DAILY KOREAN PRO BASEBALL 2

1982年に発足し、2024年時点で10球団が加盟する韓国野球委員会(KBO)による韓国のプロ野球リーグ(通称KBOリーグ)に関するブログ。レギュラーシーズン、ポストシーズン(韓国シリーズなど)の試合速報や球団別の情報、現役プロ選手が含まれる野球韓国代表が出場する国際大会の情報などもお伝えします。 twitter : @kbodigest

  第3回 LGツインズ

「11年ぶりの大舞台、しかし…」
 
2013年成績 : 74勝54敗 (公式戦2位・プレーオフ敗退)
チーム総合採点…80点



 2013年シーズン、LGは2002年以来となるポストシーズン進出を果たし、長年の低迷から抜け出したように見えた。その戦いを振り返りたい。


 LGは前年7位、2003年以降10年連続でポストシーズン進出に失敗していて、開幕前上位に推す声はほとんど聞かれなかった。3月30日、敵地・文鶴野球場でのSKとの開幕戦はチョン・ソンフンの逆転満塁本塁打で勝利すると、翌31日のSK戦も先発に転向したウ・ギュミンの好投で勝利した。3年目を迎えた外国人投手ジュキッチが不調だったが、ウ・ギュミン、シン・ジョンナクが先発として活躍し、4月末まで12勝10敗の5位と悪くない位置につけていた。
 5月4日から18日にかけ1勝をはさんで2度の4連敗を喫してしまい、14勝20敗の7位にまで後退してしまった。19日、元メジャーリーガーのリュ・ジェグクが韓国初登板初先発を勝利で飾り連敗から脱出すると、ベテランのイ・ビョンギュ(背番号9、元中日)が復帰し打線に軸ができ、5月末には依然6位ながら勝率5割弱まで戻した。そして勝率5割に復帰すると6月8日までに4連勝し3位まで上がり、4月には不調だった外国人投手リズも復調し快進撃が続いた。
 そして6月14日から16日までのネクセン3連戦3連勝を含む6連勝で、3位ながら首位サムソン、2位ネクセンを追いかける混戦の上位争いに入り込んだ。2013年シーズンから本格的に抑えとなったポン・ジュングン、そしてイ・ドンヒョンを柱とした中継ぎ陣が好調で安定した試合運びができるようになった。本塁打は少なかったが、イ・ビョンギュ、パク・ヨンテク、イ・ジニョンなどのベテラン勢やオ・ジファン、チョン・ウィユンなどの若手がそろう切れ目のない打線も特徴的だった。サムソンからトレードで移籍したソン・ジュインもセカンドのレギュラーに定着した。
 LGは近年6月前半まで良くても、シーズンも半ばに差し掛かった梅雨の季節から下降していく傾向があったが、2013年は違った。7月19日の浦項でのオールスター戦で、LGの選手10名がウェスタンリーグのファン投票1位を占め、長年下位に低迷してきたが久しぶりに優勝争いをするチームにファンたちが熱い期待をかけていたことがわかった。そしてこのオールスター戦をはさんで7月23日までシーズン最多の7連勝で、勝率は6割に近づき首位サムソンに肉迫していた。
 8月になっても勢いは衰えずサムソンが以前のように独走態勢に入れなかったこともあり、8月20日のネクセン戦に勝利しサムソンが敗れたため、8月以降では1995年以来18年ぶりとなる首位に立った。翌21日にはたった1日で首位から陥落したが、サムソンとの熾烈な首位争いが続いた。9月4日のSK戦で勝利し、サムソンが敗れたため再び首位に立ち、2002年以来11年ぶりの韓国シリーズ進出も見えてきた。しかし7日、サムソンとの直接対決で敗れ首位の座を譲ったが、翌8日のサムソン戦には勝利し1日で首位を奪回した。
 9月14日まで4連勝し、18日には70勝一番乗りと視界は良好であるように見えた。しかし20日のトゥサン戦で敗れ首位の座から滑り落ちると、地力のあるサムソンが最後の追い込みで連勝街道を走り出した。22日のNC戦の勝利で公式戦4位以上が確定し11年ぶりのポストシーズン進出が決まったが、ここから思うように勝てなくなり王者サムソンを捉えることはできなかった。ネクセン、トゥサンとの熾烈な2位争いは10月5日の公式戦最終戦までもつれ込んだ。そしてポストシーズンでの対戦が予想された同じ蚕室野球場を本拠地とするライバル、トゥサンにイ・ビョンギュ(背番号9)の逆転タイムリーで勝利し、2位を確保してポストシーズンプレーオフからの出場となった。


 プレーオフの相手は永遠のライバルであるトゥサンとなった。トゥサンはプレーオフ開幕の2日前までもつれこんだネクセンとの準プレーオフ5試合、うち3試合が延長戦の激闘で疲労困憊であり、戦力的にもLGが有利という事前の大方の予想であった。冷静になって考えてみると、ポストシーズンという11年ぶりの大舞台をすっかり忘れてしまっているという一抹の不安があったが、これが杞憂でなかったことが第1戦からはっきりしてしまった。
 10月16日の第1戦、1回表からチョン・ソンフンのエラーが契機で2点を献上してしまった。1回裏イ・ビョンギュの2ランで同点としたが、その後チャンスを生かせないままでいると7回表またもやチョン・ソンフンのエラーで勝ち越し点を奪われ、そのまま2-4で敗れた。第2戦はリズの完璧な投球で2-0と勝利したが、流れを戻せなかった。
 1日置いた第3戦もミスが目立った。1回表1点を先制したが、3回裏捕手の悪送球や走塁妨害などであっさり逆転され、その後も同点のチャンスを生かせずリードを許した。9回表1点差に迫ったが、トゥサン外野陣の再三の好守備で同点に追いつけず4-5で敗れもう後がなくなった。第4戦は2回裏またもやエラーで1点を先制され、その後粘り7回表パク・ヨンテクのタイムリーで同点に追いついたが、7回裏暴投がきっかけで1点を勝ち越された。もうあとがなくなった8回裏は守護神ポン・ジュングンをマウンドに送ったが、ダメ押しの本塁打やエラーなどで3点を失って1-5で敗れてしまい、1勝3敗でプレーオフ敗退が決まった。
 11年ぶりのポストシーズンは相手と戦う前から自分に負けていて、選手たちはエラーやミスを連発し、キム・ギテ監督の選手起用、采配も裏目に出た場合が多く自滅に近い有様だった。近年優勝こそないがポストシーズンの経験が豊富であり、緊張感ある試合で公式戦以上の内容で勝利を得たトゥサンとは余りにも対照的だった。やはり「失われた10年」によるマイナス面が浮き彫りになってしまい、これをライバルのトゥサンとの戦いで容赦なく見せつけられてしまったことは、代え難い屈辱であっただろう。
 

 チーム成績を検証する。
 チーム防御率は3.72で9球団中1位と、安定した投手陣が上位進出の最大の要因だった。チーム最多勝のリュ・ジェグク(12勝)、最多奪三振(188)のタイトルを受賞したリズ(10勝)、初の2ケタ勝利のウ・ギュミン(10勝)、アンダースローのシン・ジョンナク(9勝)と、ジュキッチの不振はあったが例年になく先発投手陣が安定していた。クォリティースタート(先発が6回以上投げ自責点3以内)の試合が55で5位と多くなかったのは、中継ぎ陣が強力だったからである。チームホールド数86は1位で、右のイ・ドンヒョン(25ホールド)、チョン・ヒョヌク、左のイ・サンヨル(2人とも16ホールド)が場面に応じて登板した。抑えのポン・ジュングンは38セーブだけでなく、9回表や延長の同点の場面でも投げ8勝を記録した。
 打線はチーム総得点が616で4位と、攻撃力が高かったとは言い難い。広い蚕室野球場が本拠地とは言えチーム本塁打数59は8位で、2桁本塁打の選手がゼロ(チーム最多はチョン・ソンフンの9本)と長打不足であった。チーム盗塁数139も5位と機動力に秀でていたわけではない。チーム打率.282は3位で、首位打者となったイ・ビョンギュ(.348)、パク・ヨンテク(.328)、イ・ジニョン(.329)、チョン・ソンフン(.312)とベテランの主力打者が軒並み高打率で、チーム得点率打率が.295の2位とチャンスに強かった。一発はないがオ・ジファンなど上位打線がチャンスを作れば、ベテランの中軸がタイムリーできっちり走者を返せるという特徴があった。


 オフシーズンは比較的静かだった。過去に4年連続盗塁王となったが近年は出番が減っていたイ・デヒョンがFAでキアへ移籍し、トゥサンを自由契約となった元メジャーリーガーのベテラン右腕キム・ソヌと契約した程度である。新外国人投手コリー・リオーダン、新外国人野手ジョシュ・ベルと契約したが、大きな戦力補強は見られない。主力野手の高齢化という課題もあり、2014年シーズンもまた優勝争いに残れるかは未知数であるが、2013年に得た自信と新たな課題を糧に2年連続のポストシーズン進出を目指したい。

(文責:ふるりん