DAILY KOREAN PRO BASEBALL 2

1982年に発足し、2024年時点で10球団が加盟する韓国野球委員会(KBO)による韓国のプロ野球リーグ(通称KBOリーグ)に関するブログ。レギュラーシーズン、ポストシーズン(韓国シリーズなど)の試合速報や球団別の情報、現役プロ選手が含まれる野球韓国代表が出場する国際大会の情報などもお伝えします。 twitter : @kbodigest

  第6回 現代ユニコーンズ

2007年成績 : 56勝69敗1分 公式戦6位

 現代ユニコーンズには、シーズン開幕前に突風が吹き荒れ、その行方は遥として知れなくなった。1月中旬にKBO(韓国野球委員会)が農協への球団売却を発表したが、内部団体の反対により中止となった。現代は1996年の創立以来4度の韓国シリーズ優勝と強豪の名をほしいままにしていたが、2000年に本拠地仁川(インチョン)をSKに譲り、ソウル移転を前提に仮の本拠地をソウル近郊の大都市・水原(スウォン)に置いたが、ソウル市内に適切な球場がなく、水原にとどまっていた。
 だが、水原では市民球団であるサッカーKリーグ水原三星の地元人気が高く、現代はいくら強くてもまったく人気が出なかった。観客動員数は常に8球団中最低であり収益はまったく出ず、親会社の現代グループ半導体事業者ハイニクスの業績不振により、球団経営も危機に陥った。また現代グループ間の分裂や不和もあり、グループ内の他企業から資金提供を受けられなくなり、球団には運営資金が入らず、他企業への球団売却成立以外に球団が存続する道はないとされた。

 球団存続の危機にもかかわらず、予定通りチームは米国、日本での海外キャンプを終えシーズンに臨むこととなった。結局今季の運営資金は、8球団制を維持するためKBOからの融資に頼ることとなった。示範競技(オープン戦に相当)は4勝7敗の7位と低迷し、球団存続問題で選手の士気も高くはないと予想され、上位進出を予想する声も少なかった。そのような雰囲気を背負ってキム・シジン新監督は開幕を迎え、4月6日からの本拠地水原での開幕3連戦は、ロッテに3連敗と最悪のスタートとなった。
 それでも4月10日のキア戦で今季初勝利をあげたが波に乗れず、10試合を消化して2勝8敗と出遅れ最下位に低迷した。だが徐々に調子を上げ4月末にはサムソンに3連勝し、4月は9勝11敗の6位と5月に希望を持たせた。5月4日には初めて勝率5割に達し、4位にまで浮上した。しばらくは投打ともに好調で、5月半ばまでは勝率5割前後をキープしていた。だが5月後半に8連敗し、23日には最下位まで転落した。27日は何とか最下位を脱出したが、5月も11勝13敗と負け越し首位ハンファと5ゲーム差の7位で終えた。
 6月10日には6位、12日には5位に浮上し、13日には勝率5割に復帰、さらに15日には4位浮上と、去年公式戦2位だった地力を徐々に発揮しだしたかのように見えた。また3年ぶりに現代へ復帰した主砲ブランボー(元オリックス)が6月だけで10本塁打と爆発した。6月後半にまた調子を落とし首位SKと9ゲーム差の6位となったが、6月は12勝11敗と初めて勝ち越し、4位争いに希望をつないだ。
 7月になると4連敗で4日には7位に後退し、7日には6位に復帰するなどロッテとの6位争いが厳しくなり、4位以上進出は厳しくなってきた。オールスター前の前半戦は首位10ゲーム差の6位で終え、低迷の最大の要因は前年は好調だった投手陣がリリーフ陣を中心に機能しなかったことにあった。また2年連続でチーム最多勝だった外国人投手キャラウェイが故障もあり、勝ち星を伸ばせなかった。

 オールスター戦では主力外野手のイ・テックンがオールスター史上初のランニング本塁打を記録し活躍したが、それがチームのカンフル剤にはならなかった。28日にはまたロッテに抜かれ7位に後退したが、7月は何とか6位で終えたものの8勝11敗と負け越し、4位以上進出の可能性はさらに遠のいた。
 8月は試合の雨天中止が相次ぎ、チームの停滞感はさらに強まり、15日には5連敗でまた7位に後退し、18日まで7連敗となりポストシーズン進出はほぼ絶望となった。その後6位ロッテとのゲーム差は広がり、少しずつ最下位に沈んだままのキアの姿が見えてきてしまった。また20日にはキャラウェイの退団が決まったものの、外国人選手獲得の期限がすぎていたため新外国人の補強はできなかった。結局8月は6勝14敗と大きく負け越してしまった。
 9月になるとロッテとのゲーム差を詰め、1ゲーム差前後で追走した。28日のキア戦では38歳の大ベテラン外野手チョン・ジュンホが、史上最多の通算1951試合出場の新記録を達成し、暗い話題しかなかったチームに明るい話題をもたらした。10月1日にゲーム差はなかったがロッテを勝率で上回り、1ヵ月半ぶりに6位に浮上すると、5日のハンファとの公式戦最終戦で勝利し公式戦6位が確定した。9月以降は10勝9敗と勝ち越し、ロッテの不調もあり何とか順位を1つ上げてシーズンを終えることができた。

 シーズン全体を振り返ってみると、チームが優勝争いから遠ざかった最大の要因は、8球団中7位の防御率4.41、失点は最多(615)だった投手陣やディフェンス陣にあった。わずか2勝しかできずシーズン途中退団したキャラウェイが最大の誤算だったが、ここ2年ほど満足な成績を残せず2006年オフFAで残留しチーム最多の12勝をあげたキム・スギョンがシーズンを通して安定した投球を見せた。2006年12勝し活躍したプロ2年目の左腕チャン・ウォンサムは好投しても勝ち星に恵まれず9勝どまりで、チームのちぐはぐさをよく表していた。その他はベテランのチョン・ジュンホが6勝、ファン・ドゥソンが7勝し、先発陣は比較的健闘していた。
 問題は特にリリーフ陣にあった。2006年は抑えだったが今季は中継ぎに転向し6勝したパク・チュンス、チーム最多の14セーブを記録したソン・シニョン、20歳の若手ながらチーム最多の71試合に登板し4勝9セーブと活躍したチョ・ヨンフンなど、目立った選手はいたが層は薄かったため起用法が一貫せず、安定した戦いができなかった。
 打線は比較的タレントがそろい、チーム打率.271は8球団中最高で、本塁打数も96本と3位と一見強力そうだったが、チーム盗塁数が67個と8球団中6位と機動力不足で、つながりも悪く得点は6位(530)にとどまっていた。その中でもチーム最多の29本塁打、87打点を記録したブランボーは、3年ぶりの韓国プロ野球復帰でもさすがの貫禄を見せた。またチーム最高打率(.313)を記録したイ・テックンは、主軸としての地位を不動のものにした。
 またベテラン外野手のソン・ジマンが15本塁打、正三塁手チョン・ソンフンも16本塁打と、打線に厚みを加えていた。シーズン前半首位打者に立っていたベテランの好打者イ・スンヨンが、怪我で戦線を離脱したのが痛かった。
 守備面ではここ数年二遊間が弱点とされていたが、今季はセカンドにキム・イルギョンが定着し、117試合に出場と自己最高の成績を残した。ショートにも後半戦から若手のファン・ジェギュンが定着した。だがサードのチョン・ソンフンも含めてエラーが多く、8球団最多の97を記録した。
 外野陣はソン・ジマン、イ・テックンこそ不動だったが、ベテランのチョン・ジュンホは肩が弱く守備にあまりつかなかったため、あと1人がなかなか定着できずブランボーが守備につくこともあり不安定だった。正捕手では今季も若手が成長せず、39歳のベテランのキム・ドンスが円熟味あふれるリードで投手陣を支えた。
 
 9月末に新興企業STXが現代買収を進めているとの報道が流れたが、結局不祥事や資金不足もあり正式な返答を先延ばしにしたため、11月21日にKBOは買収の提案を正式に撤回し、1年間で球団売却に2度失敗するという失態を犯してしまった。収益性の高い企業ではないKBOの資金提供も限界があり、来季はこのままだと球団の存続が難しく、プロ野球が7球団となり縮小の危機を迎えているという見方も強い。
 現代ユニコーンズの球団売却問題は、韓国ではプロ野球がビジネスとして成り立っていない、あるいは成り立つ可能性はきわめて低いという問題点をさらに浮き彫りにしてしまい、2007年もあと1週間で終わろうかという12月24日現在、その根本的な解決策は何も示されていない。今後のプロ野球界の発展と存続のためにも、1日も早い解決策の提示が望まれる。
(文責:ふるりん)