DAILY KOREAN PRO BASEBALL 2

1982年に発足し、2024年時点で10球団が加盟する韓国野球委員会(KBO)による韓国のプロ野球リーグ(通称KBOリーグ)に関するブログ。レギュラーシーズン、ポストシーズン(韓国シリーズなど)の試合速報や球団別の情報、現役プロ選手が含まれる野球韓国代表が出場する国際大会の情報などもお伝えします。 twitter : @kbodigest

  第1回 サムソンライオンズ

「5年ぶりの王座奪回、初のアジアの頂点へ」 
2011年成績 : 79勝50敗4分け(韓国シリーズ優勝)
チーム総合採点…95点

 2010年末ソン・ドンヨル監督が突如退任し、リュ・ジュンイル新監督の下、2006年以来5年ぶり4度目の韓国シリーズ優勝(年間総合優勝は5度目)を成し遂げたサムソンライオンズ。そして韓国代表として出場したアジアシリーズ2011では決勝で日本代表・福岡ソフトバンクをやぶり、韓国勢として初優勝を飾った。文句なしに最高のシーズンとなった2011年を振り返りたい。


 2010年、世代交代の完了により公式戦2位、韓国シリーズで準優勝と結果を残したサムソンは2011年シーズンも優勝争いに加わると見られていた。4月2日、光州でのキアとの開幕戦で6−2と勝利し、期待大卒新人イム・ヒョンジュンにプロ初勝利をマークするなど順調なスタートを切ったが、4月はあまり大きく勝ち越すことなく13勝10敗の3位で終えた。左のエースに成長したチャ・ウチャン、ユン・ソンファンなどの先発陣が好調で、2010年は故障で不本意な成績だった守護神オ・スンファンが8セーブを記録するなど、強力投手陣がチームを引っ張っていた。
5月もSKが首位を走る中、一時期不振で5位まで落ちたが盛り返し、好調LGやキアとの順位争いが続いた。過去2年間SKで活躍した外国人投手・門倉が好調で、オ・スンファンも順調にセーブを重ねた。しかしかつてメジャーリーグでレギュラーだったこともある外国人打者ガーコが韓国に適応できず、結果を残せない。かといって代わりになるような選手もおらず、打線は湿りがちで投手陣が何とか支えていた。
 6月になるとSK、キア、LGとの熾烈な順位争いが続き、後半になってパク・ソンミンの好調もあって調子を上げ、28日のLG戦で勝利し2年ぶりの首位に立った。特に右の俊足巧打の外野手ペ・ヨンソプがレギュラーに定着し、チームに新風を吹き込んだ。
 6月後半から雨天中止が相次ぎ、7月15日には絶好調キアに首位の座を明け渡した。鉄壁のリリーフ陣と比べて先発陣の調子が落ちたため、結局打撃の状態が上がらなかったガーコ、6月以降ひざの故障で急激に成績を悪化させた門倉と2人の外国人選手を退団させ、まずマシス、そしてジャマーノと2人の先発型の外国人投手を補強した。
 オールスター戦後、7月26日から28日、敵地光州でのキアとの3連戦で3連勝し首位の座を奪回すると、 一気にチームは波に乗り始めた。8月に合流した新外国人2人は先発として順調に勝ち星を重ね、主砲チェ・ヒョンウのバットも打点を積み上げていった。8月12日、大邱でのキア戦でオ・スンファンがシーズン35セーブ目を記録し、史上最速での通算200セーブを達成した。8月末で2位キアとは5ゲーム差と、首位の座をゆるぎないものにした。
 左腕チャ・ウチャンの不振はあったが、9月になるとゴールが見えてきたのか優勝に向けて加速度を上げていった。9月22日から一気に5連勝し、27日のトゥサン戦で2006年以来5年ぶりとなる公式戦優勝を余裕で決めた。終盤はチェ・ヒョンウとイ・デホ(ロッテ)の本塁打打点王のタイトル争いが話題を呼び、チェ・ヒョンウが30本塁打、118打点で2010年の打撃三冠王イ・デホに勝利した。またオ・スンファンは自身が2007年記録した年間セーブ数47を超えるかと期待され、10月1日のSK戦で47セーブ目をあげ、記録更新は確実と思われた。しかし残りの公式戦4試合、セーブのつく場面での登板機会はなかった。


 サムソンは10月6日、最後の公式戦となったLG戦でも勝利し、2位ロッテと6.5ゲーム差で公式戦を終えた。韓国シリーズの相手は、2位ロッテをプレーオフでやぶった2010年の王者SKで、2010年韓国シリーズでは開幕4連敗と一蹴されてしまっていた。だが今回は立場が逆で、サムソンが余裕を持ってSKを迎えた。
 10月25日からの韓国シリーズは第1戦が2−0、第2戦が2−1と2試合連続の接戦で連勝スタートとなった。第3戦こそ敗れたが、第4戦はチェ・ヒョンウの本塁打などで打線が爆発し8−4で勝利し、優勝に王手をかけた。10月31日、蚕室野球場での第5戦、これまた1−0の接戦を制し、4勝1敗で5年ぶり4度目の韓国シリーズ優勝を決めた。韓国シリーズMVPは、胴上げ投手となり3セーブを記録、4勝すべてに貢献した守護神オ・スンファンが選ばれた。


 韓国代表として出場した台湾でのアジアシリーズ2011では、予選リーグ緒戦のオーストラリア代表・パース戦で10−2と快勝すると、ユン・ソンファン、チャ・ウチャンなど主力先発投手が出場しなかったため、第2戦の日本代表・福岡ソフトバンク戦では、2011年1軍未勝利のイ・ウソンを登板させた。結果は0−9の大敗だったが、第3戦の開催地の台湾代表・統一に先発ペ・ヨンスの好投、主砲チェ・ヒョンウの決勝本塁打で6−3と競り勝ち、決勝に進出した。
 そして決勝では先発チャン・ウォンサムが好投し、先制されても打線が少ないチャンスを生かして逆転に成功すると、5−3で逆転勝ちしアジアシリーズ初優勝を決めた。これは5大会目でのアジアシリーズでの韓国勢初優勝でもあった。


 サムソンの強みは、何と言っても投手陣にあった。2011年シーズンのチーム防御率は3.35で8球団中1位だが、リリーフ陣の防御率は2.44で約0.9も低かった。特記すべきは守護神オ・スンファンが47セーブ、防御率0.63と驚異的な数字で、セーブ失敗が1回しかなかった。中継ぎ陣も充実し、リリーフだけで11勝をあげたアン・ジマン、サイドスローからの速球に威力のあるクォン・オジュン、緩急の差に特徴のあるチョン・ヒョヌク、長身左腕クォン・ヒョクなど、層が厚かった。先発ではチーム最多の14勝をあげ復活を遂げたユン・ソンファン、故障で終盤不調だったが2年連続10勝をあげたチャ・ウチャン、故障で年間を通して働けなかったが韓国シリーズとアジアシリーズで活躍した左腕チャン・ウォンサムが活躍したが、リリーフ陣の陰に隠れあまり目立たなかった。
 打線はチーム打率.259で8球団中6位、本塁打数95本で4位だが得点は3位(625)と、効率のよさが目立った。自身初の個人タイトルである本塁打、打点の2冠王となったチェ・ヒョンウが不動の4番にすわり軸はしっかりしていて、サードのパク・ソンミンなどがその周りを固めた。大きな成長を見せたのは故障で離脱していた時期も長かったが、俊足巧打の右の外野手で見事新人王も受賞したペ・ヨンソプ、韓国を代表するショートに成長しつつある俊足の若手キム・サンスで、チーム盗塁数1位(158)の機動力野球を支えていた。また正捕手チン・ガビョン、シン・ミョンチョル、パク・ハニ、カン・ボンギュなど勝負どころを知るベテランも多く、まさに完成されたチームだった。

 オフシーズンの動向であるが、史上最大となったFA(フリーエージェント)市場には手を出さなかった。外国人選手に関しては、シーズン途中入団でも5勝したが投球内容がよくないと判断してマシスを見切り、メジャーリーグで10勝した実績のある新外国人タルボットと契約した。ジャマーノとの再契約は微妙で、他の新外国人選手を探しているとの情報もある。また最大の話題は、2003年まで韓国を代表するホームランバッターとして活躍してきたイ・スンヨプが、日本プロ野球から9年ぶりに古巣へ復帰することになったことに尽きる。
 強力なリリーフ陣を軸に卒のない戦いを見せるサムソンは、イ・スンヨプの帰還でさらに士気が高まり、2012年シーズンの韓国シリーズ2連覇に向けて死角なし、といったところであろうか。

(文責 : ふるりん