DAILY KOREAN PRO BASEBALL 2

1982年に発足し、2024年時点で10球団が加盟する韓国野球委員会(KBO)による韓国のプロ野球リーグ(通称KBOリーグ)に関するブログ。レギュラーシーズン、ポストシーズン(韓国シリーズなど)の試合速報や球団別の情報、現役プロ選手が含まれる野球韓国代表が出場する国際大会の情報などもお伝えします。 twitter : @kbodigest

2021年シーズン回顧 第3回 サムソンライオンズ

6年ぶりのポストシーズン進出を弾みに

2021年シーズン成績 

レギュラーシーズン:76勝59敗9分(勝率.563)2位

ポストシーズンプレーオフ敗退

 

 2020年は8位で5年連続ポストシーズン進出失敗と低迷が続いていたサムソンライオンズ。投打ともに若手が台頭し、6年ぶりのポストシーズン進出が目標となる中、好調なスタートを切った。4月25日のキア戦で抑えのオ・スンファン(元阪神)が韓国プロ野球史上初の個人通算300セーブを達成すると、5月には一時首位に浮上、最後に韓国シリーズへ進出した2015年以来となる優勝戦線にチームが加わる喜びをファンたちはかみしめていた。

 オ・ジェイル、外国人選手ピレラ(元広島)などの新戦力が機能し、まだ21歳の若手ウォン・テインが先発として好投を続け、シーズン中盤の6月になってもKT、LG、SSGとのし烈な首位争いを繰り広げた。8月になるとKTが首位を独走し始める中、LGとの2位争いが続いた。しかし10月になりKTが調子を落とすとLGとの三つ巴の優勝争いとなった。

 そして10月22日、23日とKTとの直接対決で連勝し首位に浮上した。ウォン・テイン、そしてペク・チョンヒョンがともに14勝目、オ・スンファンは44セーブとチームの優勝争いを支えた。しかし残り4試合、久しぶりの優勝争いのプレッシャーに勝てなかったか2試合で引き分け、10月28日、サムソンは試合がなかったがライバルのKTはNCとのダブルヘッダーで1勝1分けとし首位に並ばれた。さらに10月29日はサムソン、KTともに敗れ、10月30日のレギュラーシーズン最終戦を前に3位LGにも優勝の可能性が残った。そしてサムソンはNCに勝利し、KTも勝利したため144試合を終えても同じ勝率となり、規定により史上初の優勝決定戦が行われることになった。

 サムソンは直接対決でKTに勝ち越していたため、10月31日の優勝決定戦は本拠地・大邱で行われ有利な立場にあった。だが打線が沈黙し、先発ウォン・テインは6回を1失点に抑えるも0-1で敗れ2位となり、6年ぶりに進出したポストシーズンプレーオフからの出場となった。

 プレーオフの相手はワイルドカード決定戦、準プレーオフを勝利しポストシーズンの経験が豊富な4位トゥサンとなった。11月9日、2016年に大邱サムソンライオンズパークに本拠地を移転してから初となるポストシーズンの試合となるプレーオフ第1戦で、最多勝(16勝)の個人タイトルを受賞した先発ブキャナン(元東京ヤクルト)が7回を3失点に抑えるも打線が援護できず、9回表にオ・スンファンが追加点を奪われてしまい4-6で敗れた。敵地・蚕室野球場での第2戦はポストシーズンで初先発のペク・チョンヒョンが2回裏途中で降板するなど劣勢に立たされ、3-11で敗れプレーオフ敗退が決まった。2020年までプレーオフは3戦先勝制、最大5試合だったが2021年は東京オリンピック野球などで2戦先勝制、最大3試合に短縮されたことが大舞台から遠ざかっていたサムソンには不利に働き、レギュラーシーズン上位のアドバンテージを生かせなかった不運も重なってしまった。

 

【投手の成績】

防御率4.30(4位) 奪三振1038(6位) 被本塁打131(4位) 与四球530(9位)

[主な先発投手]

ブキャナン     30試合 16勝5敗 防御率3.10

ペク・チョンヒョン 26試合 14勝7敗 防御率3.06

ウォン・テイン     26試合  14勝7敗  防御率3.06

チェ・チェフン   26試合 5勝9敗2ホールド   防御率4.56

モンゴメリー    11試合 2勝5敗  防御率5.37

 

 先発投手のチーム防御率(3.98)は10チーム中3位で、韓国2年目の外国人選手ブキャナンが2020年の15勝を上回る16勝で最多勝の個人タイトルをヨキシュ(キウム)と分け合い、大黒柱として活躍した。プロ3年目の21歳の右腕ウォン・テインは初めて規定投球回数に達し自身最多の14勝と成長の跡を見せた。そして34歳の左腕ペク・チョンヒョンが自身最多の14勝と予想外の活躍を見せ、この先発3人で44勝を記録した。

 しかし左のエース級の活躍が期待されたチェ・チェフンが5勝どまりで、先発4番手以降の投手が弱かった。ブキャナン以外の外国人投手が活躍できず、2019年8月から契約していたライブリーは故障で未勝利のまま6月にウェーバー公示され、MLBで5年以上活躍し代役となった左腕モンゴメリーは審判に暴言を吐いてロージンバックを投げつけたことで9月に20試合の出場停止処分を受け、2勝どまりと期待を裏切った。

 

[主なリリーフ投手]

オ・スンファン    64試合 0勝2敗44セーブ 防御率2.03

ウ・ギュミン     60試合 3勝3敗2セーブ24ホールド  防御率3.31

チェ・ジグァン    60試合 7勝1敗14ホールド 防御率4.91

シム・チャンミン   59試合 3勝2敗16ホールド 防御率5.08

イ・スンヒョン    41試合 1勝4敗7ホールド 防御率5.26

キム・デウ      31試合 0勝2敗1ホールド  防御率6.35

 

 リリーフのチーム防御率(4.80)は10チーム中8位と、2020年と同じく先発陣と比べて見劣りした。39歳のオ・スンファンは円熟味を増した投球で44セーブを記録、韓国では2012年以来9年ぶり6度目となる最多セーブの個人タイトルを受賞した。一方で中継ぎではウ・ギュミン、チェ・ジグァン、シム・チャンミンなど特定の右腕への依存度が高かった。左のリリーフの層が特に薄く、高卒新人イ・スンヒョンが41試合に登板するもシーズン終盤の10月に離脱した。

 

【野手の成績】

打率.267(3位) 本塁打133(3位) 得点712(6位) 盗塁116(1位) 失策88(9位)

捕手:カン・ミンホ    123試合 打率.291 18本塁打 67打点 0盗塁

一塁:オ・ジェイル    120試合   打率.285    25本塁打 97打点 1盗塁

二塁:キム・サンス    132試合 打率.235 3本塁打 42打点 4盗塁

三塁:イ・ウォンソク   131試合 打率.231 9本塁打 59打点 1盗塁

遊撃:キム・ジチャン      120試合 打率,274 1本塁打    26打点   23盗塁

左翼:キム・ホンゴン   120試合 打率.285 4本塁打  27打点 5盗塁

中堅:パク・ヘミン    127試合 打率.291 5本塁打  54打点 36盗塁

右翼:ク・ジャウク    139試合  打率.306 22本塁打  88打点 27盗塁

指名:ピレラ       140試合 打率.286 29本塁打 97打点 9盗塁

控え:キム・ミンス、カン・ハヌル、イ・ハクチュ、キム・ホジェ、パク・スンギュ、キム・ドンヨプなど

 2020年は戦力として機能しなかった外国人野手だったが、2021年は韓国1年目のピレラ(元広島)が開幕から主軸として活躍し、チーム最多の29本塁打・97打点を記録した。FAでトゥサンから移籍した左の大砲オ・ジェイルも活躍、ピレラに並ぶ97打点で打線の破壊力が増した。これにパク・ヘミン、ク・ジャウク、カン・ミンホなど既存の主軸打者たちも力を発揮し優勝争いの原動力となった。

 プロ2年目の20歳の内野手キム・ジチャンがレギュラーに定着し、不動の1番打者パク・ヘミンとともに俊足好打でチャンスメイカーとして機能した。2番打者として活躍したク・ジャウクは自身最多の27盗塁を記録し、チーム盗塁数1位に貢献、自身初のゴールデングラブ賞を受賞し、FA選手ではないが2022年シーズンからの5年契約につなげた。一方で下位打線に迫力を欠き、控えの層も厚くはなかった。

 

【オフシーズンの動向】

 2022年のFA選手となった3名のうち、不動の1番打者パク・ヘミンがLGへ移籍してしまった。補償選手は控え捕手のキム・ジェミンが指名された。3度目のFAとなった36歳の正捕手カン・ミンホ、34歳にして初のFAとなったペク・チョンヒョンとはともに再契約した。

 トレードには積極的で、サイドスローの中継ぎシム・チャンミン、控え捕手キム・ウンミンと、かつてNCの正捕手だったキム・テグンとの2対1トレードが成立した。また長く国外でプレーし2019年よりサムソンに在籍していた内野手イ・ハクチュが、22歳の若手サイドスロー右腕チェ・ハヌルと2023年の新人ドラフト指名権1名との交換トレードでロッテへ移籍した。また先発として活躍してきた左腕チェ・チェフンが兵役のため軍へ入隊した。

 外国人選手については活躍したブキャナン、ピレラとは再契約し、モンゴメリーとは再契約しなかった。代わりの新外国人選手として右腕アルバートスアレス投手(元東京ヤクルト)と契約した。

 

 2014年までの韓国シリーズ4連覇を含む8度の優勝を誇るサムソンライオンズは、プレーオフこそあっけなく終わってしまったが、補強と若手の育成に成功し6年ぶりポストシーズンに進出と久しぶりに前向きな内容で2021年を終えることができた。一方で生え抜きの外野の主力パク・ヘミンの流出という思わぬ事態も発生したが、世代交代をさらに推し進めより一層の強化を図るための契機になるともいえる。2021年は最後まで優勝争いをしたという自信を糧に、2022年シーズンは7年ぶりの韓国シリーズ進出、そして8年ぶりの優勝が現実的な目標となり、3年目を迎えるホ・サミョン監督にとっても正念場となるであろう。

 

(文責:ふるりん