DAILY KOREAN PRO BASEBALL 2

1982年に発足し、2024年時点で10球団が加盟する韓国野球委員会(KBO)による韓国のプロ野球リーグ(通称KBOリーグ)に関するブログ。レギュラーシーズン、ポストシーズン(韓国シリーズなど)の試合速報や球団別の情報、現役プロ選手が含まれる野球韓国代表が出場する国際大会の情報などもお伝えします。 twitter : @kbodigest

2023年 シーズン展望 第9回 トゥサンベアース

イ・スンヨプ新監督の下で巻き返しを

 2022年は相次ぐ戦力の流出で8年連続韓国シリーズ進出どころか8年ぶりにポストシーズン進出にも失敗、チーム史上最悪の9位となり、2015年から3度の韓国シリーズ優勝に導いたキム・テヒョン監督は退任した。そして現役時代はプロ野球界を代表する偉大な打者でサムソンライオンズで活躍しトゥサンベアースのイメージが全くなかったが、2017年限りでの現役引退以降は一度も本格的な指導者の経験がなかったイ・スンヨプ(元オリックス)が新監督に就任し、大きな話題を呼んだ。

 9位からの巻き返しのため、2018年まで正捕手として活躍していたがFA(フリーエージェント)となりNCダイノスへと移籍したヤン・ウィジが2度目のFAとなり古巣トゥサンへと復帰した。代わりにヤン・ウィジの移籍後正捕手となっていたパク・セヒョクがFAでNCへと移籍した。イ・スンヨプ新監督は世代交代を積極的に進め、まずは2年ぶりのポストシーズン進出を目標としつつ、2019年以来となる韓国シリーズ優勝を目指すと思われる。現役時代はプロ野球史上最多の韓国個人通算467本塁打を記録し韓国代表でも活躍、プロ野球の発展に貢献してきたイ・スンヨプの監督初采配に注目が集まる。

 
【投手陣】

〈先発〉 
◎アルカンタラ、◎ファイル、チェ・ウォンジュン、クァク・ピン、△チェ・スンヨン、キム・ドンジュ

〈リリーフ〉
パク・チグク、キム・ミョンシン、パク・シンジ、△イ・ビョンホン、イ・スンジン、チョン・チョルォン、ホン・ゴンヒィ

注 : ◎は新戦力、△は左腕
 先発投手陣で注目されるのは2020年に20勝を記録し、2023年よりトゥサンに復帰した外国人選手アルカンタラ(元阪神)である。韓国人では2022年に8勝を記録したチェ・ウォンジュンとクァク・ピンの2名である。それに続くのが21歳の左腕チェ・スンヨンと右腕キム・ドンジュの若手で、2023年9~10月の杭州アジア競技大会野球韓国代表の選出を目指す。新外国人選手ファイルが負傷で4月1日のレギュラーシーズン開幕に間に合わないため、その空白を埋める先発投手陣の競争が激化している。

 リリーフ陣では2022年の新人王の右腕チョン・チョルォンが中継ぎの柱で、2022年にチーム最多の18セーブを記録したホン・ゴンヒィが抑えとして起用されると思われる。若手に右腕が多いため、20歳を迎えるプロ2年目の若手左腕イ・ビョンホンにも活躍の機会が与えられそうだ。

 

【打撃陣】

〈先発予想〉

捕手:◎ヤン・ウィジ

一塁:ヤン・ソックァン

二塁:カン・スンホ

三塁:ホ・ギョンミン

遊撃:パク・ケェボム

外野:◎△ロハス、チョン・スビン、△キム・インテ

DH:△キム・ジェファン

〈控え〉
(捕手) アン・スンヒョン、✕チャン・スンヒョン
(内野手) キム・ミンヒョク、キム・ジェホ、イ・ユチャン、△ アン・ジェソク、シン・ソンヒョン
(外野手) 、△チョ・スへン、△ヤン・チャニョル、ソン・スンファン、キム・デハン

注 :◎は新加入、△は左打ち、✕は両打ち。

 すでに35歳と年齢的には下り坂だが、待望のヤン・ウィジの復帰により打線は確実に強化された。これによりキム・ジェファン、ヤン・ソックァンなどともに20本塁打以上が期待される長打力のある野手たちも生きる。29歳となったカン・スンホがようやく才能を開花させ、打線の新たな軸になる可能性を感じる。これに新外国人選手ロハスが期待通りの活躍をすれば、攻撃力に関しては他チームに引けを取らないものになる。またホ・ギョンミン、チョン・スビンなど経験豊富な生え抜きの野手たちも健在だ。

 期待の若手としては21歳の内野手アン・ジェソク、兵役を終えた22歳の外野手キム・デハン、同じく22歳の外野手ソン・スンファンなどがあげられ、イ・スンヨプ新監督の指導を受け大きく成長していくと思われる。

 

【本拠地】 

ソウル・蚕室野球場 

 首都ソウル特別市の南東部にあり、韓国を代表する25000人収容の野球場。周囲は蚕室総合運動場や体育館もある総合運動場であり、プロサッカー、プロバスケットボールなど各種競技が開催される。トゥサンだけでなくLGツインスの本拠地でもあり、ライバル意識の強い両チームの対戦は他にない盛り上がりを見せ、3塁側の遠征してきたチームのファンたちも少なくない。両翼100m、左・右中間117m、センター125mと韓国の野球場では最大級の広さがあり、本塁打が出にくい。

 近年他の本拠地球場はMLBなどを手本としたボールパーク化が進められているが、ソウルオリンピック(1988年)の前の1982年に完成した同球場は昔ながらのたたずまいを残し、ロッテタワーなど江南(カンナム)地区の高層ビル群に近い大都市の野球場で韓国ならではの活気を感じたい。


[交通アクセス]
 ソウルメトロ2号線・9号線総合運動場(チョンハプウンドンジャン)駅、5番出入口の目の前が中央チケット売り場である。ただし9号線ホームは2号線ホームと比べ野球場から離れていて徒歩5分前後かかる。9号線はソウル高速バスターミナル、金浦空港とを結び、韓国の他地域や国外からも観戦に訪れやすい。
 
(文責 : ふるりん