DAILY KOREAN PRO BASEBALL 2

1982年に発足し、2024年時点で10球団が加盟する韓国野球委員会(KBO)による韓国のプロ野球リーグ(通称KBOリーグ)に関するブログ。レギュラーシーズン、ポストシーズン(韓国シリーズなど)の試合速報や球団別の情報、現役プロ選手が含まれる野球韓国代表が出場する国際大会の情報などもお伝えします。 twitter : @kbodigest

  第6回 ネクセンヒーローズ

「優勝争いに残れるチームになるためには…」 
2012年成績 : 61勝69敗3分け(公式戦6位)
チーム総合採点…55点


前年初の最下位に終わり巻き返しをはかったネクセンは、オフにFA(フリーエージェント)でLGからイ・テックンが復帰し、元メジャーリーガーのキム・ビョンヒョン(元東北楽天)と契約するなど、かつての財政難のイメージがなくなり、球団創設5年目の2012年は初のポストシーズン進出に向けて勝負の年であった。4月7日、敵地蚕室でのトゥサンとの開幕戦で、ネクセン2年目の外国人投手ナイト(元北海道日本ハム)の好投と、これまで全く無名だったソ・ゴンチャンの逆転タイムリーで勝利した。また期待の高卒新人ハン・ヒョンヒィも登板するなど、希望を感じさせる内容だった。
 序盤からの最下位争いに終始した2011年と違って、4月は25日から28日まで4連勝と勢いを感じさせた。特に3年ぶりに復帰したイ・テックン、4月だけで7本塁打のカン・ジョンホと、かつてない強力打線が形成されつつあった。5月8日、遅れて1軍に合流したキム・ビョンヒョンの韓国初登板が話題を呼んだ。15日からカン・ジョンホ、パク・ピョンホの本塁打連発とナイト、新外国人バンヘッケンの好調で8連勝し、23日にはチーム史上初の首位に立った。しかしそのあと4連敗してしまい首位の座を守れなかった。
 6月になるとやや勢いが落ちてきたが、カン・ジョンホ、パク・ピョンホの活躍で大きく負け越すことはなかった。新人ハン・ヒョンヒィは中継ぎに定着したが、両外国人に続く先発が不足していたため、キム・ビョンヒョンを先発として起用するようになり、6月20日のトゥサン戦で韓国初勝利を記録した。ただ起爆剤にはならず、勝率5割少々をなんとかキープしているだけだった。7月前半の梅雨時で雨天中止が相次いだ時も調子を落とさず、勝率5割台前半をキープすると、オールスター戦前最後の試合となった7月19日のロッテ戦での勝利で3位に浮上し、上位争いにこのまま残れるかと思われた。
 ところが7月29日までのシーズン最悪の5連敗で勝率5割となってしまったあたりからおかしくなってしまった。8月になるとイ・テックンの離脱で、カン・ジョンホを抜いて本塁打王争いトップに立ったパク・ピョンホの活躍を除いては、8球団で最も確実性のない打線となってしまった。8月10日までの4連敗で6位にまで後退し、勝率5割に復活しようにも貧弱な先発陣では大きな連勝も望みようがなかった。打線のテコ入れで、7月にトゥサンとの1対1トレードで獲得した左の大砲イ・ソンヨルも期待に添えなかった。
 8月末までは勝率5割復帰や4位以上進出の希望も持てたが、9月になるとナイト、バンヘッケン、守護神ソン・スンナク以外の投手陣が総崩れ状態、打線も本塁打・打点トップを守っていたパク・ピョンホ、新人王最有力候補となっていたソ・ゴンチャン以外はまったくいいところがなくなり、徐々に5割から遠ざかった。そして9月17日、2009年からチームを率いていたキム・シジン監督の解任が発表され、残り試合はキム・ソンガプ監督代行がとることとなった。これが効いたのか、9月20日まで3連勝し5位に浮上したが4位以上とは5ゲーム差以上あり、26日6位に後退するともう浮上することはなかった。ナイトは10月1日のトゥサン戦で16勝目をあげ、最多勝は逃したが最優秀防御率のタイトルを確実にした。
 終わってみれば6位という順位は2009年と同じであまり代わり映えはしなかったが、年間勝率.469は5年という短い球団の歴史では最高記録だった。


 2012年シーズンの投打の成績を振り返る。
チーム防御率は3.83(8球団中5位)と数字だけでは他球団と比べて劣ってはいなかった。韓国4年目で自己最高の16勝を記録し最優秀防御率のタイトルも獲得したナイトだけでなく、バンヘッケンも韓国1年目で11勝と、期待された左の先発の柱となった。しかし3番手以降があまりにも弱かった。外国人投手2人以外に規定投球回数に達した投手がゼロで、韓国人選手では右腕キム・ヨンミン、若手左腕カン・ユングが100イニング以上を投げたが、それぞれ5勝、4勝と物足りない成績だった。キム・ビョンヒョンも3勝どまりと、メジャーリーグで活躍していた頃の面影はなかった。
 リリーフ陣では、守護神ソン・スンナクが33セーブと存在感を示したが、中継ぎの層が薄かった。過去数年活躍した中継ぎがこぞって不振で、ベテラン右腕イ・ジョンフン、左腕パク・ソンフン、新人ハン・ヒョンヒィくらいしか信頼できる者がいなかった。
 
 打線はチーム打率.243は8球団中最下位と確実性を欠いたが、本塁打数105は2位だったことで得点(549)は4位だった。主役になったのは2011年シーズン途中LGからトレードで移籍し、その大器の片鱗を見せ頼れる4番へと成長したパク・ピョンホである。31本塁打、105打点で打撃二冠王、そしてチームが6位だったにも関わらずシーズンMVP(最優秀選手)にまで輝いた。そしてショートながら25本塁打、87打点を記録したカン・ジョンホとのコンビは、相手にとっては最大の脅威であった。
 しかし周りを固める打者が弱かった。期待されたイ・テックンはLG時代からの故障が癒えずシーズン後半は離脱してしまい、長打力のある選手があまりいなかった。2012年テスト入団だったソ・ゴンチャンはセカンドのレギュラーに定着し、見事新人王を受賞した。打率の低かったネクセンにそれなりの得点力があった大きな理由に、8球団トップのチーム盗塁数(179)がある。ソ・ゴンチャンの39盗塁をトップに、チャン・ギヨンの32盗塁、そして20本塁打以上のカン・ジョンホも21盗塁、パク・ピョンホも20盗塁を記録していた。
 またチームが上位進出できなかった理由の一つに、不動の正捕手不在があげられる。2011年から台頭していたホ・ドファンだけでなく、2012年開幕後にSKからトレードで移籍してきたチェ・ギョンチョルが盛んに起用されたが、どちらも大きな信頼を得ることはできなかった。 
 投打ともに突出した選手は何人かいるが、全体的な選手層が厚いとは言えず、また上位争いをした経験のある選手も少なかったことが、シーズン後半の失速につながったと言える。


 2012年10月、ヨム・ギョンヨプ新監督が就任し早々と新しいチーム作りが始まった。それまでネクセンの走塁作戦コーチだったがあまり知名度が高くなかったため、意外な人選であった。またナイト、バンヘッケンとの両外国人投手とも早々と再契約した。大きな補強はないが、キム・シジン監督のころから比較的選手を育てるのがうまいため、2013年シーズンも意外な選手の台頭があるかもしれない。前年の失敗を糧に、2013年こそは優勝争いに最後まで残れるチームへと成長することができるのか、新監督の手腕に注目したい。
 
 
(文責 : ふるりん)