DAILY KOREAN PRO BASEBALL 2

1982年に発足し、2024年時点で10球団が加盟する韓国野球委員会(KBO)による韓国のプロ野球リーグ(通称KBOリーグ)に関するブログ。レギュラーシーズン、ポストシーズン(韓国シリーズなど)の試合速報や球団別の情報、現役プロ選手が含まれる野球韓国代表が出場する国際大会の情報などもお伝えします。 twitter : @kbodigest

  第2回 ネクセンヒーローズ

「頂点を争うチームに成長」 
2014年成績 : 78勝48敗2分け(韓国シリーズ準優勝)
チーム総合採点…80点

 2013年、準プレーオフで敗れたが初のポストシーズン進出を果たしたネクセンは、経験を糧にさらなる飛躍が期待され、韓国シリーズ初出場という形でそれに応えた。


 パク・ピョンホやカン・ジョンホなどの強力打線を軸に、公式戦開幕から約1か月後の4月末には勝率6割を超え、スタートダッシュに成功し首位に立っていた。2011年から在籍していた外国人投手ナイト(元北海道日本ハム)の衰えが顕著で5月に退団させ、2013年までキアに在籍していたヘンリー・ソーサと契約し、不安な先発投手陣の補強に努めた。
 5月になるとサムソンの首位独走を許し、NC、トゥサンなどとの2位争いを演じた。6月上旬、主砲パク・ピョンホは25本目を打つなど本塁打王争いを独走したが、先発投手陣の弱さもありなかなか波に乗れず、サムソンを射程距離内にとらえられなかった。だが左腕の外国人投手バンヘッケンが好調を維持し連勝を重ねると、ムン・ソンヒョン、オ・ジェヨンなどの韓国人投手も奮起し、ソーサもネクセンに馴染み勝ち星を重ねるようになると、徐々にサムソンとの差を縮めていった。
 そして8月13日のロッテ戦で、バンヘッケンは17勝目と先発でのプロ野球連勝記録を14にまで伸ばした。8月後半になると、首位争いはサムソンとネクセンの一騎打ちの様相を呈してきた。9月4日のNC戦ではパク・ピョンホが1試合4本塁打と大爆発し、強力打線の火付け役である1番ソ・ゴンチャンもヒットを重ねた。
 仁川アジア大会による中断期間が終わり、10月の終盤戦で首位サムソンがもたつき、ネクセンは追い上げを見せた。10月13日のキア戦でソ・ゴンチャンがシーズン安打数の新記録となる197本目を打つと、翌14日のロッテ戦でバンヘッケンが20勝目、パク・ピョンホが50本塁打を記録した。15日にサムソンの4年連続公式戦優勝が決まったが、ネクセンはチーム史上最高の公式戦2位で終えた。最終戦の17日のSK戦で、ソ・ゴンチャンはプロ野球史上初のシーズン200安打の大記録を達成し、自身初の首位打者も確定させた。カン・ジョンホも40本塁打と自己最高の成績を残した。


 このようにかつてなく投打にタレントがそろったネクセンは、初出場となったLGとのプレーオフでは3勝1敗と圧倒し、難なく初の韓国シリーズ進出を決めた。特に第4戦ではシーズン中わき役に徹していたキム・ミンソンがポストシーズン史上最多の1試合7打点と大活躍した。
 韓国シリーズの相手は3連覇中の王者サムソンだった。公式戦では最終的に0.5ゲーム差まで迫ったが、経験豊富なサムソンは全く違う姿で大舞台に登場することは明白だった。敵地・大邱での第1戦はプレーオフから好調を維持していたカン・ジョンホの決勝2ランで4-2と接戦を制した。だが第2戦は1-7と完敗だった。舞台を本拠地・木洞に移した第3戦は1点を先制したが、牽制によるアウトなどでチャンスをつぶすと、ソン・スンナク、ハン・ヒョンヒィの救援陣が打たれ3-1と逆転負けを喫した。第4戦はバンヘッケンの好投で快勝し、2勝2敗のタイに持ち込んだ。
 中立地・蚕室での第5戦は9回表2アウトまで1-0とリードしていた。しかしショートのカン・ジョンホのエラーをきっかけにピンチを招き、ソン・スンナクが逆転サヨナラタイムリーを打たれ1-2で敗れ、もう後がなくなってしまった。そして第6戦は1-11と大敗を喫し、初の韓国シリーズ優勝はならなかった。個々のタレントではサムソンを上回っていたが、経験や選手層など総合力の差が大事な場面で出てしまい、あまりにも高いその牙城を崩すことはできなかった。


 ネクセンのチームカラーは、狭い本拠地・木洞野球場を生かしたホームラン攻勢である。
 チーム打率.298は2位だが、得点841、本塁打数199は9球団中トップと圧倒的な破壊力だった。主砲パク・ピョンホは52本塁打、124打点と3年連続打撃二冠王で、プロ野球史に残る長距離砲となった。主に5番を打った40本塁打、117打点のショートのカン・ジョンホや、イ・テックン(21本塁打)、ユ・ハンジュン(20本塁打)、キム・ミンソン(12本塁打)などの主力打者も自己最高の成績を残し、切れ目がなかった。控えとして起用されたイ・ソンヨル(14本塁打)、ユン・ソンミン(10本塁打)なども怖さがあった。
 そして初の首位打者(.370)にしてプロ野球史上初のシーズン200安打を達成した1番打者ソ・ゴンチャンは、偉業が認められシーズンMVP(最優秀選手)まで受賞し、2012年新人王に次ぐ栄誉となった。


 打撃陣と比べるとネクセン投手陣は心もとない。チーム防御率5.25は9球団中5位と決して良くはなく、基本的に打ち勝つチームだったことがわかる。外国人左腕バンヘッケンは韓国3年目にして自己最高、そして球団史上初の20勝をあげ、5月の途中入団ながら10勝をあげた外国人右腕ソーサも活躍した。近年外国人投手に続く韓国人選手の先発がいなかったが、ムン・ソンヒョンが自己最多の9勝をあげ成長を見せた。その他左腕オ・ジェヨン、クム・ミンチョルなどが先発として起用されたが、シーズンを通しての活躍には至らなかった。
 リリーフ陣は2年連続最多ホールドのハン・ヒョンヒィ(31ホールド)、2年連続最多セーブのソン・スンナク(32セーブ)が軸となったが、過去3度のセーブ王の経験のあるソン・スンナクはリリーフ失敗も多かった。中堅のキム・ヨンミンは安定を欠いたが、速球を武器にした20歳の若手のチョ・サンウがリリーフ陣に欠かせない存在として台頭した。またベテランのソン・シニョン、マ・ジョンギルなどに頼ることも多く、投手陣の層の薄さと不安定さが王者サムソンとのもっとも大きな差だった。
 なお、12月に選ばれた2014年ゴールデングラブ賞受賞者10名のうち、バンヘッケン、パク・ピョンホ、ソ・ゴンチャン、カン・ジョンホとネクセン勢が9球団中最多の4名を占めた。


 オフシーズンの動きとしては、シーズン中から強打のショートとして米国メジャーリーグのスカウトの注目を集めていたカン・ジョンホが、ポスティング制度を利用してピッツバーグパイレーツへの移籍を決めた。ここ5年ほど主力として活躍していた代えのきかない選手なだけに、次代を担う若手の大抜擢を期待したい。ネクセンは他球団と違ってバックに大企業を持たないため資金力に乏しく、球団創設7年目にしての韓国シリーズ進出は選手育成の成功によるところも大きい。
 FA(フリーエージェント)を行使したイ・ソンヨルとも再契約した。外国人選手は年俸面で折り合いがつかなかったヘンリー・ソーサ(2015年はLGと契約)、捕手までつとめたがレギュラーに定着できなかったユーティリティープレヤーのロッティーノ(元オリックス)と再契約せず、左腕ライアン・フィアベンド、2014年シーズン途中からLGに在籍していた外野手スナイダーと契約した。もちろん先発の柱バンヘッケンとも再契約した。
 
 
 球団創設から少しずつ時間をかけ、ようやく頂点を争うチームにまで成長したネクセンヒーローズ。カン・ジョンホの流出という痛手はあるが、2014年に得た自信と経験を糧にさらなる高みへと登っていくことを期待したい。


(文責 : ふるりん