DAILY KOREAN PRO BASEBALL 2

1982年に発足し、2024年時点で10球団が加盟する韓国野球委員会(KBO)による韓国のプロ野球リーグ(通称KBOリーグ)に関するブログ。レギュラーシーズン、ポストシーズン(韓国シリーズなど)の試合速報や球団別の情報、現役プロ選手が含まれる野球韓国代表が出場する国際大会の情報などもお伝えします。 twitter : @kbodigest

2019年シーズン回顧 第2回 キウムヒーローズ

頂点へ着実に前進

2019年シーズン成績 

レギュラーシーズン:86勝57敗1分(勝率.601)3位

ポストシーズン:準プレーオフ(対LG)3勝1敗→プレーオフ(対SK)3勝→韓国シリーズ 準優勝

 

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キウムヒーローズの応援を盛り上げたチアリーダー、キム・ハンナは2020年よりキアへ移籍した。

 2019年よりメインスポンサーをネクセンタイヤからキウム証券(5年契約)に変更し、心機一転で初の韓国シリーズ優勝を目指したキウムヒーローズ。2018年はレギュラーシーズン3位、プレーオフで惜しくもSKに敗れたこともあり2019年シーズン開幕前、SK、トゥサンに次ぐ優勝候補の一角にも挙げられた。4月、5月と勝率5割を維持していたが首位争いをしていたSK、トゥサンの後塵を拝していた。6月になると若手の成長やブリガム、ヨキシュの両外国人選手の安定した投球でチーム状態が上向き、6月21日までの7連勝でSK、トゥサンの両チームに接近した。

 7月12日には首位SKに勝利し6連勝で2位に浮上と、し烈な優勝争いに加わった。7月は好調を維持するもSKとの差は縮まらず、8月になり調子を落とし、8月18日には2位の座をトゥサンに譲った。だが8月25日のサムソン戦ではイ・ジョンフ、パク・ピョンホ、サンズ、キム・ヘェソンなど主力打者たちによる23安打21得点の猛攻、ブリガムが3年連続10勝以上を達成する好投で勝利し、優勝争いに踏みとどまった。

 SKの不調で優勝争いはトゥサン、キウムの三つ巴となった。9月12日まで5連勝し2位に浮上したが、室内の高尺スカイドームを本拠地としているため他チームより試合消化ペースが早く、連勝を重ねたトゥサンに2位の座を譲り、レギュラーシーズンは3位で終わりポストシーズンはLGとの準プレーオフから出場した。プレーオフ第1戦を4番打者パク・ピョンホの本塁打でサヨナラ勝ちし、第2戦も延長戦でサヨナラ勝ちした。第3戦に敗れるも、第4戦はパク・ピョンホの準プレーオフ3本目となる本塁打、サンズのタイムリーなどで勝利し、3勝1敗でプレーオフへ進出した。

 SKとのプレーオフ第1戦は延長10回表にキム・ハソンのタイムリーなどで3点を勝ち越し勝利すると、第2戦も打撃戦を制し8-7で勝利、第3戦は打線の爆発で10-1と勝利し3連勝でネクセン時代の2014年以来5年ぶりとなる韓国シリーズ出場を果たした。しかし2015年から5年連続で韓国シリーズに出場しているトゥサンの壁は高く、第3戦までに3連敗を喫しもう後がなくなってしまった。第4戦は2回裏までに8点を奪うも9-8と逆転されたが、9回裏に相手のエラーで9-9の同点に追いつく執念を見せた。しかし10回表にブリガムなどが失点し、9-11で敗れ4連敗で韓国シリーズ初優勝はならなかった。

 11月の国際大会、2019 WBSCプレミア12ではキウムの選手が5名出場し、そのうちキム・ハソンが遊撃手、イ・ジョンフが外野手でワールドスターチームに選ばれる活躍を見せた。またチョ・サンウが快速球を投げリリーフで活躍した。

 

【投手の成績】

防御率3.60(3位) 奪三振984(4位) 被本塁打61(10位) 与四球371(10位)

[主な先発投手]

ヨキシュ    30試合 13勝9敗 防御率3.13

ブリガム    28試合 13勝5敗 防御率2.96

チェ・ウォンテ 27試合 11勝5敗 防御率3.38

イ・スンホ   23試合 8勝5敗  防御率4.48

アン・ウジン  19試合 7勝5敗  防御率5.20

 先発の防御率3.74は10チーム中3位と、トゥサン、SKの上位2チームと比べ層が薄かった。韓国3年目の外国人選手ブリガムが安定した投球で13勝を記録し、韓国1年目の外国人選手ヨキシュも左腕の利点を生かしチーム最多タイの13勝と期待に応えた。22歳のチェ・ウォンテは韓国人最多の11勝で3年連続10勝以上と成長を見せた。まだ20歳のイ・スンホ、アン・ウジンの2名も先発として起用され、チェ・ウォンテに続く今後の成長が期待される。

 

[主なリリーフ投手]

キム・サンス    67試合 3勝5敗40ホールド 防御率3.02

ハン・ヒョンヒィ  61試合 7勝5敗24ホールド 防御率3.41

オ・ジュウォン   57試合 3勝3敗18セーブ3ホールド 防御率2.32

ユン・ヨンサム   54試合 3勝3敗1セーブ3ホールド 防御率2.87

キム・ソンミン   50試合 2勝5ホールド 防御率2.56

チョ・サンウ    48試合 2勝4敗20セーブ8ホールド 防御率2.66

キム・ドンジュン  33試合 8勝3敗3ホールド 防御率4.50

 リリーフの防御率は3.39で10チーム中1位と最後まで優勝争いを繰り広げた原動力となった。中継ぎは左右ともに質が高く、チーム最多登板のキム・サンスは40ホールドとプロ野球シーズン記録を更新し、ハン・ヒョンヒィとともに中継ぎの柱となった。抑えは6月まで右のチョ・サンウ、7月以降は左のオ・ジュウォンが務めた。またキム・ドンジュンは先発、ロングリリーフともに起用され8勝を記録し重宝された。

 

【野手の成績】

打率.282(1位) 本塁打112(4位) 得点780(1位) 盗塁110(2位) 失策99(6位)

捕手:パク・トンウォン 112試合 打率.297 10本塁打 55打点 1盗塁

一塁:パク・ピョンホ  122試合   打率.280 33本塁打 98打点 0盗塁

二塁:キム・ヘェソン  122試合 打率.276 0本塁打 32打点 20盗塁

三塁:チャン・ヨンソク 119試合 打率.247 7本塁打 62打点 0盗塁

遊撃:キム・ハソン   139試合 打率.307 19本塁打 104打点   33盗塁

左翼:イ・ジョンフ   140試合 打率.336 6本塁打 68打点 13盗塁

中堅:イム・ビョンウク 117試合 打率.243 0本塁打 41打点 10盗塁

右翼:サンズ      139試合 打率.305 28本塁打 113打点 1盗塁

指名:ソ・ゴンチャン  113試合 打率.300 2本塁打 41打点 17盗塁

控え:イ・ジヨン、ソン・ソンムン、キム・ギュミン、キム・ジスなど

 キウムの最大の武器は得点力だった。本塁打王のパク・ピョンホ、打点王のサンズだけでなく21歳ながら193安打とリーグ2位の安打製造機となったイ・ジョンフ、俊足で長打力もあるキム・ハソンがそろう中軸は他球団の脅威となっていた。負傷で守備に不安のあるソ・ゴンチャンが打撃を生かし指名打者かつ1番打者としてチャンスメイクに徹し、それを中軸で返す得点パターンが確立されていた。またイ・ジヨン、ソン・ソンムン、キム・ギュミンといった選手もレギュラーかそれに近い成績を残し、野手の層は他球団と比べ厚かった。

 

【オフシーズンの動向】

 韓国シリーズ終了後、2019年11月にチャン・ジョンソク監督が退任し、SKで投手コーチを務めていたソン・ヒョク新監督が就任した。外国人選手のうちヨキシュ、ブリガムの投手2名とは再契約したが、打点王の個人タイトルを受賞したサンズとは年俸交渉が折り合わず再契約を見送り(のちに日本プロ野球阪神と契約)、代役として新外国人選手テイラー・モッター内野手と契約し、兵役のため軍へ入隊したソン・ソンムンの空白を埋めることにした。FAとなったベテラン捕手イ・ジヨンと再契約し、戦力の流出は防いだ。

 11月20日の余剰戦力を対象とした2次ドラフトでは前回(2017年)と同じく誰も指名せず、2019年は不振だった中継ぎ投手イ・ボグンがKTから指名され移籍し、移籍金を受け取った。 

 

 2020年シーズンはソン・ヒョク新監督のもと韓国シリーズ初優勝を狙うことになる。外国人選手の交代など戦力面での不安はあるが、メインスポンサーによるネーミングライツという他球団にない体制で財政面に不安を抱えながらも、独自の工夫と方針で選手の育成と起用にたけたキウムヒーローズを優勝候補に推す声も少なくないだろう。イ・ジョンフ、キム・ハソンなど自前で育てた突出した才能が光り輝いているうちがチャンスである。

 

(文責:ふるりん