DAILY KOREAN PRO BASEBALL 2

1982年に発足し、2024年時点で10球団が加盟する韓国野球委員会(KBO)による韓国のプロ野球リーグ(通称KBOリーグ)に関するブログ。レギュラーシーズン、ポストシーズン(韓国シリーズなど)の試合速報や球団別の情報、現役プロ選手が含まれる野球韓国代表が出場する国際大会の情報などもお伝えします。 twitter : @kbodigest

  第2回 トゥサンベアーズ


万年2位から脱却できず 

2008年成績 : 70勝56敗(公式戦2位) 韓国シリーズ 準優勝

 トゥサンは2007年韓国シリーズでSKに敗れ、その雪辱を晴らさんと今季は2年連続で韓国シリーズに出場したが、結局返り討ちにあってしまい、2001年以来7年ぶりの優勝はならなかった。ここ5年間で韓国シリーズ準優勝は2005年、07年についで3度目と、「万年2位」のレッテルを貼られつつあり、そこから脱却するにはどうしたらよいか。今季史上まれに見る独走態勢で優勝したSKとの差はどこにあったのか、シーズン全体の戦いを通して振り返ってみたい。


 トゥサンにとって開幕前最大の不安は、2007年22勝と超人的な活躍をしたが、日本プロ野球へと進出したリオス(薬物問題で東京ヤクルトを退団)の穴をいかにして埋めるか、だった。代役として、2004年17勝し最多勝投手となった左腕ゲーリー・ラス(元東北楽天)が復帰することになり、元メジャーリーガーの右腕キム・ソヌも入団した。トゥサンは2004年のキム・ギョンムン監督就任後、積極的に若手を抜擢し戦力として成長させることに定評があり、今季も1990年代後半以降チームを支えていた主力選手から、若手への切り替えがさらに進んだ。その最高傑作が、今季若干20歳で首位打者となったキム・ヒョンスである。


 3月29日の新球団ヒーローズとの開幕戦はあいにく雨天中止となったが、翌30日はヒーローズに勝利し、無難なスタートを切った。4月2日のキア戦で期待のキム・ソヌが打たれ敗れると、8日のハンファ戦まで6連敗といきなり大きくつまずいた。期待のキム・ソヌが勝てない一方、4年ぶりに復帰したラスは4月だけで3勝をあげるなど実力を発揮した。チーム全体は好調ロッテ、王者SKになかなか勝てず、勝率5割の壁をなかなか突破できなかった。4月を終えて11勝14敗の6位と、首位SKとは8.5ゲームも離されてしまった。波に乗れないチームの中で、1軍に定着して2年目のキム・ヒョンスがレフトのレギュラーに定着しただけでなく、打率4割を突破し首位打者になるなど、その才能を徐々に発揮し始めた。
 5月初めにラスが家庭の事情で退団することとなり投手陣の不安が増大したが、打線の爆発とイム・テフン、イ・ジェウなどリリーフ陣の奮闘で、8日のヒーローズ戦まで8連勝と調子を上げてきた。そして13日から15日までの首位SKとの3連戦で3連勝し、4.5ゲーム差の2位にまで浮上した。5月はロッテ、サムソンとの激しい2位争いが続き、SKを捕らえきれなかったが、17勝7敗と大きく勝ち越し、飛躍の1ヶ月となった。

 6月3日ロッテに敗れ2位の座を譲ったが、7日のLG戦にキム・ドンジュのタイムリーでサヨナラ勝ちし奪回した。12日のロッテ戦まで5連勝するなど、小刻みに連勝を重ねたが、SKがそれを上回る好調ぶりでその差をつめるどころか徐々に広げられていった。6月は13勝9敗と勝ち越し3位ロッテとは3ゲーム差の2位で終えたが、それでもSKとのゲーム差は10まで広がった。6月になってキム・ソヌが韓国初勝利をあげ、ラスに代わる新外国人レイアーも合流した(未勝利のまま7月に退団)。
 7月になってSKの勢いが落ちてくると、投打のかみ合ってきたトゥサンが17日のSK戦まで9連勝し、ゲーム差を3.5まで縮めた。ところが先発投手陣で最多の7勝をあげていたキム・ミョンジェが戦線離脱すると、7月後半はまったく勝てなくなり、8連敗で7月を終えた。雨天中止の多かった7月は10勝11敗と負け越してしまい、2位ながらも首位SKとは8.5ゲーム差をつけられ、3位ハンファとゲーム差なしで並ばれ、北京五輪の中断期間を迎えた。


 キム・ギョンムン監督が率いる北京五輪韓国代表には、トゥサンの選手が4名選ばれた。シドニー五輪WBCなど国際経験豊富なキム・ドンジュは、主に5番を打ち目立った活躍はなかったが、要所でヒットを放つなどチャンスメーカーに徹した。コ・ヨンミンはセカンドのスタメンで出場することが多く、台湾戦での3ラン、予選リーグのキューバ戦での同点タイムリーなど目立つ場面で活躍した。イ・ジョンウクは主に1番打者として活躍し、緒戦のアメリカ戦ではサヨナラの犠牲フライも打った。また首位打者キム・ヒョンスは、予選リーグの日本戦で9回表代打として登場し、岩瀬から決勝タイムリーを打つ活躍で、優れた打撃技術が国際舞台でも通用することを証明した。キム・ギョンムン監督子飼いの選手たちの活躍で、韓国代表は見事史上初の金メダル獲得に成功した。


 8月26日に再開されたプロ野球公式戦で、最初のSK戦に敗れ北京五輪前からの連敗が9になってしまったが、翌27日のSK戦で12得点と打線の爆発で解消し不安を一掃した。9月になると、2位争いの相手は、トゥサンとの直接対決で3連敗し調子を落としていったハンファに代わって、怒涛の連勝街道を突っ走っていたロッテになった。その勢いに飲まれてしまい、トゥサンは11日ロッテに2位の座を3ヶ月ぶりに譲った。しばらく一進一退の状態が続いたが、19日から21日まで敵地・釜山でのロッテとの3連戦で3連勝し、2位の座を奪回した。
 首位SKが9月21日に公式戦優勝を決めると、トゥサンはその後なかなか勝てなかったが、ロッテの調子が下り坂だったこともあり、10月2日のヒーローズ戦に勝利し、2年連続公式戦2位、プレーオフ進出を確定した。10月16日からのプレーオフは、ロッテを3連勝で下した公式戦4位のサムソンとの対決となった。
第1戦トゥサンは終盤の打線の爆発で8−4と逆転勝ちしたが、第2戦は延長14回までもつれる激闘の末、4−7で敗れた。敵地・大邱に舞台を移した第3戦は2−6で敗れたが、第4戦に12−6で勝利し2勝2敗のタイとした。第5戦を6−4で何とか逃げ切り韓国シリーズ進出に王手をかけると、本拠地・蚕室に戻った第6戦は早めの継投策をとり5−2で勝利し、2年連続韓国シリーズ進出を決めた。先発が不安定な中、3勝を記録したチョン・ジェフンなどリリーフ陣の好投が光った。


 前年の雪辱を晴らそうとした王者SKとの韓国シリーズは、毎試合3万人の満員の大観衆が集まり大変な盛り上がりを見せた。10月25日の敵地・仁川での第1戦は先発ランデル(元読売)の好投もあり、5−2で勝利した。第2戦からプレーオフで好調だった打線が湿りがちとなり、2−5で敗れてしまった。舞台を本拠地・蚕室に移した第3戦は、コ・ヨンミン、キム・ヒョンスが絶好のチャンスで打てず、2−3の接戦を落としてしまった。
第4戦も1−4で敗れると、あとがない第5戦にはキム・ソヌが先発し、SKの若きエース、キム・グァンヒョンと投げあった。だが7回に2点を先制されると、その後のチャンスを相手の好守備や小刻みな継投によりつぶされてしまった。最後は第3戦でも最後の打者となり、このシリーズで不振を極めたキム・ヒョンスが併殺打に倒れ、0−2で敗れてしまい、2年連続で先手を取ったあと4連敗と力の差を見せ付けられる結果となった。



投打の成績を振り返る。


投手陣は先発投手陣のやりくりに苦しんだ。規定投球回数に達し、シーズンを通してローテーションを守ったのがランデル(9勝)だけだった。生え抜きのエース候補として期待されたキム・ミョンジェは7月に故障で戦線離脱し、7勝どまりと今季も期待を裏切った。また2007年は故障により1軍登板できなかった左腕イ・ヘェチョン(7勝)も終盤は先発で起用され続けた。元メジャーリーガーのキム・ソヌは、不振で2軍落ちも経験したが6勝をあげ、韓国シリーズで好投し、2009年以降に期待を抱かせた。
その代わりトゥサンはリリーフ陣が比較的充実していた。今季軍から除隊され復帰したイ・ジェウは、鋭いフォークなどの変化球と速球のコンビネーションで中継ぎの柱となり、テンポのよい投球が打線の奮起を生み、チーム最多勝の11勝をあげた。2007年の新人王イム・テフンは球種が増え今季も安定した投球を続け、2007年1軍に定着したキム・サンヒョンは中継ぎに先発に活躍し、大車輪の活躍だった。守護神チョン・ジェフンは18セーブと例年よりセーブ数は少なかったが、プレーオフでの好投が光った。全体的に左腕不足だったが、チーム防御率は3.89(8球団中3位)とそんなに悪い数字ではなかった。


 今季のトゥサンを支えたのは、五輪代表に4人も選ばれたことからもわかるように、8球団中最多の647得点をたたき出した打線である。チーム本塁打数は68本(6位)と迫力不足で、チーム打率も.276(3位)だったが、189盗塁(1位)を記録した機動力が最大の武器だった。だが選手層が王者SKと比べ薄く、爆発力はあるもののやや安定感に欠け、投手が守りきる試合運びをすることはあまりできず、下位打線も弱く主軸打者が不振だと大型連敗に突入することがあり、エースのキム・グァンヒョンが不動で、打線の切れ目がなかったSKとの決定的な差となっていた。
打線の軸は今季も4番キム・ドンジュで、チーム最多の19本塁打、104打点を記録した。トップバッターのイ・ジョンウク(47盗塁)、コ・ヨンミン(39盗塁)など快足の選手たちが上位を打ち、首位打者キム・ヒョンス(打率.357)、キム・ドンジュ、これまでの捕手ではなく指名打者として復活したホン・ソンフンのクリーンアップが迎え入れた。また内野の若手オ・ジェウォンが28盗塁を記録し、2009年は内野の控えからレギュラー定着を狙う。
 守備では内野の要ショートがなかなか定まらず、イ・デス、若手のキム・ジェホの併用となった。だがセカンドはダイナミックな守備で知られるコ・ヨンミンが今季も不動で、チームのピンチを再三助けた。外野はセンターのイ・ジョンウク、レフトのキム・ヒョンスは不動だったが、ライトにいい人材がなく、打撃のいいユ・ジェウン、LGから移籍した強肩のイ・ソンヨルなどの併用となった。正捕手は2007年同様チェ・サンビョンが努め、投手陣からの信頼を勝ち得ていった。LGから移籍したチェ・スンファンも、新天地で第2捕手として活躍した。


 2009年こそは3度目の正直を果たしたいトゥサンだが、その前途はかなり険しい。まず11月に貴重な左腕イ・ヘェチョンが、FAで日本プロ野球東京ヤクルトに移籍した。また同じくFAを行使したホン・ソンフンも、ロッテへの移籍を決めた。長年チームを支えてきたが出番が減少していたベテラン内野手アン・ギョンヒョンは、戦力外となりSKへ移籍した。そして不動の4番キム・ドンジュも、念願の日本プロ野球への進出を図っているが、12月20日現在具体的な進展はなく、このままトゥサンに残留する可能性もある。
 厚いとは言えない選手層を何とかやりくりし、チーム一丸となったトゥクシム(根気)野球で毎年トゥサンを優勝戦線に踏みとどまらせているキム・ギョンムン監督にとって、相次ぐ主力選手の流出に頭の痛い日々が続いている。ただ自分が抜擢した若手選手が完全にチームの中心となるであろう2009年シーズンは、ようやっと何の障害もなく自分の思い通りの野球ができるともいえる。五輪野球の頂点に立ったキム・ギョンムン監督が、いかにして自分のチームを韓国球界の王座に導くのか、大いに注目したい。

(文責:ふるりん