DAILY KOREAN PRO BASEBALL 2

1982年に発足し、2024年時点で10球団が加盟する韓国野球委員会(KBO)による韓国のプロ野球リーグ(通称KBOリーグ)に関するブログ。レギュラーシーズン、ポストシーズン(韓国シリーズなど)の試合速報や球団別の情報、現役プロ選手が含まれる野球韓国代表が出場する国際大会の情報などもお伝えします。 twitter : @kbodigest

  第8回 キアタイガース

「新球場に旋風は吹かず」 
2014年成績 : 54勝74敗(公式戦8位)
チーム総合採点…25点


 2014年は新球場・光州キアチャンピオンズフィールドに本拠地を移転し、8位に終わった2013年からの巻き返しを図ったキアタイガース。しかし8月には外野に子供用のプールまで新設された立派な最新設備のボールパークに見合った成績を上げることはできなかった。


 3月29日、敵地・大邱での韓国シリーズ3連覇中の王者サムソンとの開幕戦は、新外国人投手ホールトン(元読売)の好投で勝利し、希望を抱かせた。記念すべき新球場の最初の公式戦は4月1日のNC戦で、米国・ボルティモアオリオールズと契約したユン・ソンミンに代わるエースとしての活躍が期待されたヤン・ヒョンジョンが先発で好投し、1-0の完封勝ちで飾った。だが投打ともに選手層が薄く、勝率4割前後と低迷した。
 5月になっても事態は好転せず、エースのヤン・ヒョンジョンが好投してもリリーフが打たれ、あるいは打線の援護がないなどなかなか勝てなかった。2万人以上収容できる新球場も春先の休日は満員が続いたが、徐々に空席が目立つようになってきた。6月後半初の4連勝など調子を上げ、7月は勝率4割台後半を維持したが6位にとどまった。ホールトンはまったく勝てなくなり、7月下旬に退団となって新外国人投手トーマス(元北海道日本ハム)と契約した。
 8月3日、光州チャンピオンズフィールドは台風により屋根が壊れ、4日に順延されたサムソン戦も修繕により開催されなかった。しかしこれは恵みの雨とならず7日まで6連敗となり7位に後退した。その後4連勝と息を吹き返し、LG、ロッテ、トゥサン、SKとの勝率4割半ばの4位争いに加わったが抜け出せなかった。8月末にはSKに抜かれ8位に後退し、背後には最下位ハンファが迫ってきた。
 9月になり7位以上との差は開く一方で、最下位ハンファを振り切るのが精いっぱいだった。10月にも5連敗を喫し、12日光州でのサムソン戦で敗れ2年連続の8位が確定した。最終戦となった17日のハンファ戦は相手の暴投でサヨナラ勝ちとなったが、まだ真新しさの残る光州キアチャンピオンズフィールドには寂寥感だけが漂っていた。
 
 
 チーム成績を振り返る。
 チーム防御率5.82は9球団中8位、失点788も8位と投手陣の弱さがそのまま低迷につながった。エースとして16勝をあげた左腕ヤン・ヒョンジョンの孤軍奮闘ぶりが際立ち、その他に規定投球回数(128回)に達したのが大卒2年目の左腕イム・ジュンソプだけであったが、5勝11敗と負け越した。最大の誤算は日本プロ野球最多勝投手となったこともある外国人投手ホールトンが5勝どまりで退団したことで、その代役トーマスも2勝に終わった。またソ・ジェウン、キム・ジヌ、ソン・ウンボムと実績のある右腕も期待外れだった。
 リリーフでは40歳となったチェ・ヨンピルが最も安定し、チーム最多の14ホールドを記録した。またトゥサンから2013年2次ドラフトで指名され移籍してきたベテランのキム・テヨンも新天地で復活し、11ホールドを記録した。左腕ではチーム最多の57試合に登板したシム・ドンソプが主に起用された。抑えは外国人投手のアセンシオが20セーブをあげたが、7度のセーブ失敗と安定感がなかった。
 なお、2014年より外国人選手枠が拡大され各球団3名ずつ(2014年までNCのみ特例で4名)となったが、試合出場は2名までと制限があった。そのため、先発投手に外国人を起用し抑えも外国人投手を起用することにしていたら、野手の外国人選手は試合に出場できない。そのため、抑えに外国人選手を起用するのは得策ではなかった。それにもかかわらずキアはここ何年も固定できなかった抑えの問題を解消するためアセンシオを起用したが、チームの浮上につながらなかった。そして出場すれば安定した成績を残した外国人野手ピルの出番が92試合しかなかった。プロ野球全体の傾向として高額年俸の外国人選手はチームの命運を左右するだけに全く理解できない方針であり、2014年外国人投手を抑えに起用したキア以外の球団はなかった。


 チーム打率.288は9球団中5位、チーム本塁打はロッテと同じ121本の4位、チーム盗塁数121は4位だったが、得点662は8位と明らかに得点効率が悪かった。その原因は9球団中最下位の得点圏打率.262にあったと思われる。
 打線で光ったのは自己最高の成績でチーム最多打点だったアン・チホン(打率.338・18本塁打・88打点)で、チーム最多本塁打(19本)のナ・ジワン、イ・ボムホ(元福岡ソフトバンク)が中軸を任された。だが故障がちで全員がそろうことが少なく、先述した理由でこの2人と同じ19本塁打の外国人野手ピルの出番が限られていた。FAでLGから移籍してきたイ・デヒョン、同じく2012年オフシーズンFAでロッテから移籍してきたキム・ジュチャンとかつて前所属球団で盗塁王争いを繰り広げた2人がチーム最多の22盗塁で、シン・ジョンギルの20盗塁がそれに続いたが、打線のつながりが悪く機動力を生かしきれなかった。
 控えの野手ではベテランのパク・キナムだけでなく中堅のイ・ジョンファン、大卒新人カン・ハヌルなどが起用され、投打ともに徐々に世代交代が進んでいたがチームの起爆剤にならなかった。 


 2014年限りで3年契約が切れるソン・ドンヨル監督(元中日)は、公式戦終了後いったん再契約が発表された。だが2年連続8位と低迷したにもかかわらず続投したことなどに批判が集まり、結局辞任へと追い込まれた。そして4月に成績不振でLGの監督を辞任したキム・ギテが新監督に就任した。大投手として知られたソン・ドンヨルと違い、キアや前身のヘテとの関わりはないが、本拠地・光州の出身で指導者としての実績を買われた。
 FAを行使したソン・ウンボムはハンファへと移籍したのはまだしも、2013年オフシーズンFAによる4年契約を結び、主に1番打者として活躍したイ・デヒョンが特別指名により新球団KTへ移籍することになったのはあまりにも意外だった。ここ5年以上セカンドのレギュラーだったアン・チホン、2014年は出番が少なかったがショートのレギュラーだったキム・ソンビンは、仁川アジア大会韓国代表に選ばれず兵役免除の機会が得られなかったため軍へ入隊した。決して層が厚いとは言えない選手層が、主力の流出や入隊によりさらに薄くなってしまった。一方でFAを行使した捕手チャ・イルモクは再契約となった。
 かねてから米国メジャーリーグ挑戦の意志を明らかにしていたエースのヤン・ヒョンジョンは、11月ポスティング制度での移籍を図ったが、納得のいく入札額ではなく交渉に応じずキアに残留した。外国人選手に関してはピルと再契約し、先発投手陣の補強として2012年米国メジャーリーグ・シカゴカブス完全試合を達成したハンバー、スティンソンの2人の投手と契約した。
 
 
 2015年シーズンの展望も明るいとは言えないキアタイガースだが、厳しい指導で知られるキム・ギテ新監督のもと再生し、2014年は見られなかった旋風を光州キアチャンピオンズフィールドに吹かせることはできるのであろうか。
 
(文責:ふるりん