DAILY KOREAN PRO BASEBALL 2

1982年に発足し、2024年時点で10球団が加盟する韓国野球委員会(KBO)による韓国のプロ野球リーグ(通称KBOリーグ)に関するブログ。レギュラーシーズン、ポストシーズン(韓国シリーズなど)の試合速報や球団別の情報、現役プロ選手が含まれる野球韓国代表が出場する国際大会の情報などもお伝えします。 twitter : @kbodigest

  2008年 ポストシーズン ダイジェスト

 
 2008年のプロ野球ポストシーズンは、準プレーオフ(3試合)、プレーオフ(6試合)、韓国シリーズ(5試合)の合計14試合で34万9359名が入場し、ポストシーズン歴代3位の総入場者数を記録した。プレーオフ第2戦(釜山・社稷)以外は全試合入場券が完売し、毎試合入場券売り場には当日券を求めて長蛇の列ができた。例年になく盛り上がった2008年のポストシーズンを振り返りたい。


プレーオフ:ロッテ−サムソン

 今季8年ぶりのポストシーズン進出を決め、地元釜山の熱狂的なファンたちを大いに興奮させた公式戦3位ロッテと、終盤ハンファとの4位争いを制し何とか12年連続ポストシーズン進出を決めたはサムソンとの準プレーオフは、投打ともにロッテが有利との下馬評が高かった。ファンたちもプレーオフ進出を疑わず、わずか1ゲーム差で2位争いに敗れたトゥサンとのリベンジを夢見たロッテファンだったが、現実は厳しかった。

 釜山・社稷野球場での第1戦(10月8日)、ロッテは2回裏サムソンの先発ペ・ヨンスから1点を先制した。しかし、ロッテの先発ソン・スンジュンは直後の3回表3点を奪われノックアウトされると、この回7点をあげたサムソンが試合の主導権を握り、その後もリードを広げ12−3で大勝した。第2戦(10月9日)はサムソンが先行しロッテが追いつく終盤までもつれる接戦となったが、サムソンが1点差を守りきり4−3で勝利し、プレーオフ進出に王手をかけた。

 舞台をサムソンの本拠地・大邱に移した第3戦(10月11日)はまたもや接戦となり、ロッテが7回表4−2と勝ち越し第4戦以降に希望をつなぐかと思われた。しかしサムソンは7回裏幾度も大舞台を経験したヤン・ジュンヒョクの2ランで同点に追いつくと、8回裏コルテスからチョ・ドンチャンのタイムリーで2点を勝ち越し、最後は守護神オ・スンファンが抑え6−4で逆転勝ちし、3連勝でプレーオフ進出を決めた。

 第1戦の大勝で勢いに乗ったサムソンは、第2戦、3戦と接戦を制し、豊富なポストシーズンでの経験を生かし投打ともにロッテを一歩リードし下馬評を覆した。準プレーオフMVPには攻守ともに活躍した正捕手チン・ガビョンが選ばれた。ロッテはメジャーリーグでの監督経験があるロイスター監督も実際はマイナーリーグでの経歴が長く、選手も含めてまったく大舞台慣れしていなかったのが敗因となった。ソン・ミンハン、チャン・ウォンジュン、ソン・スンジュンの自慢の先発三本柱がいずれも早い回で降板し、手薄なリリーフ陣に負担がかかってしまった。打線も3番チョ・ソンファン、5番ガルシア(元オリックス)の2人が抑えられ、不発に終わった。よもやの準プレーオフでの敗戦に、熱狂的なロッテファンたちもはかない夢から覚め、来年こそはと静かな闘志を燃やしながら、釜山への帰途に着くしかなかった。


プレーオフ:トゥサン−サムソン

 ロッテとのし烈な2位争いを制し、今季こそは2007年に敗れたSKにリベンジし、韓国シリーズ優勝を狙っていたトゥサンの前に、準プレーオフを3試合で終え最高の状態でプレーオフに進出したサムソンが立ちはだかることになった。地力ではトゥサンが勝ると思われながら、経験豊富で勢いに乗るサムソンの勝利を予想する声も少なくはなかった。

 爆発的な観客動員が見込まれるロッテが敗退したことにより、ポストシーズンの盛り上がりに水が差されるのではないか、と危惧されたが、歴代2位の観客動員数を記録した公式戦中の熱気はまだまだ冷めることなく、プレーオフも連日超満員が続いた。ソウル・蚕室野球場に3万人の大観衆を集めた第1戦(10月16日)は、サムソンがプレーオフに勝った勢いのままトゥサンの先発キム・ソヌから4点をリードしたが、トゥサンもサムソンの先発ペ・ヨンスなどから4−4の同点に追いついた。するとトゥサンは7回裏足を生かした攻撃や相手のミスで2点を勝ち越すと、最後はイ・ジェウが抑え7−4と逆転勝ちした。

 続く第2戦(10月17日)は接戦となり、4−4の同点のまま試合は延長に突入した。何度もチャンスを作ったサムソンは14回表シン・ミョンチョルのタイムリーなどで3点を勝ち越すと、最後はオ・スンファンが抑え7−4で勝利し、ポストシーズン史上最長の5時間以上の激闘を制した。舞台をサムソンの本拠地・大邱に移した第3戦(10月19日)は、パク・ソンミン、チェ・ヒョンウのサムソンの若い打者たちがチャンスで活躍し、先発ユン・ソンファンも好投して5−2でサムソンが勝利し、2連勝で一歩リードした。第4戦(10月20日)サムソンは投手を温存し、先発4番手としてやや力が落ちるベテランのイ・サンモクを登板させたが、1回表5点を奪われてしまった。トゥサンの先発キム・ソヌも早い回で降板したが、相手に追加点を奪われ序盤の失点が響きサムソンは6−12で敗れた。

 これで流れがトゥサンに傾いてしまい、第5戦(10月21日)はトゥサンがサムソンの先発ペ・ヨンスを攻略し、先発ランデルが何とか6回途中までしのいでリードを守り、6−2で快勝し今度はトゥサンが対戦成績を3勝2敗とリードし、韓国シリーズ進出に王手をかけた。舞台を蚕室野球場に戻した第6戦(10月23日)は、トゥサンがサムソンの先発ユン・ソンファンから1回裏早々と2点を奪うが、3回裏途中で雨が強く降り始め試合は50分以上中断した。その後追加点をあげチョン・ジェフンなどリリーフ陣の好投でリードを守りきり、トゥサンが5−2で勝利し、3連勝で2年連続韓国シリーズ進出を決めた。5試合通して好調だったトゥサンの1番打者イ・ジョンウクがプレーオフMVPを受賞した。

 第3戦まではプレーオフを制した勢いでトゥサンと互角以上に戦ったサムソンだが、第4戦以降からヤン・ジュンヒョクやチン・ガビョンなどベテラン選手たちが打てなくなり、また手薄な先発陣を支えてきたリリーフ陣も疲れが出てきて攻勢をしのぎきれず、第4戦以降3連敗でポストシーズンで敗退した。だがポストシーズンに進出し続けているチームらしい地力は所々で見せ、来季以降の王座奪回、黄金時代の復活の可能性を感じさせた。トゥサンは機動力を生かしたスピード感のある野球に磨きがかかり、イ・ジェウ、チョン・ジェフンなどのリリーフ陣も調子を上げていたが、一方で肝心の先発陣が不安定な投球を続けることが多く、圧倒的な強さを誇る王者SKとの韓国シリーズにやや不安を残した。


韓国シリーズ:SK−トゥサン

 2007年に続き連覇を狙うSKと、プレーオフを勝ちあがったトゥサンとの韓国シリーズは、2位トゥサンと13ゲーム差をつけて余裕の独走で公式戦を優勝したSKが圧倒的有利の下馬評通りの展開となった。また韓国プロ野球最大の祭典らしく、毎試合超満員の観客で球場は埋まり、熱い応援合戦も繰り広げられた。

 本拠地・仁川の文鶴野球場での第1戦(10月26日)、SKは満を持して若きエースのキム・グァンヒョンを先発させたが、制球が定まらず不安定な内容だった。2回裏トゥサンの先発ランデルからキム・ジェヒョンの本塁打で先制したが、トゥサンは5回表イ・ジョンウクのタイムリーで同点に追いつき、6回表チェ・ジュンソクのタイムリーで2点を勝ち越し、キム・グァンヒョンをノックアウトした。その後イ・ジェウなどの好投で相手の反撃を抑え、トゥサンが5−2で勝ちプレーオフでの勢いを見せ付けた。だが10月5日の公式戦終了後、20日ほど実戦から離れていたSKにとって、3日前までプレーオフを戦ってきた相手に最初勝てないのは計算済みだった。

 第2戦(10月27日)からSKはその力を発揮し始めた。1回表トゥサンの先発キム・ソヌから2点を先制したが、トゥサンも2回裏SKの先発チェ・ビョンニョンから同点に追いついた。SKは5回裏パク・チェサンのタイムリーで1点を勝ち越し、7回裏キム・ジェヒョンの2ランでリードを広げた。この試合からチョン・ウラム、イ・スンホ、チョン・デヒョンなど細かい継投でリードを守る本来の姿を見せたSKが、5−2で勝利しエンジンがかかり始めた。

 舞台をトゥサンの本拠地・蚕室野球場に移した第3戦(10月29日)は、SKの先発レイボーン、トゥサンの先発イ・ヘェチョンの投手戦となった。1−1で迎えた6回表、SKはトゥサンのリリーフ陣の柱イ・ジェウからチェ・ジョンの2ランで勝ち越すと、トゥサンも7回裏チェ・スンファンの意外な一発で1点差に迫った。トゥサンは何度もチャンスを作りながら得点を奪えず、9回裏SKの守護神チョン・デヒョンから満塁のチャンスを作るものの、不振に陥りだした首位打者キム・ヒョンスが併殺打に倒れ試合終了となり、SKが3−2で勝ち一歩リードした。トゥサンは第2戦からタイムリー欠乏症が見られだしたが、ますます深刻化した。

 第4戦(10月30日)は、1−1で迎えた4回表、SKがトゥサンの先発ランデルからチェ・ジョンのタイムリーで1点を勝ち越した。SKは先発ソン・ウンボムを3回で見切り必死の継投でトゥサンに追加点を許さず、相手のミスを誘い2点を追加し、4−1で勝利し3連勝で韓国シリーズ連覇に王手をかけた。特に第2戦で先発したチェ・ビョンニョンをリリーフで投入したのには驚かされ、早いうちに決着をつけようとするSKベンチの決意が感じられた。

 第5戦(10月31日)は、SKがエースのキム・グァンヒョンを先発させたが、序盤から不安定な立ち上がりで先制のチャンスを与えるものの、トゥサンのタイムリー欠乏症もあり無失点に抑え続けた。トゥサンの先発キム・ソヌは、これまでのポストシーズンでのふがいない姿が嘘のような好投で、SK打線を抑え続けた。だがSKは7回表、キム・ソヌが四死球で満塁ピンチを招くと、パク・キョンワンの強烈な打球をサードがはじき、待望の1点を先制した。トゥサンもその裏キム・グァンヒョンを交代させチャンスを作ったが、またもや得点できず、ホームが非常に遠く感じられるようになった。

 緊迫した展開でもSKは8回表、チェ・ジョンのタイムリーで1点を追加した。8回裏のピンチも、SKのセンターのチョ・ドンファがスーパーキャッチを見せ無得点に抑えた。9回裏最後のマウンドには、腰を痛めたチョン・デヒョンではなく、チェ・ビョンニョンがマウンドに上がっていた。だが無死満塁と絶体絶命のピンチを招き、万事休すかと思われた。しかし不振のコ・ヨンミンをまずピッチャーゴロに打ち取ると、4試合ノーヒットの悩める首位打者キム・ヒョンスをまたもやピッチャーゴロに仕留め、併殺を完成させSKが2−0と完封勝ちで4連勝し、韓国シリーズ連覇を達成した。

 5試合を通して、SKは相手を圧倒していたわけではなく、特に第3戦、5戦などは相手のほうがチャンスは多かった。それでもここ選手たちの一番の集中力と、リリーフとして復活した左腕イ・スンホ、チョン・ウラム、ユン・ギルヒョンなどのリリーフ陣の細かい継投などによって相手の主力打者を抑え込んでしまう徹底したデータ分析や、選手による守備位置の変更など、短期決戦を制するためにありとあらゆる手を尽くした。また第3戦、4戦と2試合連続決勝打点を記録し韓国シリーズMVPを受賞したチェ・ジョンなど、ラッキーボーイの出現もあった。名将キム・ソングン監督の巧みな選手起用や人心掌握術が光り、SKの黄金時代の到来を予感させる優勝だった。次の目標は2007年惜しくも届かなかったアジアの頂点を目指すアジアシリーズ2008(11月13−16日)となり、今回こそは韓国プロ野球史上に残る偉業達成が期待される。

 一方敗れたトゥサンは、不振に陥ったキム・ヒョンス、イ・ジョンウクなどの打順を下げたり、あるいは代打を送ったりするなどの策がまったく取れず、短期決戦を勝ち抜くための戦術や柔軟性のなさを感じさせてしまった。プレーオフが今季から最大7試合と長期化したことにより、第6戦まで戦ったトゥサンはSK対策を講じ準備する余裕がなかったとも言える。不安視された投手陣は先発、リリーフともに比較的好投したが、打線が深刻なタイムリー欠乏症に陥ってしまってはどうしようもなかった。第3戦以降まったく打てなくなり、出塁しても相手の執拗なけん制で思い切った走塁ができず、4連敗を喫した2007年の前回の韓国シリーズを再び見ているかのような錯覚に陥った。キム・ギョンムン監督は若手選手の抜擢や選手のやりくりのうまさには目を見張るものがあるが、経験がものを言う短期決戦はまだまだ不得手のようである。幸い伸び盛りの若い選手が多く、SKとは違った形で勝てる野球を追求すれば、王座にたどり着く道は見えてくるであろう。

 
 北京五輪の金メダル獲得もあり、例年になく話題が豊富だった2008年の韓国プロ野球は、超満員の韓国シリーズでSKが球史に残る勝負強さで連覇を達成し、黄金時代の幕開けとなった、と後世の人々に評価されるのであろう。2009年以降も韓国プロ野球の秋の祭典にふさわしいポストシーズンの盛り上がりを期待したい。
 
 
(文責 : ふるりん