DAILY KOREAN PRO BASEBALL 2

1982年に発足し、2024年時点で10球団が加盟する韓国野球委員会(KBO)による韓国のプロ野球リーグ(通称KBOリーグ)に関するブログ。レギュラーシーズン、ポストシーズン(韓国シリーズなど)の試合速報や球団別の情報、現役プロ選手が含まれる野球韓国代表が出場する国際大会の情報などもお伝えします。 twitter : @kbodigest

   アジアシリーズ2008 観戦記

 今年で4年目となった、アジアのプロ野球界の頂点を決めるアジアシリーズ。残念ながら、開催国日本では年々その注目度は落ちているのが現実ですが、韓国、台湾、中国などアジアのプロ野球に関心のある者にとっては、各国の選手が勢ぞろいするまたとない機会となっているのも事実です。管理人も4年連続でアジアシリーズを観戦しましたので、以下感想などを書きつづっていきます。



 緒戦の日本代表・埼玉西武戦は所用もありちゃんと見られませんでしたが、後でデータや録画などをもとに試合内容を振り返ってみると、勝つには勝ったもののあまり内容はよくなかったですね。先発のキム・グァンヒョンが5回持たず3失点で降板したことだけではありません。相手の先発の帆足を打ち崩した以外は、岩崎、大沼などのリリーフ陣からまともにチャンスを作れず、全体では13三振と明らかに打者たちが大振りになっていて、SKらしいきっちりしたつなぐ野球はできているように思えませんでした。4得点のうち3点はホームランでしたし、前大会でキム・グァンヒョンが好投し中日に勝ったときのような胸のすくような勝利ではなかったですね。  

 SKは14日の中国代表・天津戦に15−0で快勝し、決勝進出をほぼ確実にしました。しかし次の台湾代表・統一戦は、「負けてもいい戦い」ではありませんでした。ここにまず落とし穴があったように思います。13日の天津戦は9回裏にかろうじてサヨナラ勝ちをおさめ、14日の埼玉西武戦は惜しくも1−2で敗れていて、1勝1敗となった統一は何としてでもSKに勝たなければなりませんでした。しかも統一は前大会で13−1とSKに大敗し、雪辱を晴らそうと燃えていました。



 試合の詳細については、先日15日の記事で書きましたので、ここでは割愛させていただきます。試合開始前、統一の内情に詳しい方にお会いしてお話をうかがったところ、「SKは進化してここまで来たが、統一は去年と何も変わっていない。これだったら去年と同じ結果になる。」とおっしゃっていました。外から見ると、両者の実力差は歴然としていたのです。ところが、グラウンドでは誰もが目を疑うようなことになってしまいました。
 今季国内で圧倒的な強さを誇り、2位トゥサンに13ゲーム差をつけて独走優勝したSKは、この統一戦のような投打ともにぼろぼろだった試合というのをほとんどしていません。100試合やったら2、3試合あるかどうかという最悪の試合でした。逆に統一としても、本塁打4本で快勝なんてのはほとんどなかったそうで、お互いにとって最高の試合と最悪の試合が、アジアシリーズという大舞台でめぐり合わさってしまったようです。

 韓国シリーズを連覇し黄金時代を築く土台を作った2008年のSKにとって、最大の敵は同じ国内のトゥサンやサムソンなどではなく、実は前回のアジアシリーズで屈辱的な大敗を味わされた台湾の統一だったようです。実はアジアのどのチームよりも「打倒SK!」に燃え、この1年間を過ごしてきたのかもしれません。「今年こそアジアシリーズ制覇」を目標に掲げ1年間戦ってきたSKは、少し違うベクトルを持ってアジアシリーズに臨んだ統一に、足元をすくわれてしまいました。

 今大会に臨むにあたって、10月31日に韓国シリーズを終えたSKは、11月1日からの日本シリーズにスコアラーを送り、日本代表のチームの分析を徹底して行いました。その結果、埼玉西武に勝つことはできましたが、韓国シリーズと同じ時期に台湾シリーズを戦っていた統一の分析のほうにはあまり精力を注げなかったようです。前大会のデータはあるでしょうが、最新の情報は手元になかったでしょう。
 また、韓国シリーズは4勝1敗でトゥサンに勝ちましたが、投打ともに圧倒していたわけではなく、相手の主力打者を要所で抑えて勝ってきた試合が目立ち、勝手知ったる何試合も戦った相手だったから勝てたようにも思います。試合内容は正直言って、4勝2敗でしたが初優勝した2007年のほうが勢いを感じましたし、投打ともにすばらしかったですね。韓国シリーズでのやや悪いチーム状態が、そのままアジアシリーズでも続いてしまったように思います。



 国際大会とは、今回のSKと統一のように、国境の枠を超えたドラマが起こります。しかし、開催国である日本のプロ野球ファンは、どうもそれを知ろうともせず、このアジアシリーズの真の魅力に触れようともしません。日本プロ野球がずっと国内で完結し続けてきたせいと、世界中の野球エリートが集まるアメリカのメジャーリーグについても、一部の日本人選手たちのことしか関心を持たないファンが多いからでしょうか。マスコミの報じ方にも問題があるのかもしれませんし、日本人の国民性もあるのでしょう。韓国プロ野球しか扱っていませんが、このブログがいつもご覧になっている皆様の関心や視点を少しでも外へ向ける一助になれば、これに増す幸いはありません。

 
 さて、気を取り直して16日の決勝戦は、SKを倒した統一を応援しました。3塁側の統一応援席は、前日の興奮と熱気がそのまま残っていました。なお、統一側応援席には、SKの決勝進出を信じてチケットを買ってしまった韓国から来た野球ファンの方々が時々見受けられました。彼らは統一のサードを守る布雷ことブリトー(SK−サムソン−SK−ハンファ)が、台湾で2年連続のホームラン、打点の2冠王と活躍しているのに驚いているようでした。このシリーズ、ブリトーはSK戦以外はさっぱりでしたけど。でもテーマ曲に合わせてメガホンやスティックバルーンを高く掲げる応援は最高に盛り上がっていました。



 
 試合は決勝戦にふさわしい好勝負でした。勝敗は抜きとして、埼玉西武、統一ともに最大限の賛辞を送りたいと思います。SKはこの決勝の舞台にすら進めなかった悔しさをばねにして、次の1年はアジアシリーズ優勝だけでなく、「打倒統一!」を目標に掲げて戦ってほしいものです。

 次の国際大会は、2009年3月のWBC(ワールドベースボールクラシック)で、今回のアジアシリーズはその前哨戦といった意味合いもありました。また、アジアシリーズ自体は大会4年目にして大きな曲がり角に差し掛かっています。これからは、「ただ日本代表を応援する」だけでなく、国際大会の妙味というものを多くのファンが楽しみ、アジアシリーズが続くことでより権威のあるものとなり、国内だけで完結しやすく閉塞感がある日本プロ野球の体質を変えるきっかけになれば、と願うばかりです。

(文責 : ふるりん