DAILY KOREAN PRO BASEBALL 2

1982年に発足し、2024年時点で10球団が加盟する韓国野球委員会(KBO)による韓国のプロ野球リーグ(通称KBOリーグ)に関するブログ。レギュラーシーズン、ポストシーズン(韓国シリーズなど)の試合速報や球団別の情報、現役プロ選手が含まれる野球韓国代表が出場する国際大会の情報などもお伝えします。 twitter : @kbodigest

  4月2日、いよいよ2011年シーズン開幕

 4月2日、プロ野球の2011年シーズンが開幕する。


【2011年シーズン 公式戦開幕カード(4月2,3日)】

LG(リズ) − トゥサン(ニッパート)  ソウル・蚕室野球場
ネクセン(ナイト) − SK(グローバー)  仁川・文鶴野球場
サムソン(チャ・ウチャン) − キア(ユン・ソンミン)  光州・無等野球場
ハンファ(リュ・ヒョンジン) − ロッテ(コーリー)  釜山・社稷野球場  
※ 全試合14時開始。 ( )内は2日の予告先発投手。

 KBO(韓国野球委員会)は、プロ野球人気が非常に高まっている2011年シーズンこそ、史上初の年間観客動員数600万人突破を期待している。開幕カード4試合のうち、LG−トゥサン(ソウル・蚕室)、サムソン−キア(光州)、ハンファ−ロッテ(釜山・社稷)の3試合は、インターネットでの入場券前売り開始日にいずれも即日完売となった。またネクセン−SK(仁川・文鶴)にも大勢の野球ファンが集まると思われ、2年連続で開幕カード4試合満員御礼の可能性も高い。どの野球場にも、2日は当日券を求めて長蛇の列ができることであろう。


1.優勝チームは?

 2010年はSKが3度目の春先に首位に立つとその座を一度も譲ることなく公式戦で優勝し、サムソンとの韓国シリーズも負けなしの4連勝で終え3度目の優勝を飾った。2007年のキム・ソングン監督就任後圧倒的な強さを誇ってきたSKだが、2011年シーズンはそれにややかげりが見られる。春季キャンプ、示範競技でも故障や不調の選手が多く、ベストの状態で開幕を迎えられていない。キム・ソングン監督も、開幕ダッシュはあきらめて5月以降に勝負をかけることを示唆している。
 SKの牙城を破るとなると、2010年上位に進出したサムソン、トゥサン、ロッテに期待が集まる。この中で投打ともに充実しているのはサムソンとロッテだろう。サムソンは、2010年までSKで活躍した日本人投手・門倉(元読売)の加入や、守護神オ・スンファンの復活で投手力が強化された。打線も引退した大打者ヤン・ジュンヒョクの不在を感じさせない。ロッテは、2010年の打撃三冠王イ・デホを中心とした強力打線に、新外国人コーリー(元千葉ロッテ)などの加入で課題の投手力が向上し、安定した戦いが見込める。しかしサムソンはリュ・ジュンイル新監督、ロッテはヤン・スンホ新監督と、ともにオフでの監督交代があり、2人ともに1軍監督としての采配は未経験と不安は少なくない。
 8年目となった長期政権のキム・ギョンムン監督率いるトゥサンは、キム・ヒョンスなどのタレントがそろった打線こそ強力だが、日本プロ野球東北楽天へ移籍した外国人投手ヒメネスの穴を埋めることが課題で、投手力がSK、サムソン、ロッテなどと比べてやや見劣りし、圧倒的な強さを感じない。2009年の王者ながら5位に転落したキアも、強力な先発投手陣を軸に、日本プロ野球福岡ソフトバンクで活躍できなかったイ・ボムホを加えた打線が強化され、前年の雪辱を晴らそうと意気込んでいて、決して侮ることはできない。
 9年ぶりのポストシーズン進出を目指すLGも、期待の新外国人リズの評価が高く、打線はある程度選手がそろっているため、投手陣のがんばり次第では十分に上位を脅かすことができる。また2009年以降多数の主力選手をトレードでどんどん売り飛ばしているネクセンも、かつてキム・シジン監督が指揮を執っていた現代ユニコーンズ以来の伝統が息づき、無名の若手や出番がなくくすぶっていた選手の起用がうまく、意外性を秘めている。2年連続最下位に終わったハンファは、投打ともに明らかな戦力不足で、3年連続最下位でなければ御の字だ。2011年シーズンもエースのリュ・ヒョンジンが孤軍奮闘する姿が見られそうだ。

 このように見ると、2011年シーズンはどのチームも決め手を欠き、大本命なき混戦模様になると思われる。シーズン終盤まで続く熱戦が、すべての球界関係者が待ち望む観客動員新記録に結びつくことに期待したい。


2.外国人選手は? 
 1球団2名ずつとなっている外国人選手は、各チームの浮沈の鍵を握っている。ここ近年の優勝チームを見ても、その多くが外国人選手の活躍に恵まれている。

【2011年シーズン 外国人選手一覧】

SK   : グローバー(投手)、◎マグレーン(投手)
サムソン : △門倉(投手)、◎ガーコ(内野手)
トゥサン : ◎ニッパート(投手)、◎ラミレズ(投手)
ロッテ  : サドースキー(投手)、◎コーリー(投手)
キア   : ロペス(投手)、◎トラビス(投手)
LG   : ◎リズ(投手)、◎ジュキッチ(投手)
ネクセン : △ナイト(投手)、◎アルドリッジ(外野手)
ハンファ : デポーラ(投手)、◎オネリー(投手)

注 : ◎は韓国1年目の新外国人選手、△は他球団からの移籍。

 外国人選手16名のうち14名が投手と、投手偏重の傾向は変わっていない。新外国人で特に評価が高いのはニッパート、コーリー(元千葉ロッテ)、リズの3人だ。ともに開幕投手を任されている。オーストラリア出身の左腕トラビスも、キアの最強先発陣の一員に入りそうである。6本指が話題のオネリーは、ハンファの守護神としてチームを3年連続最下位の危機から救ってくれるかもしれない。なお米国・メジャーリーグでの実績があるガーコ、マイナーリーグでの経験が豊富なアルドリッジも、打線の軸としての活躍が期待されている。
 やや出遅れたのが、示範競技の故障で開幕1軍入りを逃したジュキッチだが、4月中には1軍で登板する見込みである。なお、2月になってトゥサンと契約したラミレズは、調整の遅れもあってか示範競技で大量失点し、現段階では1軍の戦力として計算が立てられない。
 2年以上韓国にいる外国人選手としては、3年目の門倉、ナイト(元北海道日本ハム)がそれぞれSKからサムソン、サムソンからネクセンへと移籍し、新天地でも先発の一角として重要な働きを任されることになりそうだ。同じくキアで3年目のシーズンを迎えたロペスも、最多勝を獲得し優勝に貢献した2009年の姿を取り戻すことが望まれている。2年目のサドースキーは、前年以上(10勝)の勝利数が最低のノルマであろう。


3.期待の若手は? 
 韓国では高校野球で選手を酷使する傾向があり、ここ最近素材として一級品の高卒新人が1年目に結果を出し新人王となった例がない。高卒新人の新人王は2007年のイム・テフン(トゥサン)が最後である。2011年シーズンの開幕1軍登録選手を見ても、高卒新人はイム・チャンギュ(LG)だけである。
 ここでは、高卒・大卒新人を含め、新人王の資格がある(投手:30イニング以下、野手:60打席以下)プロ入り後5年目以内の有望な選手をリストアップしてみた。

SK   :  キム・テフン(投手)、パク・チョンフン(投手)
サムソン :  ○イム・ヒョンジュン(投手)、ペ・ヨンソプ(外野手)
トゥサン :  キム・ジェファン(捕手)、○チョン・ジンホ(外野手)
ロッテ  :  ○キム・ミョンソン(投手)
キア   :  ◎ホン・ゴンヒィ(投手)、○ユン・ジョンウ(外野手)
LG   :  ◎イム・チャンギュ(投手)、ヤン・ヨンドン(外野手)
ネクセン :  ○ユン・ジウン(投手)、○コ・ジョンウク(外野手)
ハンファ :  ○ナ・ソンヨン(捕手)、○キム・ヨンホ(内野手)

注 : ◎は高卒新人、○は大卒新人。

 こうしてみると、人材が投手と外野手に集まっていることがわかる。内野手、特に長距離タイプは育成が難しく、イ・デホのような韓国球界を代表するスラッガーの誕生は当分ないかもしれない。また外野手に人材が集まっている理由は、イ・ジョンウク(トゥサン)、イ・ヨンギュ(キア)のような俊足巧打の外野手が近年プロ野球で積極的に起用されていることと関係があると思われる。
 2011年シーズンの新人王は、2006年新人王、公式戦MVP(最優秀選手)や投手部門のタイトルを総なめしたリュ・ヒョンジン(ハンファ)のような圧倒的な存在感を持った選手がいないことで、まったく予想もつかない。いい意味で関係者やファンの期待を裏切る選手が出てほしい。


4.個人タイトルの行方は?
〔打者〕
 なんといっても2010年2度目の打撃三冠王となったイ・デホ(ロッテ)が大本命だ。特に本塁打(46本)は2位のチェ・ジンヘン(ハンファ)に14本差をつける大差で、他の追随を許さなかった。外国人選手が投手偏重で、かつてのタイロン・ウッズ(元トゥサン)のようなパワフルな助っ人があまり見られない昨今、イ・デホのような韓国人スラッガーの誕生が待ち遠しい。
 首位打者争いでは、3年連続で打率2位に終わったホン・ソンフン(ロッテ)に注目だ。2011年こそ4度目の正直なるか、ライバルは同僚のイ・デホである。打点王は、チェ・ヒョンウ(サムソン)、キム・ヒョンス(トゥサン)といった上位進出が予想されるチームの主力打者も候補に挙げられる。
 2007年以来4年連続盗塁王、60盗塁以上のイ・デヒョン(LG)が、史上初となる5年連続盗塁王を目指して、2011年シーズンも快足を飛ばすことであろう。ライバルとしては2010年熾烈な盗塁王争いに1個差で敗れたキム・ジュチャン(ロッテ)、そのほかにチャン・ギヨン(ネクセン)、チョン・グヌ(SK)、キム・サンス(サムソン)などがあげられる。
〔投手〕
 現在の韓国プロ野球界は左腕王国である。2010年最多勝のキム・グァンヒョン(SK)、最優秀防御率最多奪三振のリュ・ヒョンジン(ハンファ)を軸に、この2人とタイトル争いを繰り広げたヤン・ヒョンジョン(キア)も加わったタイトル争いになると思われる。また、2010年先発として大きく成長し、最多勝率のタイトルを取った新鋭の左腕チャ・ウチャン(サムソン)も面白い存在だ。
 先発として活躍が期待される右腕は、外国人投手が中心となる。160km前後の速球を投げるリズ(LG)は、年間を通して活躍すれば最多奪三振のタイトル争いに加わると思われる。
 セーブ王争いは、2010年の受賞者ソン・スンナク(ネクセン)が故障で開幕1軍から外れ、2009年の受賞者イ・ヨンチャン(トゥサン)も中継ぎに転向したため、本命なき争いとなる。だが、2006年から2008年まで3年連続最多セーブを受賞したオ・スンファン(サムソン)がここ2年の不振からの復活を予感させている。3年ぶりのタイトルなるかが注目される。
 
 
 1982年のプロ野球創設以来30年目に当たる節目の1年ということもあり、例年になく注目を集める2011年シーズン。NCソフトによる新球団創設(2013年以降に1軍リーグ戦に参戦予定)も正式に決定し、今後ますます発展が見込まれるプロ野球の勢いを象徴するかのような、最後まで息のつく暇がない大熱戦が続く歴史的な1年になりそうだ。初春から秋までの半年以上にわたる長い公式戦、ポストシーズンの長丁場を制するのは一体どのチームになるのであろうか。


(文責 : ふるりん