DAILY KOREAN PRO BASEBALL 2

1982年に発足し、2024年時点で10球団が加盟する韓国野球委員会(KBO)による韓国のプロ野球リーグ(通称KBOリーグ)に関するブログ。レギュラーシーズン、ポストシーズン(韓国シリーズなど)の試合速報や球団別の情報、現役プロ選手が含まれる野球韓国代表が出場する国際大会の情報などもお伝えします。 twitter : @kbodigest

  第3回 NCダイノス

「急成長ゆえの課題も」 
2015年成績 : 84勝57敗3分け(プレーオフ敗退)
チーム総合採点…80点


1. 【急成長を続ける3年目】

 2013年からプロ野球の9チーム目として一軍参入を果たし、2014年は公式戦3位、初のポストシーズン進出と結果を残した。勢いに乗り2015年シーズンはさらなる飛躍が期待された。だが、2014年チーム最多の73試合に登板したウォン・ジョンヒョンが難病により戦線を離脱するなど、不安要素もあった。
 NCは開幕後快調な出だしを見せた。4月9日のキア戦で、韓国2年目の外国人打者エリック・テームズがチーム史上初となるサイクルヒットを達成し、6連勝となった。4月後半抑えのキム・ジンソンの不振もあり勝率5割を割ってしまったが、5月6日のキア戦で5連勝し5割に復帰した。そして5月26日のトゥサン戦、テームズの3本塁打で6連勝とすると、翌27日のトゥサン戦では好調エリック・ハッカーの好投でチーム史上初の7連勝を記録、ついに首位となった。そして28日のトゥサン戦でも40歳のベテラン、ソン・ミンハンの好投で完封リレー、8連勝にまで伸ばした。5月のNCは20勝5敗と驚異的な成績だった。
 抑えにはイム・チャンミンが定着し、6月以降はサムソン、トゥサンとの激しい首位争いを続けた。シーズン中のテコ入れとして、2013年より先発で活躍していたが成績が低迷していたチャーリーを退団させ、新外国人投手スチュアートと契約した。また正捕手キム・テグン以外の捕手に不安があり、KTからトレードで経験豊富な控え捕手ヨン・ドカンを獲得した。6月18日のKT戦でイ・ホジュンプロ野球史上8人目の300号本塁打を達成した。39歳のベテランはテームズ、生え抜きの若手ナ・ソンボムともに打線の軸として活躍を続けた。
 7月はやや勢いが落ちサムソン、トゥサンの後塵を拝した。2014年は夏場以降失速し優勝戦線から遠ざかったが、その二の舞を踏まなかった。8月8日のキア戦ではシーズン2度目の7連勝で、2位ながら首位を走るサムソンを猛追しだした。8月11日のネクセン戦では、テームズプロ野球史上初となるシーズン二度目のサイクルヒットを達成した。8月だけで好調ハッカーは5勝をあげユ・ヒィグァン(トゥサン)との最多勝争いを続け、8月27日にはキム・ギョンムン監督が監督通算700勝をあげた。
 9月1-2日のサムソンとの直接対決で連敗し、ゲーム差が3.5に広がりやや厳しい状況となったが、NCの勢いが衰えることはなかった。韓国に来て3か月がたったスチュアートが勝ち星を重ね、ハッカーとの両外国人投手が原動力となった。9月11日のネクセン戦でソン・ミンハンが10勝目をあげ、プロ野球史上初めて40歳以上で10勝以上を記録した投手となった。翌12日のSK戦は最大8点差を逆転し、チ・ソックンのサヨナラ3ランで勝利し勢いは加速した。
 9月18日のネクセン戦でハッカーが18勝目をあげ、チームはシーズン3度目の7連勝で勝率6割に達した。だが9月22日、首位サムソンとの最後の直接対決で敗れ勝負弱さを見せてしまった。9月28日のハンファ戦、イ・ジェハクが3年連続の2ケタ勝利となる10勝目を記録、サムソンのもたつきもあり優勝争いは最後までわからなかった。
 10月2日のSK戦、テームズプロ野球史上初となるシーズン40本塁打・40盗塁を達成した。また22歳の若手イ・テヤンも自身初となる10勝目をあげ、チームも5連勝、公式戦残り2試合で首位サムソンとは1ゲーム差と優勝の可能性を残していた。しかし翌3日のSK戦で敗れたため、サムソンの公式戦優勝が決まり2014年の公式戦3位を1つ上回る2位が確定した。ポストシーズンは初めてプレーオフから出場することになった。

 サムソンと公式戦終盤までし烈な優勝争いを続け、戦力も充実していたNCはプレーオフを通過し、韓国シリーズでサムソンと再び戦うことを夢見た。下馬評も高く、選手たちには自信がみなぎっているはずだった。しかし、現実は厳しかった。

 
 本拠地・馬山での第1戦、難病のため2015年シーズン1試合も登板できなかったウォン・ジョンヒョンが始球式を務め、チームの士気を高めたはずが、公式戦では最多勝投手(19勝)となった先発ハッカーが崩れ、トゥサンの先発ニッパートに0-7の完封勝利を献上してしまった。第2戦は逆に、公式戦終盤絶好調だったスチュアートの好投で7-0の完封勝利をおさめた。
 舞台を敵地・蚕室に移した第3戦では40歳のベテラン、先発ソン・ミンハンの好投と打線の爆発で16-2と勝利し、韓国シリーズまであと1勝と王手をかけた。しかしここから課題が見えてしまった。第4戦は第1戦と同じくハッカー、ニッパートの先発投手対決となったが、またもやハッカーが打たれニッパートに好投を許し、0-7とスコアまで同じ完封負けを喫した。
 勝負は本拠地・馬山に戻っての第5戦となった。第2戦で好投した先発スチュアートで必勝を期し、2回裏までに2点をリードした。しかし4回表1点を返されると、5回表2-4と逆転されスチュアートは降板した。ここで信頼できるリリーフがいれば展開は違ったが、2番手イ・ミンホはこの回2点を追加され4点差を追いかける展開となった。その後2点を返したが同点に追いつけなかった。そして9回表2死の場面で、外野を守っていたナ・ソンボムがマウンドに上がり、オ・ジェウォンを内野ゴロに打ち取った。大学時代まで投手だったとはいえ、プロ入り後は強打の外野手として活躍していたナ・ソンボムのこの場面での登板には誰もが驚きを隠せなかった。しかし試合はこのまま4-6で敗れ、大一番で経験不足を露呈した若きNC恐竜軍団の挑戦は失敗に終わった。
 ハッカー、スチュアートの強力な外国人投手コンビ、テームズ、イ・ホジュン、ナ・ソンボムの公式戦100打点以上の打者3人がそろい、戦力面でトゥサンを圧倒していたはずだった。だが絶対的な信頼を寄せていた外国人投手はそろって崩れ、特にハッカーで2敗したのが大誤算だった。超強力クリーンアップも肝心な場面で爆発することは少なく、打線が総じて単発の攻撃に終わっていた。近年韓国シリーズ優勝から遠ざかっていたが、同じ方針で戦い続けていたトゥサンのポストシーズンで培われてきた経験が、才能はあれど若き未熟なNCを上回った。


2. 【チーム分析】

 2015年シーズンのNC、いやプロ野球を語る上でエリック・テームズの超人的な活躍に触れないわけにはいくまい。
 142試合に出場、打率.381(首位打者)、47本塁打、140打点、40盗塁。圧倒的な打撃成績は一般的な三部門だけでなく長打率.790、これに出塁率を足したOPSが1.287とプロ野球史上に残る驚異的な数字をたたき出した。プロ野球史上初のシーズン40本塁打・40盗塁を達成したこともあり、これまた史上初の2年連続50本塁打以上を記録したパク・ピョンホ(ネクセンからミネソタツインズへ移籍)を差し置いて、堂々のシーズンMVP(最優秀選手)を受賞した。
 このテームズとともに主軸を打ったのが生え抜きの若手ナ・ソンボム(28本塁打・135打点)、39歳のベテラン打者イ・ホジュン(24本塁打・110打点)だった。下位ではベテランのソン・シホン(13本塁打)、チ・ソックン(11本塁打)と2人の内野手が意外性のある打撃で勝利に貢献した。また控え野手ではモ・チャンミン、チョ・ヨンフンが活躍し、浅い歴史のチームではあるが厚い選手層を擁していた。
 トゥサン監督だった時に走力を全面的に押し出していたキム・ギョンムン監督らしく、2015年シーズンのNCは10チーム中最多の206個を記録した。22歳ながら1番打者として活躍したパク・ミヌが46盗塁、2013年には盗塁王にもなったキム・ジョンホが41盗塁、ベテランの俊足外野手イ・ジョンウク(17盗塁)と、テームズ以外にも走れる選手がそろい高い攻撃力を誇っていた。


 また公式戦2位となった原動力は、10チーム中1位の防御率(4.26)を記録した投手陣でもあった。最多勝ハッカー(19勝)、ソン・ミンハン(11勝)、イ・ジェハク、イ・テヤン(ともに10勝)と10勝以上の投手が4人いて、シーズン途中の6月に入団したスチュアートも8勝と好成績を残した。守護神として31セーブを記録したイム・チャンミン以外に、左腕イム・ジョンホ(80試合)、右腕チェ・グムガン(64試合)、イ・ミンホ(61試合)と60試合以上に登板した投手が4人と、リリーフ陣もそろっていた。また2014年までの守護神キム・ジンソンも中継ぎとして59試合に登板と活躍した。だが、これらの一見好成績を残した投手陣の多くが、ポストシーズンなど大舞台での経験不足だったことが、プレーオフ敗退の一因にもなった。


3. 【オフシーズンの動向】

 2015年シーズン、まさかのプレーオフ敗退を喫したNCはさらなる強化のため、優勝争いを続けたライバル、サムソンで主力として韓国シリーズ4連覇に貢献した強打の内野手パク・ソンミンを、4年間の大型FA契約で引き抜いた。またテームズハッカー、スチュアートと活躍した外国人選手3人ともに再契約に成功した。一方、2013年のNC入団以降経験豊富なベテランとして貢献してきたソン・ミンハンが現役を引退し、投手陣には不安が残る。
 若く急成長を遂げたチームには、2016年シーズンこそ初の韓国シリーズ進出、そして優勝を期待する声も高まる。だが2014年準プレーオフ、2013年プレーオフと公式戦では下位だったチーム相手に2年連続で敗退している姿からは、まだまだ未熟な面も目立つ。歴史の浅い寄せ集めのチームであるがゆえに、大一番と言える試合での一体感に欠けてしまう面があるように見える。これは経験豊富なキム・ギョンムンと言えど致し方のない部分であり、乗り越えるには時間が必要な課題でもある。2016年シーズン、NCはより一層の成長を続けていくのか、あるいは停滞していくのか、今後の明暗を分ける時期が到来しているようだ。
 
 
(文責:ふるりん