DAILY KOREAN PRO BASEBALL 2

1982年に発足し、2024年時点で10球団が加盟する韓国野球委員会(KBO)による韓国のプロ野球リーグ(通称KBOリーグ)に関するブログ。レギュラーシーズン、ポストシーズン(韓国シリーズなど)の試合速報や球団別の情報、現役プロ選手が含まれる野球韓国代表が出場する国際大会の情報などもお伝えします。 twitter : @kbodigest

  第1回 SKワイバーンズ

2007年成績 : 73勝48敗5分 公式戦1位 韓国シリーズ優勝

 2007年は、球団創立8年目と歴史の浅いSKワイバーンスにとって、韓国シリーズ初優勝と記念すべき最高の1年となった。その予兆は、昨季オフの2006年10月、韓国プロ野球史上屈指の名将キム・ソングン監督の就任ですでに見られたといっていい。また、最大の弱点だった先発投手陣に、日本、台湾プロ野球の経験があるレイボーン、ロマノ(ともに元広島)を補強し、日本で行われた春季キャンプでは有望な若手の底上げだけでなく、以前から主力として活躍していたベテランとの融合も進み、示範競技(オープン戦に相当)も首位で終え、2005,06年に韓国シリーズを連覇したサムソンに停滞感が漂っていたこともあり、開幕前には優勝候補に推す声も高く聞こえるようになった。

 4月6日からの敵地・大田(テジョン)でのハンファとの開幕3連戦は1勝1敗1分けで終わったが、11日の前年の王者サムソン戦から7連勝と一気に波に乗った。そして4月は12勝6敗と首位で終え、開幕ダッシュに成功した。示範競技の負傷でイ・ジニョン、イ・ホジュンなどの主力打者を欠きながらも、チョン・グヌ、チェ・ジョンなど若手の活躍でチームには活気がみなぎっていた。
 2006年も4月は首位で折り返したが、5月になるとサムソンに首位を奪われその後故障者が続出し浮上できず、結局6位で終わってしまった。だが今季は5月になってもまだ勢いは続き、新外国人レイボーンは開幕7連勝と好調を維持した。また5月20日には20勝一番乗りを達成し、2位ハンファとのゲーム差は3.5もあり、首位の座は当分安定かのように見えた。
 SKは好調なチーム成績と比例するように、観客動員数も大幅に増やし球団新記録を更新した。今季からSKは「Spo-tainment」のキャッチフレーズを掲げ、イメージアップを図り本拠地・文鶴(ムナク)野球場も内野席にメジャーリーグ風のオーロラビジョン、場内の通路にもロッカールーム風の選手ギャラリーなどを設置した。また、文鶴野球場の最寄り駅、仁川(インチョン)地下鉄・文鶴競技場駅に「SKワイバーンス」の副駅名を冠してもらうなど、仁川市民に親しまれる球団作りに努めた。また、文鶴野球場が3万人の満員の観衆で埋まった5月26日のキア戦では、イ・マンス首席コーチが公約通りパンツ姿でスタッフたちと場内を一周し、大いに話題を振りまいた。


(美しい天然芝の文鶴野球場。)
 
 SKは5月末にトゥサンに3連敗するなど開幕直後の勢いに陰りが見え、5月は9勝12敗と負け越し、ついに31日首位の座をハンファに譲り、首位争いは未曾有の大混戦となった。6月3日にハンファから首位を奪い返したが、10日今度はトゥサンに首位を奪われたがすぐに奪回したものの、15日から17日の直接対決で負け越しまたトゥサンに首位を譲るなど、一進一退の展開が続いた。20日首位に返り咲くと、ここから球団新記録となる怒涛の11連勝で首位の座を固め、6月は終わってみれば17勝7敗と大きく勝ち越し、2位トゥサンに4.5ゲーム差をつけ、悲願の初優勝に向けて大きく走り出した。
 7月13日から15日までの2位トゥサンとの直接対決で3連敗したものの、SKはオールスターまでの前半戦を4ゲーム差で余裕を持って首位で折り返した。7月も11勝8敗と勝ち越し、トゥサン、ハンファ、サムソンの2位以下のチームが潰しあいをしていたため、ゲーム差をどんどん広げていった。8月以降は大きな連勝もなかったが、3連敗以上がなかったため首位の座は安泰で、9月28日の敵地蚕室(チャムシル)野球場でのLG戦に勝利し、公式戦初優勝と4年ぶりの韓国シリーズ出場を決めた。年間73勝はチーム新記録で、2位トゥサンとの最終的なゲーム差は4だったが、投打ともに他球団を圧倒している印象が残った。

 個人成績を見ると、優勝チームとしては異例だが投打ともにタイトル獲得者がいなかっただけでなく、各部門上位5人にも数えるほどしか名前が出てこない。投手陣では何と言ってもレイボーン(17勝)、ロマノ(12勝)の外国人コンビで合計29勝したのが大きい。韓国人ではこれまでエースとしての活躍が期待されながら、あまり実力を発揮できていなかったチェ・ビョンニョンが11勝し、成長のあとを見せた。他球団より一歩ぬきんでていたのはリリーフ陣で、27セーブをあげた守護神チョン・デヒョン、右のチョ・ウンチョン、ユン・ギルヒョン、左のカ・ドゥギョムは60試合以上に登板し、細かい継投で相手を翻弄した。先発、リリーフともに質、量ともにそろい、チーム防御率は3.24と8球団中トップだった。それを支えた正捕手パク・キョンワンの存在も大きかった。
 打線は投手陣以上に抜きん出た存在が少なく、チーム打率は.264と8球団中4位だった。だがパク・チェホンの17本を筆頭に、2ケタ本塁打を記録した選手が5人と上位から下位まで切れ目のない打線となり、チーム本塁打数は112本と8球団中トップだった。また25盗塁のチョ・ドンファ、24盗塁のチョン・グヌ、21盗塁のパク・チェサンなど、快足の選手もそろい攻撃のバリエーションも豊富で、さらにキム・ソングン監督が4番イ・ホジュンや主に7番を打ったチェ・ジョン以外は日替わりオーダーで打順を組んだため、相手としては非常に戦いにくかった。守備はショートやセカンドを守ったチョン・グヌの20失策など、ややエラーが目立ったが比較的安定していた。
 各チームとの対戦成績は、2006年の王者サムソンには8勝8敗2分けと五分の戦いだったが、その他の球団にはすべて勝ち越した。特に7位ロッテとは14勝4敗、3位ハンファには11勝5敗2分と大きく勝ち越した。

 10月22日からの韓国シリーズは、プレーオフでハンファに3連勝し勢いに乗るトゥサンとの対決となった。本拠地文鶴野球場での第1戦は、今季22勝をあげシーズンMVPにも輝き、SK戦でも抜群の強さを見せたトゥサンの先発リオスに完封され、2−0で敗れた。続く第2戦は、中盤まで3−3の同点だったが、先発チェ・ビョンニョンが乱闘寸前の緊迫状態を乗り切れず勝ち越しを許し、6−3で敗れた。これまで韓国シリーズで連敗スタートして優勝したチームがないなど、トゥサン絶対有利の状況に見えたが、地力に勝るSKが本領を発揮したのはここからだった。
 舞台を敵地・蚕室野球場に移した第3戦は、途中大乱闘劇が起きてしまう荒れた展開となったが、先発ロマノが好投し打線も爆発し、9−1で大勝した。続く第4戦では高卒新人ながら即戦力として期待されたものの、公式戦では3勝に終わった左腕キム・グァンヒョンが、第1戦で完封したリオスと投げあい、6回途中までノーヒットに抑える歴史的快投を見せ4−0で快勝し、シリーズ成績を2勝2敗のタイとし、流れは完全にSKへと傾いた。
 第5戦はSKの先発レイボーン、トゥサンの先発ランデルの投げあいとなり緊迫した展開となったが、8回のキム・ジェヒョンの決勝タイムリーで4−0とSKが勝ち、優勝に王手をかけた。再び舞台を文鶴に戻した第6戦は、先発チェ・ビョンニョンが1回に1点を先制されるが、3回にチョン・グヌ、キム・ジェヒョンの本塁打で逆転すると、そのままリードを守り5−2で勝利し、悲願の初優勝を地元で達成することができた。連敗スタートからの優勝は韓国シリーズ史上初の快挙となり、第3戦以降は投打ともに相手を圧倒した。

 SKは初出場となった11月のアジアシリーズでも勢いを維持していた。緒戦の日本代表・中日戦では、キム・グァンヒョンの韓国シリーズに続く快投で6−3と勝利し、日本代表勢にアジアシリーズでの初黒星をつけた。続く中国プロ野球選抜・チャイナスターズ戦は13−0、台湾代表・統一は13−1と2試合連続でコールド勝ちし、予選リーグ3戦全勝と圧倒的な強さを見せた。
 中日との再戦となった決勝戦は、1回に2点を先制するものの先発レイボーンが逆転を許し、中盤5−2とリードを広げられるが、キム・ジェヒョン、イ・ジニョンの本塁打で5−5の同点に追いつした。だが守護神チョン・デヒョンを出せないまま9回表に1点を勝ち越され、結局6−5で敗れ韓国代表勢の初優勝はならなかった。だが、これまでの韓国プロ野球のイメージを覆すようなSKの強さは、日本のプロ野球ファンに大きなインパクトを与えたのは間違いがない。
 打者は大振りせずチームバッティングに徹し、相手の隙を突く走塁や巧みな守備位置の変更、絶妙なタイミングの投手の継投は完成度が高かった。これは在日韓国人でもあるキム・ソングン監督が連れてきた加藤初大田卓司、福原峰夫の3人の日本人コーチによる手腕が大きい。

 SKは今季の初優勝で選手たちが大きく自信をつけ、キム・グァンヒョンなど有望な若手も多く、来季の戦い次第では黄金時代を築く可能性もある。また他のチームもSKを倒そうと必死になりマークも厳しくなるであろうから、来季が真の正念場といえよう。それを乗り越え、アジアの頂点に立てる力強さが、このチームには備わっているように思う。
(文責:ふるりん