DAILY KOREAN PRO BASEBALL 2

1982年に発足し、2024年時点で10球団が加盟する韓国野球委員会(KBO)による韓国のプロ野球リーグ(通称KBOリーグ)に関するブログ。レギュラーシーズン、ポストシーズン(韓国シリーズなど)の試合速報や球団別の情報、現役プロ選手が含まれる野球韓国代表が出場する国際大会の情報などもお伝えします。 twitter : @kbodigest

  2007年 ポストシーズン ダイジェスト(下)

[韓国シリーズ : SK−トゥサン] 

 2007年の韓国シリーズは公式戦初優勝のSKと、プレーオフでハンファに3連勝したトゥサンとの初対決となり、22日に開幕した。しかもSKの本拠地仁川(インチョン)・文鶴(ムナク)野球場、トゥサンの本拠地ソウル・蚕室(チャムシル)野球場はともに3万人収容の大球場であり、連日3万人前後の満員の観衆であふれかえった。


 第1戦(仁川・文鶴)はSKがレイボーン、トゥサンがリオスと両チーム外国人エースの先発で始まった。トゥサンは1回表レイボーンの立ち上がりを攻めコ・ヨンミンのタイムリーで1点を先制した。今季22勝と超人的な活躍を見せたリオスはSK打線に付け入る隙を与えず、スコアボードにはゼロの数字が刻まれていく。トゥサンは5回表深いセカンドフライで3塁走者イ・ジョンウクがタッチアップで生還し1点を追加すると、リオスがその後も完璧に抑え、2−0で緒戦に勝利した。
 23日の第2戦(仁川・文鶴)は、SKが1回裏トゥサンの先発ランデル(元読売)からイ・ホジュンの2ランで先制するが、トゥサンは3回表SKの先発チェ・ビョンニョンからコ・ヨンミンの2ランで同点に追いつくと、5回表チェ・サンビョンのソロ本塁打で3−2と逆転した。SKもその裏チョ・ドンファの本塁打で3−3の同点に追いついた。
 6回表チェ・ビョンニョンがキム・ドンジュに四球を与えた際、両軍の選手が飛び出し一触即発ムードとなった。トゥサンはこれで集中力が切れたチェ・ビョンニョンからイ・デスのタイムリーなどで3点を奪い、試合を決めた。6回以降は高卒新人イム・テフンが無得点に抑え、トゥサンが6−3で勝利し連勝スタートとなった。だが第2戦でベテランのアン・ギョンヒョンが指に死球を受け退場し、骨折と診断され今後の試合出場が不可能となり、絶好調トゥサンに少し暗雲が立ち込めだした。


 舞台を蚕室野球場に移した25日の第3戦は、SKが1回表トゥサンの先発キム・ミョンジェからキム・ジェヒョン、パク・チェホンのタイムリーで2点を先制した。SKの先発ロマノは相手打線をしっかり抑えていく。SKは6回表ショートのイ・デスのエラー3連発や相手の暴投などで一気に7点を奪った。
 さらにこの回イ・ヘェチョンがキム・ジェヒョンにビーンボールまがいの投球をしたとして、両チーム総出での乱闘劇となりしばらく試合が中断した。乱闘の原因を作ったイ・ヘェチョンは退場となった。SKはこの後トゥサンの反撃を1点に抑え9−1と大勝し、シリーズ初勝利をあげたが、2試合連続の乱闘劇により後味の悪いものとなった。
 26日の第4戦(ソウル・蚕室)は、トゥサンが第1戦で完封勝利したエースのリオスを中3日で先発させたのに対し、SKは大物高卒ルーキーのキム・グァンヒョンを先発に大抜擢した。SKは1回表イ・ホジュンのタイムリーで1点を先制すると、キム・グァンヒョンは三振の山を築いていく。5回表チョ・ドンファ、キム・ジェヒョンの連続本塁打で2点を追加し、SKはリオスから3点を奪った。
 キム・グァンヒョンは6回途中まで無安打に抑え、6回裏ヒットで出塁したイ・ジョンウクがキャッチャーファールフライで2塁へタッチアップしようとしたが、SKの捕手パク・キョンワンはあわてず2塁へ送球しアウトにした。その後1点を追加したSKは、キム・グァンヒョンの8回途中無失点、9奪三振の快投もあり4−0で完封勝ちし、シリーズ戦績を2勝2敗のタイに戻した。公式戦ではわずか3勝しかあげられなかったキム・グァンヒョンが、22勝のリオスに投げ勝ち、シリーズの流れは完全にSKへと傾いた。
 27日の第5戦(ソウル・蚕室)は、トゥサンの先発ランデル、SKの先発レイボーンの投手戦となり、互いの好守備もあり終盤まで互いに無得点が続いた。均衡が破れたのは8回表、SKがトゥサンの2番手イム・テフンからキム・ジェヒョンのタイムリーで1点を先制したときだった。この回イ・ホジュンのタイムリーなどで3点を追加したSKは、チョ・ウンチョン、守護神チョン・デヒョンなどのリリーフ陣が得点を許さず、4−0で2試合連続で完封勝ちし、3連勝で優勝に王手をかけた。


 舞台を再び文鶴野球場に移した29日の第6戦は、トゥサンが1回表、SKの先発チェ・ビョンニョンからここまで打線の大ブレーキだった主砲キム・ドンジュのタイムリーで1点を先制した。もう後がないトゥサンは高卒新人イム・テフンを先発としてすべてを託したが、SKは3回裏そのイム・テフンからチョン・グヌの2ランで逆転すると、キム・ジェヒョンのソロ本塁打で1点を追加した。
 SKは8回裏ダメ押しの2点を追加し、9回表は守護神チョン・デヒョンがマウンドに上がった。トゥサンは代打攻勢で1点を返したが反撃もここまでで、5−2で勝利し韓国シリーズ初優勝を決めた。開幕連敗スタートで韓国シリーズ優勝は史上初の快挙であり、SKがトゥサンとの地力の違いを見せ付けた。シリーズMVPは公式戦で故障もあり打率2割以下と苦しんだが、第5戦の決勝打などで活躍したベテランのキム・ジェヒョンが選ばれた。


 SKは開幕連敗スタートでもあわてず第3戦に臨み、第1,2戦で活躍できなかった主力外野手のイ・ジニョンをスタメンから外し、打線も組み替えた。そして第3戦で3番に起用したキム・ジェヒョンが活躍すると、それ以降は日替わり打線だった公式戦と違って打順をほぼ固定し、4試合連続2ケタ安打を記録し4連勝につなげた。
 シーズン中先発ローテーションを守ったレイボーン、ロマノ、チェ・ビョンニョン以外の秘密兵器として、公式戦終盤に好投し使えるめどが立った19歳の新人キム・グァンヒョンを第4戦まで取っておいたのも大きかった。第3戦まで右の先発と対戦していたトゥサンは、左の速球派のキム・グァンヒョンにきりきり舞いさせられた。また、チョ・ウンチョン、カ・ドゥギョム、チョン・デヒョンなどのリリーフ陣は6試合で無失点と、公式戦以上の完璧な仕事ぶりだった。

 一方トゥサンは主砲キム・ドンジュが第5戦までノーヒットと大ブレーキとなり、チェ・ジュンソク、ホン・ソンフンなど何人かの主力打者に元気がなく、本拠地蚕室での3連戦でわずか1得点で3連敗してしまった。アン・ギョンヒョンの骨折での離脱は打線に少なからぬ影響を与え、第3戦での乱闘騒ぎでベンチ内のムードがどこかしらけてしまったかのようにも見えた。プレーオフでは走り放題だったイ・ジョンウク、コ・ヨンミンなどの快足の選手も、第3戦以降はわずか1盗塁の合計3盗塁と足を使った攻撃を封じられてしまい、攻め手を大きく欠いた。
 投手面では先発陣の頭数がSKと比べて少なかったため、リオスを第4戦で先発させ負けてしまったのも痛かった。また第2戦でイム・テフンを3回以上投げさせるなど、リリーフ陣の層の薄さも垣間見え、先発が崩れるとそれを食い止める力もなかった。

 連敗スタートという逆境からの4連勝と、公式戦のとき以上にその強さを見せ付けた新王者SKを来季倒すのは、どのチームになるのであろうか。あるいはキム・グァンヒョンなどの若手の更なる成長で、SKが黄金時代を築いてしまうのであろうか。
(文責:ふるりん