバーしていた。そこで、ベテラン選手たちからの世代交代やチームの選手層を厚くするため、若手の野手の台頭は欠かせなくなっている。

 

【オフシーズンの動向】

 FA選手となったキム・ソンビンとコ・ジョンウクの2名とは再契約した。余剰戦力を対象とした2次ドラフトでは、リリーフとして実績のあるイ・ヒョンボムをトゥサンから指名した。また2014年の首位打者、シーズンMVP(最優秀選手)などの実績がある左打者ソ・ゴンチャンと契約し、内野手の層を厚くした。外国人選手はソクラテスとのみ再契約し、パノーニとサンチェスの2名とは再契約せず、新外国人選手ウィル・クロウ投手、ジェームス・ネイル投手の右腕2名と契約した。

 2024年シーズン開幕に備える海外キャンプに出発する直前の1月下旬、2022年に就任したキム・ジョングク監督が本拠地球場に出入りする外部業者から個人的に金品を収受したとして背任、収賄などの嫌疑で捜査を受けたため、契約解除という重い処分が科された。このような形で監督の座を追われたプロ野球の指導者は前代未聞で、プロ野球界全体に大きな衝撃を与えた。後任の監督は2月3日時点で未定である。

 

 まさかの事態となったが、キアタイガーズ自体は2月1日からオーストラリアなどでの海外キャンプを開始している。一日も早く新監督が決まり、シーズン開幕への準備に支障がなくなることを願うばかりである。また選手たちにはグラウンド外での不祥事を忘れさせるような快進撃を見せてほしい。

 

(文責:ふるりん