韓国でもっとも熱狂的な空間のひとつが、ロッテジャイアンツの本拠地・社稷野球場です。
「韓国で最も大きいカラオケボックス」という表現もあるほど、社稷野球場ではロッテファンたちが大音量で「釜山港へ帰れ」「釜山カルメギ」などの応援歌を響き渡らせます。
平日火曜日のナイターということもあり、18時半の試合開始当初はまだまだ1塁側内野応援席にも空席が目立ちましたが、夕暮れから夜空へと移り変わるにつれてロッテファンたちで野球場が埋め尽くされていきました。
この試合ではかなり珍しいシーンがありました。
サムソンは2回表、先頭打者のガーコが四球で出塁すると、次のチェ・テインはセカンド正面に強い打球を飛ばしました。
これをロッテのセカンド、チョ・ソンファンが取れず後ろにそらしてしまい、1塁走者ガーコはいったん1塁へ戻って2塁へ進んだものの、ロッテのライト、ソン・アソプが2塁へ好送球し走者を刺しました。(記録上はライトゴロ)
問題は次のシン・ミョンチョルが右中間のフェンスに当たる大きな当たりを打った時でした。
外野が取るかどうか微妙な打球で、1塁と2塁の間に止まっていたチェ・テインはいったん2塁を踏んだものの1塁近くまで戻り、外野が打球を取ることができなかったのを確認すると、何とチェ・テインは2塁を踏まず直接3塁まで走っていきました。
外野から内野に送球され、3塁へ滑り込んだチェ・テインはいったん審判によりセーフが宣告されたものの、ロッテ野手陣からのアピールにより2塁を踏んでいないということで、チェ・テインはアウトとなりました。
これまた記録上はライトゴロで、2者連続ライトゴロというのは韓国プロ野球史上初の椿事だったとか。
結局この回、ありえない凡プレーで先制のチャンスを逃したサムソンは、4回裏ロッテに4点を先制されてしまいました。
ロッテが6回を終えて5−1とリードを奪っていたこともあり、試合終盤に向けてどんどんファンたちの歓声も高まっていきます。
7回くらいになると、どこからともなく大量のオレンジ色のビニール袋がまわってきて、ファンたちはそれを頭にかぶって応援し始めます。
そしてお決まりの「釜山カルメギ」の大合唱。
ファンたちはロッテが勝っても負けても大声で歌い、1万人以上が一体となる喜びを分かち合うためにこの社稷野球場に足を運び、エキサイティングな夜の喧騒に酔いしれているのです。
この日は大入り満員というわけではありませんでしたが、「社稷ノレバン」はいつもの騒々しさで訪れた人々を満足させていました。
(文責 : ふるりん)