DAILY KOREAN PRO BASEBALL 2

1982年に発足し、2024年時点で10球団が加盟する韓国野球委員会(KBO)による韓国のプロ野球リーグ(通称KBOリーグ)に関するブログ。レギュラーシーズン、ポストシーズン(韓国シリーズなど)の試合速報や球団別の情報、現役プロ選手が含まれる野球韓国代表が出場する国際大会の情報などもお伝えします。 twitter : @kbodigest

  第2回 トゥサンベアーズ

「安定した育成力」 
2013年成績 : 71勝54敗3分け(公式戦4位・韓国シリーズ準優勝)
チーム総合採点…75点


 2013年シーズン、トゥサンは公式戦4位ながら韓国シリーズへ進出し、王者サムソンをあと一歩まで追い詰めた。その戦いを振り返っていく。


 トゥサンは前年3位だったが投打ともに選手層が厚く、優勝候補の一角に推す声も高かった。3月30-31日、敵地・大邱でのサムソンとの開幕2連戦で連勝スタートと出だしは良く、4月だけで外国人エースのニッパートが4勝など先発陣が好調で、軍から除隊され復帰したミン・ビョンホン、オ・ヒョンテク、ユ・ヒィグァンなども活躍し、4月末で13勝7敗1分けと悪くない位置につけていた。
 近年トゥサンは5月になると調子を落とすが、2013年も例外ではなかった。5月12日、新球団NCに17失点で大敗するなど先発投手陣の不調が目立った。ベテランのキム・ソヌが期待にこたえられず、新外国人オルソンは故障で離脱しリリーフも機能していなかった。キム・ヒョンス、ホン・ソンフン、オ・ジェウォンなど主力打者は好調だったが、投手陣の崩壊で5月末には勝率5割ちょうどの5位と上位から引き離されていた。
 6月になっても不調を引きずっていたが、左腕ユ・ヒィグァンが先発に定着してきた。勝率5割を下回っていた時期もあったが、6月29日まで引き分け1つをはさみ6連勝と調子が上向いてきた。6月末には勝率5割を少し超えていたが、首位サムソンから6位のトゥサンまで勝率5割以上と混戦が続いていた。抑えにはホン・サンサムを起用したが、他のリリーフ陣の調子が悪く不安定な試合運びが目立った。
 7月になり打線の調子がさらに上向きとなると、落ち目のキア、ロッテなどを抜いてサムソン、ネクセン、LGの上位陣に食らいつき4強の一角を占めるようになった。全く期待に応えられなかったオルソンの代わりに新外国人投手ハンキンスと契約するなど、投手陣はテコ入れを図ったが大きく改善されることはなく、あくまでも機動力を生かした切れ目のない打線が頼みだった。
 7月後半からニッパートが故障で戦線を離脱し投手陣が相変わらず不振でも、チームが大きく崩れることはなかった。8月17日までの5連勝でネクセンを抜いて3位となったが、その後8月22日まで4連敗と上位2チームを捉えきれなかった。サムソン、LGの首位争いが続いていたが、9月6日までの6連勝で依然3位ながら上位2チームに迫った。
 9月半ばからサムソン、LG、ネクセンと熾烈な優勝争いを続け、17日ネクセンに抜かれ4位に後退した。デッドヒートが続いたが9月29日のネクセンとの直接対決に敗れて3位浮上が厳しくなった。翌30日のLG戦でユ・ヒィグァンが自己初の10勝目をあげる勝利で望みをつないだ。10月5日の公式戦最終戦を前にネクセン、LG、トゥサンの3チームが2位から4位までの0.5ゲーム差にひしめく大混戦となったが、5日のLG戦で敗れ公式戦4位となった。

  
 10月8日からのネクセンとの準プレーオフは、敵地・木洞での第1、2戦ともにサヨナラ負けで後がなくなってしまった。本拠地・蚕室での第3戦は延長14回裏イ・ウォンソクのタイムリーでサヨナラ勝ちすると、第4戦はチェ・ジェフンの逆転2ランで2-1と接戦を制して2勝2敗とし、決着は木洞での第5戦までもつれ込んだ。こちらも9回裏2アウトからネクセンの主砲パク・ピョンホに同点3ランを打たれ延長戦にもちこまれたが、延長13回表チェ・ジュンソクの本塁打などで勝ち越し、その裏2点を返されたが8-5で勝利し、プレーオフ進出を決めた。
 5試合中3試合も延長戦までもつれこんだ準プレーオフでの疲労が抜けていないと思われ、10月16日からのLGとのプレーオフはトゥサンがかなり不利であると予想された。しかし2002年以来11年ぶりのポストシーズン出場で経験不足を露呈したLG相手に、過去10年間で8度出場と経験豊富なトゥサンは準プレーオフで勝った勢いをそのまま持ち込み、3勝1敗で勝ち抜け2008年以来5年ぶりの韓国シリーズ出場を決めた。特に第3戦での9回表、同点のピンチをイム・ジェチョル、チョン・スビンと2度の外野の好返球でしのぎ勝利した場面が印象的だった。
 10月24日からのサムソンとの韓国シリーズでもその勢いは続いた。敵地・大邱での第1戦は先発ノ・ギョンウンの好投、キム・ヒョンスなどの本塁打で7-2と快勝し、第2戦は延長13回表、サムソンの守護神オ・スンファンからオ・ジェイルの本塁打で勝ち越し5-1と連勝スタートとなった。本拠地・蚕室での第3戦は2-3と敗れたが、第4戦は先発イ・ジェウの好投とリリーフ陣のがんばりで2-1と接戦を制し、2001年以来12年ぶりの韓国シリーズ優勝に王手をかけた。
 しかし準プレーオフプレーオフからの激闘の疲労が累積していたトゥサンは第5戦で5-7と敗れると、地力で勝るサムソンに押され始めた。敵地・大邱へと舞台を移した第6戦で先制するもニッパートが打たれ逆転負けし、決着は第7戦までもつれこんだ。第7戦も5回まで2-2の接戦だったが、疲労からか集中力が切れ6回裏に致命的な守備のミスが出て勝ち越されそのまま敗れてしまい、第5戦からのまさかの3連敗で韓国シリーズ優勝を逃した。


 チーム成績を検証する。
 チーム防御率は4.57で9球団中7位と、投手陣のやりくりには苦労していた。クォリティースタート(先発が6回以上投げ自責点3以内)の試合が44とこれまた7位で、チーム最多勝のニッパート(12勝)、ノ・ギョンウン(10勝)、初の2ケタ勝利を記録したユ・ヒィグァン(10勝)以外の先発が心もとなかった。ポストシーズンではベテランのイ・ジェウが先発として好投したものの、2012年は10勝したが故障で満足に投げられなかったイ・ヨンチャンの不在は大きかった。オルソン、ハンキンスと2人の外国人投手合わせて4勝しかあげられなかったのも誤算だった。抑えはチョン・ジェフンが14セーブをあげたが、不動の守護神を確立できなかった。中継ぎではオ・ヒョンテク、ユン・ミョンジュン、ピョン・ジンスなどが主に起用されたが、左腕不足だった。
 不安定な投手陣をカバーしたのが強力打線だった。チーム打率.289、チーム総得点699ともに1位だった。チーム本塁打数95は4位と広い蚕室野球場を本拠地としているため多くなかったが、それをカバーするためチーム盗塁数172で1位と機動力野球が特徴で、オ・ジェウォン(33盗塁)、イ・ジョンウク(30盗塁)などの快足の選手が揃っていた。打線ではキム・ヒョンス(16本塁打、90打点)、ベテランのホン・ソンフン(15本塁打、72打点)以外に、打撃成績が向上したミン・ビョンホン(打率.319、9本塁打、65打点、27盗塁)の活躍が目立った。また代打の打率が.292と9球団で最も高く、チェ・ジュンソク、オ・ジェイルなど長打のある選手がベンチに控え、図抜けた選手は少なかったが選手層の厚さがポストシーズンを勝ち抜いた要因の一つになっていた。


 オフシーズンには激震が何度も走った。イ・ジョンウク、ソン・シホンがNC、チェ・ジュンソクがロッテと、FAを行使した3人の主力選手が移籍してしまった。また先発として活躍してきたベテランのキム・ソヌが自由契約となりLGへ移籍した。その他にもイム・ジェチョル、イ・ヘェチョン(元東京ヤクルト)などのベテランが2次ドラフトでそれぞれLG、NCへと移籍した。さらにキム・ジヌク監督が突如更迭され、在日韓国人のソン・イルス(日本名:石山一秀)新監督が就任した。その一方でメキシコ出身の大砲ホルヘ・カントゥ、米国メジャーリーグで実績のあるクリス・ボルスタッドと大物新外国人選手を獲得している。ベテラン勢を大量に放出したのは、それだけ育成力に自信があるからとも言える。新体制となった2014年シーズンは新たなスター選手を生み出し、前年あと一歩で手の届かなかった韓国シリーズ優勝を成し遂げることができるのだろうか。

(文責:ふるりん