DAILY KOREAN PRO BASEBALL 2

1982年に発足し、2020年時点で10球団が加盟する韓国野球委員会(KBO)による韓国のプロ野球リーグ(通称KBOリーグ)に関するブログ。レギュラーシーズン、ポストシーズン(韓国シリーズなど)の試合速報や球団別の情報、現役プロ選手が含まれる野球韓国代表が出場する国際大会の情報などもお伝えします。 twitter : @kbodigest

NCダイノス 初優勝への道のり

 2020年11月24日、高尺スカイドームでの韓国シリーズ第6戦でNCダイノスが4-2でトゥサンベアースに勝利、初優勝を成し遂げました。

 この記事ではNCダイノスがいかにして韓国シリーズ初優勝までたどり着いたのか、その道のりを振り返ります。

 

 2008年北京オリンピック優勝、2009年WBCワールドベースボールクラシック)準優勝と国際大会における野球韓国代表の好成績で、プロ野球は1997年頃からの「冬の時代」から完全に脱し、かねてから計画されていたプロ野球新球団の創設が進められていくことになりました。2009年当時は8球団でしたが、あと2球団増やして10球団にまでプロ野球の規模を拡大することになりました。こうして韓国9番目のプロ野球チームとして誕生したのが、2011年にオンラインゲームなどの事業を展開するNCソフトが出資するNCダイノスでした。ダイノスとは「恐竜」を意味します。

 本拠地はすでにプロ野球を開催できる野球場があった南東部の昌原(チャンウォン)市で、繁華街に近い馬山(マサン)総合運動場野球場で試合が行われることになりました。馬山では時折近隣の釜山(プサン)広域市を本拠地とするロッテジャイアンツが試合を開催することがあり、プロ野球ファンは比較的多い土地柄でした。またロッテはNCの球団創設に最後まで反対したと言われています。

 球団を創設しても選手がいなければ試合はできません。新球団最初の仕事は選手集めで、2011年8月25日、翌年2012年の新人ドラフト指名会議に参加しました。NCは新球団の特例ということで他球団に先駆けて特別2名指名でき、2巡指名したあとにNCのみさらに5名が指名できるなど、他球団よりも7名多い合計17名の選手を指名しました。その中にはナ・ソンボム、パク・ミヌ、ノ・ジンヒョク、カン・ジンソン、キム・ソンウといった2020年の初優勝に貢献した野手たちが含まれていました。そして初代監督には、2004年から2011年までトゥサンを率い、多くの優秀な若手選手たちを育て、2008年北京オリンピックの韓国代表監督をつとめたキム・ギョンムンが選ばれました。

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2011年8月、新人ドラフトでの指名後の記者会見でのナ・ソンボム。

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選手5名のうち一番左はナ・ソンボム、右から2人目はパク・ミヌ

 その後他球団で機会を得られなかった選手たちを集め、2012年はまず二軍のフューチャースリーグのみに参加しチームとしての基礎固めに当てました。その中にはキム・ジンソン、ウォン・ジョンヒョン、イム・チャンミンと2020年の優勝に貢献した投手たちがいました。2013年の一軍参入を前に、2012年シーズン終了後の11月に他の8球団から1名ずつの特別指名により8名の選手を補強しました。その中には2020年の初優勝に貢献した内野手モ・チャンミンがいました。またSKワイバーンスからFA(フリーエージェント)となっていた経験豊富な4番打者候補イ・ホジュンと契約するなど、本格的に一軍で戦う準備を進めました。

 2013年4月2日、NCの記念すべき一軍初のレギュラーシーズンの試合が馬山で行われ、相手は近隣のライバル・ロッテでしたが0-4で敗れてしまいました。その後開幕8連敗と苦しみましたが、4月11日のLGツインス戦で一軍初勝利をあげると徐々に勝てるようになり、開幕前は最下位候補でしたが9球団中7位と予想以上の健闘を見せました。同年シーズンオフにはトゥサンで活躍しFAとなっていた内野手ソン・シホン、外野手イ・ジョンウクと契約し、さらなる補強に努めました。また優秀な外国人選手も確保し、2014年から契約したエリック・テームズはチームの4番打者として豪快な打撃を披露しました。

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2013年当時のNCダイノスの本拠地・馬山総合運動場野球場

 投打ともに他球団と互角以上に渡り合える戦力を整えた2014年はシーズン開幕から優勝争いを続け、勝率5割以上を維持しレギュラーシーズン3位で一軍参入2年目にして初のポストシーズン進出と、目覚ましい成長を遂げました。しかし経験不足もあり準プレーオフで4位のLGツインスに敗れてしまいました。2015年はプロ野球史上初の40本塁打・40盗塁を達成しシーズンMVPにも選ばれたテームズを中心とした打線もあり、レギュラーシーズン2位とさらに順位を上げましたが、トゥサンとのプレーオフで敗れてしまいまたもポストシーズンの壁を乗り越えることはできませんでした。

 同年シーズンオフにはサムソンからFAとなっていた内野の強打者パク・ソンミンと契約し、ナテイバク(ナ・ソンボム、テームズ、イ・ホジュン、パク・ソンミン)と呼ばれる強力打線を背景に2016年もレギュラーシーズン2位でプレーオフに進出、ここでようやくLGに勝ち初めてポストシーズンを勝ち抜き韓国シリーズに初出場となりましたが、主力投手が勝負操作疑惑で出場せず、トゥサンに4戦4敗と敗れてしまいました。なおテームズは2017年よりミルウォーキーブルワースへ移籍し、MLBでも強打者として活躍しました。

 2017年はレギュラーシーズン4位で4年連続ポストシーズンへ進出し、準プレーオフでロッテに勝ったものの、プレーオフでは3年連続でトゥサンに敗れてしまいました。頂点には届かないものの安定して上位に進出していたため、2018年も優勝候補の一角に上がっていましたが、前年限りでイ・ホジュンが引退するなど球団創設当初に主軸となっていたベテラン選手たちから若手への過渡期が突然訪れ、外国人選手も機能しなかったことで、6月3日にはキム・ギョンムン監督が成績不振の責任を取って辞任しました。結局シーズン最終戦までもつれたKTウィズ(2013年球団創設)との最下位争いに敗れ、球団史上初の最下位に転落してしまいました。

 

 これで危機感を抱いたNCダイノスは、まず2代目の監督に球団創設当初からコーチとして指導していたイ・ドンウク監督を指名しました。キム・ギョンムン監督のように他球団で実績を残した指導者ではなく、現役時代はロッテの控え野手止まりも指導者としての経験を積みチームの方針を理解している当時44歳の若手の指導者こそ将来を託したと思われます。そして2018年シーズンオフ、トゥサンからFAとなっていたヤン・ウィジと4年総額125億ウォンの超大型契約を結び、チームが創設当初から悩まされてきた不動の正捕手不在を解決させました。

 待望の新本拠地球場・昌原NCパーク馬山球場が完成し、イ・ドンウク監督1年目となった2019年はレギュラーシーズン5位で2年ぶりにポストシーズンへ進出し、LGとのワイルドカード決定戦で敗退するも前年の最下位からの浮上を果たしました。また当時22歳の左腕ク・チャンモが自身初の10勝を達成しチームに新たな力が芽生えていることも実感させました。

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昌原NCパーク馬山球場

 

 そしてイ・ドンウク監督にとって2年目となった2020年、感染症拡大の影響により開幕が1ヵ月以上遅れ5月5日となるも、NCは序盤から快進撃を続けました。2019年は負傷でシーズンの多くの試合に出場できなかった生え抜きの主力打者ナ・ソンボムが完全復活を遂げ、ヤン・ウィジ、外国人選手アルテール、パク・ミヌ、カン・ジンソンなどとともに強力打線が形成されました。投手陣では伸び盛りの左腕ク・チャンモが快刀乱麻の投球を続け、韓国2年目の外国人選手ルチンスキーも勝利を重ねました。7月末にク・チャンモが故障で離脱したこともあり、8月から失速気味だったが何とか首位を維持し、10月1日までの11連勝と勝負どころでの強さを見せ、10月24日のLG戦で引き分け、本拠地・昌原でレギュラーシーズン初優勝を決めました。

 4年ぶり2度目の出場となった韓国シリーズの相手は、6年連続で出場を決めたトゥサンベアースでした。過去3度のポストシーズンではすべて敗れていることもあり初優勝を危ぶむ声も少なくありませんでした。11月17日の第1戦でチーム史上初の韓国シリーズでの勝利を記録するも、第2戦、3戦と敗れ追い込まれていくかのように思えました。ですが第4戦、ク・チャンモの代わりにシーズン後半先発で活躍した20歳の若手ソン・ミョンギの好投もあって勝利すると、第5戦では故障からの復活を遂げた先発ク・チャンモの好投で初優勝まであと1勝となりました。そして11月24日の第6戦で4-2と勝利し、3連勝で4勝2敗とし韓国シリーズ初優勝を決めました韓国シリーズMVPは6試合ともに4番捕手で活躍したヤン・ウィジでした。2011年の球団創設から9年にして成し遂げた韓国シリーズ優勝の表彰式では、NCの球団主キム・テクチンがグラウンドで選手たちと優勝の感激を分かち合い、NCソフトを代表するオンラインゲーム・リネージュに登場する執行剣がヤン・ウィジの手によって掲げられ、プロ野球の歴史に新たな1ページが書き加えられました。

 

 NCダイノスは球団創設当時から積極的な投資を重ね、最初は実績のあるキム・ギョンムン監督を招聘し選手育成のノウハウを学ぶとチームの方針を理解しているイ・ドンウク監督に任せ、FA選手や外国人選手の適格な補強もあって2020年に初優勝という成果をあげました。球団創設から10年となる2021年シーズンは連覇が期待され、2020年は諸事情で開催されなかった最新鋭のボールパーク・昌原NCパークでの韓国シリーズ開催と優勝実現に向け、さらなる高みを目指して突き進んでいくことでしょう。

 

(文責 : ふるりん