DAILY KOREAN PRO BASEBALL 2

1982年に発足し、2024年時点で10球団が加盟する韓国野球委員会(KBO)による韓国のプロ野球リーグ(通称KBOリーグ)に関するブログ。レギュラーシーズン、ポストシーズン(韓国シリーズなど)の試合速報や球団別の情報、現役プロ選手が含まれる野球韓国代表が出場する国際大会の情報などもお伝えします。 twitter : @kbodigest

  第3回 トゥサンベアーズ

「若さだけではつかめない頂点の座」 

2009年成績 : 71勝60敗2分(公式戦3位、プレーオフ敗退)

チーム総合採点…60点


 2009年シーズンこそ、2年連続SKに韓国シリーズで敗れた雪辱を晴らし、4度目の優勝を目指したトゥサンベアーズ。その戦いをふりかえってみたい。

 2年連続準優勝は惜しかったという言葉で済まされる内容ではなく、戦力、選手起用や采配などすべての面において王者SKとの力量の差は歴然としていた。キム・ギョンムン監督はここ数年推し進めてきた若手のさらなる抜擢でチームを成長させ、自身初の韓国シリーズ優勝を目指した。だが、FAでロッテに移籍したホン・ソンフンの穴を埋めることを期待した新外国人打者ワトソン(元千葉ロッテ)以外には、これといった補強はなかった。 また、同じくFAで日本プロ野球東京ヤクルトに移籍したイ・ヘェチョンの穴を埋める左腕も必要とされていた。
 
 開幕前、2005年から先発で活躍していた外国人投手ランデル(元読売)が、全治3ヶ月以上の大怪我で退団するアクシデントがあった。だが4月4日のキアとの開幕戦は、元メジャーリーガーでエースとしての活躍が期待されたキム・ソヌが好投し、抑えに抜擢した2年目の若手イ・ヨンチャンがセーブをあげ勝利した。新外国人ワトソンは、攻守ともにいいところなく4月半ばで1軍から姿を消し早々と退団した。4月末、ワトソンの代わりに指名打者として起用されるようになったチェ・ジュンソクなどの活躍もあって、5連勝したこともあり、4月は11勝7敗2分けと勝ち越し、首位SKと2ゲーム差につけた。

 5月3日のロッテ戦から、7日のLG戦まで4連敗と苦しんだが、その後15日までハンファ、ヒーローズなど下位チーム中心に7連勝と盛り返し、首位SKの追撃を続けた。そして5月22日から24日、SKとの首位攻防3連戦で、期待の高卒新人チョン・スビンの活躍もあって3連勝し、ついに首位の座に立った。ところがこのあと26日からのヒーローズ3連戦で3連敗し、首位の座を守れなかった。このあともLG、ヒーローズには思わぬ苦戦を強いられることが多かった。だが5月29日からの4連勝で首位の座を奪回し、5月は18勝9敗と大きく勝ち越した。若きチームの象徴は、まだ21歳の主力打者キム・ヒョンス(2008年首位打者)で、4割前後の高打率でチームを引っ張っていった。

 6月2日のキア戦で、主力外野手のイ・ジョンウクが試合中の負傷で戦線離脱するアクシデントがあり、3日にはまたSKに首位の座を奪回されるなど、6月は一進一退の状態が続いたが、しばらくは何とか首位の座を守った。あまり先発陣が豊富とはいえないトゥサンで、まだ21歳の中継ぎの柱イム・テフンが活躍し、リリーフ登板のみで10勝一番乗りを果たし、チームを支えていた。月末にはまたSKに首位の座を奪われ、6月は13勝12敗と何とか勝ち越した。

 シーズン途中の外国人選手の補強は、まだ25歳で成長途上のセデーニョ、SKを自由契約となったばかりのニコースキー(元福岡ソフトバンク)であり、2人とも左腕とチーム事情を反映していた。7月は1日からの5連敗で、7連勝したSKに首位の座を譲り、5日には5.5ゲーム差をつけられた。ところがSKがここからまさかの7連敗で、18日はトゥサンが再び首位に立った。その後も一進一退が続き、7月は9勝9敗と五分の星であっても首位で終えることができたが、勝率は.556しかなく、トゥサンとSKがつぶし合いをしているうちに、それまで3位だったキアが徐々に調子をあげてきていた。

 8月2日のSK戦に敗れ、キアに首位の座を譲ると、4日からのロッテ3連戦で3連勝したが、首位に立ったキアは連勝街道に突入し、追いつくことはできなかった。夏真っ盛りを迎え、ホン・サンサムなどの若手投手たちに疲れが見えはじめ、LG、ヒーローズといった下位チームに足元をすくわれることも目立ち、キアとの差は徐々に開いていった。首位キアへの挑戦権をかけた8月25日からの対SK3連戦で2敗し、2位の座まで明け渡してしまい、次のキア3連戦では3連敗と首位独走を許し、勝負どころの8月を11勝13敗と負け越してしまった。

 9月前半、途中入団の二コースキーが先発で好投しだしたことでトゥサンも調子は悪くなかったが、2位SKは一切負けることがなく、少しずつ差が開いていった。そして19,20日のロッテ戦に敗れ、SKが15連勝を決めたことで、トゥサンの公式戦3位が決定した。そして公式戦最後の25,26日のSK2連戦も敗れ、相手に19連勝の新記録を許し、下り坂のままポストシーズンを迎えることとなった。


 5年ぶりに出場した9月29日からの準プレーオフの相手は、サムソンとの厳しい4位争いを制し勢いが残るロッテで、トゥサン不利の声も少なくはなかった。そして本拠地・蚕室での第1戦、2−7であまりいいところがなく敗れてしまい、まだ悪い流れは続いていたようだった。第2戦、2009年シーズン大きく成長した左腕クム・ミンチョルの好投で完封勝ちすると、流れは地力で勝るトゥサンに傾いた。そして敵地・釜山での第3戦でエラーなど相手の自滅もあり7−3で勝つと、第4戦も先制されながら相手がまたもやエラーと、ロッテが勝手に崩れてしまったこともあって9−5で勝利し、終わってみれば3連勝でプレーオフ進出を決めた。

 プレーオフの相手は、2007,08年は韓国シリーズで2年連続で敗れた因縁の相手、2位SKだった。しかしSKは終盤の19連勝でキアに迫ったとはいえ、キム・グァンヒョンなど主力投手を複数欠いていて、状態は万全ではなく、準プレーオフを勝ち上がった勢いのあるトゥサン有利という声も多かった。そして10月7日、敵地・仁川での第1戦、3−2で接戦を制すると、第2戦もセデーニョの好投もあって4−1で勝利し、あと1勝で韓国シリーズ進出と、SKをがけっぷちに追い詰めた。
 ところが、本拠地・蚕室に舞台を移しての第3戦、1−1の同点の緊迫した展開で、9回裏サヨナラ勝ちのチャンスを逃すと、10回表勝ち越し点を許してしまい1−3で敗れ、とどめをさせなかった。第4戦も途中まで3−3と緊迫した展開だったが、チャンスを生かしきれず終盤勝ち越し点を許すと、一気に崩れてしまい反撃もできず8−3で敗れた。そして2勝2敗のタイで、舞台を敵地・仁川に移した第5戦は、2回表キム・ヒョンスの本塁打で先制したが、なんとその後降雨ノーゲームが宣告されてしまった。
 仕切りなおしとなった再試合では、先発セデーニョが1回持たずノックアウトされ、投手陣が崩壊し3−14で大敗し、3連敗でプレーオフ敗退が決まった。不運な面もあったかもしれないが、それ以上にここ一番でのチャンスをものにできない詰めの甘さ、若い選手が多く精神的支柱といえる存在がいないゆえにいったん崩れたときの歯止めが利かないなど、大一番だからこそ出るチームの弱点が露呈してしまった。

 公式戦の対戦相手別の戦績を見てみると、トゥサンはSK戦で9勝9敗1分けと互角、キア戦では12勝7敗と勝ち越し、上位2チームには一見強かったといえる。だが8月末この2チームとの6連戦(うち1試合雨天中止)で5連敗していて、シーズン終盤の肝心な直接対決ではすべて負けた。9月キアに2連勝したが、時すでに遅しの感が強かった。そしてトゥサンは6位ヒーローズに8勝11敗、同じ蚕室のライバル7位LGに6勝13敗と負け越し、足を引っ張られていた。キアはこの下位2チーム相手に27勝10敗1分け(特にLG戦では16勝)、SKは24勝11敗3分けとしっかり勝ち越している。優勝するには下位チーム相手には絶対取りこぼさず、貯金をしっかり作らなくてはならないが、トゥサンにはそれができなかった。
 
 投打の成績をふりかえる。
 投手陣であるが、チーム防御率はシーズン通して4.60(8球団中3位)だった。特徴としては先発陣がやや弱く、比較的リリーフ陣の層が厚かった。先発はキム・ソヌ(11勝)が勝ち頭で、プロ2年目で大きく成長したホン・サンサム(9勝)、左腕クム・ミンチョル(7勝)、キム・サンヒョン(7勝)、二コースキー(4勝)があげられるが、エースとして信頼できる存在がいなかった。

 その代わり中継ぎの柱でチーム最多勝のイム・テフン(11勝)、新人王、セーブ王(26セーブ)を受賞した20歳の若き守護神イ・ヨンチャン、サイドハンドのコ・チャンソン、チョン・ジェフンなど、リリーフ陣がしっかり仕事をし、先発が早めに崩れても大きく試合を壊すことが少なかった。だが不動の正捕手が不在で、チェ・スンファンの84試合が最多出場で、ヨン・ドカンとの併用だった。

 打線は本塁打数が120と8球団中最下位で、イ・ジョンウク、コ・ヨンミンなど快足の選手の不振で盗塁数は以前より減ったが、機動力を使った大胆な作戦と、.280と高いチーム打率(8球団中2位)のため、チーム得点722(同2位)と高い得点力だった。特にキム・ヒョンス、キム・ドンジュ、チェ・ジュンソクのクリーンアップが強力で、公式戦は3人合計で284打点を記録した。チームの顔で故障がちのキム・ドンジュが欠場したときは4番を打つこともあったキム・ヒョンスは、21歳にしてチームの大黒柱に成長した。その他の選手では、軍から除隊されショートのレギュラーに復帰しゴールデングラブを受賞したソン・シホン、ホン・ソンフンの人的補償としてロッテから移籍し、内野のユーティリティープレイヤーに成長したイ・ウォンソクの活躍が目立った。

 オフの動向であるが、まず二コースキー、セデーニョの外国人2名は退団となり、先発要因となる新外国人選手の補強を予定している。また出場機会の減った内野手イ・デスをハンファにトレードし、かつて先発で活躍したチョ・ギュスを獲得した。

 キム・ギョンムン監督としてはまたもやSKに苦杯をなめさせられた1年となり、2003年オフの監督就任後進めてきた若手の積極的起用方針が、コンスタントに上位には進出するものの、今のところ優勝という実を結んでいないし、2009年シーズンは韓国シリーズにも進出できなかったことで、その限界も見えてしまった。FAで選手を補強する方針のチームでないだけに、選手層を厚くするには自前で選手を育て続けるか、大当たりの外国人選手を取ってくるしかなく、優勝するにはチームの成熟を待つしかないのであろうか。9年ぶりの4度目優勝を目指す2010年シーズンはチームの転機となる勝負の一年となるであろう。
 

[チームMVP]

キム・ヒョンス

(2009年シーズン成績)
133試合 打率.357 23本塁打 104打点 6盗塁

 2008年レギュラーに定着して首位打者となり、北京五輪でも韓国代表の優勝に貢献した天才打者が、2009年更なる進化を遂げ、チームの三冠王となった。開幕前のWBC(ワールドベースボールクラシック)でもその打撃センスの高さを披露し、準優勝に貢献した。2年連続で公式戦全試合出場を達成したこともあり、2010年シーズンも故障なく出場を続け、チームを優勝に導くことができるであろうか。
 

[ワーストプレイヤー]

コ・ヨンミン

(2009年シーズン成績)
85試合 打率.235 6本塁打 29打点 12盗塁

 2006年からセカンドのレギュラーに定着し、「陸上部」と呼ばれるほど快足そろいだったトゥサンの攻撃陣の象徴だったが、2009年シーズンは開幕前WBCワールドベースボールクラシック)でいまひとつの内容に終わると、その不調を公式戦にも引きずってしまった。そして5月には負傷で1ヶ月以上長期戦線離脱し、シーズン最後まで調子は上がらないままであった。しかし、ポストシーズンでは3本塁打と好調で、これまでのうっぷんを晴らすかのようであった。2010年シーズンの復活を期待したい。
 
(文責 : ふるりん