史上初の4年連続公式戦と韓国シリーズ両方の優勝を狙うサムソンと、2008年の球団創設から7年目にして初めて進出したネクセンとの韓国シリーズは当然初対決で一見新鮮ではあるが、10年前の現代とサムソンの唯一の対決を思い出す関係者やファンは少なくない。
1998年から2004年まで4度の韓国シリーズ優勝と輝かしい実績を残した現代ユニコーンズは、親会社の経営不振と、仮の本拠地とした水原(スウォン)での不人気がたたり2007年シーズン終了後に解散となった。そして現代の選手たちの大半は、2008年シーズン開幕前に創設された新球団ヒーローズへと移籍した。だがバックに大企業を持たないヒーローズはシーズン途中でメインスポンサーのウリタバコに逃げられてしまい、資金難に陥り主力選手たちを金銭トレードで出してしまうことも幾度かあった。
2010年、ネクセンタイヤがメインスポンサーとなってから資金難に陥ることは減ったが、2011年最下位で終わるなど低迷が続いた。しかしこの年の7月末、2軍でくすぶっていたパク・ピョンホをLGからトレードで獲得してから流れが変わった。パク・ピョンホは2012年から2014年まで3年連続本塁打・打点王と球界を代表する選手となり、不動の軸ができたネクセンヒーローズは2013年公式戦3位で初めてポストシーズンへ進出した。
初めての大舞台となった2013年準プレーオフではトゥサンに敗れたが、それを糧とした2014年プレーオフではLGを3勝1敗で撃破し、初の韓国シリーズ進出を決めた。10年前の現代−サムソンの韓国シリーズは3試合も引き分ける熱戦となり、韓国シリーズ史上唯一の第9戦まで行われた末に現代が最後の優勝を飾った。当時を知る選手としてサムソンではペ・ヨンス、パク・ハニ、チン・ガビョン、イム・チャンヨン(元東京ヤクルト)、ネクセンではオ・ジェヨンがあげられる。
今あげた例でも分かるように、3年連続韓国シリーズ優勝のサムソンが経験ではネクセンを圧倒的に上回っている。公式戦優勝のサムソンは10月になりもたつき、2位のネクセンとは最終的に0.5ゲーム差しかなかったが、韓国シリーズという特殊な大舞台ではその数字はあまり参考にならない。公式戦では8勝7敗1分けとサムソンが勝ち越してはいる。
サムソンの強みは豊富な先発陣だ。チーム防御率4.52は9球団中2位だったが、クォリティースタート(先発投手が6イニング以上を投げ自責点3以内)は63と、9球団中1位だった。第1戦の予告先発となった外国人投手バンデンハークはチーム最多の13勝、最優秀防御率(3.18)と最多奪三振(180)の二冠に輝いた大黒柱だ。その他にも右腕ユン・ソンファン(12勝)、左腕チャン・ウォンサム(11勝)、もう一人の外国人投手マーティン(9勝)、ベテランのペ・ヨンス(8勝)と質量ともにそろっている。
その反面リリーフはやや不安定だ。2014年開幕前に復帰した抑えのイム・チャンヨンは31セーブと抑えを任されていたが、防御率は5.84と高くセーブ失敗も9度記録している。そうなると右のアン・ジマン(27ホールド)、左のチャ・ウチャン(21ホールド)を軸とした強力な中継ぎ陣がカギとなる。アンダーハンドのシム・チャンミン、左のクォン・ヒョク、右のキム・ヒョヌなども控えている。また公式戦では故障もありほとんど出場しなかったが、過去6回の優勝に貢献したベテラン捕手チン・ガビョンが韓国シリーズには出場する予定で、ここ一番での起用が予想される。
サムソン打線はネクセン打線に引けを取らない。チーム打率.301は9球団中トップで、打高投低のシーズンとはいえプロ野球史上初めてチーム打率が3割を超えた。チーム得点812、本塁打数161はともに2位で、特にイ・スンヨプ(元オリックス)の32本、チェ・ヒョンウとナバーロの31本と、シーズン30本塁打以上の打者が3人と破壊力は高い。公式戦終盤では1番を打っていたナバーロは25盗塁と足もあり、主に下位を打つ盗塁王キム・サンス(53個)、プロ2年目でレギュラーに定着したパク・ヘミン(36個)と機動力は高く、チーム盗塁数161は9球団中トップである。また2013年韓国シリーズMVPのベテラン、パク・ハニも相手にとっては嫌な存在だ。狭い木洞野球場での一発攻勢で押し切ってきたネクセンと違い、サムソンは一発も足もある非常に多彩な攻撃が特徴となっている。
ネクセンはプレーオフを4試合で終え、韓国シリーズ開幕まで3日間の休養をとることができた。しかし短期決戦で重要な先発投手陣がサムソンと比べて見劣りする。2014年最多勝投手(20勝)で第1戦の予告先発バンヘッケン、第2戦で先発が予想されるソーサの両外国人投手はまだしも、プレーオフで好投した左腕オ・ジェヨン以外の先発候補が弱い。公式戦で9勝をあげたがプレーオフは負傷で欠場したムン・ソンヒョンが韓国シリーズに出場することになったが、ロングリリーフでの起用が予定されていて、大黒柱のバンヘッケンをフル稼働させる可能性が高い。そのためネクセンとしてはソ・ゴンチャン、パク・ピョンホ、カン・ジョンホ、イ・テックン、ユ・ハンジュン、キム・ミンソンなどをそろえた強力打線が爆発して早めに決着をつけたいところだが、経験豊富なサムソン相手ではそう簡単にいかないだろう。また控えの選手も若手が多くサムソンと比べて見劣りする。
サムソンが7度目の韓国シリーズ優勝を、史上初の公式戦との4年連続優勝で飾るのか、それともネクセンの初優勝となるのか…どちらにしても歴史に名を残す勝負であることには変わりがない。