DAILY KOREAN PRO BASEBALL 2

1982年に発足し、2024年時点で10球団が加盟する韓国野球委員会(KBO)による韓国のプロ野球リーグ(通称KBOリーグ)に関するブログ。レギュラーシーズン、ポストシーズン(韓国シリーズなど)の試合速報や球団別の情報、現役プロ選手が含まれる野球韓国代表が出場する国際大会の情報などもお伝えします。 twitter : @kbodigest

  第1回 トゥサンベアーズ

「まさかの14年ぶりの王座へ」 
2015年成績 : 79勝65敗(韓国シリーズ優勝)
チーム総合採点…85点


1. 【韓国シリーズ優勝への道のり】
 2015年シーズン、2001年以来14年ぶり4度目となる韓国シリーズ優勝を果たしたトゥサンベアーズ。その道のりを振り返ってみたい。
 
 2014年は6位に終わったトゥサンではキム・テヒョン新監督が就任し巻き返しを図っていた。2015年シーズン、出だしは順調だった。4月9日のネクセン戦では外国人投手ユニエスキ・マヤがチーム史上28年ぶりとなるノーヒットノーランを達成した(マヤはその後不調で5月に退団)。また4月18日のロッテ戦ではチェ・ジュファンの逆転3ランでサヨナラ勝ちなど、4月を首位で終えることができた。
 だが5月半ばになり2014年まで韓国シリーズ4連覇中の王者サムソン、勢いに乗る新興勢力NCに押され出した。5月26日には、不振で早々に退団したザック・ラッツ(元東北楽天)に代わる新外国人打者デービンソン・ロメロと契約した。だが5月28日、首位争いのライバルNC戦で、相手の先発ハッカーとオ・ジェウォンとの口論がきっかけで両チームがベンチ総出の騒ぎとなった。なんとその際、ハッカーへボールを投げつけたミン・ビョンホンのみならず、当時一軍登録から抹消されていたのにベンチ入りしていたホン・ソンフンに対して出場停止処分が科されてしまった。
 6月にもサムソン、NCとのし烈な争いは続き、先発陣のテコ入れとして新外国人投手アンソニー・スウォーザックと契約した。左腕ユ・ヒィグァンがチームのエースに成長し連勝を重ね、正捕手ヤン・ウィジは6月27日のキア戦で2本塁打6打点の大爆発と、打撃でもチームを引っ張った。だが2011年より先発の軸として活躍してきた外国人投手ニッパートが故障で思うように登板できず、先発投手陣のやりくりが苦しくなった夏場は首位サムソンとの差が開きだした。
 9月前半、サムソン、NCのし烈な首位争いから取り残され、9月11日のKT戦では新球団に初の三重殺を献上し、5併殺打で10点差の大敗を喫し6連敗で、ネクセンにも抜かれ4位に後退した。ネクセンとの3位争いは最後まで続き、10月3日のキア戦は延長戦にもつれ込んだがチョン・スビンの本塁打で勝ち越し逃げ切り、ネrクセンと同率3位になった。公式戦最終戦の10月4日のキア戦は、キム・ヒョンスの本塁打などで完封勝利し、この日ネクセンが敗れたため公式戦3位が確定した。
 2013年以来2年ぶりに進出したポストシーズンは、ネクセンとの準プレーオフからの出場となった。第1戦は延長10回裏、パク・コヌのタイムリーでサヨナラ勝ちし、第2戦も3-2と接戦で勝利した。第3戦は敗れたが、第4戦は6回を終えて7点差をつけられていたものの、7回表、8回表で計3点を返して追い上げ、9回表相手の乱れに乗じて一気に6点を奪って逆転し、11-9で逆転勝ちし3勝1敗でプレーオフ進出を決めた。
 公式戦2位でプレーオフへ直接進出したNCとの戦いはさらにし烈を極めた。公式戦では不本意な成績に終わったニッパートが第1戦で見事な完封勝利をあげた。だが第2戦で完封負けを喫し、第3戦では16失点の大敗となった。もう後がない第4戦でニッパートが第1戦を再現したような好投で完封勝利をあげ、決着は第5戦へともつれた。敵地・馬山での第5戦でも先制されたが、5回表チョン・スビン、キム・ヒョンスのタイムリーで逆転して追加点を奪い、6-4で勝利し2013年以来2年ぶりとなる韓国シリーズ進出を決めた。
 韓国シリーズの相手は2年前と同じサムソンであった。2013年は第4戦まで3勝1敗とリードしておきながら、第5戦以降3連敗して優勝を逃す悪夢を見てしまった。敵地・大邱での第1戦はトゥサンが4点をリードしながら、守備の乱れもあって8-9と逆転負けとなった。だが第2戦ニッパートの好投で快勝し、本拠地・蚕室に戻った第3戦もチャン・ウォンジュンの好投で勝利した。第4戦は継投策で4-3と1点差で勝利し、2年前と同じ状況になったが悪夢は繰り返さなかった。個人的な事情で3人の主力投手を出場させなかったサムソンは2年前と違って追い詰められ意気消沈してしまったか、トゥサンは第5戦で13-2と勢いの違いを見せつけ大勝し、一気に4連勝で2001年以来14年ぶり4度目の韓国シリーズ優勝を飾り、本拠地・蚕室で勝利の美酒に酔いしれた。


2. 【チーム分析】
 韓国シリーズ優勝ながら、公式戦は5年連続で優勝したサムソンと9ゲーム差もついてしまっていた。直接対決でもサムソンは11勝5敗と苦手にしていた。その要因はまずチーム防御率7位(5.02)に終わった投手陣に求めることができる。
 チーム最多勝(18勝)のユ・ヒィグァン、2014年シーズンオフにロッテからFAによる大型契約で移籍してきたチャン・ウォンジュン(12勝)と、左腕2人が先発の軸としてシーズンを通して働いた。だがニッパートが故障で6勝止まり、途中入団の外国人投手スウォーザックも5勝と、頼れる先発右腕が不在だった。しかしポストシーズンでのニッパートの安定感は際立ち、韓国シリーズ優勝の立役者となった。
 60試合以上登板したリリーフ投手として右のオ・ヒョンテク、ユン・ミョンジュン、左のハム・トクチュがいた。シーズン前半は守護神不在だったが、後半は左腕イ・ヒョンスンが抑えに定着すると18セーブを記録し、安定した勝ちパターンの継投ができたことが韓国シリーズ優勝につながった。
 打線はチーム打率.290が10チーム中3位、チーム得点807が同4位と際立った成績は残していない。打線の軸は28本塁打、121打点とチームの二冠王だったキム・ヒョンスで、自己最高の成績を残した。他にもヤン・ウィジが20本塁打と活躍した。左の大砲オ・ジェイルも自己最高の14本塁打と才能を発揮した。外国人打者ロメロは12本塁打とあまり期待に応えられなかった。
 チャンスメイクの役割はミン・ビョンホン、韓国シリーズMVPを受賞したチョン・スビンの外野陣、ショートのレギュラーとして活躍したキム・ジェホなどが担った。またオ・ジェウォンもチーム最多の31盗塁、12本塁打と走攻守に存在感を示した。そして自己最多の117試合に出場しサードのレギュラーに定着したホ・ギョンミンなど、次代を担う選手の台頭も見られた。


3. 【オフシーズンの動向】
 2008年首位打者に輝き、2010年代の打線の軸として活躍してきたキム・ヒョンスがFA(フリーエージェント)でメジャーリーグベースボール(MLB)・ボルティモアオリオールズへ移籍した。2015年WBSCプレミア12で韓国代表の優勝に貢献し大会MVPを受賞するなど国際舞台でもその実力を発揮してきた天才打者の新たな舞台での活躍に期待がかかるが、その穴を埋めるのは容易ではない。新外国人打者としてMLB通算177試合に出場し、2014年日本プロ野球東北楽天に在籍していたニック・エバンスの名前があがっているが、過度な期待は禁物である。2015年シーズン一軍に定着したパク・コヌなど新たな力の台頭が望ましい。そのほかFAを行使したオ・ジェウォン、コ・ヨンミンと生え抜きの野手たちは残留した。
 投手陣では目立った補強はなく、11月の余剰戦力を対象とした2次ドラフトでロッテからチョン・ジェフンを復帰させリリーフの拡充を図った。外国人投手はニッパートを残留させ、スウォーザックに代わりマイケル・ボウデン(元埼玉西武)と契約した。
 2015年シーズン、ポストシーズンで勢いに乗り選手たちが予想以上の力を発揮しまさかの王座にまで上り詰めたが、決して盤石の戦力ではない。2001年も公式戦では同じく3位だったがポストシーズンで快進撃を見せ韓国シリーズで優勝を果たしたものの、翌2002年は5位と後退しポストシーズンにも進出できなかった(当時は8球団制で上位4チームがポストシーズン進出)。その轍を踏まないためにも、2016年シーズン、チーム史上初の韓国シリーズ2連覇に向けてさらなる戦力の底上げと進化が必要である。


(文責:ふるりん