DAILY KOREAN PRO BASEBALL 2

1982年に発足し、2024年時点で10球団が加盟する韓国野球委員会(KBO)による韓国のプロ野球リーグ(通称KBOリーグ)に関するブログ。レギュラーシーズン、ポストシーズン(韓国シリーズなど)の試合速報や球団別の情報、現役プロ選手が含まれる野球韓国代表が出場する国際大会の情報などもお伝えします。 twitter : @kbodigest

  特別企画: 1次ラウンド敗退という現実を受けて

 いつも皆様、このブログを読んでいただきありがとうございます。

 長年にわたって、このブログは情報発信のみを趣旨としていて、管理人の個人的感想はほとんど載せないことを最大の方針としてきました。
 ですが、先日の2013年WBC(ワールドベースボールクラシック)1次ラウンド敗退を受けて、いろいろ考えさせられるところがありました。
 そのため、以下の文章は「客観的事実」も含まれていますが、すべてを単なる個人の感想に過ぎないという前提でお読みください。


 近年の韓国プロ野球は、人気スポーツとして多くの観衆を集めるようになりました。2012年にはNHK衛星放送でその盛り上がりが紹介されたことがあり、日本でも韓国での野球人気が知られるようになってきました。
 そういった中で、2013年3月、野球韓国代表は3回目の野球世界一決定戦・WBCに出場することになりました。第1回の2006年大会はメジャーリーガーのパク・チャンホ、日本プロ野球で活躍していたイ・スンヨプなどまさにオールスタードリームチームで、準決勝で惜しくも日本に敗れましたが、ベスト4という予想以上の好成績を収めました。第2回の2009年大会は、前年の北京五輪優勝の余韻を受け、メジャーリーガーのチュ・シンスだけでなく国内でプレーする選手たちも活躍し、5度の日本との対決で準優勝という好成績を収めました。
 こういった代表チームの国際大会での躍進を受け、2008年ごろからプロ野球の人気はどんどん高まっていきました。内野応援席を中心に、初めて野球場に来た人でも楽しく大勢のファンと騒げる空間は、他のスポーツやエンターテイメントでは得られない快感を人々に提供しました。空前のプロ野球人気の中、2010年オフシーズンに韓国代表はアジア大会でも優勝し、その権威をさらに高めました。


 2011年以降もプロ野球人気は上昇し、2012年シーズンの前半は週末ともなればどの球場でもチケットの完売が珍しくないほどでした。また2013年よりプロ野球9番目の新球団NCダイノスがペナントレースに参戦し、早ければ2015年より10球団制に拡張することも決定しました。そのようなバブルとも言っていい状況の中で、3回目のWBCへの準備が進められました。
 2012年11月、リュ・ジュンイル韓国代表監督が就任し、代表候補選手も発表されました。しかしハンファから米国メジャーリーグ・ロサンゼルスドジャースへの移籍が決まった大型左腕リュ・ヒョンジン、2010年アジア大会の優勝で兵役免除の特典を得たメジャーリーグで活躍する外野手チュ・シンスが出場を辞退しました。それも含め、故障などで2013年2月の事前合宿開始までに7名の選手が交代となり、戦力構想が固まりませんでした。
 そして2月12日からの台湾の事前合宿も、韓国マスコミの報道によると選手のコンディション調整に失敗していたと言われています。NCや台湾の軍隊・社会人チームとの6試合の練習試合の内容もよくありませんでした。その中で管理人は、韓国の野球ファンの中からあまりWBCの話題が聞こえてこないことが気になりました。


 もともと韓国が属する1次ラウンドB組は野球が盛んな開催地台湾、近年国際大会で実績を残している欧州の強豪オランダ、近年国内リーグも再開され野球が盛んになっているオーストラリアと、強敵が揃っていました。ですが韓国代表は過去の実績から1次ラウンドの突破は確実だと思われていました。しかし、プロの一流選手からなる代表チームは2年間まともな活動をしておらず、代表初選出の選手も少なくなく、実際の戦力は全くの未知数でした。
 また、管理人が不安に思っていたのは、国内プロ野球の隆盛で年俸も上がり満足している選手たちが、過去の大会ほど強いモチベーションでハイレベルな国際大会に臨めるのかという点でした。


 そしてご周知の通り、韓国代表は1次ラウンド2勝1敗でオランダ、台湾と並びましたが、オランダ戦の5点差負けが響き、B組3位となり2次ラウンド進出に失敗となりました。当然のごとく、6日の韓国スポーツメディアではこぞってその敗因を探っています。先述した事前合宿の失敗、優勝しても兵役免除の特典がないことによる動機付けの弱さ、チームの一体感のなさ、一部のポジションに偏った選手選考、対戦相手の研究不足、あるいはプロ野球界全体が非協力的だった点などが指摘されています。

 
 管理人なりの私見を申しますと、選手、球団、ファンそろってこの3度目のWBCというものに熱意が全然感じられませんでした。満ち足りた者たちは新たな冒険を望まないものです。
 5日の台湾戦をテレビ中継で見ていた複数の知人が、韓国代表の選手から気迫が伝わってこないと感想を述べていました。プロ選手である以上当然全力でプレーしたつもりでも、どこかでこの試合に対する動機付けの有無が出てしまうものです。それは熱心に応援しているファンならわかってしまうのでしょう。
 また、かつてないほど増えた韓国のプロ野球ファンたちも、数年前とは意識が変わってしまったようでした。時たまにしか結成されない韓国代表チームよりも、シーズン中なら毎日のように試合が見られ応援も楽しい自分の好きなプロ野球チームの方に愛情を注ぐようになったと思われ、代表チームへの関心が落ちてしまったように見えました。また過去の国際大会で活躍した代表選手たちの不在、まだサムソンの監督に就任して2年しか経っていないリュ・ジュンイル監督(2012年韓国シリーズ優勝監督ということで、規定によりWBC韓国代表監督に就任)が、あくまでもサムソンというひとつの球団の枠を越えていない野球人だったことなどで、ファンの関心が高まらなかったというのもあるでしょう。(ちなみに過去2大会のWBC韓国代表監督は、以前シドニー五輪などの代表チームを率い短期決戦の采配に定評のある押しも押されぬ名将キム・インシク監督でした。)

 
 ファン、球界からの熱い情熱が注がれていない代表チームが、どうやって慣れない異国の地で勝利を収めることができるのでしょうか。これまで築いてきた栄光が無に帰したとは思いませんが、国外での韓国の野球に対する評価が大きく下がってしまうことには違いありません。そしてその名誉挽回の機会はそう簡単にはやって来ません。過去にないプロ野球人気の高まりが、代表チームの失墜を招いてしまったと管理人は思っています。


 1次ラウンド開催地・台中で初優勝の夢が儚くも砕け散った2013WBC韓国代表はこれで解散となり、選手たちは各所属チームへと戻っていきます。そして日本などで長期の海外春季キャンプを行っていたプロ野球9球団も帰国の途についており、9日の土曜日からは示範競技も開始され、3月30日の公式戦開幕へと向けて最後の調整に入ります。
 ここ数年のプロ野球人気を牽引してきた代表チームの思わぬ敗戦で、2013年シーズンの観客動員に影響が出るのではないか、と心配する声も聞かれますが、自分は先述した理由により、プロ野球人気の急速な低下というものはないと予測しています。示範競技で野球場に集まったファンたちは久しぶりに自分の好きなチームが見られる喜びで我を忘れ、もう当分見ることもない代表チームの話題なぞは口にしないでしょう。そして3月末、何事もなかったかのようにプロ野球の開幕戦には大勢のファンが詰めかけることでしょう。


 でもこれでいいのでしょうか。


 代表チームの早期敗退により、プロ野球ファンでない人々に野球のすばらしさを伝える機会を失ったため、新たなファンの獲得に失敗しています。現在のプロ野球人気だっていつまで続くかわかりません。今後も代表チームへの関心が低く、国際舞台で勝てないようだと、プロ野球人気の源泉を失ってしまうことになりかねません。
 おそらく、この敗退を受けて一流のプロ選手からなる野球韓国代表のあり方は見直されることでしょう。監督の人選、強化試合の設定やプロ野球9球団(将来は10球団に)との緊密な協力体制作りなど、課題はあまりにも多いです。次の大きな国際大会としては、韓国・仁川で2014年9-10月に開催されるアジア大会があげられます。優勝すれば兵役免除の特典があるため、おそらく一流の選手が多数代表に招集されると思われ、これを権威回復の第一歩としてほしいところです。

  
 管理人は純粋な日本人ですが、10年以上韓国プロ野球を見続けてきて、これほどいろいろ考えさせられたことはありませんでした。
 そのため長々と何の論拠もないことを書き連ねてきました。
 どうかご容赦ください。


 ということで、2013年WBCについて、当ブログでの記事はこれで終わりとします。
 

 これからは例年通り示範競技、公式戦の試合速報を皆様にお届けします。
 このWBCを通して韓国プロ野球に強い関心を持った日本の方は極めて少ないとは思いますが、もし縁があって初めてこのブログをご覧になった方がいらっしゃいましたら、今後もご愛読いただけると幸いです。



(文責 : ふるりん