DAILY KOREAN PRO BASEBALL 2

1982年に発足し、2024年時点で10球団が加盟する韓国野球委員会(KBO)による韓国のプロ野球リーグ(通称KBOリーグ)に関するブログ。レギュラーシーズン、ポストシーズン(韓国シリーズなど)の試合速報や球団別の情報、現役プロ選手が含まれる野球韓国代表が出場する国際大会の情報などもお伝えします。 twitter : @kbodigest

2019年シーズン回顧 第1回 トゥサンベアース

3年ぶりの王者に返り咲き

2019年シーズン成績 

レギュラーシーズン:88勝55敗1分(勝率.615)1位

韓国シリーズ 優勝

 

 2018年はレギュラーシーズンで2位SKに13.5ゲームと大きな差をつけながら、韓国シリーズで敗れてしまったトゥサンベアース。2019年はその借りをレギュラーシーズンで返し、キウムとの韓国シリーズで4戦全勝し3年ぶりの優勝で王者に返り咲いた。

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本拠地・蚕室野球場1塁側で盛り上げるトゥサン応援団

 2019年シーズン開幕前、トゥサンはSKと並ぶ優勝候補に挙げられ、序盤からSKと首位争いを続けた。6月中旬までは僅差だったが6月21日から23日までの直接対決3連戦で3連敗したのが響き、独走を許すようになった。

 7月以降になるとさらに差は開き、オールスター戦の前の7月17日には2位の座をキウムに譲り、キウムとの2位争いが続いた。8月15日には3位トゥサンと首位SKとのゲーム差は9まで開いた。だが8月後半から調子を上げ2位に浮上すると、SKがもたつき始めゲーム差を縮めた。9月5,6日のSKとの直接対決2連戦が雨で順延となった代わりに9月19日、ダブルヘッダーで開催されたSK2連戦ともに勝利すると勢いに乗った。9月28日にはついにSKと同率首位に並んだ。

 9月30日、SKが0.5ゲーム差をつけて先にレギュラーシーズン全日程を終え、直接対決で勝ち越していたトゥサンは10月1日のNC戦で勝利すればレギュラーシーズン優勝が決まることになった。NC戦は8回表まで3点をリードされていたが、8回裏にホ・ギョンミンのタイムリーなどで5-5の同点に追いつくと、9回裏にパク・セヒョクのタイムリーでサヨナラ勝ちし、5連勝で2年連続のレギュラーシーズン優勝、5年連続の韓国シリーズ出場となった。

 韓国シリーズではプレーオフでSKに勝利したキウムと対戦した。第1戦はオ・ジェイルのタイムリー、第2戦はパク・コヌのタイムリーと2試合連続でサヨナラ勝ちした。第3戦は先発フランコフなどの好投で5-0と完封勝利した。勝てば優勝となる第4戦は2回裏までに3-8と5点差をつけられるも、5回表に6点を奪い9-8と逆転した。だが9回裏に同点とされ試合は延長に突入した。延長10回表オ・ジェイルのタイムリーなどで2点を勝ち越すと、最後は38歳のベテラン右腕ペ・ヨンスが抑え、11-9でトゥサンが4戦全勝で3年ぶり6度目の韓国シリーズ優勝を成し遂げ、王者の座に返り咲いた。なおペ・ヨンスはこれが現役最後の登板となった。

 11月の国際大会、2019 WBSCプレミア12でも韓国代表選手28名中7名をトゥサンの選手が占め、2020年オリンピック野球出場決定と準優勝に貢献した。

 

【投手の成績】

防御率3.50(2位) 奪三振860(9位) 被本塁打78(9位) 与四球380(9位)

[主な先発投手]

リンドブロム  30試合 20勝3敗 防御率2.50

イ・ヨンハ   29試合 17勝4敗 防御率3.64

ユ・ヒィグァン 28試合 11勝8敗 防御率3.25

フランコフ   22試合 9勝8敗  防御率3.61

イ・ヨンチャン 26試合 7勝10敗 防御率4.07

 何といっても外国人選手リンドブロムの安定感が光り、初のシーズン20勝で最多勝最多奪三振(189)、レギュラーシーズンMVPと個人タイトルも複数受賞した。22歳のイ・ヨンハが2年連続10勝以上、韓国人最多勝で右の先発の柱に成長した。また33歳のベテラン左腕ユ・ヒィグァンは7年連続10勝以上で安定感を見せた。2018年は18勝で最多勝だったフランコフ、イ・ヨンチャンが負傷で一時期一軍から除外されるも、先発投手の防御率3.44は10チーム中2位だった。

[主なリリーフ投手]

イ・ヒョンボム   67試合 6勝3敗19セーブ10ホールド 防御率2.66

ユン・ミョンジュン 69試合 6勝2敗1セーブ14ホールド 防御率2.63

ハム・トクチュ   61試合 2勝5敗16セーブ7ホールド 防御率3.46

パク・チグク    61試合 2勝2敗3セーブ14ホールド 防御率4.50

クォン・ヒョク   57試合 2勝2敗1セーブ11ホールド 防御率4.91

キム・スンフェ   55試合 3勝3敗3セーブ7ホールド 防御率3.07

ペ・ヨンス     37試合 1勝2敗 防御率4.57

チェ・ウォンジュン 34試合 1勝2敗1セーブ4ホールド 防御率2.65

 リリーフの防御率は3.64で10チーム中2位と安定していた。左腕ハム・トクチュの不調で不安定だった抑えは、FAとなりNCへ移籍した捕手ヤン・ウィジの補償選手だった25歳のイ・ヒョンボムが任されるようになり、トゥサンの戦力補強と育成のうまさが発揮された。そのほかハンファから移籍した36歳のベテラン左腕クォン・ヒョクが復調し中継ぎとして機能したのも大きかった。またともに38歳のベテラン右腕キム・スンフェ、ハンファから移籍したペ・ヨンスも存在感を示した。

 

【野手の成績】

打率.278(3位) 本塁打84(9位) 得点736(2位) 盗塁102(7位) 失策83(10位)

捕手:パク・セヒョク  137試合 打率.279 4本塁打 60打点 8盗塁

一塁:オ・ジェイル   130試合 打率.293 21本塁打 102打点 2盗塁

二塁:チェ・ジュファン 87試合 打率.277 4本塁打 47打点 0盗塁

三塁:ホ・ギョンミン  133試合 打率.288 4本塁打 60打点 11盗塁

遊撃:キム・ジェホ   130試合 打率.268 4本塁打 48打点 3盗塁

左翼:キム・ジェファン 136試合 打率.283 15本塁打 91打点 3盗塁

中堅:チョン・スビン  123試合 打率.265 0本塁打 41打点 26盗塁

右翼:パク・コヌ    127試合 打率.319 10本塁打 64打点 12盗塁

指名:フェルナンデス  144試合 打率.345 15本塁打 88打点 1盗塁

控え:イ・フンニョン、リュ・ジヒョク、オ・ジェウォン、キム・インテなど

 低反発球導入により本塁打数は激減し、特に2016年から2018年まで3年連続30本塁打以上、特に2018年は44本塁打を記録した4番打者キム・ジェファンは15本塁打にとどまった。代わりにオ・ジェイルがチーム最多の本塁打・打点を記録し、韓国シリーズでは第1戦・4戦で決勝打を記録しシリーズMVPも受賞する活躍を見せた。

 FAとなりNCへ移籍した正捕手ヤン・ウィジの穴はシーズン開幕前最大の課題だったが、以前はその控えだったパク・セヒョクで埋まった。捕手としては俊足で三塁打9本を記録したのも特筆すべき点である。また2018年は活躍しなかった外国人の野手もフェルナンデスがレギュラーシーズン全144試合出場、高打率の安打製造機として活躍、197本の最多安打の個人タイトルを受賞する活躍を見せた。総じて攻守に経験豊富な選手が多く、失策数も10球団中最少だった。

【オフシーズンの動向】

 2015年からロッテで活躍していた外国人投手リンドブロムは2019年、20勝など最高の成績を残すと自身の希望で自由契約となり、2020年はMLB(メジャーリーグベースボール)・ミルウォーキーブルワースと契約した。また身体の状態に不安を抱えていたもう一人の外国人投手フランコフは結局再契約しなかった。この2人の代役として25歳とまだ若いクリス・フレクセン、2019年はKTで11勝と活躍したラウル・アルカンタラの2名の新外国人選手と契約した。打線に欠かせない存在だった外国人選手フェルナンデスは再契約した。

 FAとなった選手は34歳のベテラン内野手オ・ジェウォンだけで契約期間3年で再契約した。また4番打者キム・ジェファンがポスティングによるMLB移籍を目指したが、1月6日(韓国時間)までの期限までに入札する球団はなく2020年はトゥサンと再契約することになった。11月20日の余剰戦力を対象とした2次ドラフトでトゥサンは他球団から誰も指名せず、投手ではピョン・ジンス(2020年よりピョン・シウォンに改名)がキア、野手ではチョン・ジンホがハンファに指名され移籍した。それだけ戦力に自信と余裕がある証拠である。

 

 2020年シーズンは2度目となる韓国シリーズ2連覇、7度目の優勝を狙うことになる。就任5年間で3度の韓国シリーズ優勝に導いたキム・テヒョン監督や首脳陣は、チームカラーとなっている選手の高い育成能力を発揮し、野手を中心に世代交代を進めながら王者の座を維持することを目指すと思われる。

 

(文責:ふるりん