韓国シリーズ:NC-トゥサン、メディアデー開催
2020年プロ野球ポストシーズンはいよいよ年間優勝を決める韓国シリーズへと入り、レギュラーシーズン優勝・NCと、KTとのプレーオフを勝ち抜いたトゥサンの対戦となった。両チームの韓国シリーズでの対戦は2016年以来4年ぶりの2度目であり、ポストシーズンでは2015年と2017年のプレーオフも合わせて3度すべてトゥサンが勝利している。11月後半に入り、寒冷な気候もあって全試合中立地の室内のソウル・高尺スカイドームで開催される。
韓国シリーズ開幕を前日に控えた11月15日14時より、高尺スカイドームにて韓国シリーズ恒例のメディアデーが実施された。NCからはイ・ドンウク監督とヤン・ウィジ、パク・ミヌ、トゥサンからはキム・テヒョン監督とパク・セヒョク、イ・ヨンハが出席した。席上で第1戦の予告先発が発表され、NCはルチンスキー(※ 30試合・19勝5敗・防御率3.05)、トゥサンはアルカンタラ(※ 31試合・20勝2敗・防御率2.54)と発表された。
先に4勝したほうが、2020年の年間優勝となる。延長は15回までで決着がつかなかった場合は引き分けで翌日以降に再試合となる。NCは初優勝、トゥサンは2年連続7度目の優勝を狙う。
(※ 2020年レギュラーシーズンの成績。)
【2020年 韓国シリーズ:NCダイノス-トゥサンベアース 日程】
(全試合ソウル・高尺で開催)
第1戦 : 11月17日 18時半
第2戦 : 11月18日 18時半
第3戦 : 11月20日 18時半 ※
第4戦 : 11月21日 14時 ※
第5戦 : 11月23日 18時半
第6戦 : 11月24日 18時半
第7戦 : 11月25日 18時半
※はトゥサンが後攻。他はNCが後攻。
【韓国シリーズ 展望】
2011年の球団創設、2013年から一軍に参入したプロ野球9番目の新興勢力・NCダイノスはレギュラーシーズン初優勝を遂げ、2016年以来となる2度目の韓国シリーズ出場で初優勝を狙う。NCは2014年にポストシーズンに初出場と早く結果を出し、4年前の2016年はレギュラーシーズン2位でプレーオフを勝ち抜いて韓国シリーズに初めて出場したが、勝負操作関与の疑惑による一部の主力選手の不出場もあって4戦全敗で苦杯をなめた。まずNCとしては、2連覇を狙うトゥサンを相手に韓国シリーズ初勝利をあげなくてはならない。
NCの最大の武器はチーム名の「ダイノス(恐竜)」を連想させる強力打線である。チーム得点数(888)、本塁打数(187)、打点数(845)は10チーム中1位で、その中心は正捕手にして33本塁打、チーム最多打点(124)を記録したヤン・ウィジである。ヤン・ウィジは2018年までトゥサンに在籍し2015年、2016年と韓国シリーズ2連覇に貢献しているため、古巣との対決として注目を集めている。また2019年はシーズンの大半を怪我で出場できなかったナ・ソンボムはチーム最多の34本塁打、112打点を記録し完全復活を遂げた。
快足のイ・ミョンギ、高打率(.345)のパク・ミヌなどが上位でチャンスメーカーとなり、ヤン・ウィジ、ナ・ソンボム、クォン・ヒィドン、カン・ジンソンなどの中軸が走者を返し、韓国1年目にして31本塁打・108打点・22盗塁と走攻守すべてにおいて活躍を見せた外国人選手アルテール、20本塁打を記録した左の内野手ノ・ジンヒョク、経験豊富なベテラン内野手のパク・ソンミンなどが下位に名を連ね、切れ目のない打線が構成されている。レギュラーシーズンで10本塁打以上の選手が7名と10球団中最多であり、捕手のキム・テグン、内野のモ・チャンミン、外野のキム・ソンウクなど控え選手にも実力者がそろっている。
投手力に関してはトゥサンと比べると強力な先発がそろわずやや弱い印象を受ける。だが第1戦の予告先発を任されたチーム最多勝(19勝)の外国人選手ルチンスキーが軸となり、第2戦以降で先発が予想される外国人選手ライト(11勝)、9月以降先発に定着した20歳の若手ソン・ミョンギ(9勝)、7月までのシーズン前半だけで9勝、防御率1.74と圧倒的な内容を見せた左腕ク・チャンモなど頭数はそろっている。特に10月下旬にようやく一軍へ復帰したク・チャンモが完全復活を遂げると、NCは初優勝に大きく近づくであろう。
リリーフ陣は全体的に安定性を欠くが、抑えを任されチーム最多の30セーブを記録したウォン・ジョンヒョンを初めとしてキム・ジンソン、イム・チャンミン、イム・ジョンホ、ムン・ギョンチャン、ホン・ソンミンなど経験豊富な選手たちがそろっている。特に上位が大混戦となり一時期は開幕直後から保ってきた首位の座から滑り落ちるかと思われたが、9月後半から持ち直し11連勝で優勝をほぼ確実にしたのはリリーフ陣の力も大きかった。打線が大量得点すればそれを維持するだけの経験は十分にある。
準プレーオフでLG,プレーオフでKTをやぶり韓国シリーズに進出したトゥサンは、6年連続出場となる経験値が最大の武器である。第1戦の予告先発はリーグ最多勝(20勝)の外国人選手アルカンタラで、NCのエース格のルチンスキーとの投げ合いが予想される。また10月からポストシーズンにかけて好調を維持している外国人選手フレクセンも第2戦以降の先発が予想される。だが韓国人の先発投手に決め手を欠き、ともにレギュラーシーズンで10勝を記録したチェ・ウォンジュン、ユ・ヒィグァンはプレーオフで先発するもともに早期降板となった。そこで第4戦のロングリリーフで好投し、レギュラーシーズン中も先発で起用された21歳のキム・ミンギュが先発として起用される可能性がある。リリーフ陣に関しては抑えのイ・ヨンハを初めとしてパク・チグク、イ・スンジン、キム・ガンニュルなど頭数がそろい、細かい継投で主導権を握ることができる。そのため頼みの両外国人選手の先発が機能しなかったときには、リリーフ陣のスクランブル登板も予想される。
打線に関しては4番打者のキム・ジェファンがプレーオフで5打点と好調で、周りを固める外国人選手フェルナンデス、オ・ジェイル、パク・コヌなどの打者が好調を維持すれば攻撃力に関してNCに大きく見劣りはしない。またポストシーズンでも持ち味を発揮しているオ・ジェウォンなど経験豊富な選手も韓国シリーズでチームの雰囲気を変える働きが期待できる。チョン・スビンなど打撃不振の選手もいるが守備での貢献度も高く、その他キム・ジェホ、ホ・ギョンミンといった近年の3度の韓国シリーズ優勝に貢献した選手たちは健在で、控え選手たちも自身の役割を全うしている。特にヤン・ウィジの後に正捕手となったパク・セヒョクにとっては、韓国シリーズ2連覇を達成して自身の成長を見せる良い機会となるであろう。
戦力やチーム状態を考えるとNCが連戦を重ねてきたトゥサンより優位にあるが、就任2年目のイ・ドンウク監督は韓国シリーズでの采配は初めてである。6年連続で韓国シリーズで采配を振るうキム・テヒョン監督やトゥサンの選手たちの経験が勝るか、それともNCが4年前の雪辱を果たし念願の初優勝を遂げるか。あいにく両チームの本拠地で試合が開催できない異例の事態であるが、大変な社会情勢の中、プロ野球が人々に夢と希望を与える空間であることを証明するため、韓国シリーズでは最高峰の白熱した勝負を期待するしかない。
(文責:ふるりん)