DAILY KOREAN PRO BASEBALL 2

1982年に発足し、2024年時点で10球団が加盟する韓国野球委員会(KBO)による韓国のプロ野球リーグ(通称KBOリーグ)に関するブログ。レギュラーシーズン、ポストシーズン(韓国シリーズなど)の試合速報や球団別の情報、現役プロ選手が含まれる野球韓国代表が出場する国際大会の情報などもお伝えします。 twitter : @kbodigest

  第8回 ハンファイーグルス

「去り行く名選手、名監督」 
2009年成績 : 46勝84敗3分け(公式戦最下位)
チーム総合採点…15点


 2009年シーズンは、若手の起用で戦力を底上げし、2年ぶりにポストシーズン進出を目指したハンファイーグルス。その戦いを振り返りたい。

 1月からのハワイキャンプでは、キム・インシク監督が指揮するWBC(ワールドベースボールクラシック)韓国代表チームの調整相手として、2月後半何度か練習試合を行った。2月中旬の韓国代表召集から3月24日(韓国時間)の決勝戦まで、40日以上キム・インシク監督がチームを離れたため、チーム作りという面では大きな不安が残った。

 WBC韓国代表が準優勝という輝かしい成果を収め、キム・インシク監督、韓国代表の4番として活躍したキム・テギュン、サードのレギュラーとして活躍したイ・ボムホなど、ハンファにはその立役者たちがそろっていたことで、その勢いをハンファにもたらすことが期待された。4月4日のSKとの開幕戦こそ、エースのリュ・ヒョンジンの好投で勝利したが、雨天中止も多くそのあと上位には進出できなかった。しかし26日のトゥサン戦で、本塁へ生還しようとして捕手と激突して脳震とうを起こしたキム・テギュンが戦線離脱し、暗雲が垂れ込め始めた。それでも4月は10勝9敗1分けと勝ち越し3位で終え、エースのリュ・ヒョンジンも開幕4連勝と好調で、イ・ボムホも9本塁打WBCからの好調を維持していた。

 しかし5月5日のサムソン戦から10日のトゥサン戦まで6連敗し、上位からは後退し始め、イ・ボムホも当たりが止まると、主砲キム・テギュンの不在が大きく響くようになった。そして5月末の4連敗で、ついに単独最下位に落ちてしまい、5月は7勝17敗2分けと負け越し転落への道が始まった、新外国人打者ディアズが守備に難があり、打撃も安定感を欠き2軍へ降格するなど、戦力としてあまり機能していなかったのも大誤算だった。また、キム・インシク監督の長期不在でチーム作りが思うように進まず、ハンファ自体が韓国代表WBC準優勝の最大の犠牲者になったのではないかとも言われた。

  6月になり、2日から4連勝し6位に浮上したが、6日から6連敗しまたもや最下位に転落し、シーズン終了まで2度と這い上がることはできなかった。リュ・ヒョンジンが調子を落とし勝てなくなり、ベテランのチョン・ミンチョル(元読売)もかつての球威はなくなっていた。またキム・テギュンも戦線に復帰しても、調子が戻らず再び戦列を離れた。先発が持ちこたえても、リリーフが打たれ競り負けることも多かった。そして6月21日から、シーズン最大の悪夢が始まった。出口の見えない連敗街道に突入し、30日のSK戦で連敗が9に伸び、6月は7勝18敗とさらに借金を増やしてしまった。

 7月になっても泥沼から抜け出せず、3日のキア戦でついにチーム史上最悪の12連敗となってしまった。しかし4日のキア戦で、イ・ドヒョンのサヨナラ2ランで連敗脱出となった。そして8日、期待はずれに終わったディアズを退団させ、まったく勝てなくなったチョン・ミンチョルはプレイングコーチとして一線を退くことになった。キム・テギュンも復調し、遅まきながら反撃を始めるかと思いきや、14日のロッテ戦からまたもや5連敗となり、勝率は3割台前半、7位LGすらも10ゲーム近い差があり、終盤戦を前に最下位は濃厚となった。7月は6勝15敗とまたもや大幅に負け越した。

 7月半ば、新外国人投手としてヤング(元オリックス)と契約したが、シーズン終了までわずか1勝しかあげられず救世主にはならなかった。8月2日のロッテ戦から、またもや連敗街道に突入し、シーズン2度目の10連敗を喫し、勝率は3割を切る寸前まで落ち込みシーズン最下位は確実となった。そして16日、21年間イーグルス一筋で投げ続けてきた史上唯一の200勝投手、ソン・ジヌが引退を発表し、その日ようやっとチームは連敗から脱出した。後半は復調し大きな連敗もなく、8月は8勝15敗で終えた。

 9月11日、1986年(当時は7球団制)の球団創設初年度以来2度目となるシーズン最下位が確定した。翌12日本拠地・大田でののヒーローズ戦では、こちらも長年チームを支えた名投手チョン・ミンチョルの引退セレモニーが行われた。そして23日のLG戦は、ソンン・ジヌの引退試合となり、先発したソン・ジヌは先頭打者にヒットを許し降板し、あとをエースのリュ・ヒョンジンが抑えて、数々の個人通算最多記録を持つ大投手の最後の花道を勝利で飾った。
 そして2005年からチームを率いてきたキム・インシク監督の退任も発表され、25日の公式戦最終戦となった大田でのサムソン戦では、2005年から2007年までチームを3年連続ポストシーズン進出に導いた名将の最後の試合を、これまた勝利で飾ることができた。9月は8勝10敗と、ようやっと復調の気配を見せ、過去4ヶ月と比べて大きく負け越すことなく終えた。


 投打の成績をふりかえる。

 ハンファといえば、なんといっても「ダイナマイト打線」と呼ばれる強力打線が名物で、2009年シーズンもチーム本塁打164本は8球団中2位と、狭い本拠地を生かした一発攻勢が特徴的だった。しかしチーム打率.269は同7位、得点629は同6位と、荒っぽさが目立った。特にチーム盗塁数69は、8球団中唯一の2ケタで圧倒的最下位と、機動力がないのが明らかだった。
 主砲のキム・テギュンは95試合の出場にとどまったが、シーズン終盤は本来の打撃を取り戻し、19本塁打、62打点の成績を残した。その代わりもう一人の主軸打者イ・ボムホがシーズンを通して活躍し、25本塁打、79打点とチームの2冠王となった。そしてレギュラーになって2年目の長距離打者キム・テワンも、23本塁打、68打点と結果を残した。その他の若手ではレフトのヨン・ギョンフム(オフに軍へ入隊)、ショートのソン・グァンミンも2ケタ本塁打を記録し、レギュラーに定着した。
 2ケタ本塁打の選手が8名と先述したように長打力はあったが、機動力が低い中でチーム最多盗塁の27個を記録したカン・ドンウは、近年不振にあえいでいたものの新天地で見事に復活を遂げた。外野手の層が薄い中、ベテランの再生に定評のあるキム・インシク監督の起用に見事こたえた。
 
 やはり問題は投手陣で、チーム防御率は8球団中最悪の5.71で、失点805も最多だった。特に先発の防御率は6点台で、早々と打ち込まれ試合を作れなかったことも多く、中継ぎ陣も決め手を欠き守護神トーマス(元北海道日本ハム)までつなげられなかった。6月19日のヒーローズ戦でヤン・フンがセーブを記録してから、なんと2ヶ月以上もチーム全体でセーブを記録した投手が現れず、8月23日のヒーローズ戦でトーマスがチームとして65日ぶりのセーブを記録した。そしてこの間、チームは2度の10連敗以上を記録してしまった。
 その中でもリュ・ヒョンジンは一時期不調にも陥ったが、終盤は持ち直しチーム最多の13勝をあげ、存在感を示し、2年ぶり3度目の最多奪三振のタイトルを獲得した。そのほかにも防御率は悪かったが、100イニングを超えた選手が、アン・ヨンミョン(11勝)、キム・ヒョンミン(8勝)、ユ・ウォンサン(5勝)などリュ・ヒョンジン以外に3名いた。内容はよくなかったが年間を通してローテーションを守った若手投手たちが自信をつけ、2010年シーズンは強力先発陣を構成するかもしれない。

 中継ぎ陣だが、40歳の左腕ク・デソン(元オリックス)が71試合でチーム最多登板となっていた現状を見ても、あまり若さがなかった。右の中継ぎはヤン・フンが67試合に登板していたが、マ・ジョンギル、ユン・ギュジンと実績のある投手が不振で、ファン・ジェギュ、ホ・ユガンなど大卒新人の出番も増えた。前の投手があまりにも弱かったため、2008年は31セーブをあげたトーマスも、わずか13セーブにとどまった。
 
 守備面では、ここ数年間故障で捕手としての起用がなかったイ・ドヒョンが復活し、若手の伸び悩みもあり終盤は正捕手に復帰した。全体として内外野ともに守備のもろさが目立ち、特にセカンドは固定できず、イ・ヨサンを中心に多数の選手が起用された。セカンドやショートを守ってきた名内野手キム・ミンジェの引退で、2010年シーズンは激しいレギュラー争いが展開されると予想される。


 チーム別の対戦成績を見ると、優勝したキアには6勝12敗1分け、2位SKには4勝15敗、3位トゥサンには3勝15敗1分け、4位ロッテには6勝13敗と、上位4チームには大幅に負け越した。しかし6位ヒーローズには10勝9敗、7位LGには12勝6敗1分けと勝ち越すなど健闘したが、逆にこの2チームは最下位に足を引っ張られたので上位に進出できなかったとも言える。


 公式戦終了後、ハン・デファ新監督の就任が発表され、チームは新体制に移行した。チームを長年支えてきたソン・ジヌ、チョン・ミンチョルキム・ミンジェなどのベテランが去っただけでなく、なんと不動の主軸だったキム・テギュンイ・ボムホの2人がFAで日本プロ野球へ移籍してしまった。さらに2年間活躍してきた抑えのトーマスも、メジャーリーグへの復帰が決まり、戦力の流出が相次ぎ新監督の頭を悩ませた。

 トゥサンからトレードで実績のある内野手イ・デスを獲得すると、新外国人選手はカペラン、デポーラと2人の投手と契約し、チームの弱点を埋めることに努めたが、あまり大型補強とは言えない。2005年から5年間にわたって指揮をとったキム・インシク監督の下ではベテランが活躍を続け、新陳代謝があまり進まなかったため、指導者としての経験が豊富なハン・デファ新監督が積極的に若手を起用してチームを刷新し、最下位脱出に成功することを期待したい。


[チームMVP]
カン・ドンウ

(2009年シーズン成績)
128試合 打率.302 10本塁打 48打点 27盗塁

 かつてサムソン、トゥサンで外野のレギュラーとして活躍したが、過去2年間は出番が激減し、2008年オフにキアからトレードで移籍した。そして35歳を迎えた2009年シーズン、見事に新天地で復活し、1番打者として活躍しセンターの外野守備も安定していて、チームを引っ張った。これからは若手の見本となって、新監督の下生まれ変わろうとするチームを支えてほしい。 

   
[ワーストプレイヤー]
ユン・ギュジン
(2009年シーズン成績)
32試合 1勝4敗 防御率7.26

 2008年は右の中継ぎの柱として活躍し、2009年WBC韓国代表候補にも選ばれたほどだったが、2009年シーズンは不振で投球内容が悪化し、チームの投壊状態を象徴するかのようだった。まだ25歳と伸びしろのある年齢なので、2010年シーズンは復活の1年にしたい。
  
(文責 : ふるりん